今回は、「震災四周忌の鎮魂歌in仙台」と題して観劇レポートします。

 

 

H27(2015)年3月14日(土)、仙台に遠征した。

夜行バスで、早朝6時前に仙台駅に到着し、すぐに顔馴染みのタクシー運転手・畑中さんに電話する。前日、電話予約していたので近くのタクシー乗り場からすぐに私の方に移動する。

畑中さんとは五年前まで仙台に単身赴任していた頃からの馴染みのタクシー運転手。四年間仙台に単身赴任していた頃、私は毎週のように関東遠征していて、毎朝六時前に仙台駅からアパートのある泉中央までタクシーを使っていた。そのときに声をかけてくれ私の専属の運転手になってくれた方がいた。その方は途中で引退してしまったが、彼の知り合いの運転手を紹介され、それが畑中さん。五年前に仙台を離れてから会っていなかったが、二年程前に偶然乗り合わせ、またこうして仙台遠征の際にお抱え運転手になってもらっている。彼に会うのが仙台遠征のひとつの楽しみである。

今朝、畑中さんが「今年は暖冬でしたね。東京はもっと暖かいんでしょうね。ところで、今日から仙台で国連防災世界会議が開催されるんですよ。天皇陛下が開会式に出席されるためロイヤルホテルに泊まっているんですが、お蔭で交通規制があって物々しんですよ。」と話してくれた。

私は、今回の遠征では震災四周忌を意識していた。あの大震災からもう四年が過ぎ、仙台はすっかり元の賑わいになった。しかし、海岸付近の復興はまだ道半ばという。

地震直後の被災地は、無数のがれきと汚泥の中に、大勢の犠牲者が冷たくなって横たわっていた。また自衛隊の方々は海の上に浮かぶ多数の犠牲者を回収し続け、精神的に参ってしまった方も多いと聞く。四年経っても、被災者の気持ちは白い灰をかぶせた埋(うず)み火のようにくすぶり続けていることと察する。

 

五年前に仙台の単身赴任を終え関東に戻ったため、運よく仙台で直接の被災を免れた。海岸近くにあった勤務先はひどい被災に遭わなかったが、社員の中には家を半壊した人もいた。

仙台ロックの常連さんの中にも、車を流されたSさんがいた。関東に遠征してきた時にスト仲間から「復興支援金でストリップに来ちゃダメだよ」とからかわれていたな。

震災直後、復興のため多くの工事関係者が仙台に集まり、仙台ロックは大入りだった。仕事帰りの工事関係者に合わせるため開始時間を一時間遅らせ、そのため終演が午前24時半になっている。工事関係者がいなくなった今としては、終演が遅いというのはナンセンス。常連さんも毎日遅いと仕事に支障をきたすし、せっかく来た遠征客も早めに切り上げて帰らないといけない。これでは客入りに影響するから、早く開演時間を元に戻したほうがいい。

 

ふと、昨年10月19日の仙台遠征を思い出す。

このとき、仙台ロックで黒崎優さんが九周年作「ふくしま」を披露していた。

内容を簡単に紹介する。

最初に、キャリーバックを持って今からお出かけモードで現れる。麦藁帽子をかぶりサングラスをし、水色のワンピースを着ている。ハワイにでも旅行かと思いきや、福島の常磐ハワイアンへ。

次に、ハワイアンの音楽にのり、フラガールで登場。頭に白いレイ、胸に茶色のブラ、腰にピンクの花輪を巻き、赤いバウスカートをひらひら。手首と足首に赤いレイを付け、裸足で舞う。ちなみに踊る時に身につける「レイ」は、自然から「マナ(霊力パワー)」を得るための物として使われる。首にかけるレイはレイ・アイと言い、頭のレイはレイ・ポオ、手足首につけるのはレイ・クペエと言う。またレイは友情・尊敬・終わりのない輪であるように長く続く友情のようにとの意味がある。

突然、妖しいジャングルの音楽に変わる。すると、葉の髪飾り、葉の衣装をまとい登場。両端に炎がついた長く黒い棒を振り回す。途中、炎に触れ「アチョ!アチョ!」と叫ぶところが笑いを誘う。

最後の場面。水の音が聞こえる。赤いハイビスカスの髪飾り、白地のブラとスカート。スカートには花柄のプリント。ローソクをもって裸足でベッドへ。

ベッド曲には福島の復興ソングが流れる。

この作品は、震災の鎮魂歌として胸に響くものがあった。表現者としての黒崎優の存在をしっかり示してくれた。

 

また、昨年、ロックの安田志穂さんが演目「hana」を披露。ご存知、「花は咲く」は震災のチャリティーソング。

ここ仙台ロックデビューの志穂さんは、津波で被災された人々の魂を海の中の乙姫が慰めるという鎮魂歌を演じてくれた。

 

黒崎優さんも安田志穂さんも心ある踊り子さん。

二人はステージを通して震災を表現してくれた。素晴らしいことだ。表現者は、自分が伝えたいこと、過去の事件・事象などを形として表現し、後世につないでいく役割をもつ。彼女たちは立派にその役割を果たしているなと、ストリップの父を自認する私としては二人の太郎チルドレンを心から誇らしく思う。

 

 

平成27年3月                          仙台ロックにて