H25.8
童話『ひまわりと虹色天女』
~青山はるかさん(晃生所属)の新作「天女」を記念して~
その年は特別に暑い夏でした。
太陽の子と称されるひまわりは、熱い太陽の日射しが大好き。熱い太陽に顔を向け、黄色い顔を焦げ茶色に日焼け。元気いっぱいで、太陽に届きそうな勢いでぐいぐいと伸びていました。
あるとき、いつも一緒のテントウムシがひまわりに囁きました。「ひまわりさん、ずいぶん背丈が高くなりましたね。だから足元には気づかないかもしれませんが、仲良しのタンポポさんが枯れかけていますよ。」
テントウムシの言葉にハッとし、ひまわりは周りを見回しました。ひまわりが大きくなり過ぎたために日陰になってしまったところもあります。なによりも原因は異常なこの暑さです。タンポポだけではなく、周りの動植物たち全てが、あまりの暑い夏に元気がありません。夏バテどころか、死にかけています。
ひまわりはこの状況が急に心配になりました。テントウムシの言葉に漸く周りの状況に気づいたのが恥ずかしかったし、自分だけが元気なのがとても悪いことのようにも思えてきました。
ひまわりは空を見上げて、母なる太陽に向かって叫びました。
「雨を降らせて下さい。このままでは大切な仲間が死んでしまいます。助けて下さい。」
しかし、太陽はあまりにも高いところにあるために、ひまわりの声は届きませんでした。
同じように、この異常気象を心配している風の妖精がいました。風の妖精は、ひまわりの叫びを天高く舞い上げました。さすがに太陽までは届きませんでしたが、空高いところに居た天女がひまわりの悲痛な声を聞きつけました。
そして、地上の生き物たちを救うために、雨を降らせてあげようと考えました。
太陽の光の中には七つの光線があります。天女はその光線を束ねて、雨が降るように調整することを知っていました。天女は大きな白い羽根を広げ、白い羽衣をひらひらさせ、光を包み込むような仕草を始めました。華麗で荘厳な動きです。それこそが‘雨恋(雨乞い)の舞’です。
白い羽衣は太陽の光を含みこみ虹色に輝きました。すると、天女の身体から勢いよく水玉が吹き上げました。水玉は雨水になって地上に降り注ぎました。
地上の生き物たちは、恵みの雨に大歓声を上げました。
ただ、天女は雨の量を調整する術を知りませんでした。恵みの雨は、ある特定の場所に、時に想定外の量を降らせました。そのため人々はゲリラ豪雨と呼びました。
ゲリラ豪雨は強い風雨となり、背が伸びすぎたひまわりを薙ぎ倒しました。ひまわりは覚悟していました。この世には大いなるバランス(生命秩序)があります。自分だけが大きくなり過ぎたら、いずれ神様は我々ひまわりを淘汰しバランスを回復するはずだと悟っていました。ただ、一部の背の高いひまわりは犠牲になっても、小さなひまわりが生き残ります。それが神によるバランスなのです。だから、倒れたひまわりは安心して目を閉じました。
お空のあちこちにたくさんの虹がかかっていました。
背の高いひまわりたちは、お空の虹の場所に「虹色天女」が華麗な舞いを踊っていたことをしっかり観ていました。
おしまい
【解説】『ひまわりと虹色天女』・・・
大阪晃生のH25年8月お盆特別興行にて青山はるかさんの新作「天女」が初披露された。初日に一回目ステージで拝見し、さっそく童話の構想を練り始めた。
たまたま1回目のフィナーレ時、はるかさんがひまわりのドレスを着て現れた。この暑い夏に、ひまわりはピッタリだ! これだ! ひまわりを題材にしようとインスピレーションが働く。
ひまわり、太陽、天女・・・これらを材料にしたストーリーが頭の中を駆け巡る。ギラギラ日照る太陽に、ひまわりが雨乞いをするも叶わず、天女が雨を降らせるという展開にしよう。題名は『ひまわりと虹色天女』とすぐに決めた。
ちなみに今回は「天女」ではなく「虹色天女」にしたい。最近、目黒あいらさんに『虹色の彼方へ』、羽音芽美さんに『虹色のキャンディ』を書いているので、今回のはるかさんの作品で虹色三部作にしたいと思い至る。
翌日できあがった童話をはるかさんに喜んでもらいホッとする。早速、同じお盆週に池袋ミカド劇場に出演中の、仲良しハルナギ・コンビの渚あおいさん(東洋所属)にも読んでもらう。すごく嬉しい感想が返ってきた。「天女のお話は、たろう作品の中でもTOP5に入る、ステキなお話だと思いました。ひまわりの健気さにぐっときました。」ひまわりの気持ちが伝わっていて作者として大満足―!!!
この童話は夏らしい作品に仕上がったので、他の踊り子さんにも読んでもらった。すると、あるロックのお姐さんから「このお話は奥が深いですね」という感想を頂いた。さて、どの辺を奥深いと感じたのかなと自問してみた。
ハッと気づいた。物語のひまわりは人間を象徴しているんだ・・・と。
今回の童話には、今年の夏のトピックスとして猛暑とゲリラ豪雨という異常気象を織り込んだ。
今年は全国各地で40℃を超える猛暑になり、日本観測史上最高気温41℃を高知の四万十市で観測した。しかし、都内のビル群の間を歩くと、そんなもんとは思えない、まさにサウナ状態だ。アスファルトの照り返しとビルからのクーラー排熱で46~47℃くらいあるんじゃないかな。東京や大阪などの大都市はアスファルトに舗装し過ぎで、真夏はもう人間が住む環境ではなくなってきている。真夏に東北の仙台に降り立つと、同じ猛暑日でも東京とは一味違う涼しさを感じる。それだけ仙台はまだ土の部分が多く残っている証だと思う。そんなことをストリップ遠征しながら痛感していたので、無意識のうちに童話に書き込んでいた。
この猛暑はまさに地球温暖化現象による。おそらく我々が小さかった頃に比べて10℃近く気温が上昇している。暖流が北上しているというニュースを見ながら、いずれ大変なことにつながると危惧される。地球温暖化は人間の責任であり、異常気象も人災と云える。
今年は熱中症で亡くなる人が多いというニュースが流れるが、人間はまだクーラーで凌げるからまだいい。ペットは大変だ。我が家のビーグルは、日中は誰もいなくなりクーラーを切っている家の中で、涼しいところを探しては、ぐったり横たわっている。ものすごく気の毒になる。きっとペットの死亡率は人間より高いだろうな。
万物の長になった人間は周りの生き物に気を配らないといけない。自分のことばかり考えて発展していっては、いずれ痛いしっぺ返しを食う。背丈が高くなりすぎたひまわりのように薙ぎ倒されてしまうだろう。
この話はそういう警鐘を含んだ物語になっている。
H25年8月