ロックの踊り子、安田志穂さんについて昨年書いた「ストリップの求道者 安田志穂」の続編として語りたい。

 

 

H26年9月21日(日)、仙台ロックに遠征。

今週の香盤は次の通り。①夏木りりか、②西園寺瞳、③安田志穂、④藤咲茉莉花、⑤藤月ちはる〔敬称略〕。全員ロック。

初日に劇場前に並んでいたら安田志穂さんが横の入口から上っていくのがちらりと見えた。目が合ったので手を振って挨拶。「お外でも会って、バンって声かけに行きたかったけど・・スッピンだったので・・止めました。」(笑)

志穂さんにとって今回の仙台は随分久しぶりのよう(半年ぶり?)。初日から会えて喜んでくれた。

 

志穂さんの今回の出し物は三個出し。

一回目ステージは演目「hana」。この演目は、先月、広島で拝見している。

 初めて拝見した時、衣装から沖縄っぽいイメージを抱いたが、南北全く逆の仙台が舞台の作品。(笑)

 斬新な着物っぽい衣装。白地に赤い花柄がプリント。赤い帯を巻き、下は紫色で赤い花が縫い付けられている。髪には赤いリボン。

 東日本震災復興のチャリティーソング「花は咲く」の英語版が流れ、扇子に貼りつけた長い青リボンを揺らして踊る。青いリボンがゆらゆら揺れるところから津波がイメージされる。

 次の衣装が豪華。赤い中国風の衣装で、なんといっても中国王朝が被るような沢山の金棒をクロスした王冠が煌めく。海の中の乙姫様がイメージされる。私が最初に沖縄っぽいと感じたのは竜宮城の乙姫がイメージされたからだった。

 実際は、津波で被災された人々の魂を海の中の乙姫が慰めるという鎮魂歌なのだろう。

 

 二回目ステージは演目「ゴールドラッシュ」。

 洗濯物が吊るされている場面から始まる。ジーパン生地の衣装で、ふつうの女の子が洗濯している平凡な日常。ところが、アバの名曲「マネー」が軽快に流れる。女の子は平凡な生活から抜け出し、お金持ちになる夢を抱く。

 次に競馬の実況放送。彼女は大穴を当て、まさに一攫千金の成り金へ。一万円札の扇子を振って楽しく踊る。バブル期のパラパラ踊りを思い出す。

 最後に、黒いドレス姿で登場。アクセサリーが超豪華・・金のブレスレット、大きなダイヤの指輪、そして白珠のネックレス。ダンス・パーティを催して人を集めようとしたのだろう。しかし、お金が底をつき、人はみな離れていく。

 今回、曲のトラブルでベッド途中で中途半端に終わる。「ゴールドラッシュは行き倒れたぁー」志穂さんが気まずそうにしていたがこういうトラブルはご愛嬌である。四回目ステージでしっかりリベンジできましたしね。私としてはこの作品を観るのは初めて。「ほっ!よかったぁ! 太郎さんが観たことのない一作があって!」

 

 三回目ステージは演目「ベラ」。この演目も広島で拝見している。

 暗い夜道、ぎらぎらした赤い着物姿で提灯をかざす女。最初からおどろおどろした雰囲気が最高潮に達する。

 次に、ピンク柄の衣装に紫の帯を締め、鞭を振り回す。妖怪人間の活躍か。

 妖怪人間ベムは私も好きだったテレビアニメ。ベラはベムの母親。ちなみに父親はベロ。

 そもそも、妖怪人間を題材にする志穂さんの発想に驚く。ふつうの踊り子さんは絶対に考えないだろう(笑)。

 志穂さんのステージの特徴は、この多彩さにある。今回の「ベラ」は彼女のおもちゃ箱をひっくり返したときに出てきた演目だろう。志穂というブラック・ボックスにカードを入れるとどんな形でアウトプットされるか分からない。おそらく志穂さん自身も分からない。中はカオス状態。発想豊かというか、妄想に近い感じ。

 私が童話を創る過程と共通したものを覚える。私の童話ファンのある踊り子さんから「太郎さんの頭の中を覗いてみたいものだわ」と感心されたことがある。すごいカオス状態なんだと思う。その中にあるキーワードを棹差すと勝手にくっついてストーリー化されるのが私の童話。それと同じ感覚で志穂さんがステージを作っている気になった。さもなければ「ベラ」は思いつかないもんね。

 結局のところ、この世で一番面白いのは自分の中にある。どんな発想をし、どんな作品ができるか分からない面白さ。これほど面白いことはない。まさに自己表現であり、自己実現といえる。

 前に、志穂さんが他の踊り子さんから「セーラームーン」の演目を譲ってもらい演じていたこともあったが、志穂さんなら自分で作った方が絶対に面白いはず。

 これからも志穂ファンの一人として独創的な志穂ワールドをたっぷり味わっていきたい。

 

 

平成26年9月                            仙台ロックにて

 

 

 

 

 

 

『ステージ紙芝居』 

~安田志穂さん(ロック所属)に捧げる~

 

 

 

 表通りの小さなビルに、ストリップ劇場と書いた看板が出ていた。

「おやっ! こんなところにストリップ劇場なんてあったっけ!?」

 私はふらりと中に入った。八畳ほどの狭い待合室に既に客が数人待っていた。

「こんな小さなビルにステージや盆があるとは思えん。一体どうなっているのかな!?」

 客の数が部屋に入りきれなくなった時点で、マジシャンの格好をした女性が現れる。部屋の前方にある教壇のような机の前に立つ。愛嬌のある笑顔のかわいい娘だ。そして手に持っている紙を客に配った。

「今からアンケート用紙を配ります。みなさんが楽しみたい内容を記載している項目から選んで下さい。他にあれば、空欄に自由に書いて下さっても結構です。」

 アンケート用紙にはたくさんの項目が書かれていた。客が書き終わると彼女はアンケート用紙を回収した。

 そして、彼女は「ストリップ・ボックス」と書いた大きな箱を持ってきて教壇のような机の上に置いた。エポック社の有名ブランド/シルバニアファミリーのドールハウスを少し大きくしたイメージかな。客が座っている方面の開き扉がぱっかりと開いた。中には、本物そっくりの小さなステージと回転盆があった。ステージの奥は紙芝居のようになっていた。箱の上部には煙突のようなものが立っている。

マジシャンが「今から、あなたたちを甘美なストリップの世界に連れて行きます。私の言う通りにして下さいね。」と言い、一本のステッキを取り出した。魔法のステッキを一振りすると妖しい光が発せられ、観客はすべて小さく小さくなった。マジシャンは彼らをストリップ・ボックスの中に移した。彼らは盆周りの席に座った。

 

「今からストリップを始めます。最初に、先ほど、みなさんの楽しみたい内容を紙に書いてもらいました。そこから選びますね。」

 彼女は、その中の一枚を煙突の中に放り投げた。すると、ステージの紙芝居の絵が変わった。

 アンケート用紙には「南国パラダイス」が選択されていた。そのため、ゴーギャンが描く南国タヒチの風景が紙芝居に描かれていた。

 一人のかわいい踊り子が南国風の水着を着て登場。先ほどのマジシャンの娘とよく似ていた。名前を安田志穂という。

 彼女は素敵な踊りを披露。そして最後に綺麗なヌードで観客を喜ばせた。

 

 次々と客が選んだ演目が紹介された。演目に合わせ、紙芝居の絵が次々と変わっていった。

「カンフーLet's」では激しい拳闘シーンに観客は手に汗握る。天からのパワーを授かった子がカンフーの達人へと成長していくストーリー。

「レジェンド」では彼女の迫真の演技に静まり返った。失敗ばかりのメイドが働いていたお家を追い出されて、夢に向かって進み出し、伝説のロッカーになるサクセスストーリー。夢を挫折しかけて、煙草を吸う‘やさぐれた姿’を演じている場面に、ぐっと胸をしめつけられる。

 時に昔の人気アニメ「セーラームーン」や「妖怪人間ベラ」まで披露された。観客は童心にかえって楽しんだ。

 途中、「ゴールドラッシュ」を演じている時に、設備故障で音楽が止まるトラブルがあったがお愛嬌である。

 最後の演目「hana」は良かったな。3.11の震災を思い出し、明るく立ち直る元気をもらえた気がした。

 志穂ワールドは多彩なので飽きがこない。我々を不思議なファンタジーの世界に連れて行ってくれる。しかもエロスのサービスが嬉しい。

 

 最後にマジシャンが魔法のステッキを振った。観客が元の大きさに戻る。誰もが幸せそうな表情をしていた。

「ストリップ・マジックを楽しんで頂けましたでしょうか。また遊びに来て下さいね。」

 観客の誰もが満足して帰っていった。

 

                                    おしまい