中条彩乃さん(ロック所属)の、2019年5月結のDX歌舞伎における公演模様を、9作目「愛と憎」を題材に、「ストリップ愛とは」という題名で語りたい。

 

 

2019年5月結のDX歌舞伎に、初日から顔を出す。

今週の香盤は次の通り。①北川れん(道劇)、②ちるちる☆いちる(TS)、③青山ゆい(東洋)、④空まこと(ロック)、⑤木葉ちひろ(ロック)、⑥中条彩乃(ロック)、⑦羽多野しずく(ロック)、⑧桜庭うれあ(ロック)〔敬称略〕。特別興行にふさわしい豪華なメンバーである。

DX歌舞伎が6月末に閉館するため特別興行が先週から続いている。八人香盤なので三回公演。入場料金が8000円(早朝6000円)と高い。しかも全員のポラが1000円均一。普段に比べずいぶん割高なせいか、初日・二日目と客入りが悪かった。

 

さて、今週は中条さんの新作が観れると思ってやってきた。そうそう、つい先日、東洋のラウンジで、むーさんが「ぱふぱふにゃーにゃー」と言って私をからかってきた。私が「何をやっているんですか?」と言ったら「あらっ! 中条の新作を知らないのー!?」と言われる。そのときから新作は「ぱふぱふにゃーにゃー」と信じて疑わなかった。そこで今回の新作を拝見したとき、どこから「ぱふぱふにゃーにゃー」が登場するのかなぁ~と不思議に思いながら眺めていたところ・・・。これは違うと気づくのに時間はかからなかったが。笑 「8作目『放課後』は今週出しません。」こちらは次回に期待しよう。

 

今週は新作「愛と憎」の一個出し。一日三回ステージだが、新作を続けて観れて、観劇レポートを書くには好都合だった。

初めて拝見した瞬間「ずいぶん大人びた作品だな。赤と黒の衣装がとても印象的。この色彩がかっこよさとセクシーさを引き立てている。」という感想をもった。これに対して、中条さんから「大人っぽい演目だねぇと言ってもらえて嬉しかったです!! 今回は背伸びして、大人っぽく、エロかっこよく、踊れるように頑張っています。(笑) なおかつ、今までやったことのないポーズを2つ入れたり、ダンスベッドにしたりと、挑戦も多い演目です。むずかしい・・・。」とのコメントをもらう。

さらに「初出しは4結小倉の三日目?くらい。先週が川崎、今週で三週目です。3,5曲目はもちろん私の選曲で、洋楽はその2曲を引き立てるために、MIKA姐さんと相談して決めました。過去最高に、私の好きな構成です。演目を大事に大事に育てていこうとしている中で、私自身が成長できるようにしたいです。テーマはタイトル<愛と憎>です。」

私は本作品がMIKAさんの振付と聞いてますます興味が湧いた。

 

前作「ノンフィクション」と同じように、内面の感情を表現しようとしている。今回は<愛と憎>ということになる。これまた大きなテーマである。

いつも感じるのが、中条彩乃のステージにおけるAimerの存在感の大きさ。常にAimerの話題曲に影響を受けている。彼女のステージカラーと言ってもいいだろう。そして今回も中心にはAimerの新曲がある。

さっそく教えてもらった選曲をネットで調べた。3,5曲目は重いねー。これには驚いた。そして、周りを洋楽で固めているのもバランスがいい。さすがMIKAさんだね。

今回、私の第一印象が赤と黒という色彩のコントラストにあった。今回のテーマを表現する上で、この衣装のセンスは抜群だと感じた。衣装もMIKAさんと相談して決めたのかな?

そして、この色彩「赤と黒」と有名なスタンダールの小説「赤と黒」が重なってきた。ただ、観劇レポートの中に小説「赤と黒」を取り込むと長くなり焦点がぼけてしまいそうなので、巻末に参考として添付しておこうと思っている。ともあれ、書き始めたい。今回も長いレポートになりそうだ。

 

 

まずは、ステージ内容をおさらいしよう。

最初に黒ずくめの衣装で登場。黒いネクタイを締め、黒い長袖の上着を背広のように羽織る。黒いスカート。そして膝上丈の黒いロングブーツ。全体に黒ずくめであるが、どこかキラキラ輝いている。また、椅子の上に赤いドレスがかかっている。

音楽に合わせて、かっこよく踊る。

一曲目は、Gallant の曲「Gentleman」。声質もいいし、なんかゲイっぽい妖しい音楽だね。黒人のGallantにすごい音楽的才能を感じる。

Gallant (ガラント)は、メリーランド州コロンビア出身、現在はロサンゼルスを拠点に活動するR&Bシンガー・ソングライター。2015年からジワジワとEntertainment Weekly、NME、The Fader、Billboard、さらにはBBC Radio1、ZANE LOWE’S BEATS1 RADIO SHOWなどから注目を集めはじめている。既にComplexは「R&Bの流れを変えるアーティスト」と高く評価し、LA Timesは「Frank Oceanの緻密なソングライティングに、Sam Smithのエモーショナルに流れるヴォーカル」と賞賛し、NMEが「R&Bの定義を刷新する声」と予見している。さらには、あのElton Johnまでもが「Gallantはビッグになる」と語ったという。

音楽が変わり、キラキラした黒い帽子を小粋にかぶり、颯爽と踊る。

二曲目は、バルバドス出身のポップ歌手リアーナの「Diamonds」。この楽曲は、彼女の7枚目のスタジオ・アルバム『アンアポロジェティック』に収録され、アルバムからは1枚目のシングルとして2012年9月27日にリリースされた。各国の週間シングルチャートでは、全英シングルチャートで1位、全米のBillboard Hot 100で1位などを記録した。

リアーナ(Rihanna, 本名:Robyn Rihanna Fenty, 1988年2月20日 - 現在31歳)は、バルバドス出身の女性シンガーソングライター、女優、モデルである。身長173cm。全世界で2億5000万以上のアルバム&シングルを販売した「認定ユニットに基づく史上最も売れ行きの良い個人アーティスト」のトップ。セント・マイケルで生まれて、音楽プロデューサーのエヴァン・ロジャースの案内により、16歳でアメリカ合衆国に移った。

2005年にリアーナはデビュー・アルバム『ミュージック・オブ・ザ・サン』を発表した。アルバムはBillboard 200で最高10位を記録し、ヒットシングル「ポン・デ・リプレイ」を生み出した。デビュー・アルバム発表から1年も経たないうちに2枚目のアルバム『ガール・ライク・ミー』を発表。アルバムはビルボード・アルバム・チャートで最高5位を記録、最初の全米首位獲得シングル「SOS」、Hot100で最高10位を記録した「アンフェイスフル」「ブレイク・イット・オフ」を生み出した。3枚目のアルバム『グッド・ガール・ゴーン・バッド』(2007年)は、Billboard 200で最高2位を記録、「アンブレラ」「テイク・ア・バウ」「ディスタービア」という3つの全米首位獲得シングルと世界的なヒットシングル「ドント・ストップ・ザ・ミュージック」を生み出した。アルバムはグラミー賞で9部門にノミネートし、「アンブレラ」が最優秀ラップ・コラボレーション賞を受賞した。

2017年までに14曲が全米1位(Billboard Hot100)を記録しており、これは全米チャート史上ザ・ビートルズ、エルヴィス・プレスリー、マライア・キャリーに次いで4番目の記録である。また、全米チャートトップ10以内にランクインした曲は31曲であり、こちらも歴代4位である。『グラミー賞』9回受賞(33回ノミネート)。

次に音楽が変わり、黒い上着を脱ぐと、下には黒いブラ。黒い首輪と袖に黒い布の輪。そして黒いスカートに黒いロングブーツと黒ずくめ。よく見ると、黒の中に金の線が見える。ブラの裾、スカートのベルト部、首輪にも袖の輪にも金線が入っている。

黒いネクタイを紐のように持ってSMっぽくセクシーに演ずる。

三曲目は、中条さんが好んで使うAimerの曲『I beg you』。主演:浜辺美波 / 劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅱ.lost butterflyの主題歌。作詞作曲は梶浦由記。

この曲が本演目のテーマ「愛と憎」を担うメイン曲と思われるので、後ほど詳しく述べたい。

ここで一旦、暗転。

音楽が洋楽に変わり、今度は上下セパレートの赤いドレス着に着替える。最初の場面で椅子に掛かっていたものだろう。上は赤いトップレスブラ。首から胸元に黒い紐が逆三角形にかかる。下は裾の長い赤いスカート。足元は黒いブーツのまま。

四曲目は、先に紹介したリアーナ(Rihanna)の曲「アンフェイスフル(UNFAITHFUL)」。作詞:ERIKSEN MIKKEL STORLEER、作曲:HERMANSEN TOR ERIK。

そのままベッドショーへ。

盆の上で長いスカートを脱ぐと黒いパンティが現れる。そして黒いパンティを脱いで右手首に巻く。

ベッド曲はCIVILIANの「愛 / 憎」。作詞:コヤマヒデカズ,作曲:コヤマヒデカズ・純市・ 有田清幸。

最初聴いた時、中条さんがよく使う米津玄師の声かと思ったけど、また別の新しいミュージシャンなのに驚く。若いバンドなんだね。退廃的な世界攻撃的な楽曲が特徴。

CIVILIAN(シヴィリアン)は日本のロックバンド。ギターボーカル、ベース、ドラムの3人で構成されているスリーピースバンドである。2016年7月18日付でLyu:Lyu(リュリュ)からCIVILIANに改名した。同年11月23日、Sony Music Recordsよりメジャーデビュー。メンバーのコヤマ ヒデカズ(本名 小山 秀和)ボーカル&ギター、すべての楽曲の作詞、作曲を担当。 9月2日生まれ。東京都出身。O型。身長163cm。東京スクールオブミュージック専門学校渋谷卒業。VOCALOIDプロデューサー・ナノウとしても活動している。

この楽曲は、コヤマヒデカズがTVドラマ"黒い十人の女"の主題歌として書き下ろしたもの。私は初めて聴いたが、中条さんはこのドラマを観ていたのかな。

ドラマ「黒い十人の女」は”不倫コメディ”であり、とあるイケメンではない中年男性が複数の女性たちと不倫しています。その数…なんと9人! バカリズムが脚本、船越英一郎が主演を務める連続ドラマで2016年に放映された。原作は市川崑が監督した1961年公開の同名映画。9人の女と不倫しているドラマプロデューサーが愛人たちに殺害を共謀されるという奇妙なストーリーがスタイリッシュな映像で描かれており、未だに根強い人気を誇っている。

この不倫ドラマと主題歌であるCIVILIANの楽曲名「愛 / 憎」が今回の演目のテーマに繋がっていったのかと最初は思った。タイトルも「愛 / 憎」で同じだからね。

でも、Aimerの曲『I beg you』の歌詞を味わっていくにつれ、本テーマはむしろこの曲にあるように感じてきた。

 

そこで、Aimerの曲『I beg you』に入る前に、本作品を拝見して、最初に私が印象的だと話した「赤と黒」というカラーについて触れたい。ネットで調べると次の通り。

黒色(black)は、白色・グレイと共に色合いのない「無彩色」を構成する色。色の雰囲気・印象はクールで落ち着きのある色の代表格である。

黒は無彩色だから、どんな色とも合わせられ、当然、赤ともマッチします。

【赤】の性質・・・ドラマチック、スピード、決断力、目立ちたがり、負けず嫌い、行動力、情熱

【黒】の性質・・・孤独、独立心旺盛、完璧主義、粘り強い、ポーカーフェース

<色調にもよりますが、いわゆる原色としての赤・黒の直接的な組み合わせは、赤の華やかさと黒の重量感が組み合わせれることによって、ゴージャスなイメージを表出することができるのです。また、赤のビビッドさ黒のシックさが、心理的なコントラストを形成して、とても人の目を引きます。

服の色としては、そのアピール度の強さを利用して、ユニフォームやスポーツウエアなどに使われることは珍しくありません。しかし、一般の服装における赤黒のダイレクトな組み合わせは、過度な妖艶さを醸し出してしまう場合もあり、ときに下品な印象を与えかねない難しい配色の一つだと思います。> byヤフージャパン知恵袋から

そう、本作品「愛と憎」のポイントは、この妖艶さにある。だから、赤と黒というカラーがぴったしなんだ。

そう、そして、この妖艶な世界を表しているのがまさしくAimerの曲『I beg you』なのである。

 

Aimerの楽曲はどれも、切なくなるほどの美しさで溢れている。歌詞の中に入り込めば入り込むほど、その深い想いに胸が苦しくなる。

今回の『I beg you』の妖艶な世界にも、痛々しいほどの悲しみが隠されてる。この歌詞は実際には作詞作曲の梶浦由記さんが書いたものではあるが、Aimerはこの曲と出会い感激し、「是非とも自分が歌いたい!」と言ったらしい。『I beg you』はまさしくAimer自身の歌でもある。

『I beg you』の最初のところで、愛されるために憐れであり続ける様子を切々と歌っている。まるで自虐的な「悲劇のヒロイン」願望というか。虐められる中に愛を見出すM願望かとまで思えるほど。

狂おしいまでに愛を求めているが、それも嘘の世界という。嘘と分かっていても、どうしても愛を求めてしまう。そんな辛い体験を重ね、どんどん悲しみは積みあがていく。愛はいつしか悲しみを通り過ぎて憎しみにまで達してしまう。

これほどまでの悲しみを一体どう解決していくというのか。

歌詞の中に解決策を見つけた。「一つに溶けてしまいましょう 憎しみも愛情も むしゃむしゃと 頬張ってしまいましょう 混沌の甘い甘い壺の中で」

溶かして1つにしたいのは、憎しみと愛情。この2つが一緒になれば、辛い過去も救われる。つまり、憎しみと愛情も自分の中で消化し、自分の一部になるということ。

私には「全ては自分に収斂していく」という哲学がある。いい事であろうが、悪い事であろうが、全ての事象でこれまで無駄になったものはひとつもない。全てが今の自分を形作っている。だからこそ、いくらいい話を聞き、いくらいい本を読んでも、自分のこととして受け止めなかったら、なんも自分のプラスにならない。歌にせよ、ステージにせよ、自分のこととして受け止めてレポートしないと本当に自分のプラスにはならないのだと思っている。

 

 

ここで、私の自論「ストリップ愛」について述べたい。

ことストリップを楽しんでいる踊り子も客も皆、ストリップを愛しているのだと思う。しかし、愛し方が人それぞれ違っている。

たとえば、客のAさんは一人の踊り子をとことん好きになった。Aさんはその踊り子を追いかけて夢中で応援している。一方、客のBさんは沢山の好きな踊り子がいて、新人がデビューすると喜んで観に行く。AさんとBさんはスト仲間で、よく飲みに行く。酔った勢いで、一穴主義ならぬAさんは、Bさんのことを「おまえのやり方は邪道だ」と非難する。Bさんはそれを真に受けず、ただ笑っているだけ。いつしか、Aさんの好きな踊り子が引退すると、Aさんもストリップを引退して二度と劇場に来なくなった。一方のBさんはいつまでもストリップを楽しみ劇場通いを続けている。

極端な二つの例をあげたが、ストリップ業界として大事なのはBさんのタイプだろう。

観客はストリップを楽しむために、まずは目の前のステージに立つ踊り子を好きになることから始める。Aさんは一人の踊り子のみを好きになった。他の踊り子には興味がない。だから、お目当ての踊り子がいなくなればストリップそのものに関心が向かなくなる。一方、Bさんは今見ているステージの踊り子を気に入って楽しむが、他の踊り子も同じように楽しむ。Bさんは目の前の踊り子を好きになって楽しんでいるが、踊り子の向こう側にあるストリップそのものを楽しんでいる。だから、どんなに踊り子が変わってもストリップを楽しむことに変わりない。ストリップというのは常に踊り子の入れ替えが発生する。そうしたストリップの特質をBさんは理解してストリップを楽しんでいる。

 

次に、踊り子と客の関係について。

ストリップを楽しむためには、踊り子と客の間には適度な距離感が必要である。

Aさんは一人の踊り子を好きになっているので、本音は結婚してもいいとまで思っているだろう。彼には適度な距離感なんてなにもない。現実には踊り子は客を結婚相手としては見てくれないもの。だからAさんは途中で熱が冷めるかもしれないし、最後まで応援していたとしても、彼女の引退とともにさようなら!となる。そして、Aさんは二度と劇場に来ない。

一方、Bさんは沢山の踊り子を相手にするだけあって、適度な距離感を心得て、ストリップを楽しんでいる。踊り子さんも熱心に応援してくれるのは嬉しいが、度を超すと相手がうざく思うもの。Bさんは常に踊り子との適度な距離感をわきまえている。

 

最後に、踊り子と客の感情について。

一般に、踊り子と客が恋愛に発展して結婚するケースは殆どない。なぜなら、踊り子は人前で裸になる商売柄、まさに体を張った気の強い女性ばかり。また気が強くなければ踊り子は務まらない。一方、客の男性はふつうに女に相手にされない気の弱い男ばかり。こうした男女が結びついてもうまくいくはずがない。

しかし、踊り子と客はやはり男と女なので、そこに恋愛感情が発生してもおかしくはない。恋愛感情とまで言わなくても、単に好き嫌いという中で、相手に好感をもったり、時に不快感をもったりする。

それを今回のテーマ「愛と憎」に当てはめて考えてみよう。

 

お客というのも気まぐれなもので、これまである一人の踊り子を夢中になって応援していたのが、踊り子のちょっとした言動や周りの状況(他に可愛い踊り子がデビューした等)で急に嫌になってしまうことがよくある。この「愛と憎」こそが、おそらくストリップを楽しむ上での問題の、かなりな部分を占めるだろう。

一例を考えてみよう。彼はある踊り子Xさんを夢中で応援していたのに、ある日突然に手の平を返すように嫌われ、更に踊り子出禁にまでされたというケース。これまで応援に沢山の時間を費やし、遠征やプレゼント等で沢山のお金を費やしてきた。この苦労が一瞬にして水泡となる。彼はXさんに対して「可愛さ余って憎さ百倍」という気持ちになるだろう。この気持ちを彼はどう癒すだろうか?

彼に非があれば、いずれ時間とともに自分の非に気づくだろう。例えば夢中で追いかけていたがそれはストーカー的な応援ではなかったか。踊り子Xさんにうざいと思われなかったか。熱心な追いかけとストーカーは紙一重なところがあるからね。時間を置いて冷静になれば相手の気持ちもわかってくるもの。

ところが彼に全く非がないとする。誰が見ても、Xさんの気まぐれであり、皆が彼に同情する。そんな場合、彼は救われないだろうな。彼はどうすればいいか?

それを考える上で、太宰治の『お伽草紙』の中にある「カチカチ山」という面白い話を紹介する。ご存知「カチカチ山のタヌキ」という童話は、ウサギがおばあさんの敵討ちに、タヌキを泥船に乗せて殺してしまうという物語。その話をベースにして、太宰は、ウサギを十六歳の冷酷な美少女に、タヌキを愚鈍な中年男という設定にした。中年男は、その美少女に惚れ、どうにか気を引こうと全身全霊で尽くす。しかし最後は泥船に乗せられ殺される。「恋は盲目」とは言うが、彼は滑稽そのもの。

では、太宰はこの話で何が言いたかったのか。「恋する諸君、気を付けたまえ!」と言いたかったのか。いや「恋は盲目」だからこそ素晴らしいのだと反論したくもなる。先ほどの彼のケースを考えれば、身につまされるストリップ客もいるだろう。ちなみに、私は「惚れたが負けよ」と思った。最後に殺されようが、彼女に惚れたお前が悪いのさ。殺されるのも運命と思って受け入れなさい!と言いたくなった。

これはそのままストリップに当てはまる。もともと女に相手にされない中年男は、絶世の美女である踊り子に相手にされるはずがない。冷静に考えたら誰でも分かる。それでも男はストリップにロマンを求め、若い踊り子に惚れる。どんなに尽くし、どんなに裏切られようが、「そんな女と知らずに勝手に惚れたお前が悪いのさ」ということなのだ。

ここで先ほどのAimerの話に繋がる。「全ては自分に収斂していく」ということがポイントになる。

愛は必ずしも綺麗な部分だけではない。ときに嘘にまみれた汚い部分もある。それはストリップ愛も同じ。しかし、清濁あわせて飲み込むことにより、初めて自分の一部になる。そして、美しい思い出になる。悲しみや絶望が大きければ大きいほど思い出も美しいものになる。そう思いたい。

 

私にとって究極、「ストリップ愛とは踊り子を見守る愛だ」と思っている。許される限りで、時間と労力とお金を費やしていく。その際、大切なのは適度な距離感。彼女のプライベートな部分には立ち入らず、劇場という限られた時空の中で、必要なときだけ自分の可能な範囲でサポートしていく。そうであれば、余計な感情で楽しいストリップをつまらないものにしないで済む。「愛」の範囲内にとどめ、「憎」に踏み込まないようにする。そうすることで、自分のストリップ歴の中で、一人一人の踊り子を楽しい思い出として語り続けたいと思うのだ。

20年間ストリップを観続けているが、これがなかなか難しいのもストリップである。

 

 

つまらない話までしてしまい、長いレポートになってしまいました。すみません。

最後に、改めて今回の新作「愛と憎」を振り返ると、中条さん自身が言っている「過去最高に、私の好きな構成です。」ということがよく理解できる。

前作「ノンフィクション」で内面を演ずることに挑戦したが、対象が曖昧だったせいか客に伝わり難かった。今回はテーマを「愛と憎」とより具体的にしたことで、客にテーマが伝わりやすい。

しかも、伝え方がうまい。衣装を赤と黒にこだわったことでインパクトが強くなる。

かつ、選曲がいい。3と5の曲をメインにし、いい洋楽でまわりを固めた。やはり、日本語の歌詞だと客に言いたいことが伝わり易いからね。(実際には、この二曲の歌詞は難解だ~↓ 読み砕くのにかなり苦労したよー笑)

テーマに興味がもてたお陰で、自分の自論を長々と整理することができた。(もう少し、深く細かく追及したいところ。笑)

 とにかくMIKAさんといいタッグが組めたねー。私自身もすごく嬉しいよ。

 

 

2019年5月                             DX歌舞伎にて

 

 

 

【中条彩乃さんからのお返事】

(手紙にて)

今回も長いレポートをありがとう。読み応えがあって、いつも通り、読んでる時間がすごく楽しかったです。楽しみに待っていてよかったぁ。(笑)

そして今回驚いたことが・・・。太郎さんは、私の事がなんでもお見通しなのでは・・と思ってしまうほどに、レポートの内容がぴたりと合っていたこと。鳥肌が立つほど。

ここ最近の私は、選曲しているときの感情や、出来事などが全部曲に表れます。曲を決めてから、衣装、構成、振付師を考えています。(ちなみに衣装も全部自分で決めます) 

6ページの真ん中あたり。お客さんとの距離感での一例で、まさにこの演目の選曲をしているときに起こったことでした。昔から応援に来てくれていた方が、少し過剰な愛となり、結果憎まれてしまった。私の中で、これを作品にすることが、「一つに溶けてしまうこと」だったと思います。そのお客さんに、すごく嫌がらせもされたし、もう二度と会いたくないと思ったけれど、この演目は観てほしい・・・そんな矛盾の中にいます(笑) 私も、その人も、愛と憎が紙一重なんだなぁ・・