ロックの踊り子・鈴木ミントさんについて、シリーズ「ストリップの妖精に恋をする(その4)」を、「ストリップ界の光源氏」と題して観劇レポートする。
H27(2015)年1月16日(金)、会社を早退して仙台ロックに前乗りした。新幹線で仙台に向かい、夕方七時過ぎに劇場に到着。一回目トリのミントさんのポラ時に滑り込み入場。
今週の香盤は次のとおり。①美咲遥(DX歌舞伎)、②ショウコ、③空まこと、④初芽里奈、⑤鈴木ミント〔敬称略〕。美咲遥さん以外は全員ロック所属。
新年早々、ミントさんに新年のご挨拶。ミントさんに会わないと新年が始まらない。ミントさんも喜んでくれた。「今年も早々にお会いできてHappyでありますっ!!」
今週のミントさんは新作「光(ひかる)」を披露。昨年末、新宿ニューアートで出したばかりで、まだあまり演じていないと言う。今回も一日一回しか演じないようで、次の二回目にやるとのこと。「重いテーマなの」と言うので「どんな重いテーマでもしっかり背負うからね」と答えておいた。ちなみに、新作なら一日ずーっと見たいが、何故に一日一回に限定しているのかな・・準備が大変なのかな・・
たった一回の観劇で、どこまで本質に迫れるか全く自信がないが、私なりにレポートさせて頂くね。
まずは、ステージ内容をなぞってみる。
最初に、全てが金キラキンで登場。和物の衣装・・・上半身は右側が金色の生地で、袖部分は青地に金模様。左側は赤地に亀の子状の金模様で、右側に上重ねする形。下半身は黒地に鮮やかな金模様が施されている二股の履きもの。まさに全身が金キラキンに輝く。
さらに、ふわっとした赤地のかつぎを掲げる。これにも金模様がプリントされている。
ミントさんのお顔はきりっとした表情で男装に化粧。髪の毛も後ろにひとつ結ぶ。裸足で華麗な舞いを踊る。お正月らしい厳かさを覚える。
赤いかつぎを取ると、背中に楓の枝がひとつ見える。今度は扇子をもって舞う。
この華やかさは何を意味するのか? 私にはすぐ理解できなかった。次の場面も含めて、殿様の舞いのように感じた。織田信長なら金キラキンは似合う。
次に、白袴姿で登場。下半身は先ほどの黒地に金模様の衣装。白袴を羽織る形。
藤(?)の花が付いている長い枝を、担ぐような舞いをする。
最後に、白い襦袢姿でベッドへ。この襦袢にも金模様が刺繍されている。
全般的に金キラキンのイメージが強く残る。
ポラ撮影の行列に並ぶ。たまたま前の客がミントさんとこの作品について話をしているのを耳にする。光源氏がテーマであることが漸く分かった。お客は歌詞などから深く分析して話していたが、ミントさんは「そんなに難しいストーリーを考えているわけではなく、お客さん自身で勝手に解釈してもらえればいいです」と返答していた。この作品を創作してくれた先生はそれなりの解釈をもっているようだが、ミントさん自身はあまりそれにこだわらないとのこと。
私は、藤の花にはっと思いを馳せる。「藤壺」という女性の名前が浮かぶ。その話なのかな・・・
いずれにせよ、宮廷貴族である名うてのプレイボーイ光源氏が華やかな恋の浮名を流し、その後、愛する女性を亡くし白装束に身をまとう様を演じているのは私にも理解できた。ミントさんから「テーマは光源氏ー! 太郎さんは博識だからお話知ってるかなっ」とコメントを頂いたが、残念ながら私は源氏物語を読んだことはなく、世界最古の恋愛小説であることを教科書でかじった知識しかない。
しかし、男なら誰しも、たくさんの美しい女性との恋物語を演じた絶世の美男子・光源氏に憧れる。ストリップというのは絶世の美女である踊り子さんに恋をする場。妄想の中で光源氏になれる。
私は若い頃に女性にふられ過ぎたせいか、特に強くストリップにこの妄想を描く。誰かが私のことを「新人キラー」とか「ストリップ界の浮気王子」とか言っていたが、ある意味、光栄なこと。半分冗談で灘ジュンさんにお悩み相談したら「太郎さんはストリップ界のプレイボーイ。私は恋多き男性は素敵だと思いますよ。」と言ってくれ有頂天になったことがある。精力的に応援している踊り子さんほど「この浮気者―!」とからかってくる。実際の私がモテるはずがないが、踊り子さんへの憧れや恋愛パワーが、こうした執筆に凄いエネルギーを与えてくれる。ストリップのエッセイ、レポート、特に童話やポエムはこれがないと書けない。私のストリップ童話に輝きを感じてくれるならば、私が「ストリップ界のプレイボーイ」と自分自身を思い込めるからだ。仮想恋愛なくしてラブストーリーは書けない。
実は、ここのところ、童話のインスピレーションが乏しくて悩んでいた。今週はミントさんに起爆剤を与えてほしくて仙台に遠征してきた。第二の故郷である仙台という土地柄パワーとミントさんの美しさが織り交ざって、私の中にインスピレーションの風が巻き起こる。「ストリップの妖精に恋をする」もシリーズ4になり、毎回、妖精の話がポンポン飛び出す。今回も、光源氏の出し物に強いインパクトを感じ、頭の中をストーリーが駆け巡る。それを早く捕まえて、文章に落とし込みたい。なにが出来上がるか自分でも楽しみ!
はい、今回も世界の中心で愛を叫びます。「今週もストリップの妖精に恋をしたっ♡」と。
平成27年1月 仙台ロックにて
~鈴木ミントさんの演目「光」を記念して~
宮廷界の貴公子・光源氏が浮かない顔をしていた。
心配した友人の陰陽師が声をかけると、光源氏はこんな話をし出した。
「私はたくさんの女性を愛してきた。いつだって本気だった。いい加減な気持ちで相手をしたことなんて一度もない。・・・しかし、振り返ると、たくさんの女性を不幸にしてしまったんではないかと悔やまれてならないんだ。」
陰陽師は言った。「あなたは純粋に女性たちを愛した。そのことに嘘偽りはありません。側に仕えていた私がそのことをよく知っています。」「女性たちはあなたに愛されたことを誇りに思っています。最高の幸せと感じています。あなたが残した忘れ形見を大切に育てることに一生を捧げる方がたくさん居ます。そのことをあなたが苦に感ずる必要はありません。」
それでも光源氏は納得がいかない様。
陰陽師が言う。「それならば私がこの世の精霊たちにうかがってあげましょう!」
エロエロエッサイム♪と唱える。
この世の魑魅魍魎たちが虹の架け橋を伝って集まって来た。変な顔をした精霊も多かったが、話が光源氏のことというだけで、たくさんの花の精霊たちが多く集まってきて華やかだった。
陰陽師が尋ねる。「光源氏は一時の性欲のために女性を愛したのか。その罪はいかばかりか?」
精霊たちは口々に言う。「女性は光源氏に愛されて真に満足しています。女の人生において、本当に好きな男に抱かれることほど幸せなことはありません。光源氏は己の性欲に駆られて女を抱いてしまったことを悔いているようですが、そもそも男性の性の快感に対して、女性の性の快感は比べものにならないほど大きいのです。男女の性交の後、女性には出産という苦しみが待っています。その代償のためにも、性の喜びのご褒美が与えられているのです。」
陰陽師が付け加える。「それでも光源氏は愛した女性たちに何か償いをしたいと考えています。何か良いものはありませんでしょうか?」
花の精霊たちが言う。「光源氏が『この世には女性の数だけ美しさがある』と言っている気持ちがとても素敵だと思います。特に日本の女性は美しい。彼女たちに特別のご褒美をあげたいですね。日本の女性に似合う花柄の着物はどうでしょうか。私たちが提供してあげますよ。」
こうして日本には着物の文化が興りました。
おしまい