今日は「若松炎上」という縁起でもない話をします。
H21年2月の話。東京出張の折、仕事が終わって千葉の自宅に帰る途中、船橋で下車、久しぶりに若松劇場に立ち寄った。
白雪恋叶さんや綾瀬ナナさんにまだ新年の挨拶をしていなかったし、ロック新人の愛野梨華さんのステージも見たかった。梨華さんは1月に仙台ロックに初出演の予定だったが、インフルエンザの急病で急遽キャンセルになっていた。
入場したときは3回目の3番目、愛野梨華さんのステージ。ちょうどいいタイミング!その後、白雪恋叶さんのステージと続いた。お目当ての2人のステージに満足したら、急にお腹が空いているのに気づき、すぐに劇場前の大和食堂に向かった。
以前からこの食堂にはお世話になっているので、食堂のおじさんやおばさんとは顔見知り。「いらっしゃい! 久しぶりだね」前はよく来ていたので、今は仙台に単身赴任していることを前から話している。今日は東京出張で立ち寄ったことを告げる。
満腹して食堂を出た瞬間、外で2人のサラリーマンらしき男性が騒いでいる。彼らの視線を辿ったら、なんと、若松劇場の裏手に真っ赤な火の粉が見える。劇場からは少し離れているものの延焼する可能性もある。当日、風が非常に強かった。パン!パン!と何か破裂する音も聞こえる。
驚いた私はすぐに劇場に戻り、受付の責任者に連絡した。彼と劇場関係者数名が外に飛び出した。その間、1人のサラリーマン風の客Aさんがお金を払って入場した。
その直後、劇場の電気が一斉に消えた。電信柱が延焼し、近所一帯が停電。
お客だけでなく、踊り子さんも全員が、劇場から表に脱出。すでに消防車が駆けつけて消火活動を行っていた。付近の路上は住民でごった返していた。
火の発生元は、元遊郭で今は無人の建物らしい。今時そんな建物があるのかと驚く。奥まった裏手にあるので、近所の人しか知らない。
踊り子さん達は楽屋から荷物をステージや玄関まで運んでいた。真っ暗い中、蛍光灯や携帯電話の光をかざして、常連さん達が手伝っていた。
風向きからして若松劇場に延焼する懸念はなかった。消火は順調に進んでいるようなので、停電がなくなれば公演再開もありえる。少しして、残った客と踊り子さんがラウンジに集まった。かすかな光の中で、みんなが佇んでいた。
先ほど入場したばかりの客Aさんが「おいおい、まだ1人も観劇していないのに、このまま終わったらたまらんよ」と言っている。
火はその元遊郭を全焼しただけで、すぐに収まった。しかし、停電は続いたため、劇場責任者が「今日はもう公演中止です。明日、来ていただければ入場料を無料にします!」と話した。それを聞いた客の数人がぼちぼちと帰っていった。
ラウンジに居たとき、綾瀬ナナさんが立っている私に気づき話しかけてくれた。「太郎さん、せっかく来てくれたのに・・ごめんね。新作だったのに見てもらえないで残念だわ」。ナナさんの優しさが伝わってきて、暗いけど、心が明るくなった。別れ際、わざわざ握手までしてくれたときに、ナナさんの手の温もりを感じた。
そのとき、私は明日も来ようと心の中で決意していた。明日まで出張なので、仕事帰りに若松劇場に寄って、その後、深夜バスで仙台に帰ろう。
翌日、仕事を早めに切り上げ、3時頃に若松劇場に到着。運良くトップの綾瀬ナナさんの2回目ステージに滑り込む。ポラだけ参加だが。
その時のサインポラが3回目ステージで返ってきたが、ナナさんのコメントが面白かった。「若松炎上になるところでした(笑)。太郎さんリベンジ。お時間つくって頂けて、よかったです。どうもありがとうございます。」
若松炎上にならなくて本当に良かった。なにせ私のホームシアターですから。それにしても、吉原炎上に掛けた、この若松炎上という表現は面白い。ナナさん、さすが!と思った。
当日、ナナさんに手紙を2通渡したが、ポラサインのコメント以外に、最後にお手紙を頂いた。私の手紙に対する感想が綺麗な字体で丁寧に述べられてあった。ナナさんから手紙でお返事頂くのは初めてだったし、その内容に感激した。
今回の若松観劇では、ナナさんのやさしさイオンをいっぱい体感でき幸せな思いをさせていただいた。
途中、火事現場を見に行った。ちょうど現場検証していた。風情のある元遊郭が真っ黒になった外形を晒していた。両隣のアパートは外形は延焼した気配は見えなかったが、出窓が真っ暗になっており、建物内部に延焼しているのが分かる。ベランダに燃えた家財道具が出されてあった。中は住めない状態になっているのだろう。ただ、あれだけ強風の中、延焼がこれだけで収まったのは、風向きに広い駐車場があったからだ。私が最初に目にした劇場裏の火の粉はこの駐車場の上を舞っていたものだった。住宅が密集していたら大惨事になっていた。ある意味、これも不幸中の幸いだろう。
長くストリップ劇場通いしていると、いろんなアクシデントが発生する。最近でも仙台地震、渋谷道劇での警察のガサ入れ・・・たまたま運良くその場には遭遇しなかっただけで少し時間がずれていたら直撃していた。台風で休演というのもよくある。火事に遭遇したのは今回初めてだったが、途中休演にはなったものの、翌日無料で観劇できたのだから実質的な被害はなかった。
天災は避けられない(警察のガサ入れは天災ではないが)。何事にもアクシデントはつきもの。こうしたアクシデントが発生したときにはじたばたしないことだ。仕方がないことだから、感情を高ぶらせず、淡々と受け入れるしかない。変な言い方だが、アクシデントを楽しむぐらいの度量をもつべきかとも思う。
今回は翌日リベンジ観劇できて本当に良かった。万一、若松炎上になっていたら大変だった。不幸中の幸いと神に感謝すべきだろう。
そうそう、翌日、若松劇場でAさんと会って、お互い顔を見合わせて笑った。
よかった! よかった!
平成21年2月