今回は、H29年4月頭のライブシアター栗橋で贈った童話「マッチ売りの少女」の改訂版を持参しました。
あのときにレポートと一緒に書き上げてお渡ししてから、すぐに色んな発想が頭の中を回り出し、栗橋から出た後も手を加えてみました。文量も倍以上の長さになってます。
書き出すまで苦戦しましたが、一旦書き出してからは次々と話が展開していきました。
4月頭の週のうちに大半の加筆を終え、その後もこの童話にこだわって何度も微修正し、最終的にはGW週に自分なりに納得のいく作品にしました。もしかしたら、私の童話の中でも最高傑作になるかも(?)。そうでなくても、かなりこだわりの深い作品になりました。
この童話を書くきっかけを頂いたひとみさんに深く感謝します。
先に渡した原稿との違いが分かりますか。
加筆部分と訂正した部分を列記しておきますね。
・主人公の名前を「ひとみ」にさせて頂きました。
・‘マッチ一本、ワンコインの遊び’を印象的な書き方にしたくてポエムにしました。
・少女の生い立ちを加筆しました。
・「本当のエロスって何かしら?」にとことんこだわり、これをテーマにしました。
・マッチの炎に対して、ろうそくの炎を付け加え、次の話の展開に含みを持たせました。
以上の変更点を味わって頂けたら嬉しいです。
この改訂版を早くひとみさんに届けてあげたいです。
H29.5
~黒井ひとみさん(若松所属)の復帰を記念して~
ある呑んべえ横丁に「マッチ売りの少女」と呼ばれている女の子がいた。
彼女の名前はひとみ。ひとみはまだ幼くて、とてもかわいい顔をしていた。
「マッチを一本買って下さい」
ひとみは甘え声でそう言って、呑んべえ横丁でお酒を飲んでいる客に声をかけて歩いた。彼女に500円を払うと、店の奥にある「ピンクの個室」で、マッチが一本燃え尽きる短い間だけ彼女の性器を見ることができた。彼女の性器はまだ毛も生えていなく、とてもきれいなパイパンだった。人によっては、性器でなく、おっぱいやお尻を見たがる人もいた。ひとみは嫌がらずにどこでも見せた。
吞んべえ横丁の人々は彼女のことを可愛がった。ひとみには身寄りがなかったので、呑んべえ横丁の人たちがみんなで世話をしていた。店によっては客集めのため彼女専用の「ピンクの個室」を設けているところもあったが、たいがいは店の奥の隅っこやトイレを借りて‘マッチ一本、ワンコインの遊び’は行われていた。
暗がりの中でマッチを擦る
マッチ特有のにおいがする
ぶわっと炎がつき明るくなる
少女の穢れないパイパンが見える
この世で最もかわいいもの(男にはそう思える)
男の表情(かお)はほころびる
あぁ~この一瞬よ 永遠であれ!
しかし線香花火のようにマッチは儚く消える
つんとくる火薬の残り香
ひとみには不思議なところがあった。小さい頃からエロスに興味があった。しかし、それは性行為とか売春とかではなかった。だから、マッチの遊びはただ見せるだけで、それ以上のことはいくらお金を積まれても拒んだ。
ひとみは自分の性器を見せて、男の人が喜んでいる顔を見るのが好きだった。そんな男の人の表情がとてもかわいく思えた。「本当のエロスって何かしら?」ひとみは小さい頃から、そんなことを考える変な女の子だった。
マッチの炎が、エロスの炎に見えた。マッチの灯りで、自分の性器を眺める男の人の瞳の中にエロスの炎が見えた。ひとみは自分の性器を見詰められただけで、まるで舌でちろちろ舐められているように気持ちがよくなり身体の奥からじゅわっと濡れてくるのが分かった。こうして、ひとみはマッチを売りながらエロスを売っているのでした。
「本当のエロスって何かしら?」
ひとみがそんなことを考えるようになった事情を話しておかねばなりませんね。
彼女は、見詰めるマッチの炎の中に、お父さんとお母さんが浮かぶのでした。
実は、ひとみには仲の良い両親がいました。まだ、ひとみが物心つかない幼い頃の思い出です。
夜中にふと目が覚めると、隣の部屋から灯りが漏れていて、お父さんとお母さんがいるのが分かりました。彼女は襖の隙間からこっそりと二人の様子を眺めました。
ろうそくの灯りが見えます。全裸の二人はろうそくの火を使って遊んでいました。お母さんの顔が時に歪んで見えましたが、仲のいい二人のこと、お父さんがお母さんを虐めているようには見えませんでした。とても楽しそうに思えました。その記憶が、ひとみの深層心理に、ろうそくの炎の中に両親の思い出を作りました。
ある日のこと、ろうそくの火のせいか、家が火事になり燃えてしまいました。その事故で両親は亡くなり、ひとみだけが助かりました。それからは近所の人達みんなが一人ぼっちになったひとみのお世話をすることになりました。
いつしか、ひとみはマッチの火をじっと見つめるようになりました。マッチの火を見ていると心が安らぐのでした。炎の中に優しかった両親の面影が見えるのかもしれません。
そんな彼女がストリップと出会った。
ある日、呑んべえ横丁の客がひとみを劇場に連れて行ったのだった。彼はストリップ劇場通いの常連で、彼女の性癖はストリッパー向きとピンときた。案の定、ひとみの瞳は輝いた。「私が求めているものはここにあるわ。本当のエロスを見つけたい。」彼女はすぐに劇場の扉を叩いた。ひとみはまだ未成年だったが、劇場経営者は若くて可愛い彼女を一目で気に入った。
さっそく踊りの基礎を教え、二か月間の研修を経て、デビューすることになった。
舞台の上から客席を見ると、観客の頭がまるでマッチ棒の芯のように見えた。
彼女は嬉しくなって彼らの頭を撫で擦った。客は踊り子に触られるのを喜んだ。
マッチというのは先端の芯の部分にはガラス粉(塩素酸カリウム)と燃えやすい薬品(硫黄)が塗られている。箱の側面(摩擦面)には赤燐が使われている。その二つを擦ると摩擦熱で発火する仕組み。
その点、観客の頭にはエロスの炎が湯気を立てている。頭が禿げ上がっている方が男性ホルモンの効用からか油がのっている感じで発火しやすいよう。
彼女はオープンショーで、観客の鼻先に性器を近づけ腰を激しく振ります。今では立派に陰毛が生えているせいか、まるでやすりのような摩擦熱を放ちます。直接の接触は無くてもエアのままで客が立てる湯気に発火しました。客の頭が激しくエロスの炎を立ち昇らせます。盆周りのかぶり席のお客から発火したエロスの炎はみるみるうちに後部座席まで燃え移り、場内がエロスの炎に包まれました。圧巻の眺めです。ひとみは劇場が燃え出す様に、ろうそくで家が燃え上がった様を重ねて異常な興奮を覚えていました。ふつうならば両親を奪った火事なので逆の反応をするところでしょうが、彼女の場合は炎の中に優しかった両親の面影を見出しているのでしょう。彼女の求めていた光景はまさにこれでした。
「ここに本当のエロスがある」とひとみは思いました。エロスとは、男と女がお互いの魅力を感じ合い燃え上がる愛の営み。そこには必ずしもSEXは伴わない。いや、むしろ身体を触れ合わないSEXというものがあるのかもしれない。
その瞬間、ひとみの身体の奥からじゅわっとしたものが吹き出ました。彼女の性器は激しく潮を噴き上げました。まるでエロスの炎を消火する放水ポンプのようです。しかし、エロスの炎は消えずにますます燃え上がります。というか、火と水が仲良く共存している不思議な空間がそこにあるのです。
観客はひとみの潮を浴びて、メガネも顔も濡れ、ワイシャツがびしょ濡れ状態。しかし、お客の顔は最高に幸せという表情を浮かべていました。それはまさしく彼女の愛を浴び一体となっている恍惚感なのでした。
燃え盛るエロスの炎と降り注ぐ愛の滴(したた)り、そこにはエロスの極致がありました。
こうして、マッチ売りの少女は、エロス売りの踊り子として一世を風靡しました。
その後、マッチ売りの少女が踊り子の先に何を求めるか興味があるでしょうね。ひとみの関心はマッチの火からろうそくの火に展開していきます。次なる話を期待して下さい。
おしまい