渋谷道劇の六花ましろさんの三周年作「東京ジャングル」を記念して、観劇レポートします。

 

 

H26年8月末の30(土)、31(日)と大阪に遠征。一日目を東洋で、二日目に晃生に向かう。

一日目の東洋で、渚あおいさん(東洋)から「晃生にも行くんでしょ! 太郎さんのお気に入りがたくさん居るもんね。」と笑顔で送り出された(笑)。気心の知っている踊り子さんとはやりやすいねぇ~。というか、晃生出演中の伊吹千夏さんが毎日ホームの東洋から通っているわけだから情報ツーツーだもんね。正直に動きます。(笑)

さて、その週の晃生の香盤は次の通り。①萌(晃生)、②かすみ玲(フリー)、③心愛(東寺)、④六花ましろ(道劇) 、⑤伊吹千夏(東洋)〔敬称略〕。実際にお気に入りばかり。

 

 

六花ましろさんは三周年作「東京ジャングル」を披露していた。私は既に渋谷道劇とTSでこの作品は拝見しているが、今回じっくり味わってみたいとステージに臨んだ。

初めて観たときの第一印象は「やけにゴージャスな衣装だなぁ~」。金キラキン☆

丈の短い長袖の上着は眩しいばかりのゴールド色。前を広げているので、金銀混ざった模様の胸元が見える。お腹まわりを黒い布で締め、下のスカート部は腰回りの金色布地を根元にして白・黒・黄色の布が膝上まで羽根状に流れる。素足に膝上まで黒い網タイツ、そして銀のハイヒールを履く。髪は白と金のリボンで縛る。激しく踊る。

次は、露出部分が多く、全体的に黒っぽい衣装で、先ほどよりは質素になる。上半身は裸で乳房が見える。首輪から金銀の糸が二つの乳房の谷間に流れ、腹周りの黒いコルセットに繋がる。黒いパンティ・ガータ・黒い網タイツと繋がる。左手に長い黒手袋。髪はほどいて垂らす。

ピンクの椅子に絡み、軽快に踊る。そして、ベッドへ。

 

衣装が煌びやかなのは見れば分かるが、何を意味しているのか分からなかった。

私は、ましろさんに演目名を尋ねた。「東京ジャングル」との返答。

えっ!? 東京砂漠とは言うが、東京ジャングルとは初めて聞く。すごく新鮮な響きと意味深な印象をもった。私は頭の中で東京ジャングルを反芻した。

砂漠よりはジャングルの方がいいね。今年の夏も異常に暑かった。しかもゲリラ豪雨と、まるでスコールのある熱帯雨林気候みたいだ。いま地球環境問題が取り沙汰されているが、今の地球は残った数少ないジャングルで環境が保たれている。コンクリートの街・東京が緑の多い東京ジャングルになればいいね。でも現実は無理か。

人の心だけでも砂漠ではなくジャングルでいたいものだ。

そういえば、ストリップこそ我々男性に心の潤いを与えてくれる。仕事と家庭の狭間で乾ききった心に元気のエネルギーを補充してくれる。最近、パイパン大会が大盛況だが、砂漠よりジャングルがいい!? それは別か(笑)

物理的にコンクリートをジャングルにはできないけれど、せめて心はネバーランドを楽しみたいな。そういえば、ましろさんの出し物「ネバーランド」の記憶が新しい。

そんなことを考えていたら、あのゴージャスな衣装がピーターパンの衣装と重なった。緑が金キラキンに変わっただけ!?

童話「ピーターパンが泣いている」のストーリーが頭の中を流れ出した。

私はポラのときに、今回の「東京ジャングル」を童話にはしてみるね!とましろさんに話す。すると彼女から「すぐに書いて―!早く早く、いま晃生のラウンジで書いてみてー!」と急かされ驚く。ましろさんが私に何かを期待しているのを察する。単に作品の童話化だけでなく、他の何かを。おそらく今回の作品に込めた彼女の意図がなかなか客に伝わっていないもどかしさを感じているのではないか、とふと思った。私がこの作品にどういうことを感じるかを早く確かめたいのだろう。今回の晃生では応援している踊り子さんが多いので、席を外して晃生のラウンジで書くわけにはいかず、次回会うときの楽しみにとっておく。ただ童話の題名「ピーターパンが泣いている」は晃生で告げた。

さて、期待通りの内容かどうか、ましろさんに渡すのが楽しみである。

 

 

平成26年8月                            大阪晃生にて    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                               H26.8

『ピーターパンが泣いている』 

~六花ましろさん(道劇所属)の三周年作「東京ジャングル」を記念して~

 

 

 

 神様がネバーランドの住人であるピーターパンを呼びつけて命じた。「東京を視察して来い!」と。

 最近の東京は、異常気象に見舞われていた。40°近い猛暑、そしてゲリラ豪雨。これは熱帯雨林の暑さとスコールによく似ていた。しかし、東京は緑のジャングルとは対照的な灰色のコンクリートの街。一体どうなっているのか調べて来い!というのが神様の指示だった。

 

 神様は片目をつぶって「東京のネオン街は煌びやからしいぞ」と言って、ピーターパンに金キラキンの派手な衣装を与えた。遊んできてもいいよという神様の粋な計らいなのだろう。しかしピーターパンはいつもの緑の衣装がいいなぁと思うが、黙って神様の計らいを受け取った。

 

 ピーターパンはすぐに東京に向かった。

 東京の夏は異常に暑かった。特にビル街はアスファルト舗道の照り返し、それにビルからのクーラー排熱でむせ返る状態。おそらく人間の体温を超える40°くらいある。道路のアスファルトがふわっとして蕩ける感じだから、人間はみな身体が溶けてしまうほどの暑さを感じているはず。だから、日中のビル街には人の気配を感じない。みんなビルの中に潜んでいるのだろう。

 夕方、日が落ちて暑さが和らいできて初めて、人がビルからぞろぞろ出てくる。ネオン街の明かりが灯りだすと、突然、人が溢れだす。ここは不思議な街だ。

 緑なんか全然ない。コンクリートとネオンばかりの空間。こんなところは人の住む環境じゃないな。特に子供が遊ぶところがないではないか・・・

 ピーターパンは子供の姿を探した。やけに子供の数が少ない。少子化というが、子供が少ないということは未来がない!ということだ。

 更にピーターパンは子供の姿に愕然とした。みんな目が死んでいるのだ。みんな俯(うつむ)き加減に下を向いている。

勉強する子供たちは受験地獄の中にいた。ひたすら規格通りの知識を押し込まれていた。これでは夢を語るどころではない。夢が無くなれば人類の発展は無くなる。

 また、勉強しない子はひたすらスマホのゲームに高じている。友達と遊び回るなんて無い。ひどいのは、歩きながらゲームに夢中になり、人とぶつかっても平気で歩いている。

 ピーターパンは泣き出した。「東京の子供たちが可哀そうだ。ここにはファンタジーを語る潤いがない。我々が住むネバーラントとは対照的だ。東京はジャングルどころか砂漠だ。人間が住むところではない。」

 酷暑とゲリラ豪雨という異常気象は東京への最後通牒のように感じられた。

 

 ピーターパンはショックを抱えながら、ネオン街を彷徨った。

 ふと、ストリップ劇場の看板が目につき、ふらりと中に入った。

 そこは音と光の中で絶世の美女が舞い踊っていた。踊り子が発するエネルギー。活き活きとした汗が飛び散る。拍手が渦巻き、観客の瞳が輝いていた。ピーターパンはそこに人間が生きている熱気を覚えた。

 踊り子の一人、六花ましろさんが演目「ネバーランド」を演じていた。愛らしいましろさんの表情。ピーターパンは自分のことを演じてくれていることを微笑ましく見つめた。続く演目「東京ジャングル」に変わったとき、今度は神妙な気分になった。

 

 ふと、劇場の隅の客席で、せっせとペンを走らせる青年がいた。彼は踊り子のステージを観ながら物語を書いていた。ピーターパンは気になって彼に声をかけた。

 彼はピーターパンの顔を見て最初びっくりした様子。すぐにファンタジー界の大スターを目の前にして大喜び。彼は夢中で語り出した。ピーターパンは彼がストリップをエネルギーにして数々のファンタジーの世界を描いていることを知った。そして、今回の六花ましろさんの演目「ネバーランド」と「東京ジャングル」について熱く語り始めた。

 ようやくピーターパンの顔に笑顔が戻った。

「ここに東京ジャングルの種が落ちている」・・・

 

 

                                    おしまい