2019年4月中の大阪晃生ショー劇場における、KAERAさん(TS所属)の公演模様を、作品「ロンド」を題材に語りたい。

 

今週の香盤は次の通り。①愛野いづみ(道劇)、②KAERA(TS)、③さつき楓(晃生)、④くるる(晃生)、⑤榎本らん(東洋) 〔敬称略〕。今週は、くるるさんのデビュー週。

 

 KAERAさんは今週二個出し。最近のKAERAさんの作品は以前に比べて大きく進化したと感じている。前は衣装に重点を置いていたが、最近は踊りも垢抜けしてきた。

2,4回目ステージの演目「ロンド」は最新作。この作品にどんな想いを込めたのか気になった。すぐにKAERAさんに演目名と曲名を教えてほしいと頼んだ。「題名は一曲目のロンドって曲から。今のところ。」そして、「曲気に入ってくれたかな??」と逆に質問される。

 トップの曲が松任谷由実、そしてラストの曲が宇多田ヒカル。二人は日本を代表する女性歌手。ユーミンは、オリコンで、女性最多となるアルバムミリオン「通算10作」、アルバム首位「通算24作目」、アルバム1位獲得最年長記録(女性1位の64歳3ヶ月、歴代2位)の記録を持つ。また、宇多田の1stアルバム『First Love』は累計売上枚数765万枚を超え(オリコン調べ)、日本国内の歴代アルバムセールス1位になっている。

 KAERAさんの言う通り、この二人の曲がとても意味深に感じられた。二人とも歌詞が深いので、じっくり歌詞を味わってみたいと思ったのが、本作品に一番興味が惹かれた点。

 

 その点を話す前に、まずは演目の様子を述べたい。

 最初に華やかな赤いドレス姿で登場。上半身は、肩出しで、胸から下を黒い肩紐で吊るす。赤い生地の中に黒い絵柄と星型がある。スカート部は裾広がりで、赤い生地に黒い横線がたくさん入る。腕の先に袖部が広がった赤い手かせをする。右側頭部に赤い髪飾り。

 赤いハイヒールを履いて、音楽に合わせて、フラメンコ風に踊る。

 一曲目は松任谷由実の「輪舞曲(ロンド)」。ラテン調なリズム。スペイン風のギターで始まるイントロ。『輪舞曲(ロンド)』というタイトルにふさわしく踊りだしたくなるようなアップテンポな曲。タイトルの『輪舞曲(ロンド)』は同じ旋律を何度も繰り返すロンド形式という意味合いもあり、実際この曲でも「さあ ヴェールあげて……フォルクローレになる」のフレーズが何度も歌われている。松任谷由実(ユーミン)の27枚目のシングル。1995年11月13日に東芝EMIからリリースされた。同年12月に発売された27枚目のオリジナルアルバム『KATHMANDU』(カトマンドゥ)に収録。この曲は、1995年日本テレビ系ドラマ『たたかうお嫁さま』(主演・松本明子、橋爪功)の主題歌。オリコンチャートの登場週数は14週、チャート最高順位は週間2位、累計58.5万枚のセールスを記録した。

 一旦、ここで暗転。

 音楽がインスト曲「Stampede」に変わり、上下セパレートの赤い軽装に着替える。

 上半身は、赤いブラの上に黒い透け透けの上着を羽織る。スカート部は、黒い生地をベースにして赤く太い横線が入る。赤いハイヒールを履いて、赤い扇子を持って軽快に踊る。

『スタンピード』(Stampede)は、アメリカ合衆国のロック・バンド、ドゥービー・ブラザーズが1975年に発表した5作目のスタジオ・アルバム。

 音楽がCamila Cabello(カミラ・カベロ)の名曲「Havana(ハバナ)」に変わる。ちょっと残念な男性にひっかかって、故郷のハバナに戻ろうという歌詞の内容だ。

 ここで黒い上着を脱ぎ、スカートを脱ぎ、そしてブラを取る。黒いパンティとガータ、黒いストッキングという恰好になる。髪飾りとハイヒールが赤で、赤黒のコントラスト。そして先っぽが赤い布の黒いポイを持って踊る。

 そのままベッドショーへ。

 ラスト曲は、宇多田ヒカルの『COLORS』。2003年1月29日発売 12th Single(TOYOTA WiSH CM ソング)。宇多田ヒカルとしては初の外国人監督ドナルド・キャメロンによる作品。第17回日本ゴールドディスク大賞「ソング・オブ・ザ・イヤー」受賞。このシングルを最後に約1年間の充電期間に入ることになる。

 

 松任谷由実の『輪舞曲(ロンド)』と宇多田ヒカルの『COLORS』について調べたことを記しておきたい。

 まず、宇多田ヒカルのCOLORS』について。

PVは初の外国人監督ドナルド・キャメロンが担当したと書いたが、それまでは元夫の紀里谷和明が監督していた。そして、この曲『COLORS』は元夫の紀里谷和明との新婚旅行先のフランスで作った曲である。ラストの歌詞「今の私はあなたの知らない色」が意味深。

宇多田ヒカルさんと紀里谷和明さんは2002年9月に結婚し、2007年3月に離婚した。結婚した2002年当時、宇多田ヒカルさんは19歳だったので、34歳だった紀里谷和明さんとは約15歳の年の差があった。離婚原因はよく分からないが、結局宇多田ヒカルさんがまだ若かったということか。

その後、宇多田ヒカルさんは、2014年5月にイタリア人バーテンダーの男性と再婚。相手はイギリスの格式高いホテルでバーテンダーとして働く8歳年下のイタリア人でした。2015年7月には、彼との間に第一子男児が誕生したことを公表。1児の母親となりました。なおバーテンダーだった夫は結婚後仕事を辞め、一部では”専業主夫”状態であると言われていたが、2018年4月になるとすでに離婚したことがニュースで報道されている。もう一度、歌の世界に戻りたかったのだろう。

宇多田ヒカルは1983年1月19日生まれなので未だ36歳と若い。いろいろ人生経験した彼女にとって、改めて「結婚とは何なのか」を問いたいところだ。

 

 一方、松任谷由実の『輪舞曲(ロンド)』では、こんな歌い出しになっている。

キャンドルに灯をともしましょう 思い出みんな照らすように

あなたのくれた微笑みで 泣き出しそうに見えるでしょう

おどけてほほを寄せれば 背中に置かれた手のひら

あなたの知らぬ傷跡も 雪解けに咲くクロッカス

結婚式当日、灯をともされた教会のキャンドルを見たお嫁さまが思い出したのは忘れられない昨夜のできごと。【泣き出しそうに見える】お嫁さま。その理由は幸せいっぱいの涙ではなさそう。【雪解けに咲くクロッカス】というのは、結婚式の前夜を一緒に過ごした男性(新郎ではない)がお嫁さまの背中に残した愛のしるし。しあわせなはずの結婚式なのに、歌詞をみると何やらお嫁さまには秘密がありそうです。ウェディングソングのはずなのにこの曲の曲調がしあわせいっぱいでないのは、お嫁さまの秘密のせいでしょうか?

この曲で何度も歌われている”フォルクローレ”という言葉には、次のような意味があります。フォルクローレ(folclore)は、英語のfolkloreがスペイン語化したもので、言葉本来の意味としては、音楽のみならず民俗学、民俗的な伝承一般を指すが、日本では、ラテンアメリカ諸国の民族音楽、あるいは民族音楽に基礎をおいた大衆音楽を特に指して、このように呼ぶ。”フォルクローレ”の意味を考えながら次の歌詞をみてみましょう。

*さあ ヴェールをあげて 初めての瞳で

誓いのキスに 高くはばたかせて

さあ ページあけて 名前綴ったなら

愛の証は フォルクローレになる*

いよいよ誓いのキスです。 神様の前で永遠の愛を誓い約束のキスを交わす……これは昔からの習わし、フォルクローレですね。

奏でて消えないメロディー 想い出かき消すくらいに

誰ともできなかったほど 幸せに踊りましょう

私を愛したことを 後悔はしていないかしら

あなたと紡ぐ年月が たったひとつのタピストリィ

昔の想い出を消すようにあなた(新郎)との人生を選ぶ決心をしたお嫁さま。ここで初めて新郎であるあなたの気持ちがどうなのか心配になります。”タピストリィ”というのはタペストリーのことで、石造りの家が多い西洋では壁をタペストリーで覆うことで寒さ対策をします。ここでいう”タピストリィ”には、これから送るあなたとの人生で昔の想い出を覆い隠してほしいというお嫁さまの願いを歌っている。

あなたに抱かれ まわるまわる輪舞曲

涙も夢も めくるめく フィエスタ

もう神様しか 二人を離せない

語り継がれる フォルクローレになる

幼い頃は、ただしあわせなお嫁さまになりたかっただけなのに。やっと手にしたお嫁さまになるという夢、今度は周囲から羨まれるしあわせな夫婦になってやる!なんてお嫁さまの野心を感じませんか?

まとめると、結婚式なんて昔からの風習で、永遠の愛なんて誓っても人間は変わるもの……そんなシニカルな曲だということだ。

 

ちょっと残念な男にひっかかって故郷に帰ろうする「Havana(ハバナ)」もあれば、男に愛想をつかしたように二度も歌の世界に戻ってきた宇多田ヒカルもいる。結婚に永遠の愛を求めるなんて甘いわよ!とシニカルに訴えているユーミンの声が聞こえる。

ユーミンは1954年1月19日生まれの65歳。人生の大先輩ということか。

 

 

2019年4月                          大阪晃生ショーにて