JUNさん(西川口所属)について、H31年3月中の渋谷道頓堀劇場での公演模様を、演目「舞踏会」を題材にして、「花火のような人生」という題名で語りたい。

 

 

 今週、演目「鳥」に引き続き、観劇レポート第二弾になります。先に述べた通り、「神さま」「アフリカ」「鳥」と続いたアフリカ三部作はストリップにおいて大変に画期的な作品だと認識しました。JUNさんの築いた、ストリップにおける金字塔と言ってもいいと思います。

 今回、私の関心はどうしても演目「鳥」に傾いていたので、もうひとつの演目「舞踏会」の方に目が向きませんでした。ポラ時に演目名をJUNさんに確認しましたが半分上の空でした。少なくとも、演目「鳥」の観劇レポートの目途がつくまでは他のことが耳に入らなかった感じ。すみません。ところが芥川龍之介という名前が出た瞬間に目が覚めました。「『舞踏会』という演目は、芥川龍之介の作品から作ってみました。背景は鹿鳴館です。その時代にたくさんの美しい日本があったのかな!!」というポラコメを頂き、一気に関心が向きました。

演目「鳥」の観劇レポートを仕上げて、すぐに演目「舞踏会」のステージをメモりました。合わせて、JUNさんに選曲を教えて頂きました。JUNさんからの作品解説がとても参考になりました。

 

帰宅してすぐにネットで芥川龍之介の小説「舞踏会」を検索し読みました。短編なので10分くらいで一気に読み切れた。JUNさんから「鹿鳴館の時代を演目にしたくて、芥川龍之介の作品にたどりつきました。何度読んでも、とても不思議な世界だと思いました。」「主人公の明子は、初めての舞踏会に行くドキドキからはじけるようなロマンス。老人になるまでの間は、私の勝手な解釈ですが、きっと、ずっとその人の事を想い続けたのではないかなと私は思って、立ち上りまで考えました!!」とコメントを頂いていた。私は初めて、JUNさんがステージで演じようとしたものが見えてきて嬉しかった。

 

感想は後にして、さっそくJUNさんのステージ模様を私なりに紹介したい。

最初に、明治時代の女性の振袖着物姿のイメージで登場。右半分がピンク色、左半分が花柄模様の衣装。足元は二層のピンク地。帯を締める。髪には赤とピンクの花飾り。

音楽に合わせて、白い花をもって踊る。この白い花は、小説に出てくる舞踏会を飾っている菊の花だ。細かい演出が嬉しい。

一曲目は、ALI PROJECTの『鹿鳴館ブギウギ』。生ジャズ風。まさしく演目名「舞踏会」に相応しい曲だ。作詞:寶野アリカ 作曲:片倉三起也。2010年9月29日リリースの11thアルバム「汎新日本主義」に収録されている。

私はALI PROJECTを初めて知る。ALI PROJECT(アリ・プロジェクト、蟻プロジェクト)は、宝野アリカ(ボーカル・作詞)と片倉三起也(キーボード・作曲・編曲)による日本の音楽ユニット。通称は「アリプロ」など。

ジャンルについては公式HPにて「ダークなロック・官能ゴシック・妖しいロリータ・極上バラード・きらびやかでキュートなポップスから大和ロック・現代音楽」などと形容されており、時期にもよるがその振れ幅は広く、多彩なアプローチをとっている。

宝野の歌詞は文語・漢語を主体とした硬質な響きを多用しており、頽廃・幻想・神話世界・世紀末・近未来/レトロフューチャー、エロティシズム、ヒロイズム、シノワズリなどの主題を好む傾向が強い。その蒼然とした言い回しそのものや宝野の擬古調・声楽調のヴォーカルとあいまって異彩を放っている。また宝野は自身が述べるように、三島由紀夫・中井英夫・澁澤龍彦・寺山修司・皆川博子・赤江瀑・倉橋由美子・服部まゆみ・久世光彦などの幻想・頽廃文学、映画などにも傾倒しており、それらへのオマージュとしての詩作も少なくない。

音楽が変わり、着物を脱いでいく。ピンクの上下セパレート衣装。ブラとミニスカートに、白と黒の玉のフレンジが垂れる。

二曲目は、GARNiDELiAの「響喜乱舞」。これも斬新な曲だ。ボーカルのメイリア発案で誕生した“踊っちゃってみた”動画シリーズの一環で企画されたもの。私はこのGARNiDELiAも初めて知る。GARNiDELiA(ガルニデリア)は、日本の音楽ユニット。略称は「ガルニデ」。

芥川龍之介の作品にしては随分斬新な二曲が続いたものだ。(笑)

 ここで暗転して音楽が変わる。

 今度は、舞踏会らしいダンスミュージックが流れる。「美しき青きドナウ」だ。この曲は小説の中でも登場するので嬉しくなる。『美しく青きドナウ』作品314は、ヨハン・シュトラウス2世が1867年に作曲した合唱用のウィンナ・ワルツ。『ウィーンの森の物語』と『皇帝円舞曲』とともにシュトラウス2世の「三大ワルツ」に数えられ、その中でも最も人気が高い。作曲者およびウィンナ・ワルツの代名詞ともいわれる作品である。オーストリアにおいては、正式なものではないが帝政時代から現在に至るまで「第二の国歌」と呼ばれている。

 衣装を着替える。

 ピンクと黒のコントラストの着物姿。右側は黒、左側はピンク、黒い帯を締め、足元は花の刺繍入りの薄い黒地。

 音楽が変わる。また、ALI PROJECTのインスト曲「この國よ静かに目覚めたまえ」。  楽曲の中に「君が代」のフレーズが取り入れられている。このへんは芥川の小説の厳かな世界を反映している。

 ここで全裸になり、そのまま菊の花を持って、ベッドショーへ。

 近くに来たのでアクセサリーを目で追う。純金のネックレス。左手首に純金のブレスレット二本。左足首に純金のブレスレット。

 立ち上がり曲は華やかでノリノリになる。chay feat. Crystal Kayの「あなたの知らない私たち」。2018年12月5日(水)発売.という最近の曲。土曜ナイトドラマ『あなたには渡さない』(主演:木村佳乃)の主題歌。

本楽曲は、chayの代表曲「あなたに恋をしてみました」や「恋のはじまりはいつも突然に」のように、chayがこれまで歌ってきたピュアで一途な恋心とはうってかわって、”パンドラの箱の底には 哀しみ飲み込んだあとの 激しく燃え上がるような あなたの知らない私”“欲しいものさえ諦めちゃ 人生楽しめないでしょ“といった、ドラマのテーマでもある女と女の戦いやスリリングな大人の恋の駆け引きを思わせる歌詞が随所に飛び出す。フィーチャリング・アーティストであるCrystal Kayの甘くメロウな歌声との掛け合いによって、ストレートなchayの歌声は大人の女性の強さを醸し出し、そのコントラストが楽曲の世界観をより深く表現している。

chay(チャイ、1990年10月23日 – 28歳)は、日本のシンガーソングライター、ファッションモデル。 本名、永谷 真絵(ながたに まい)。モデル名、まい。東京都出身。雑誌『CanCam』専属モデル。

盆を回りながら、盆周りのお客の鼻先に菊の花を近づけて驚かせる。お茶目なJUNさんが楽しい。

 

 改めて、JUNさんは本物の表現者なのだと感じた。アフリカ三部作にとどまらず、次から次へと興味が湧き、その自分の中にあるものを全て表現せずにはをれないのだ。

 そして、この作品「舞踏会」、そして主人公である明子に、JUNさんを重ねてみると、なんとなく分かるものがある。

 この小説の主題は‘花火’にある。いみじくもフランス人の海軍将校が言った「私は花火の事を考えていたのです。我々の生(ヴイ)のような花火の事を」という言葉に凝縮されている。

 花火は美しいが一瞬にして消える。舞踏会の場でみんなの気を引いた明子の美しさも、花火と同じように一瞬にして消えていく。小説の最後の最後に、まるで付け足しのように、老婦人になった明子が登場するのは、華やかだった明子も平凡な老婦人になってしまったことを暗示している。それほどに人生とは花火のように儚いものなのだ。

 しかし、人生は短くも、いや短いからこそ、花火のように美しい時期が必ずあると信じたい。

 JUNさんは平凡なOLから、一大決心してストリップの世界に身を投じた。そして、今、5周年を前にして大輪の花を咲かせている。踊り子というのは仕事柄それほど長く続けていけるものではないだろう。しかし短いながらも花火のように美しく輝けることを、今のJUNさんは実感し、証明しているのだと思う。

 ラストの曲「あなたの知らない私たち」は、まるで花火のように華やかに聴こえてくる。

 

 

平成31年3月                           渋谷道劇にて

 

 

【JUNさんからのお返事】

・(ポラコメにて)

さっそく読ませて頂きました。演目から、歌手の情報まですごい!!! そして、小説を読んでくださったのですね!!

華やかさは、一瞬である!! その通りですね。

 

・(お手紙にて)

レポートレベルではないですね!! 作家さんです!!

私の表現と、太郎さんの表現がとてもマッチングしています!!

本当にありがとうです。