今回は、ロックの踊り子、西園寺瞳さんの「瞳たん、天使になる」という題名で観劇レポートをします。
今のロックには、デビューから応援し、私の手紙をエサ(?)にして成長してきた踊り子さんが何人かいる。私は彼女たちのことを勝手に‘太郎チルドレン’と称している。踊り子を長く続けてくれて、すでにベテラン級になっている。彼女たちの殆どが私のストリップ殿堂入り(私の応援が100日超の方)している。
彼女たちとはたくさん会っているので仲良くしてもらっており、私の顔を見つけるとみなさん笑顔で喜んでくれる。彼女たちに会うと心が和み、とても癒される。こういう方をたくさん持っているのがストリップを趣味として楽しんでいる私の最大の財産である。
その太郎チルドレンの一人が西園寺瞳さん。会うたびに私が最も心温まれる一人である。
今回(H25年11月17日)、仙台ロックで三か月ぶりにお会いして、ほっこりとする和みを感じ、改めてその気持ちが強まった。
今回の演目は『天使』と『人魚姫』。洗練された瞳たんメルヘンワールドを描く。
デビュー当時からユニークな存在として知っている、あの瞳たんがこんなに素敵な踊り子になってくれたことが感慨深い。太郎チルドレンの優等生である。会うたびに綺麗になっているし、ステージの魅力がどんどん増している。接していて分かるが彼女は性格美人であり、それが歳とともに表に出てきている。一人の踊り子として、一人の女性として、一人の人間として、とてもいい成長の仕方をしていると感じている。
今回の演目『天使』を観ていて心に響いてくるものがあった。
NOKKOの曲にのって、ピンクのドレスで登場。ドレスにはピンクと水色のリボンが取り付けてある。白い帽子にも同じリボンがある。背中にある天使の羽根がポイント。洗練されたメルヘンチックな衣装である。白いシューズを履いて、華麗に踊る。
次の衣装は、古代ローマ人をイメージさせられる衣装。頭には白いリング。長い白い布を手に巻き、振袖のように手から垂らす。胸元から下にも布を巻き、スカートのように垂らす。
衣装だけでもメルヘンが物語れそうだな。それぞれをどういうシチュエーションと捉えるかで楽しく悩めそうだ。瞳たんのステージを観ながら、ひとつの童話が浮かんできた。
瞳たんに童話『踊り子になった堕天使』をプレゼントしよう。
平成25年11月 仙台ロックにて
天上にすむ女神には、たくさんの天使たちが仕えていました。
その中に、ちょっと変わった天使がいました。ふつうの天使は気品に溢れた独特な輝きを放っていました。ところが、その天使は貧相な雰囲気を持っていました。たしかに背中に羽根があるので天使には違いありませんが、他の天使と同じ輝きを放っていません。容姿も下界の人間に近い感じがします。
女神は、その天使を下界に降ろすことにしました。
天使は何もわからないままストリップの世界に入りました。天使の羽根をもぎ取られた屈辱、自分への自信の無さ、下界への不安などから最初のうち自分の殻に閉じこもりました。かわいい容姿でしたが、そんな彼女の暗さから、お客さんや劇場関係者の評判はよくありませんでした。
でも、彼女はストリップの世界から逃げる術を知らなかったので、踊りを練習し、一生懸命にステージを努めました。彼女のけな気な姿に好意を抱く客も現れ、次第にファンが付き始めました。
ところが、愛嬌がなく、人付き合いが苦手な彼女は、楽屋のお姐さん達から虐められました。かわいい容姿がむしろ嫉妬の対象にもなりました。ところが、天上の世界には憎しみや恨み、嫉妬や妬み(ねたみ)・嫉み(そねみ)などマイナスの感情は存在しません。だから、もと天使であった彼女には、お姐さん達のつまらない嫉妬や妬みが理解できませんでした。
「赤ちゃんは天使に近い存在なので最初は真っ白な状態で生まれてくるけど、人間は大きくなるにつれ、醜いマイナス感情を学んでいくのね。悲しいことだわ。」
彼女には、お姐さん達の虐めを気にする感覚がなかったことが救いでした。
ある日のこと。
彼女は、自分のことを眩しげに見つめる熱い視線を感じました。一人の青年が彼女の瞳をじっと見つめていました。他の客からも同じようなLOVEビームが全身に浴びせられました。彼女は心が熱くなりました。その瞬間、彼女の身体が内側から輝き始めました。
そして、ベッドショーで、ヒックとしゃっくりをしたら、ひとつの泡が口から吐き出ました。その泡はハートの形をしています。
ヒック!ヒック!ヒック!・・・
しゃっくりが止まりません。盆の上がハートマークで溢れました。
そのハートマークは美しいピンク色。それは美であり愛でした。それを観ていた観客はとても幸せな気分になりました。いつしか彼女のステージは幸せを呼ぶステージとして評判になりました。
たくさんの客が彼女のステージを観に集まりました。一躍、彼女はストリップ界の大スターになりました。
これまで彼女のことを見下していたお姐さん達は、彼女の活躍が妬ましく、さらに意地悪をしました。しかし、彼女は全く意に止めませんでした。
「美と愛をもてば、憎しみや嫉妬や妬みはいかにつまらないものか分かるわ」
ステージにおける本物の美しさは、心の美しさがそのまま反映されることを彼女が証明していました。
彼女のもとに、女神が現れました。
「あなたは、本当の美と愛を手に入れましたね。立派に天使の資格を得ましたので、私と一緒に天上に戻りましょう!」と言って、背中に羽根を付けてくれました。
女神は天使を連れて天高く上っていきました。
おしまい
[備忘録]
11月に瞳さんのステージを拝見し、最初、童話「みにくいあひるの子」をモチーフにして、「みにくい天使の子のお話」という題名で一旦童話を書き上げました。輝きをもたない天使を女神は下界に落とし、ストリッパーにする。お姐さん達に虐められながらも、本当の美と愛を得て、天使の輝きをもつストリッパーになり、やがて天上に還っていくというストーリーでした。
ところが、その後、12月5日、南アフリカのマンデラ元大統領が亡くなられたというニュースを見る。その中で、マンデラ氏の言葉が深く心に響いた。
「抑圧された側が解放されるのと同じように、抑圧する側も解放されなければならない。他人の自由を奪う者は、憎しみにとらわれ、偏見の檻に閉じ込められているのだ。」
「肌の色や育ち、信仰の違いを理由に他人を憎むように生れつく人などいない。人は憎むことを学ぶのだ。もし憎むことを学べるなら、愛することも学べる。愛は憎しみより、自然に人の心に届くはずだ。」
私は「人は憎むことを学ぶのだ」というフレームをどうしてもこの童話に取り込みたくなった。そのため、「みにくいあひるの子」をモチーフにすることを止め、題名を変更し、内容を書き直した。こうして「踊り子になった堕天使」は出来上がった。