今回は、H28年1月後半の渋谷道頓堀劇場における、六花ましろさんと石原さゆみさんの渋谷道劇ガール二人の「ウエディング競演」という題名で語ります。
今年第二弾の渋谷道劇メンバー勢ぞろい。1月結の週の香盤は次の通り。①虹歩(札幌ニューカジノ)、②多岐川美帆(道劇)、③橘メアリー(道劇)、④石原さゆみ(道劇)、⑤六花ましろ(道劇)、⑥川中里紗子(道劇)〔敬称略〕。今週は橘メアリーさんのデビューで、同じAV事務所から2頭に愛咲えなさん、2結に新條希さんと三人立て続けにデビュー予定。
さて、早速今週初日に行く。初日はたまたま、私のオキニの石原さゆみさんが旧作「ウエディング」一個出し(二日目から二個出し)。ただ最初のウエディングドレスが衣装替えしていた。おっ!首回りと胸元が覆われているデザインに変化しているな。
そう思っていたら、五番手の六花ましろさんが新作「ウエディング」を初披露。さゆみさんと演目がかぶる。しかも、さゆみさんの衣装替えしたウエディングドレスとデザインがよく似ているのが面白かった。
最初はそんな印象から入ったが、ましろさんの「ウエディング」のステージを観ているうちに段々と魅了されてきた。
最初にアベマリアの曲にのって、ベールをかぶって白いウエディングドレスで登場。首回りに華やかな白い刺繍。大きな花束を持ち、ゴールドのハイヒールで華麗に踊る。
次の軽装がさわやかで素敵。水色の衣装に、白い毛皮のベストを羽織る。胸元の大小の真珠が輝く。右の胸元にオレンジの花がひとつ飾られる。ショートな髪型で毛先がカールされていてとてもよく似合っている。足には白いガータを履き、軽快に踊る。
最後に、すけすけの白いシュミーズでベッドショーへ。
全体的に、ましろさんの美しさをうまく表現している。おもわず、ましろさん綺麗だなぁ~と見とれる。おっと、私はさゆみさんの客だったことを思い出す(笑)。
ボラ時、ましろさんに「さゆみちゃんのウエディングとかぶったね」と話すと、ましろさんから「さぁ、私とさゆみちゃん、どちらを花嫁に選ぶかなー!?」と強く迫られる。私はたじたじ。また、ましろさんから「ウエディングなお話たのしみにしてるね~」と童話を期待される。
ちょうど公演初日の1/15未明、長野県軽井沢町で夜行バスが転落事故を起こし、大学生14人が死亡したニュースが流れる。将来有望な若者たちの死が事故の悲惨さを掻き立て、その週のTVの話題を独占していた。
このニュースと二人のウエディング競演を題材にして童話「二人のウエディング」は出来上がった。
平成28年1月 渋谷道劇にて
『二人のウエディング』
ぼくには将来を約束した女性がいた。名前をさゆと言う。
さゆとは、スキー教室で出会った。上級コースで、お互いかなりの腕前だった。技能を教える講義で、たまたま隣の席に座ったのが縁。笑顔がたまらなくかわいい。ぼくは一目惚れしてしまった。もうスキーどころではなくなった。
スキー教室は毎週水曜日の夜にある。ぼくは勇気を振り絞って、三回目のときに彼女を食事に誘った。快く受けてくれた。それからお付き合いが始まった。
彼女は雪国・長野の軽井沢育ち。スキー板を靴代わりに履いて育ったらしい。スキーが上手いはずだ。
ぼくらは共通の趣味であるスキーの話をしているときが一番楽しかった。いつか結婚するときは雪のウエディングドレスを着て、粉雪の降りしきる中を二人で滑走してゴールに飛び込もうね!と話していた。たくさんの親しい仲間に見守られ、山に棲むかわいい動物たちにも囲まれて。こんな「幻のウエディング」が二人の夢だった。
彼女の実家は軽井沢のホテルを経営していた。今年の冬は、軽井沢で、一緒にスキーをする約束をしていた。ちちろん泊まるのは彼女の実家のホテル。そのときにご両親にぼくのことを紹介したいと、彼女は張り切っていた。
ところが、急に断れない仕事が入り、軽井沢に行けなくなる。楽しみにしていた彼女は怒った。ぼくとしてもどうしようもなくて、ついつい口げんかしてしまった。彼女は一人でスキーに行くわ!と言い残して、そのまま、夜行バスに乗り込んだ。
事件はその夜に起こった。
深夜まで残業していたぼくの耳に、さゆがぼくを呼ぶ声が聞こえた。悲痛な声だった。ものすごく嫌な予感がした。
翌朝、TVのニュースが目に飛び込んできた。さゆが乗った深夜バスが事故を起こしたらしい。乗っていた乗客の多くに死傷者が出ている。
さゆが・・さゆが・・私は身体が震えた。
TVでは、夜行バス会社の管理責任ばかり話す。運転手の健康管理は十分だったのか、旅行会社がバス会社に仕事を丸投げしてピンハネしていたこと等。そんなことはどうでもよかった。早く、さゆの安否が知りたいのに・・・
ようやく死亡した乗客の名前が画面に出始めた。その中にさゆの名前があったとき、ぼくはピストルで心臓を打ち抜かれた如く、唖然とし、かつ気が動転した。もう仕事どころではない。ぼくは会社に連絡し、事情を説明し休暇を取り、急いで軽井沢に向かった。
新幹線で軽井沢駅のホームに降り立ったとき、寒々とした突風が吹き抜けた。雪交じりの風が泣いていた。タクシーに乗り込む。これから向かう山の麓がまるで血を浴びたように真っ赤に染まって見える。20分ほどで事故現場に到着したとき、横転した夜行バスが雪の積もった林の中に車体が折れ曲がった無残の状態で横たわっていた。周りに、警察や報道の方、死傷者のご家族等たくさん集まり、身動きがとれない状況だった。
「サワイさんですか?」ぼくを呼ぶ声が聞こえる。
振り向いたら、そこにさゆがいた。幽霊が現れたのかと自分の目を疑った。ぼくは信じられないという目つきで彼女を見つめた。
「私は、さゆの妹のゆみと言います」
そうか、さゆには双子の妹がいると言っていたな。まさか、こんなに瓜ふたつとは・・
「姉から、サワイさんのことは窺っていました。よろしければ、実家が近いので寄っていただけませんか?」
私は彼女の誘いに応じて、実家のホテルに行く。ご両親がぼくのことを快く迎えてくれた。さゆがぼくのことを良く話してくれていたようだった。
ぼくは、ご両親に勧められて、さゆのお通夜・葬式までホテルに滞在させてもらった。さゆの家族皆がまるでぼくのことを身内のように扱ってくれた。
葬式が終わり、ぼくは東京に帰って、いつものように仕事を始めた。さゆを失った悲しみを仕事で気を紛らわせるしかなかった。
しばらくして、さゆの妹ゆみさんから一通の手紙が届いた。内容を見て驚いた。
ぼくがご両親にさゆについて話したことが書かれていた。ぼくは、さゆのことを心から愛し、この愛を一生貫き通すと約束していた。だから、口げんかしたまま別れたことが悔やまれること、そして何よりも、今回の事故でぼくはさゆと一緒に死ねなかったことが悔やまれてならないことを涙ながら話した。
ゆみさんは、ぼくが心から姉のさゆを愛してくれていたことに感謝してくれた。そして、ぼくの涙に感動したと書いてあった。一人の女性を一途に愛した美しい涙だと。
そのうえで、ぼくとお付き合いしたい!と書かれてあったのには驚いた。
お返事は、ぼくの心の整理がつくまで待ちます!と添えられてあった。ゆみさんもさゆと同じように心優しい女性なんだなと感じた。さゆが抜けた心の傷は大きすぎて、自分一人では埋められる自信はなかった。ぼくはすがるようにゆみさんの誠意に応えた。
今、ぼくは軽井沢で結婚式をあげている。さゆの実家であるホテルで。
そして、相手はさゆの妹ゆみさん。
ウエディングドレス姿のゆみさんは、まるでさゆのよう。一瞬、さゆと結婚式をあげているかのように錯覚するほど。しかし、さゆとの夢であった「幻のウエディング」はできなかった。急に、さゆに申し訳ない気持ちになる。いや、きっと、優しいさゆなら、ぼくと妹のゆみさんが結婚することを喜んでいるはず。
ぼくは「さゆ」と「ゆみ」の二人を愛した。でも、なんか「さゆみ」という一人の女性を愛しているような気分になる。そう、二人で一人なんだ。
ぼくは「さゆ」への愛を一生貫き通したかった。でも、それが叶わず、「ゆみ」と結婚して二人で年老いていくことだろう。でも、双子のゆみさんと結ばれることで、ぼくの一生は「さゆ」への愛を貫き通すことになるのだと確信している。
おしまい