今回は、ゆきなさん(ロック所属)における、H30年8月頭の大阪東洋ショー劇場の公演模様について、演目「千と千尋」を語りたい。

 

 

H30年8月頭の大阪東洋ショー劇場に中日から顔を出す。

今週の香盤は次の通り。①ゆきな(東洋)、②前田のの(ロック)、③春野いちじく(TS)、④白鳥すず(東洋)、⑤みおり舞(ロック) 〔敬称略〕。

 

ゆきなさんは四度目の東洋公演になる。前回の2018年3月結から少し間をおいて約四か月ぶりの出演になる。今やすっかり東洋の人気者である。

今回の演目は言うまでもなく映画「千と千尋の神隠し」をモチーフにしている。2001年7月公開時に、叔母が先導役になって私の子供達と親戚の子供達を連れて一緒に映画館に行った思い出がある。今から17年も前のことなんだね。未だに日本映画史上最高の興行収入という名作中の名作である。

今回ゆきなさんの演目に触れ、その晩すぐに映画を再び観た。一度観てはいたものの情けないことに断片しか記憶になく、初めて観る気分になった。いい映画は一度観た切りというのはダメだね。何度も観ないと本当の味わいは分からないね。最近つくづくそう思う。だから、最近は映画をモチーフにした演目があれば必ずその映画を鑑賞するようにしている。そうしないといい観劇レポートは書けないからね。ゆきなさんのお陰で今回いい機会を得られたと感謝しているよ。

 

最初にステージを観て、それから映画を観て、そしてもう一度ステージを拝見する。そうすると、たくさんのことが見えてくるので面白い。漸くステージを味わえる資格を得られた気分になる。

本映画は、千尋という名の10歳の少女が、引っ越し先へ向かう途中に立ち入ったトンネルから、神々の世界へ迷い込んでしまう物語。千尋の両親は掟を破ったことで魔女の湯婆婆によって豚に変えられてしまう。千尋は、湯婆婆の経営する湯屋で働きながら、両親とともに人間の世界へ帰るために奮闘する。

 

さっそくステージの内容を紹介しよう。

最初に、舞台の上に大きな「ゆ」と書いた紫の湯暖簾(ゆのれん)が天井から垂れ下がる。一目でこの作品が「千と千尋の神隠し」がモチーフと分かった。なぜなら「ゆ」こそがこの映画のキーワードであると私自身が感じていたからだ。舞台構成として最高の演出だと思うよ。

合わせて、映画の主題歌「いつも何度でも」(覚和歌子作詞、作曲・歌はソプラノ歌手の木村弓)が流れる。この曲は50万枚以上売り上げたヒット曲なので、この曲を聴いたらすぐに映画「千と千尋の神隠し」と分かるね。

「今からお前のことを千と呼ぶ。分かったら返事をするんだ!」という湯婆婆のナレーションが流れる。

音楽は映画のサントラ曲に変わる。

そして映画と同じ、湯屋の赤い衣装で黒いたすき掛けをした千(千尋、10歳)が登場。靴を片付けたり、雑巾がけで床掃除をする。辛い仕事のためか泣きながら大きなおにぎりを頬張る。映画の中で千尋がハクから「千尋を元気にする御まじないをかけたおにぎり」をもらい涙しながら食べる場面を思い出す。

一旦、暗転。

激しい雨の音。「あ、そこ濡れませんか。ここ開けておきますね。」妖怪カオナシとの出会いの場面の音響が流れる。カオナシが発するか細い声「アー、アー、アー」。

次に、ハク(12歳)の格好で登場。ハクは湯婆婆の弟子であり、また番頭として湯屋の帳場を預かってもいる。ステージでは白装束の出で立ち。半振袖の付いている白い上着を紫の帯で締める。襟と袖のところは青い。下半身は青い半ズボンで裸足。

音楽は映画のサントラ曲が続く。

表が青く、裏が白い扇子を両手に持って、舞い踊る。

映画では、ハクは最初から千尋の力になり、千尋はハクを慕うようになる。ハクは昔から千尋のことを知っていた。話が進むにつれ、ハクの正体は千尋が小さい頃に家の近くで遊んだ「コハク川」という川の神であることが分かる。映画の中盤以降は、ハクは傷を負った白龍の姿に変身し、千尋はハクの傷を癒そうとする。

一旦、暗転。

音楽は映画のイメージソング『白い龍』(歌手:RIKKI 作詞:宮崎駿 作曲:久石譲)に変わる。

ここで、上半身は裸、下半身に白と緑の布を巻いて裸足で登場。右手にも同じ布の手かせを付ける。

長い長い蔓状のポイを引きずる。同じく白と緑の色をしている。これは白龍をイメージしている。

音楽が中島みゆきの『銀の龍の背に乗って』に変わる。

そのまま、ベッドショーへ。

近くでアクセサリーを目で追う。首には白い数珠がたくさん垂れた首輪をする。左手首にガラスのブレスレットを二本。銀のマニキュアがキラキラ。

 

この映画の舞台は、まさしく日本の庶民文化である湯治場「湯」と日本古来の信仰「八百万の神々」を絡ませた日本独特な物語になっている。

日本は火山国なので、キレイな山々があり、キレイな河川があり、そしてたくさんの温泉場がある。また日本人は山にも川にも全てのところに神々が存するという「八百万の神」信仰を持つ。この物語にはこうした背景がある。だから、映画にオクサレ様やハクのような河の神が登場する。川を汚すことは神を穢すことでもあることを痛切に風刺している。

西欧のシャワー文化と違い、湯船につかる日本のお風呂「お湯の文化」は、単に身体を洗うだけでなく心をも癒す=リラックスさせる効用がある。要するに‘心も洗う’。

日本の性風俗にソープランドがあり多くの男性に愛されるのは、お風呂の文化であるからだ。ストリップも相通じるところがある。一週間の仕事の疲れを休日に行くストリップで癒しているスト客は多い。まさに‘心を洗う’気分なんだな。

私は毎日ストリップを観ているから、心は洗われていつもキレイだよ(笑)。

 

 

平成30年8月                          大阪東洋ショーにて

 

 

【ゆきなさんからのコメント】

レポートうれしかった!!! まさか映画観てくれたとは! 映画観るとまた全然違うよね!!!

 

 

 

 

 

 

ストリップ童話『踊り子になった千尋』 

~ゆきなさん(ロック所属)の演目「千と千尋」を記念して~

 

 

 

不思議な町に迷い込んだ。まるで神隠しにあったみたいだ。

町の繁華街はあるものの、人の気配はない。ところが、美味しい匂いがしてきて、その匂いの先を探したら食べ物が軒先に置いてある。ついつい手を出して食べてしまった。美味しいので食べ過ぎたら、まるで豚になった感覚に襲われた。お腹を満たしてから少し歩き始めた。

街はずれに古い大きなストリップ劇場があったので入場してみた。

まだ日中なので客はいない。カエルの格好をした男子従業員がかいがいしく応対してくれた。「開演までかなりお時間がありますので、場内のソファーにでも座って、ゆっくり休んでいて下さい。」

場内を見回してみる。昔ながらの古い大きな建物だ。ナメクジの格好をした女子従業員がせっせと場内を清掃していた。経営者らしいママさんが、従業員たちがしっかり働いているかを監視するような目つきをさせて、厳つい顔で椅子にふんぞり返っていた。銭婆と呼ばれていた。きっとお金に執着しているんだろうなぁ。彼女の口癖は「ここでは働かないと生きていけないんだ!」。

 

夕方になり陽が落ちかけた頃に、大きなバスが劇場の前に到着した。たくさんのお客を乗せていた。お客はぞろぞろと劇場の中に入っていく。

立派な服装をしている紳士もいたが、泥だらけの破れかけた服を着た、いかにも臭そうな感じの人もいた。みんなおじいちゃんばかりだ。

彼らが入場して、すぐにストリップは開演した。

 

最初に、千とリンという若い踊り子が登場し、慣れないながらも精一杯のステージをこなした。彼女たちはまだデビューまもない踊り子だった。

おじいちゃんたちは、にたーと顔の表情を緩め、目尻と鼻の下を伸ばして、彼女たちのステージを眺めていた。彼女たちが近づいてきて精一杯のオープンショーをやると「あー、あー、あー」とため息をつく。長生きするでよぉ~♪

彼らの顔は孫娘を可愛がる好々爺(こうこうや)の表情をしていた。みんな同じ顔をしていたので、顔があって顔がない感じ。誰もがサービスしてくれた女の子にチップを渡していた。

ひとりの老人が幼い千に向かって呟いた。「おまえも神隠しにあって、ここへやってきたのか。まだ年端もいかねぇいのによく頑張っているな。感心だべ。ここでは働かないと生きていけねぇからね、頑張るんだぞ。おれたち老人にとっちゃ、おめぇたち若い女子(おなご)の裸は元気の素じゃ。ありがたやーありがたやー」そう言って、千に千円のチップをくれた。実際、千は神隠しにあった子で、元の名前を千尋と言った。銭婆がストリップ劇場で働くにあたって彼女の名前を「千」にしたのだった。

千はその老人にかいがいしく御礼を言って、舞台を降りた。

千とリンの後はベテランの踊り子たちが味の或るステージを務め、しっかり締めた。

おじいちゃんたちは満足気な顔で、またバスに乗って帰っていった。

 

私は近くに宿をとって、翌日もその劇場に行った。

その日も、おじいちゃんたち一行がバスでやってきた。おじいちゃんたちは毎日この劇場に通っているようだった。

さて、老人ばかりのお客の中に、ひとりの若者がいた。貴族のような恰好をした白面の美少年。彼の名前はハクといい、ここの劇場の常連らしい。

彼のお目当ては若い千のようだった。そういう千もハクに気があるのだろう。千はオープンショーでハクの前に来ると、恥ずかしそうに両足を閉じて見せれなくなった。そんな千の姿をハクは微笑ましく眺めていた。

千はステージを楽しいと思ったが、自分がどういうステージを演ずればいいのか分からなかった。踊りもまだ不十分。未だに自信がもてず心が折れそうになっていた。しかし、この世界では働かなくては生きていけない。踊り子を辞めることは死を意味する。ハクはそんな千のことを懸命に支えた。

 

千はお絵描きの大好きな女の子。ハクはそれを知ってから、ポラタイムでいつも白紙(ハクシ)の紙を渡した。すると千は次の回までにかわいい絵を描いてきた。愛と夢にあふれたファンタジックな千の絵が、ハクは大好きだった。千は成長するにつれ、その絵の中に描かれたお姫様のようになっていった。

ハクは知っていた。絵というのは、その人の熱い想いであり、そして願いは叶うことを。千が演ずべきステージはもともと千の心にあったのだ。絵によってそれが具現化した。

千はますます絵に夢中になった。その絵をハクは大切に保管しファイルに整理した。

いつしか、その絵のファイルは千の成長記録になっていた。

 

ある日、千の絵に、ハクとの結婚式の絵が描かれていた。それを見たハクは、迷わず千にプロポーズした。

私は千とハクの結婚式に友人として参列した。いつしか私もストリップ劇場の常連になり、千とハクと仲良くなっていたのだ。そして私は、二人の結婚式を機に元の世界に戻ることになる。ハクは私との送別記念にこれまでの絵のファイルを私にくれた。

千はハクと結婚することで、神隠しのまま、この不思議の町に残ることにした。

千の絵はその後も続いているようだ。

 

                                   おしまい

 

 

 

 

『千尋がやってきた ―うさかめver―』  

~ゆきなさん(ロック所属)の演目「千と千尋」を記念して~

 

 

ある日のこと、10歳くらいの女の子が一人で森のストリップ劇場にやってきました。一緒に連れそっている両親も見当たりません。彼女は一人で森の中を彷徨って来たのでしょうか。

 ところが、彼女は迷子になったと騒ぐわけでもなく、ただ一言「ここで働きたい」と言うだけでした。劇場関係者はどうしていいものか悩みました。

 カメさんはピンときました。人間界で、10歳の少女が森の中で突然姿をくらましたと報道されていました。その子の名前は千尋と言いました。彼女はその千尋ではないかと感じたのでした。

 しかし、彼女は自分の名前を憶えていませんでした。ただ「ここで働きたい」と言うだけ。カメさんは、この子は神隠しにあったのだと考えました。

 劇場としては、放り出すわけにもいかず、とりあえず雇うことにしました。名前がないと困るので、とりあえず「千」と呼ぶことにしました。

 

 千は初めてストリップを観て、目が生き生きしてきました。

 うさぎちゃんやバンビちゃんが超―かわいい♡ それに何ともいえないエロスに身体の奥からジュウと湧き出るものを感じました。「私もステージに上がりたい!」

 千は必死で劇場関係者にお願いしました。最初は、まだ若すぎるからと渋っていましたが、彼女の熱意に負けました。うさぎちゃんやカメさんも後押ししました。こうして、千はストリッパーとしてデビューすることになりました。

 

 千がデビューして不思議なことが起こりました。

 森の精霊たちがお客で現れるのです。

 最初に、たくさんのカエルがぞろぞろとやってきて、ゲロゲロと騒ぎました。ポラタイムが来ると「カエル、カエル」と騒ぎます。うさぎちゃんたちはカエルポーズを嫌がりました。ところが、千は平気でした。お客さんが喜んでくれるならと、どんなポーズでもこなしました。お陰で、千はたくさんのチップをもらいました。

 時に、オクサレ様と言われる物凄く臭い客がやってきました。うさぎちゃんたちはあまりの臭さに近づこうとしません。しかし、千は一切臭いを気にしませんでした。千が近づくと、オクサレ様はにたぁーと笑って、沢山のチップをくれました。

客の中に、カオナシと呼ばれる者がいました。黒い影に白い仮面を付けているので、表情や感情が全く読み取れません。しかも「あー」とか「えー」としか言葉を発しません。うさぎちゃんたちは気持ち悪いと近づきません。ところが千はお客を姿格好で差別したりしません。またカオナシも、千のことが気に入っているのは分かります。千が近づいてくると、手からチップを差し出すのです。

最後に、赤い腹掛けをした巨大な赤ん坊がやってきた。「坊」と言う。彼には、緑色した三体の中年男の顔「頭(かしら)」と、顔は湯婆婆で身体はカラスという鳥「湯バード」を家来として引き連れていました。そして千に向かって「坊の言う通りにしないと、ばーばに言いつけてやるぞ」とか「おまえなんか、ひとひねりだ」とか生意気な口をききました。これに対しても、千は一切感情的にならずに、赤ん坊をなだめすかすように対応しました。すると坊は「これは湯婆婆の姉の銭婆からもらった小遣いだ」と言ってチップをくれました。

他にも、蜘蛛のような格好で六本の手足を持つ釜爺と真っ黒なススワタリ、白狐のリンなどが来て、千を応援しました。釜爺は黒焼けのイモリを差し入れしてくれました。千はこのイモリが大好物です。

 こうして、千はたくさんのチップを貯めることができました。

 

 ある日、一人の白面の美青年が現れました。名前をハクと言いました。彼は昔の貴族のような白い衣装を纏っていました。彼は優しい微笑みを浮かべて、千に向かって言いました。

「私は森の精霊たちを監視する陰陽師です。精霊には、いい精霊と悪い精霊がいます。彼らは神隠しに遭った千のことを詮索するために森のストリップ劇場にやってきています。千の対応次第では憑りついてやろうという魂胆でした。ところが、精霊の誰もが千の優しさ・素直さに感心しています。あなたのことを神隠しから解放することに精霊の誰も反対しません。

あなたはもう自由の身です。あなたは本来、荻野千尋という名前です。元の世界に戻りませんか?」

千はきっぱり言いました。「ストリップは私の生きる道です。もう人間の世界に戻る気はありません。ここで森の精霊たちと一緒にストリップを楽しみたいと思います。」

それを聞いていたカメさんやうさぎちゃんたちは一斉に拍手をしました。

 

その後、ハクは千のリボンさんになり、いつまでも千を支えたと言います。

ひとつ、千はハクが握った白いおにぎりが大好物であることを付け加えておきますね。

 

めでたしめでたし