童話『宇宙に咲く花』
~羽音芽美さん(晃生所属)の演目「GOSICK」を記念して~
暗黒な宇宙空間。
私は一機のロケットを操縦し、今、ストリップ星に向かっていた。その星では、全宇宙ストリップ大会が催されることになっていた。
実は、私が今精力的に応援しているストリッパーのメイミンがその大会に出場するために先に地球を発っていた。
話は少し溯る。若き花形スターになってきたメイミンは地球代表の選抜大会に出場したがった。まだ若いメイミンには全宇宙ストリップ大会出場は早いと思ったが、彼女の一途な想いに私は賛成せざるをえなかった。
その大会でグランプリを獲得すれば全宇宙的な人気ストリッパーになることを約束される。ただ、そうすれば、はるか彼方の星の劇場にも出演しなければならなくなり、今までように頻繁に会えなくなるなぁと感じた。でも、私は大好きなメイミンに夢をもって叶えてほしいと心から念じていた。
そして、メイミンは準ミスではあるが見事に地球代表に選抜された。私は彼女の大好きな薔薇の花束をステージに立つメイミンに贈った。彼女の歓喜する姿が目に焼き付いた。
私もすぐに彼女の後を追って、ストリップ星に応援に行くつもりでいた。
ところが、大変な悲報が入る。メイミンの乗ったロケットが遭難したというニュースに私の心は凍りついた。その事実を受け入れられない。私はすぐにロケットで単独飛行に踏み切り、もうすぐ、その遭難現場の近くまで来ていた。そのあたりはローズ星群と呼ばれている。
突然、私の目の前の宇宙空間に一人の美しい女性の姿が浮かびあがった。長い髪をなびかせ、切れ長の大きな瞳、透き通るほどの白い肌。
「メイミン・・・」 紛れもなくメイミンだった。私の目から涙が溢れた。
メイミンは私が応援に来てくれるのを待っていたかのように、私に微笑んで、踊りだした。
まるで、暗黒の宇宙に美しい大輪の花がパッと咲いたよう。
彼女がまとう衣装は薔薇のごとく赤く映え、漆黒の宇宙に薔薇のオーロラがかかる。そのオーロラはひらひらとはだけ、形のいい大きなバストが見え隠れした。なんとセクシーな光景だろう。更にオーロラの裾がめくれ、セクシーな太ももが露わになった。そして、彼女のブラック・ホールが見えた。
その瞬間、ロケットは稲妻を受けたように激しく揺れ、操縦不能になった。宇宙に激しい風が吹いているかのようだ。しかし、空気の無い宇宙空間に風が吹くはずがない。強い引力がロケットを引きつけているのだ。それは男性を魅了するエロスの力であり、私を求めるメイミンの愛の力であった。
ロケットは彼女のブラック・ホールに吸い寄せられた。私の身体は金縛りにあったように動かなくなった。そこは甘美な匂いに満たされ、温かい粘液が私の全身を包み込んだ。強い快感が渦巻いた。私はこのまま果てたい、そしてこのまま死んでもいいとさえ感じた。私は気を失っていた。
「目を覚まして!」メイミンの泣き声が聞こえた。
「死んじゃダメ!私の分も生きてほしいの!そして今までどおりにストリップを愛してほしい!」
目が覚めると、操縦席の上に一本の赤い薔薇の花が置いてあった。ロケットの窓の外には、メイミンの姿は消えていた。私は薔薇の花を握りしめて、涙をこぼした。
ロケットは元のように動き出した。
私はストリップ星に到着した。
全宇宙ストリップ大会は盛大に催された。いろんな星から選抜されたストリッパーが集まっていた。地面につくほど乳が大きく垂れ下がっているおっぱい星人もいたし、性器がむき出しになっている星人もいた。おそらく前者は授乳を重視した女性の進化形であろう。また後者は生殖を重視した進化形なんだろうが、やはり性器はふだんは隠しておく女性らしい恥じらいがあった方がいい。いろんな体型をした星人がいたが、地球人に一番近いのは猿の惑星から来た女性かな。毛深いが体型は同じ。こちらは人間に進化する前の姿と云える。
私には地球人の女性が一番美しいと思えた。見慣れているせいもあろうが、乳や性器という機能が突出しているわけでもなく、美とエロスがとてもバランスしている。案の定、今回の全宇宙ストリップ大会のグランプリは地球のミス代表が獲得した。メイミンが出場していたらもしかしたかも・・と思わずにはいられなかった。
地球に帰還した私は、それからもメイミンの亡霊を追うように劇場を彷徨った。
私はいつも薔薇の花を持参していた。
ふと淋しいと感じるときは夜空を見上げた。ローズ星群が薔薇色に輝くと、メイミンが笑顔で踊っている気がする。だから淋しくなんかない。
おしまい
【解説】『宇宙に咲く花』・・・
H25(2013)年7月結の渋谷道劇に晃生の羽音芽美さんと東洋の渚あおいさんが出演。三番手と四番手。
この週は、平日は迷わず渋谷道劇に通わせてもらった。「王子様だぁ♡おはよん 会えてとっも嬉しいわん。」「今日も王子様はやってきました。めいみ幸せ~」と芽美さんに喜んでもらえた。私は「平日の王子様」なので平日だけですが(笑)。
会社帰りに三番手の芽美さんの三回目ステージはなかなか間に合わない。三回目ステージは新作「Candy」だったが、四回目ステージは芽美さんの代表作「GOSICK」。
芽美さんに言わせると、この「GOSICK」と「雅」が自分の代表作とのこと。デビュー1年半頃に出した「GOSICK」を一番多く演じているらしいから、思い入れの強い作品のようだ。私はこの作品を二年目を迎えたばかりの頃、京都DX東寺で初めて拝見している。その頃の作品「龍馬伝」の印象が強かったので、龍馬の女版というイメージで観ていたのを記憶している。当時は、たまにしか芽美さんのステージを拝見していなかったが、今のように頻繁に追いかけるようになると昔の作品も全く違う味わいが出てくる。
今回、毎日「GOSICK」を拝見しながら、この作品を童話にしてみたくなった。というか、眼美さんの作品は全て太郎ワールド(童話かポエム)で表現してあげたい。彼女の作品は全て、私のインスピレーションと激しく共振(シンクロナイズ)する魅力とエネルギーに満ち溢れている。
「GOSICK」とは何か?
私は顔見知りの芽美ファンに聞いてみた。「アニメの題名らしいが内容は知らない。インターネットで検索してみたら」と教えてくれた。
さっそくインターネットで検索すると、五六年前に若者に人気があったアニメということが分かった。日本からの留学生・久城一弥が、天才的頭脳をもつ同級生ヴィクトリカ・ド・ブロワと出逢う。この退屈娘が次々と難解な事件を解決していくストーリー。彼女は煙管や扇子をもつ。芽美さんが二つの扇子をもって踊るのはこのためかぁ~。
このアニメのタイトルに「美しい怪物は混沌の先を視る」とあり、興味がそそられるところもある。
ただ、一旦このアニメの内容にこだわることは止めて、自分の感性のままにこの作品を捉えようと決めた。
ちなみに、私は、最初にゴシックと聞き、ゴシック建築とかゴシック文字が思い浮かんだが、全く違った。ただ、ゴシック趣味とかゴシック的嗜好というと、神秘的、幻想的、超自然的な意味をもち、ゴシック小説というとホラー推理小説のことらしい。私がイメージした童話は決して的を外していないと思える。
この作品「GOSICK」を一瞥するところ、扇子を二つ操って踊る姿には中華風なイメージもある。しかし、私の目には、この作品が荘厳なスベクトラに映る。そうだ!宇宙的なイメージにしよう! 私は、童話のタイトルを暗黒の宇宙に咲く花にしようと決めた。
この芽美さんの演目「GOSICK」の最大の特徴は、華やかな衣装にある。おそらく芽美さんが最初に手掛けた自信作であろう。「この衣装は誰にも譲れないわん。」とポラにコメントしてくれていることからも強い思い入れが窺える。私には、ステージ衣装全体を通して、赤が強く印象付けられた。そのため、この赤をテーマに持っていこうと考えた。衣装を真っ赤なオーロラにしたのも意識的な演出である。
二度ほどステージを観ていたら、ストーリーが私の頭の中を勝手に流れた。宇宙で死んだストリッパーを追い求め、操縦士は彼女の幻影が宇宙空間で舞うのを見る。ロケットが彼女のブラック・ホールに入っていく場面を想像すると最高潮に興奮した。私はそれを文章に落とし込んだ。ところが、何か物足りない。味付けが欲しいと感じた。ストリップ星や全宇宙ストリップ大会は後付した。それでも何か足りない。ずっと悩んだ。以前、「愛の蔓Part2(天女降臨)」を創作しているときに、この物語に何か足りないと思い悩み、最後に白いモンシロチョウを入れることを閃き、その瞬間に物語がパッと華やいで完成したことを思い出す。今回の作品なら何を付け加えたらいいのだろうかと試行錯誤した。そして「赤い薔薇」がふと閃いた。宇宙で彼女の幻影が消えたときに操縦席に一本の赤い薔薇の花を置く。この瞬間に物語が色づいた。それに合わせて、物語の最初から最後まで「赤い薔薇」で筋を入れた。テーマを「赤」に置いたので、オーロラと薔薇、そしてメイミンの死(血)が繋がる。
ひとつの作品を創る上で「何かが来るまで待つ」という姿勢はとても大切だと私はいつも思っている。時間をかけて一つの物事にこだわり抜くと、突然何かが降ってくるように閃くもの。私は童話や詩やレポートを書く上で、この瞬間が最高に楽しい。だから、出来る限りテーマや作品にこだわりたいと思っている。手塩をかけた分だけ自分色に染まり愛着が深まる。
それらを大好きな踊り子さんにプレゼントするときは、その人のことを長い時間ずーっと考えている。大好きであればあるほど、その間はずーっとハッピーでいられる。今回も、芽美さんが私に会うたびに「できた?」と聞いてきたので、「大体はできたけど、いま推敲中なんだよ」と途中経過を話すと嬉しそうにしていた。後でポラに「GOSICKですごく悩んでくれて私はとても嬉しい♡」「タロウちゃんが私を想いながら創ってくれたことがすごく嬉しい♡」とコメントしてくれたが、私も同じ気持ち。ステージから発想を得て童話等を創る作業はまさに二人の共同作業なのだ。
現時点では、これで芽美さんに渡そうと思う。本当はもっと時間をかけて、というか時間を置いて見直したらまた新しい閃きで全く別の展開に変化するかもしれないが、これ以上、芽美さんを待たせるわけにもいかないだろう。
H25年7月 渋谷道劇にて
〔事後談〕
芽美さんを死なせちゃうストーリーはどうかなと気になっていたが・・・
芽美さんは喜んでくれて私も嬉しかった。「宇宙ですね!! そうくるとは思わなかった!! 私が死んでもタロウちゃんの目の前で踊っていると思います。」