ロックの踊り子・中条彩乃さんについて、2020年7月中の大阪東洋ショー劇場での公演模様を、演目「君と花火」を題材に、「人生をいかに表現するか」という題名で語ります。
2020年7月中の大阪東洋ショー劇場で、七日目に新作「君と花火」が初出しされた。
「新作は夏の演目です。いつも7月、8月って浅草にのるので、自分の演目できないんだけど、今年は9月にズレたので!! 作るしかない!と思って!(笑)」「初出しドキドキー。いつになっても初めてのことって緊張するね。夏演目は『雨と太陽』ぶり!! 楽しむぞーう」
なんと中条彩乃さんのソロ作品としては15作品目になるんだね。この他にチーム作品として二つある。三年目にしてはずいぶん頑張ってきたよね。私としては殆どの作品をレポートしてきたつもりだったが、ここにきて最新作二つ「アボ恋~彼はアボガドアレルギー~」「素晴らしい旅」をレポートしていないことを再確認できたので、是非ともこの二作品を拝見してレポートさせてもらいたいと思ったよ。
今回お手紙で、過去の作品リストを書いて頂き、それを眺めながら思ったことを最後に述べたいと思います。
まずは、さっそく演目「君と花火」のステージ模様を私なりにご紹介させてもらいます。
ちなみに「この『君と花火』はみおり舞姐さん振付です」とのこと。最初のダンスのステップと、ベッドでの手振りがとても斬新だなと感じていたので、みおり舞さんの振付と聞いて納得しました。
また、選曲ですが、彩乃さんのこれまでの定番とも言えるAimer(エメ)が鳴りを潜め、今回はAimer以外の新しいミュージシャンがたくさん登場しているね。夏に相応しい曲を集めた中では、本タイトルに一番近いのはandrop『Hanabi』なのかな。他の曲が女性ボーカルで明るい曲調なのに、一曲だけ男性ボーカルで切ないソングになっている。お陰でぐっと心に沁みてくる。
総論はともあれ、具体的な内容は次のとおり。
最初に、ピンクの浴衣姿で登場。頭の右側に、薄い水色と黄色の大きな花飾りを付ける。
ピンクの帯を巻き、帯の後ろには黄色のリボン。その帯の後ろに団扇を挟んでいる。
茶色い下駄を履き、音楽に合わせ踊る。
一曲目は、めありーの「或るひと夏の追憶」。めありーによる、作曲者Orangestarの作品だけをカバーしたアルバム『彼はきっと魔法を使う。』に収録。童話のような曲だ。ハスキーだが芯のある声と、人間離れした高音が持ち味。
(歌いだし)♪「あぁ やっと目が覚めたかい君 あぁ 違うな むしろどっちが夢だか」
めありーは、ニコニコ動画などを中心に歌い手として活動中。自身のマスコットキャラクター「めあうさ」でイラストやグッズも作っている。 ⇒この「めあうさ」のイラストを見たよー、なかなかかわいいぞ♡
二曲目は、あいみょんの「真夏の夜の匂いがする」。あいみょんのメジャー8枚目のシングル。2019年7月24日に発売。作詞・作曲: あいみょん。本作は、石原さとみが主演を務めるTBS系火曜ドラマ『Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜』の主題歌として書き下ろされた。
(歌いだし)♪「真夏の夜の匂いがする 絵の具のソレと同じ香り さまざまな色恋も踊り出す 今夜は私もその一人?」
あいみょん(1995年3月6日– 現在25歳)は、日本のシンガーソングライター、作曲家、作詞家。兵庫県西宮市生まれ。5thシングル「マリーゴールド」でブレイク。
裾をめくったり面白い振付け。ここでのステップがいい。また帯に挟んでいた団扇を取り出して、振りながら踊る。
三曲目は、"東京系"アイドル・ユニット CY8ER(読み:サイバー)の「サマー」。
(歌いだし)♪「「いつか届くよう衝動ずっと抱いていたいよ. 心臓のヒビを愛撫しているような No no no. もし君がいない夜に慣れても. 世界中振動させてどうかーー. サマー、 君はもう帰れよ 呂律も回ってないみたいだよ. 小さな鼻は粉まみれの ...」
CY8ERは、"世界を騒がすガチマジアイドル"をコンセプトとする、苺りなはむ、小犬丸ぽち、ましろ、病夢やみい、藤城アンナからなる5人組アイドル・ユニット。新たなカルチャーを作り出すことを目指してオリジナル・メンバーの苺りなはむがプロデュースと所属事務所代表を務める。
ここで、帯を解いて徐々に着物を脱いでいく。下には赤いビキニ。袖のところで、全裸になる。
音楽が終わり、ここで一旦暗転し、着替える。
盆の上からスタート。
衣装は、首の後ろで結んだ肩紐で、胸から下を吊るしたベビードール。薄いふわふわの生地で、白・黄緑・紫が混ざる色彩。肩紐と胸元はショッキング・イエロー。スカートの裾はブルー。音楽に合わせ、裸足でベッドショーへ。ここでの手振りがユニーク。
右太ももに脱いだ黄色のパンティを巻く。ヘアがこんにちは。
ベッド曲は、andropの「Hanabi」。しっとりとした切ないソング。作詞作曲:Takahito Uchisawa(内澤崇仁)。
(歌いだし)♪「花火 みたいに綺麗な君を見つけたよ 素敵なんだまるで触れたらはじけて 消えてしまいそうで隣に居たいと思うんだよ 夜明けまで繋いだ話も 好きも嫌いも全部知りたかった晴れの ...」
andropと聞いて、あっ!と思った。最近観た邦画の中でお気に入りが、俳優・高橋一生×女優・川口春奈のW主演映画『九月の恋と出会うまで』で、その主題歌 「Koi」を歌っていたのがandropだった。この映画で改めて高橋一生はいい役者だなあと思った次第。
androp(アンドロップ)は、日本の4人組ロックバンド。2008年にボーカル・ギターの内澤崇仁を中心に結成し、2011年にメジャーデビュー。内澤がandropのほとんどの楽曲の作詞・作曲・編曲を手掛ける。2014年には内澤が目標としていた国立代々木競技場第一体育館公演を行い、1万人を動員した。バンド名は英単語の「and」と「drop」を組み合わせた造語。内澤はインタビューで「自分たちの音楽が、聴く人にとって生活の中で寄り添うような音楽であってほしいと思っていたので、寄り添うという意味で〈and〉を入れました。そして、感情的な物を入れたいなという気持ちもあったので、喜怒哀楽を意味するもので、涙は形の無いものだけど、どの感情でも出てくるものだと思ったので、〈and〉と付随するものだと思い〈drop〉にしました。造語って意味の無いものだと思うのですが、あえて意味の無いものにしたかったんです」と語っており、また意味のない造語にした理由については、音楽活動を通して「androp」という言葉に意味を持たせていくことを挙げている。
立ち上がり曲は、Shiggy Jr.の「サマータイムラブ」。ノリノリで締める。「サマータイムラブ」は、Shiggy Jr.の1枚目のシングル。2015年6月24日に発売された。作詞作曲:原田茂幸.:原田茂幸。ハウステンボスの「水と冒険の王国」CMソングに起用された。
(歌いだし)♪「サマータイムラブ1時間だけ長く側にいられる神様 この季節がいつまでも続きますように 何でも打ち明けられる 大切な友達たった一つの気持が どうしても言えないよ いつだってあの子の話ばかりそれでも構わない ...」
Shiggy Jr.(シギージュニア)は、日本のバンド。2012年結成、2015年メジャーデビュー。メンバーは、ボーカルの池田智子。ギター担当及びリーダーの原田茂幸。原田がすべての楽曲を作成している。二人は同じ青山学院大学卒。ベースの森夏彦とドラムの諸石和馬は一歳年下で二人とも早稲田大学卒。池田が2018年の夏頃、喉に声帯結節の症状があると診断されたことから2019年6月5日に解散を発表。なお、原田、森、諸石の3名は解散後の2020年1月から Weekend Brothers で活動中。
最後に、私自身のことを話すので、笑って聞き流してほしいと思います。
私ももう60歳を過ぎてしまって自分の人生をやり直せない年齢になってしまいましたが、今更ながらに自分の人生を振り返って思うのが、「本当は自分は何をやりたかったのか? 何になりたかったのか?」ということです。
一流の大学を出て、一流の会社に入って、平凡なサラリーマン人生を送ってはきましたが、本当の自分はサラリーマンではなくアーティスト(表現者)だったと思うんです。では何をもって自己表現するか。手段は文章や絵や歌など色々ありますね。これまでの人生の後半30年は文章で自己表現しようと試みてきました。エッセイや童話などを書いてきましたが、最近ようやく小説も書き始めました。今回、私の処女小説をお渡ししたところです。
しかし、本当にやりたい表現は歌ではなかったのか、と感じています。本当になりたかったのはシンガーソングライターです。このことは映画「時をかける少女」で有名な女優の原田知世さんが歌手になっていることに触発されて書いた中編童話「時をかけるおじさん」で述べました。前にお渡ししたと思います。しかし、私の場合は小学二年生のとき怪我で左手が不自由になってしまい、ギターなどの楽器が扱えなかったので音楽の道は自然と諦めました。
ただ歌が好きなので大学時代からカラオケにはまりました。歌で自己表現できれば最高だと感じます。昨年、還暦祝いで田舎に帰ったときに、45年ぶりに会った同窓生たちの前でカラオケを披露し、私が歌い出した瞬間、場内が静まり返り盛大な拍手を受けました。思えば今までの人生、カラオケが私の人生を豊かなものにしてくれました。
あまり取り柄のない私ですが、自分の長所と思えるのは好きなことを続けられることです。継続は力です。今は毎日、文章を書き続けています。だから、たくさんの書き物が残されました。内容の良し悪しは別にして。だから、歌が好きなら、毎日歌を書き続け、歌い続けることも可能だったと思います。作った歌の出来が悪かろうが、人に認められなくても、自分の表現物として残せたと思うんです。
私がシンガーソングライターを目指したなら、目標とするのは大学の先輩でもあるオフコースの小田和正さんやチューリップの財津和夫さんだったと思います。学生時代ずっと憧れてました。今回の彩乃さんの作品を通じて、andropの内澤崇仁さんが青森県八戸市出身であることを知りました。私の出身の秋田からは高橋優さんもいます。こうした同じ東北人が作った音楽を聴いていると、自分と共通した土壌を感じます。音楽を志していたら彼らみたいになれたかなとふと思います。思うのは勝手ですからね(笑)。でも「何事も思うことから始まります。だから、まず思うことがとっても大事なんだ」と私はいつも思っています。
なにかを表現するには長く培ったものがないといけません。知識や経験、人生観などを持つには時間がかかります。若き天才たちとは別ですから、私の場合は文章で自己表現し始めたのは30代からです。結婚し子供ができて初めて童話に目が行きました。目標としたいのは同じ東北人である宮沢賢治でした。彼のように素晴らしい作品を書けるわけではありませんが、毎日こつこつ書いていると、自分の思うことをなにかしら表現できるようになりました。好きなストリップを観ていると勝手に物語が浮かんできます。それを瞬時に紙に落とすことができるようになります。何事も思うことと続けることが大切なんですね。
彩乃さんのように20代で、ステージで自己表現するのは凄いことだと思います。まさにこれまでの知識や経験、人生観などをテーマに、音楽を材料にして舞台を構成していきます。ふだん聴いている全ての音楽がステージに活かされてきます。音楽を聴くたびに「この曲、ステージに使えないかしら」と思うはずです。それが踊り子という表現者の本質です。
私も踊り子さんも、同じ表現者として、表現する楽しさと苦しみを知っているのだと思います。
中条彩乃としてのソロ作品15とチーム作品2を眺めてみると、中条彩乃そのものを感じます。もともと持っている感性・魅力、作品を作るためにもがいた必死さと、そして成長の跡を感じます。全てが中条彩乃です。それが自分であり、いや自分以上に自分であります。表現されたものはそういう意味を持ちます。
今回、改めて作品リストを見せて頂き、「意外とたくさんあるでしょ!!! これからもどんどん作っていくよ!」と言う彩乃さんに多くの元気と勇気をもらいました。同じ表現者として、これからも応援させて頂きます。
最後に。
タイトル「君と花火」と聞いて、彩乃さんにどんな花火の思い出があるのかなとつい思いを馳せます。今年の夏はコロナのせいで多くの花火大会が中止になると聞きます。そんな中、大好きな踊り子さんの舞台で花火を味わえることはストリップファンとして嬉しい限りです。
花火といえば儚さの美学。花火のごとく踊り子にとってストリップ人生は短い。だからこそステージの上では華やいでいてほしい。そうした人生の哀歓苦楽を好きな踊り子とともに味わえることこそがストリップファン冥利に尽きるのだと思います。
2020年7月 大阪東洋ショーに5