道頓堀劇場所属の踊り子・水鳥藍さんについて、H30年4月頭の渋谷道頓堀劇場における4周年週の模様を、「ストリップの光と影」という題名で語りたい。

 

 

H30年4月頭の渋谷道頓堀劇場に顔を出す。

今週の香盤は次の通り。①星愛美(晃生)、②RUI(栗橋)、③本城ナナ(道劇)、④花咲はな(道劇)、⑤時咲さくら(TS)、⑥水鳥藍(道劇)〔敬称略〕。RUIさんがラスト渋谷。花咲はなさんが2周年週。水鳥藍さんが4周年週。

 

4月7日(土)、二回目ステージ終了後に、花咲はなさんの2周年、水鳥藍さんの4周年の合同周年イベントが催された。時咲さくらさんの司会で、楽しい時間を過ごすことができた。

イベントを拝見しながら、私はこんなことを考えていた。

最近の渋谷道頓堀劇場は以前に比べて元気がなくなったなぁ~。今日はイベントもあり客入りがいいが、平日に来ると客入りも少ないし、かくいう私自身かなり来る頻度が減った。思えば、この1,2年の間で匠悠那さん、川中理紗子さん、石原さゆみさんという超人気者が次々と引退し、有馬美里さんや六花ましろさんというベテランも抜けた。新人はなかなか定着しないし、若手も伸び悩み、消えていく人もいる。道劇常連を自認していた私としても淋しい限り。そんな中で、水鳥藍さんが一人気を吐いている感がある。

藍さん本人がどう思っているか別にして、いやおうなしに渋谷道劇は水鳥藍さんの時代になった。藍さんがデビューした年に、私はそうなるだろうと予感していた。当時は小町れのさんもデビューし、ダンスの上手い仲良しの二人がこれからの道劇を引っ張っていくものと確信していた。しかし、れのさんがいなくなり、藍さんが一人で頑張っている姿に胸が締め付けられる。新人のダンス指導も率先してやり、新しいフィナーレダンスも藍さんが作ってくれた。ほんと藍さんがよく頑張ってくれている。

今回、藍さんは周年作で「ステージの表と裏」を演じているが、私にはそれが「ストリップの光と影」にも思えた。

振り返れば、渋谷道頓堀劇場はストリップ劇場の老舗でありながら、これまでも劇場としての浮き沈みの歴史を経験してきている。私が知っている限りでは、かぐや姫として名をはせた清水ひとみさん(元社長)や伝説のアイドル影山莉奈さん等がいた全盛期、そして閉館、清水ひとみさんプロデュースによるストリップ・ミュージカルとしての2000年再スタート、そして匠悠那さんデビュー当たりからはポラ全盛期を迎える。しかし再興以降も、清水ひとみ社長の逮捕、札幌劇場の閉館など、劇場経営としては幾つもの苦渋を味わっている。すべては「ストリップの光と影」か。

以上、神妙な前置きになってしまい申し訳ない。

 

気を取り直し、水鳥藍さんの4周年作「モンマルトルの丘」を紹介する。

 初めてステージを拝見し、この演目名を聞いたとき、これは映画「ムーランルージュ」がモチーフなのかなと思ったが、藍さんから「周年作は・・・別にムーランルージュってなわけではなくて、show girlの表と裏的なオリジナルだよー。誰かと出会って恋やSEXがあっても・・それでも今日も幕は開く!とゆーラスト・・・のつもり。Show must go on ,no matter what happen!とゆー、ぼくなりのメッセージかなぁー!?」という解説のポラコメを頂く。また演目名は「同じ曲を実は3曲使ってる!」ことから付けたと教えてもらう。藍さんは選曲に思い入れが強いので、今回もじっくり曲を味わいつつ、本作について語りたい。

 

 最初に、パリのムーランルージュの紹介映画からとったという音楽が流れる。

向かって左側の舞台に化粧台がひとつ。机の上に置かれている四角い鏡の周りには、明るい丸い白熱灯がずらりと並ぶ。その前に、開演前のジャージ姿で藍さんが座り化粧を始める。

一旦、暗転し、フレンチカンカンの音楽に変わる。

 フレンチカンカンのダンスが始まる。フレンチカンカンは英語読み(French cancan)、フランス本国では単にカンカン(cancan)と呼ぶのが正当である。

 衣装はムーランルージュの映画ばりに、赤い上着に、赤・白・青が幾層にも重なるロングスカート。黒いストッキングに黒いブーツ。ハイキックでスカートを捲り上げて巧みに操る、その挑発的且つ刺激的な体の動きがグッド!

次は、セルジュ・ゲンズブールが作りジェーン・バーキン(Jane Birkin)が歌った曲「アクワボニスト(L'aquoiboniste、邦題「無造作紳士」)」が流れる。いかにもフランスっぽいロマンチックなメロディ。この曲は1978年のアルバム「想い出のロックン・ローラーEx-Fan des Sixties」に収録され、1999年にTBSドラマ「美しい人」の主題歌に使用されて日本でも知られるようになる。

 また暗転して幕が下りる。

ロングスカートを脱ぎ、レオタードぽい格好へ。そしてLouis Aragon の「Que serais-je sans toi(もしもあなたに会えずにいたら)」という詩の朗読に合わせて激しく踊る。音楽ではなく、ただの詩の朗読で踊りを魅せれるのは藍さんならではの演出である。

また暗転して幕が下りる。

音楽がPatrick Bruel(パトリック・ブリュエル)の「モンマルトルの丘」に変わる。

黒いハットをかぶり、肩紐で吊るした赤いドレス姿で登場。生地は四角い網網状。

そのまま、ベッドショーへ。黒いストッキングを脱ぎ、黒いハットと黒いブーツを履いたまま盆へ移動。

再びジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールBirkin & Serge Gainsbourgの曲「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」(原題: Je t'aime... moi non plus)(1969年)になる。フランス語の、それも女性の官能的な声で、ムードあふれるメロデイに合わせ「ジュテーム、ジュテーム」と繰り返し、繰り返し、囁きかけて来るので、つい聴き入ってしまう。

藍さんのアクセサリーを目で追う。白い数珠状のネックレス。指先には黒・赤・白とさまざまな色彩のマニキュア。

立上り曲も「モンマルテルの丘」でTomomi Hasunuma 日本語バージョン。

ここで一旦暗転し幕が下りる。

終わったかと思い気や、またもや「モンマルトルの丘」のインスト(ブラスバンドversion)が流れ、藍さんが黒いハットをかぶり、透明な足高のハイヒールを履いて登場し舞台の終演を飾る。

 

モンマルトルの丘は、パリで一番高い丘で、パリ観光名所になっている。今回の演目では、バージョンを変えて三曲使用しているところがミソになっており、演目名にしている。藍さんは今回の演目で、一人のショーガールの表と裏のドラマを演じてみたと話してくれた。

言うまでもなく、モンマルトルの丘は若き芸術家たちが憧れるパリの象徴である。どれだけ沢山の若きダンサーたちがモンマルトルの丘を目指して汗を流したことだろう。彼らの汗の量はモンマルトルの丘の体積よりきっと多いことだろう。また、そこには、天才や努力家たちの多くの光と影のドラマがあったはず。

不思議なことに、藍さんの演目「モンマルトルの丘」を観ていて、私は最近観た他の踊り子さんのステージのことをいろいろ思い浮かべた。

箱館エリィさん(TS所属)の演目「牧神の午後」が印象的で、それを機に山岸凉子の漫画「牧神の午後」に出会い読んでみた。このバレエ「牧神の午後」を創り上げ演じた天才バレエダンサー、ニジンスキーの生涯における光と影がすごくショッキングだったな。また、徳永しおりさん(ロック所属)の演目「月の子」から、清水玲子の漫画「月の子」も読んでみた。その主人公の彼氏はバレエダンサーだった。と、様々なドラマが思い浮かぶ。

さらに、今回の演目中にセルジュ・ゲンスブールの名前が出てきてハッと思い出した。鶴見つばささん(ロック所属)の演目「人形」で使われたフランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」という曲を作ったのも彼だ。この曲は1965年、フランス・ギャルというアイドル歌手が17歳で歌い大ヒットした。ところが、その歌詞をじっくり確認すると、まだ人生経験も浅い、歳も若いアイドルが恋愛について歌うのを揶揄する内容になっている。彼女に作詞作曲したゲンズプールは、他にも皮肉や嫌味が入っている歌を彼女に提供した。ギャルは当時、「夢見るシャンソン人形」の中の「蝋人形、詰め物人形」といった歌詞やタイトルに込められていた二重の意味に気付かなかった。後年になりギャルは本作と距離を置き、歌うこともなくなったという。このエピソードを思い出した。

彼に興味を惹かれネットで調べてみた。・・・

セルジュ・ゲンスブール(Serge Gainsbourg、1928年4月2日 - 1991年3月2日)は、フランスの作曲家、作詞家、歌手、映画監督、俳優。1965年、フランス・ギャルがセルジュの曲Poupée de cire, poupée de son(『夢見るシャンソン人形』)でユーロビジョン・ソング・コンテストのグランプリを獲得する。彼.はフランスを代表する芸術家. 作曲家、作詞家、歌手、俳優、映画監督として名を馳せたが、同時に数々の美女と浮名を流したことでも知られる伝説の男. ****. 容姿にコンプレックスを抱え、自らのことを「醜男」と呼んでいたゲンスブール。 コンプレックスと自信(才能)の狭間で葛藤した生き方が、未だに世界中の男性の共感を呼んでいる。 彼の愛した煙草は「ジタン」 ...

本作品で選曲されたジェーン・バーキン(Jane Birkin)も彼と関わった美女の一人だった。

 

 ステージという表舞台で活躍したダンサーや歌手たちの裏方として、数知れない天才たちがいたに違いない。間違いなくゲンスブール.もその一人である。

モンマルトルの丘は、多くの天才たちのドラマの場であった。きっと今でも・・・

Show must go on ,no matter what happen!

 

 

平成30年4月頭                        渋谷道劇にて