今回は、東洋所属の踊り子・荒木まいさんの、二周年作「あくまちゃんとてんしちゃん」について、「ピンクに染まっちゃう」シリーズ(その7)と題して語ります。
荒木まいさんがH28年10月結に大阪東洋ショー劇場で二周年を迎えた。
私はH28年10月24日に東洋に顔を出す。二周年作「あくまちゃんとてんしちゃん」を拝見。よしっ! 周年作の観劇レポートと童話を書こうとメモをとる。一日の観劇だったので、次のTSにて仕上げて渡そうと考えていた。
さて、H28年11月結のTS興行が始まる。TSは翌年早々1月15日で閉館するため、11月からTSさよなら公演が始まっていた。これがまいさんのTSラスト公演になる。
今週のTSの香盤は次の通り。①俐菜(TS)、②永瀬ゆら(林企画)、③浜崎るり(晃生)、④愛野いづみ(道劇)、⑤橘メアリー(道劇)、⑥荒木まい(東洋)〔敬称略〕。橘メアリーさんがTS初乗りになる。
さて、荒木まいさんの二周年作「あくまちゃんとてんしちゃん」について語ろう。なお、この作品の正式タイトルは「あくまちゃんとてんしちゃんとめがみしゃま」で三人の登場人物がいるのだが、長くなるので表向きは「あくまちゃんとてんしちゃん」という題名にしているとのこと。
ステージの模様を話そう。
最初に、黒いドレスで登場。膝上までの長いワンピースで、スカートの前は割れていてきれいな足が見える。黒の色彩だが所々キラキラしていてとても華やかなドレスだ。よく見ると、頭には赤・青・赤の三つの宝石の付いたヘアバンド、首にも赤い宝石の付いたペンダント。この黒い華やかなドレスが、この作品にとてもインパクトを与えており、お客さんとしてもいつものまいさんと違う新鮮さを感じて強く印象に残るようだ。
足にはパンタロンのように裾広がりの黒い脚絆を付ける。足下には白いシューズがちらりと見える。
まさに「あくまちゃん」らしく、頭には先端が矢印形の黒い角が二本、お尻にも先端が矢印形の黒い尻尾が付いている。
ツインテールで、かわいらしい小悪魔ルックである。
全体として黒尽くめなのだが、長い手袋が、右手は黒で左手は白。ここだけが白い。この点は後で解説する。
次に、黒い衣装を脱ぐと、下に白い衣装が現れる。こちらが「てんしちゃん」。
胸部とスカートのセパレート衣装。それぞれ裾にピンクのひらひら。頭にも白いふわふわの羽根が付いたヘアバンド。そして、胸部に大きなピンクのハート形、スカートや髪飾りにもピンクのハート形。おっ、足下は最初から白いロングブーツを履いていたんだ。
白とピンクのかわいい天使ルックだが、このときも長い手袋だけが、右手は黒で左手は白。ここだけが黒い。
軽快に踊る。最後に金の斧を持って終わる。
場面が変わり、最後に女神さまが現れる。
頭には銀の王冠。白いロング衣装。大きな白い天使の羽根を背中に付けている。羽根の中、肩部、胸部、足下にピンクのひらひら。これが「めがみしゃま」に当たる。
花カゴに、金の斧、銀の斧、鉄の斧の三本が入っている。それをお客さんに「自分が落としたのはどれですか?」と聞いて選んでもらう。鉄の斧だとまいまいシールがもらえる。金の斧や銀の斧を選ぶと額を指でつんと小突かれる。
この女神さまが衣装を脱いで、そのままベッドショーに入っていく。
広い大阪東洋ショーで初めてこの演目を観ていたとき、盆周りにいたため、離れている舞台のところでの、金の斧における女神さまと客とのやりとりがよく分からなかった。狭いTSの舞台のお陰で、このやりとりが漸く分かった次第。
お客の中には、シールよりも、まいちゃんに指でつんつんされたくて、わざと金の斧を取ったり、Tさんなんかは三本の斧を全部取ったりしていた。(笑)
まいさんの言葉によると「ストーリーというか、『素直に生きましょう』というメッセージを込めて作りました。めがみしゃまが教える感じです。」
言うまでもなく、これは誰もが知っている有名なイソップ童話の「金の斧 銀の斧」である。・・・
きこりが川辺で木を切っていたが、手を滑らせて斧を川に落としてしまう。困り果て嘆いていると、ヘルメース神が現れて川に潜り、金の斧を拾ってきて、「おまえが落としたのはこの金の斧か」と尋ねた。きこりが違うと答えると、ヘルメースは次に銀の斧を拾ってきた。「おまえが落としたのはこの銀の斧か」と尋ねた。きこりはそれも違うと答えた。最後に無くした鉄製の汚い斧を拾ってきて「おまえが落としたのはこの鉄の斧か」と尋ねる。きこりはそれが自分の斧だと答えた。ヘルメースはきこりの正直に感心して、三本全てをきこりに与えた。
それを知った他のきこりが、わざと斧を川に落とした。ヘルメースが金の斧を拾ってきて同じように尋ねると、そのきこりはそれが自分の斧だと答えた。ヘルメースは呆れて何も渡さずに去り、恥知らずなきこりは自分の斧を失った。・・・
以上のあらすじである。この話は「神は正直な者を助け、不正直な者には罰を与える」という教訓である。
まいさんが今回の演目について次のように解説してくれた。
「黒いドレスは天使の心が残ったあくまちゃん。白いドレスは悪魔の心が残ったてんしちゃん。てんしちゃんの中の悪魔が悪戯をして、めがみしゃまの斧から金を盗ってしまう・・!」
なるほど、先に説明した衣装の中で、片方の手袋のみが違う色だったことは、このことを意味していたのか。実際には100%完全な悪魔もいなければ、100%完全な天使なんていない。聖人君主といえども魔が差すこともあろう。天使のように可愛い女の子だって魔性の部分を持つ。
まいさんの解説の中に「この作品の裏タイトルは『堕天使』なんだ☆荒木なりの堕天使☆」とある。
ところで、最近のまいさんは口癖のように「ファンが逃げていく!」と嘆いている。このことは先ほどの解釈で理解できる。・・まいさんは天使のように可愛い。だから男達は夢中で寄り添っていく。ところが、まいさんの小悪魔的な言葉にたじたじにされ、男達は腰砕けになる。まぁ、器量の大きい男なら、まいさんのきつい言葉も上手に包み込んで受け止めてくれるんだろうと思う。まいさんはそういう男性を求めているのかな。私なんかは高齢のため鈍感力を働かせて、まいさんの言葉に焼きもちや甘えを感じて逆にかわいいなと思っている。例えば、今週も二日目に顔を出すと「来るのが遅いー!」と叱られる。これは初日から会いたかったのよ!というまいちゃん流の愛情表現だと思えばかわいく感じる。(失礼!)
考えてみれば、ストリップの世界というのは、踊り子は強くなければやっていけないし、一方、お客は女に相手にされない弱い男達が多いわけだから、こりゃ、なかなか以心伝心とか相思相愛にはなりにくい(笑)。しかし、ストリップというものは踊り子さんが高嶺の花的な憧れの存在だからこれでいいんだ!と割り切ることもできる。
ところで、先ほどのイソップ童話「金の斧 銀の斧」の中にヘルメース神が出てきた。日本では単に女神様と訳すことが多いが、西洋ではヘルメース神としている。
このヘルメース神(HERMES)というのは、神々の伝令役、商業と牧畜の神、盗人や詐欺師の守護者、道祖神、旅人の保護者で教会の守り手、死者の魂を冥府へと導く霊魂導師など、とてもフレキシブルな活躍を見せる。まさに天界のマルチタレント。
盗人や詐欺師の守護者でもあるわけだから、彼は清濁併せ呑む懐の深さをもっている。オリュンポス十二神の中で最も寛容な性格と言われる。
まいさんは無意識の中で、ヘルメース神のような器量の大きい男性を求めているのかもしれないね。今回の作品「あくまちゃんとてんしちゃん」は、まいさんの想いが意識的あるいは無意識的に表現されていると考えると面白い。変な感想を書いちゃったかな。まぁ、まいさん自身、私に「それぞれの解釈で大丈夫なのです。」と書いてくれているので安心してますよ。(笑)
最後に、二周年記念プレゼントとして童話を創りました。私のまいさんへの恋心とジョークは伝わるだろうか。(^0^)
はい、今週も、まいさんのお陰で私の心はピンクに染まっています。
平成28年11月25日 TSミュージックにて
~荒木まいさん(東洋)の二周年作「あくまちゃんとてんしちゃん」を記念して~
ある若者がストリップ観劇した帰り道、小川の側を通りかかった。
大好きな踊り子のステージを観れて心は満たされ足音も弾んでいた。
そこに一陣の風が吹き抜けた。
若者がストリップ劇場で撮ったポラが、風にのり、小川の中に落ちてしまった。
若者は慌てた。「あーっ、せっかく撮った大切なポラが・・・」
若者は小川の淵にふさぎ込み嘆いた。
すると、小川の中から神様がふーっと現れた。神様の手にはポラが握られていた。
「あなたが撮ったポラは、衣装ポラですか? それとも、エロポラですか?」
若者は顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに「はい、私の撮ったのはエロポラです」と答えた。答えた後で、一瞬、エロは神様に罰せられるのかなと不安が過ぎった。
しかし、神様は「あなたは正直者ですね」と言って、にこっと微笑んだ。
そして、神様は重ねて尋ねた。「ところで、あなたが落としたエロポラは、今週の香盤の誰のものだったんですか?」
神様は次々にメンバーの名前を呼んでいった。
トップの俐菜さんですか? ・・・美人さんですからねぇ~
2番目の永瀬ゆらさんですか? ・・・チャーミングですからねぇ~
3番目の浜崎るりさんですか? ・・・セクシーですからねぇ~
4番目の愛野いづみさんですか? ・・・大人の色香がありますからねぇ~
5番目の橘メアリーさんですか? ・・・あー、やっぱり新人さんがいいのかなぁ~
トリの荒木まいさんですか? ・・・アイドルのかわいさが好きなのかなぁ~
神様は若者の顔を興味深げにしげしげと覗き込んだ。
若者は更に顔を真っ赤に染めた。若者はトリの荒木まいさんが大好きだった。でも、彼女の名前を言うことができないでいた。恥ずかしくて答えられなかったのだ。
神様はにこっと微笑んで言った。
「あなたが落としたのはエロポラではなく、あなた自身が恋に落ちたのですね。」
おしまい