今回は、鈴木ミントさん(ロック所属)について、H30年9月頭のDX東寺での模様を、演目「人魚の夢」を題材に語りたい。なお、本レポートは鈴木ミントさんの「ストリップの妖精に恋をする」シリーズ(その7)になる。

 

 

H30年9月6日。残暑厳しい中、9月に入り漸く夏の終わりを感じられる。

今週の香盤は次の通り。①澤木夢、②黒崎優、③安田志穂、④前田のの、⑤鈴木ミント〔敬称略〕。今週はDX東寺ロック大会。

 

ミントさんとは7月結のDX歌舞伎以来。そのDX歌舞伎公演後半に初見の出し物「蒼」、「明日への手紙」を観れた。今回の東寺でまた観れるかなと楽しみにしてきたところ。そうしたら、それ以外の初見の作品「人魚の夢」と8月中の川崎ロックで出したばかりの新作「ブラック」を拝見できて感激。新作がとても斬新なのだがスチームパンクファッションについて勉強したいのでレポートするのに少し時間が欲しい。今回は「人魚の夢」について観劇レポートさせて頂く。

 

私なりにステージ内容を話したい。

最初に、中央に青い線が入った白い華やかなドレス姿で登場。頭にはキラキラした髪飾り。後ろに白いフード状に流れるワンピースドレス。スカート部はまるで泡のような花柄の刺繍が施され、裾広がりに広がる裾部にはブルーのフリル。

音楽は映画「リトル・マーメイド」の主題歌「アンダー・ザ・シー」のインスト曲。音楽に合わせ舞い踊る。

音楽がSarah Brightmanの「Symphony」に変わる。うっとりしたメロディと歌声。

サラ・ブライトマン(Sarah Brightman, 1960年8月14日 – 現在58歳)は、イギリスのソプラノ歌手、女優である。1980年代にミュージカル女優として活動し、1990年代以降はソロ歌手として活動している。クラシックとポップスを融合した独自の音楽スタイルはクラシカル・クロスオーバーの世界的な隆盛をもたらしている。アメリカにおけるビルボード・チャートのクラシック音楽部門とダンス音楽部門で同時に1位を獲得した唯一の歌手である。

そこで衣装を着替える。白と青の胸部から下はブルーとパープルの布が入り混じった軽装。上着を脱ぐと、上下セパレート衣装となり、そのままベットへ。

左側に白い花束が付いたブラ。斬新なデザインだ。そのブラを取ると、首輪から簾状に白いビーズが流れる。スカート部は青と白の布がワカメ状に重なる。

ベッド曲はCeuiの「人魚姫と王子の物語」(2013.11.20発売!Ceui 4thアルバム「ガブリエル・コード〜エデンへ導く光の楽譜〜」から。作詞・作曲:Ceui)。  Ceui(セイ、1月31日 - )は、日本の女性シンガーソングライター。千葉県出身。血液型はA型。主にテレビアニメやPCゲームの主題歌を歌っている。 Ceui(セイ)はポルトガルで「空」の意味「CEU」に「i(愛)」を加え、星という意味の造語が由来。2007年2月発売のシングル「微睡みの楽園」にてメジャーデビュー。2010年よりライブ活動をスタートし、翌年からは中国、台湾、マレーシアなど海外でもライブ活動を行っている。

透き通る歌声と切ない歌詞。この歌に本作品の主題を感じる。・・・ばら色にかがやく水面珊瑚礁 風たちの歌う子守唄(メロディー) 魔女さまから手に入れた両足がまだ痛いよ 「どこから来たの?」 「声を聞かせて」 優しく王子(きみ)が尋ねたでも答えること できないだって僕 この声と引き換えに君と出逢えたから 僕の大好きな君に幸せあれ ボクの大好きな君に微笑みあれ・・・

盆の近くに来たのでアクセサリーを目で追う。きらきらした髪飾りと思っていたらヒトデ状の銀飾り。左耳のみ白い貝殻のイヤリング、右耳はサイドにインダストリアルピアス。右手首に白い真珠のブレスレット。手にはマニキュアはないが、足には赤いマニキュア。右足に白いクロス紐。すんごくオシャレ~♪

立上り曲は、MISIAの「Hope&Dream」に変わり、ここで全裸になり盛り上がる。最後に、願いと夢なんてステキですね♪

 

 

ステージを拝見して、すぐにポラタイムで、私が「これはマーメイドですか?」と尋ねたら、ミントさんが「人魚の夢という題名なんです。人魚の話は悲しいですよね。」と語ってくれた。演目中の選曲と合わせ、私は「この演目は童話に基づいているんだ」と確信した。

私は、これまでたくさんの踊り子さんの人魚姫の作品を観てきた。実際、踊り子さんが一度は演じてみたい演目№1がこの人魚姫という。みなさん、それぞれ味のある人魚姫を演じていた。

今回、たまたま一緒にDX東寺に乗っている前田ののさんも作品「マーメイド」を演じていて、比較することで違いがよく分かる。まだデビューして三年目の若いののさんはアイドル路線まっしぐらでディズニー映画「リトル・マーメイド」をモチーフにしている。その点、ミントさんの作品はイメージが異なる。

ディズニー映画「リトル・マーメイド」とアンデルセン童話「人魚姫」のどちらをイメージして作っているかで最後の部分の解釈が全く違ってくるのだ。

アンデルセン童話では、優しい姉たちが魔女に頼んで妹を人魚に戻そうとする。魔法のかかったナイフで王子を殺せば人魚に戻れるからとナイフを渡す。しかし人魚姫は愛する王子を殺すことができず、自分が海の泡になることを選ぶ。その点、ディズニー映画はハッピーエンドなので、アリエル(人魚姫)はエリック王子と結ばれる。

従って、アンデルセン童話に沿うと、この作品そのものが「華やかさ」だけでなく「切なさ」をも表現していることになる。

アンデルセン童話の「人魚姫」は、どこまでも純粋に王子を愛しながらも、報われなかった悲しい物語で、話のいたるところにこれでもかこれでもかと思わせる酷い場面が出てくる。これは、失恋を繰り返し、ついには生涯を独身で通したアンデルセンの、苦い思いが投影されていると言われる。

改めて、アンデルセン童話を振り返ってみよう。・・・

人魚は人間の王子を好きになる。王子に近づくために、魔女に頼んで美しい声を失ってまでも足を手に入れる。しかし、歩くとナイフで切り裂かれるほどの痛みを感ずる。こんな状態ではまともに生活できないよね。所詮、人間になるには無理があるわけ。

しかも、人魚姫が遭難した船から王子を救ったにもかかわらず、王子は別の女性が助けてくれたと勘違いして結婚してしまう。

運命というものを強く覚える。人魚と人間はもともと住む世界が違うのだから一緒になれるはずがないのである。

ストリップも全く同じ。私は「ストリップは空蝉(うつせみ)の世界」だと思っている。字のごとく蝉の抜け殻のようなもの。目の前にミントさんのように絶世の美女が現れ女体を晒してくれる。強く憧れ当然のごとく好きになってしまう。しかし手に届くことはない。夢中になって追いかけ、また「いつでも会える」と思っていた存在が、ある日突然目の前から姿を消してしまう。たまらないほどの寂寞感・無常観を何度味わったことだろう。しかし、それがストリップなのである。

人魚姫は王子を愛してしまう。愛さえなければ運命のいたずらはなかった。優しい姉妹たちと平和な海の生活を送れたことだろう。しかし愛が人魚の運命を翻弄した。愛さなければよかったと思えるが現実は愛してしまう。愛こそがドラマなんだな。

ストリップは時間とお金が許せば何人もの女性を愛することも可能。恋多きことを可能にする夢の空間。私は「ストリップは空蝉」と分かっていながらも、このストリップの世界を楽しみたい。いくら浮氣王子と揶揄されようがね(笑)。そして、この空蝉の世界を文章にしたためたい。これが私の‘生きること’なのである。

 

 

平成30年9月                             DX東寺にて

 

 

 

 

『踊り子になった人魚』 

~鈴木ミントさんの作品「人魚の夢」を記念して~

 

 

 人魚は、岩場に座り、長い黒髪を垂らし、憂いを含んだ悲しい瞳で遠くの海面を眺めていました。

 昨夜も海が荒れ、客船が一艘沈みました。

 人魚には、海に沈んだ人々の想いを察知することができました。それは決して人魚が望んだ能力ではありませんが、自然と人々の悲痛な声が伝わってくるのでした。だから、人魚はいつも物悲しい眼差しをしていました。

 

 客船には一人の有名なピアニストが乗っていました。

 彼は右腕が無く「左手のピアニスト」として有名な方で、世界中の人々に感動の音色を届けていました。

 人魚は客船に積んでいた彼のピアノを弾きました。有名なピアニストが乗り移ったように素敵な音楽が海面を響き渡ります。たくさんの魚たちが人魚の放つ音色に酔いしれました。

 

 客船には一人の有名な宇宙飛行士が乗っていました。

 彼はもうすぐ地球を発ち火星に向かう予定でした。まさに選ばれたエリート。しかし残念ながら、長く飛行訓練をしてきたのに彼の夢は叶いませんでした。

 人魚は風の神様に頼んで、彼の魂を天高く舞い上げました。するとタイミング良く、星の神様が手を伸ばし、彼の魂を宇宙に連れて行きました。彼の想いはひとつの星になったことでしょう。人魚は空を見上げて優しく微笑みました。

 

 その船には有名な方が他にもいましたが、人魚は、ある名もない女の子のことが気になりました。彼女は踊り子です。

 彼女は新天地で、大好きな踊りと自慢の裸体でたくさんの男性を喜ばせてあげることを夢みていました。楽しい音楽と明るい照明の下で、舞い踊りたい・・・

 彼女の強い想いが、人魚の心に伝わりました。

 人魚は美の権化。彼女の気持ちが痛いほど分かりました。

 人魚は、海の中に舞台を作ることにしました。たくさんの海の生き物たちが人魚に協力しました。舞台に向かう道に海藻が緑の林を作り、珊瑚が大理石のステージを、貝類が石段を担当しました。そうして豪華な舞台が出来上がりました。

 

 人魚がステージに現れると、大きな歓声と拍手が沸き起こりました。

 演奏団が凄い。タツノオトシゴたちがラッパを吹きます。サンマたちが笛を吹きます。フグが大きなお腹を膨らませて太鼓を鳴らします。サメがお互いの身体をこすり合わせてバイオリンの音を出します。

 たくさんの生き物たちがステージにかぶりついていました。カニはにこにこしながら大きなはさみでⅤサインを出しています。カニの目は突出してきょろきょろとしていましたが、出目金も負けずに目が飛び出でそうなほどに観ています。ヒラメやカレイは上目づかいで人魚の足元を舐めるように見上げました。

 人魚のあまりの美しさに、エビはエビ反りになりました。タコは人魚の美しさに完全に骨抜きになりました。

 ステージのクライマックスには、くじらが大きな潮を吹きました。

 

 人魚はみんなに見られながら踊るのが、こんなに快感だとは思いませんでした。また、なによりも、観ているみんながこんなに喜んでくれるとは思いませんでした。

 人魚はストリップの魅力にはまりました。機会があったら人間になりストリッパーになることを夢見ました。

 

                                    おしまい