2020.3

童話『銀の龍がくる』 

~浅葱アゲハさんの演目「銀の龍」を記念して~

 

 

第Ⅰ章.龍とは

 

1.   龍の起源と役割

 

 龍は宇宙からやってきました。正確にいえば、龍は宇宙を起源にするが地球という惑星で進化した生物です。

 その経緯を説明しましょう。

 46億年前、太陽系に地球という惑星が誕生したとき、成長する地球という惑星に引き寄せられるように、毎日何千個という隕石が降り注ぎ、そのたびに地球は大きくなっていきました。その隕石には、鉄を始めとした金属や岩石、また、水や二酸化炭素を含んだ物質が含まれていました。その中に、ある生命体がいたのです。それらが長い年月をかけて進化していき、最終的に龍の形になっていったのです。

 大昔の地球は全てが海でおおわれていて、陸地がありませんでした。そのため、飛ぶことのできた龍は雲の上を住処とします。たくさんの龍たちが、地球を所狭しと生息し、現人類のはるか昔に文明と呼べるものがすでに雲の上にあったわけです。

 

 龍の使命は地球を護ること。龍は地球に最初に現れた生命体です。だから地球を住処とするためにも自ずと地球を護ろうとします。

実際、長い年月の間、龍はたびたび地球を苦難から救ってきました。大きな隕石が地球に衝突しそうになった時には、その隕石を砕き落としました。また、美しい地球という惑星を制服しようと異星人がやってきた時も、彼らを蹴散らしました。龍は身体が大きいだけではなく、素早く飛んで移動し、身体を使って電流を起こしたり、口から火を噴くこともできます。最強の地球防衛軍としての役割を果たしてきたのです。

はるか遠い将来、雲の下にできた地上が進化していき新しい文明を築くまでは、龍こそがこの地球の護り神として君臨することになります。

 

 水の惑星である地球にとって龍の役割は重要でした。地球が惑星として進化していくためには適正な水の循環が起こらないといけません。海水が蒸発して天上の雲になり、その雲の水分を雨にして降らせ地上に戻す。その水の循環の過程で、様々な物質が移動・融合・変化し、生命が進化していった。その中で龍は大切な役割を果たしてきました。龍はお互いの硬い皮膚を擦り合わせることで電流を起こし、雷を作ることができます。その雷こそが、雲の成分を刺激して、地上に雨を降らせる起爆剤になりました。

 また、龍は地球全体の空気を循環させる役割を果たしました。地球は太陽光線の当たる場所により気温の寒暖が偏るため、地球全体の温度調整が必要になります。そのため、龍は集団で台風を起こしました。規模は小さいが龍一匹で竜巻を起こすこともできます。

このように龍は地球の環境保持に欠かせない役割を果たしてきたのです。人間が龍を水神や風神として奉(たてまつ)るのはそのためです。

 

2.   龍の世界

 

 さて、次に龍の世界について述べます。

 最初に、龍の外見について。

 みなさんが寺院などでよく見かける龍の絵を想像して下さい。蛇のように細長く、手足があって、角とヒゲのある、そんな様が描かれていますね。

 空を飛ぶにも、時に水の中を泳ぐにも、ヘビのような形は理想的です。風や川の流れに抵抗なく乗れて、くねくねと上手に進めます。さらに手足が付いてますから、ヘビというよりトカゲやワニの形に近いですね。実は、このくねくねした形は本来は大河の形なのです。大河は、時に濁流となって流域を壊滅させる。だから、大河の流域では、水のシンボルである龍が大河にふさわしい形になったと言われてます。

「口辺に長髯をたくわえ、喉下には一尺四方の逆鱗があり、顎下に宝珠を持っている」ともいわれますが、これは龍が長寿で高貴な証しです。龍の寿命はだいたい千年から一万年だろうと云われているから全てにおいて桁違いですね。

 龍は雲を食べて生きていました。ですから食べることに困りません。また、無性生殖のようです。寿命が長いために次第に数が増えていきます。ただ、このへんの詳しいことはよく分かっていません。

 

 龍の皮膚は黒ずんでいました。ですから一般に龍は「黒い龍」と呼ばれた。たくさんの数の龍がいましたが、雲の間から龍が姿を現しても、それを下から見上げれば漆黒の宇宙に紛れ込んで姿が隠れてしまいます。そして、その皮膚はお互いの身体を触れ合わせて電流を起こすくらいだから鋼鉄のように硬いのです。そのため黒い龍は別名「鉄の龍」とも呼ばれていました。

 ところが、龍の中に、ごく一部だけ自ら皮膚を輝かせられる龍がいました。それは突然変異として誕生しました。一般の「鉄の龍」に対して「金の龍」と「銀の龍」と呼ばれます。

金の龍は、黄金色の皮膚をもっており、稀にしか生まれません。金の龍は太陽の化身と位置づけられました。龍の世界の中では、金の龍は別格でした。才能もあり、高貴であり、豊かである、偉大な存在と讃えられました。ただ性格は傲慢で派手好みです。

 それと対極に考えられたのが「銀の龍」で、ごく少数いました。彼らは月の化身と位置づけられました。純粋で知的なのですが、悪くいえば影を好む暗さを持っていました。

金の龍はまさしく‘俺は俺は’というタイプで、鉄の龍たちを抑え込み従わせようとしました。一方の銀の龍は、自分は太陽にはなれない月だから二番手でいいという控えめさがあり、鉄の龍たちとの協調性をもっていました。金の龍はリーダーシップに優れ、銀の龍はフォロワーシップに優れていたとも云えます。

いずれにせよ、金の龍は「強さ」の象徴であり、銀の龍は「弱さ」の象徴のように思われていたのです。

 

3.   龍と人間

 

 とてつもなく長い時間が過ぎていきました。

 龍の世界は大いに繁栄しましたが、次第に地球では手狭になっていきました。龍自身が大きいうえに、数が膨大に増え過ぎました。また一方、知性を持っているがゆえに、雲の上の生活に退屈さを感じていたのです。龍は大きな身体と知性を持て余していました。

 

 そんな中、いつしか地球の表面では海の間に陸ができ、そこに生物が生息するようになります。雲の上から地上の様子を眺めていた龍たちは、地上に憧れました。なにせ、天空は雲しかないのでつまらないのです。楽しみといえば太陽と月が決まった周期で変化するくらいかな。

 

最初に、地上を制服したのは恐竜でした。龍は恐竜に興味を持ちました。龍ほどではありませんが、恐竜も身体が大きく、同じ仲間かと思えました。そこで、龍は恐竜に同化することで地上に棲むことを考えました。多くの龍たちが地上におり、一気に恐竜が龍化していきました。後の人間は、恐竜のことを龍と考えました。‘恐ろしい龍’という漢字を当てたのもそのせいです。ところが、龍と本来の恐竜とは根本的に違います。天上で進化した龍と地上で進化した恐竜とは体質的に違うのと、最も違ったのは知能でした。恐竜は身体の割に頭が小さいために知能が低かったのです。あれほどに繁栄した恐竜たちも、地球環境の変化に対応できず衰退し絶滅してしまいます。こうして、龍の、恐竜による同化作戦は失敗に終わります。

 

 次に、地上で成長していったのは哺乳類であり、その頂点に人間がいました。人間は生物の頂点として繁栄を極めていきました。龍の目には、なにやら人間界は毎日が変化に富み楽しそうに映りました。龍は次に人間になって地上で生活することを考えました。

くしくも、進化した人間の目は宇宙を向き始めました。いずれ人間は雲の上に住む龍の存在を知ることになるでしょう。最悪の場合、人間と龍は対立する可能性もあります。しかし、地球の護り神である龍は、人間との対立を回避しようと考えます。

 

 龍は天空の神さまですから人間に変身することなんてお茶の子さいさいです。

 しかし、龍の世界では簡単に人間になることは許されませんでした。先に恐竜での失敗体験もあります。また、地球を護ることを至上命題とする龍にとって、地上に君臨する人間界をむやみに混乱させることはできません。

龍による人間との同化作戦は慎重に進められました。まず、龍たちが人間になるための、厳しい「登竜門」ができました。ふつう「登竜門」という言葉は人間が龍になるためのものとして使われますが、もともとは龍が人間になるためにあったものだったのです。

 金の龍と銀の龍は選ばれし龍として優先的に人間界に下ろされました。そして人間として生まれ変わりました。

 

 金の龍が天から降りるとき、人間界では「麒麟が現れた」と噂されました。彼らはもともと金の龍が持っている資質を活かし、歴史に名を残す偉大な人物になりました。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など天下人と呼ばれる戦国武将たちは金の龍が降臨したものです。最近では三日天下の明智光秀も「麒麟がくる」というドラマ化されているようですね。

 一方の銀の龍は「弱さ」を知っていました。しかし自分の弱さを知っている者ほど本当は強いのです。彼らは弱き民衆を助けたいと願い、聖職者や医者になる道を選びました。教会で使われる宗教の道具が全て銀製なのはそのせいです。また神社仏閣の柱や欄間に施される宮彫りに龍が描かれます。医者を象徴する手術用メスも銀製ですね。最近では一部の人間界に医龍ブームというのがあるようです。

 銀というは「純粋」「無垢」「神聖」「知性」を意味します。

 

 金の龍や銀の龍の活躍を契機にして、鉄の龍たちも次々と人間界に降りていきました。こうして人間と龍は一体になっていきました。いまでは人間は自分の中に龍が入っていることすら忘れてしまっているようです。

 

4.   人間界の龍伝説

 

いかに、龍が人間界に取り込まれているかを例をもって示しましょう。

まず、十二支には龍が入っていますね。十二支は人間にとって最も重要な時間軸のひとつ。それに龍が入っている意味は大きい。つまり昔の人は龍が実在していることを知っていました。先ほど、恐竜と龍を混同しているという話をしましたが、実際に龍が空を飛んでいるところを何度も目にしていたのです。

 

ちなみに、人間界において、龍のことを意識し出したのはいつ頃からでしょうか。

龍の起源は、中国における神獣・霊獣から始まります。そのため『史記』における劉邦出生伝説をはじめとして、中国では皇帝のシンボルとして扱われました。そして、インド神話にある蛇神ナーガも、仏典が中国に伝わった際に、「竜」や「竜王」と訳され、龍の概念に組み込まれていきました。私が思うに、釈迦そのものが金の龍であり、釈迦を護っている蛇神たちも龍なのでしょう。

日本の龍は、様々な文化とともに中国から伝来し、元々日本にあった蛇神信仰と融合していきました。日本神話に登場する八岐大蛇(ヤマタノオロチ)も龍の一種です。

一方、西洋では龍をドラゴンと言います。ヨーロッパの文化で共有されている伝承や神話における伝説上の生物。その姿はトカゲあるいはヘビに似ています。東洋の龍とは違っていて、どっぷりした肥満体型で羽根がついてます。おそらく太っているから羽根を付けないと飛べないと判断したのではないかな(笑)。ドラゴンと言えば今では想像上の動物と思われていますが、かつては実在の生きものだったのです。

 

 ここで改めて、竜と龍はどう違うのか?を述べます。by荒川 紘. 『龍の起源』. 紀伊國屋書店出版 (1996/6/1).・・・

「龍」という漢字の原型は「竜」である。竜の甲骨文字は、蛇の原字に頭に辛字形の冠飾を付けた形となっており、竜が蛇をモデルに考えられていたことを示唆している。「龍」は、「竜」に躍動飛行するさまを表す旁を加えた字である。竜はもともと水の中に住むと想像されていた動物であるが、天に昇るようになってから龍となったと考えることもできる。竜のモデルは川(母なる海のペニス)であり、龍のモデルは雷(天なる父のペニス)であるという区別をすることもできそうだ。・・・

 先ほど、龍のくねくねした形は川をモデルにしたものと説明したが、龍の顔(ヒゲ等)は雷をモデルにしているようだね。

 

・・・龍と蛇は裏表の関係だ。そして、蛇に対する信仰は世界中で見られる。ティグリス、ユーフラティスや黄河という大河は、時に濁流となって流域を壊滅させる。だから、そのような大河の流域では、水のシンボルであった蛇から、より大河にふさわしい龍という存在が創造されたという。しかし、角や足を持つ複合動物である龍は、中国とメソポタミアでのみ生まれている。インダスやナイルといった大河を持ちながら、なぜインドやエジプトでは龍らしい龍が生まれなかったのか。この理由は、その地域には、コブラという巨大な毒蛇が生息していたため、あえて龍のような怪獣を作り出す必要がなかったからだと本書では推理している。・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第Ⅱ章. 銀の龍がくる

 

  これまで龍について詳しく話してきました。

 さて、ここからは、竜が人間界に降りてきてから、どういう活躍をしたか、具体的なストーリーを紹介しましょう。

 

人間界では龍はかなり馴染みの存在となってきています。野球では中日ドラゴンズ、プロレス界にもドラゴンが現れ、ヤクザの世界でも「龍の如し」、アニメ・漫画・ゲームの世界でもたくさん取り上げられています。まぁ、「金の龍」「銀の龍」「鉄の龍」全てごちゃまぜですが。

 しかし、よくよく目を凝らして人間を観察すると、銀の龍がしぶい働きをしているのがよく分かります。しかも、もともと非力であったものが努力によって素晴らしい働きをしているところに心が奪われます。

 以下では、最近目についた銀の龍の例を紹介しましょう。

 

Ⅱ-事例1

 

 ある銀の龍は、一人の医師になりました。名前をコト―と言います。

 彼は、身体も軟弱で気弱な男でした。しかし、病気や怪我で困っている人を助けようと、医者になることを志し猛勉強しました。見事に大学の医学部を卒業します。

そして医師になってからは、誰も行こうとしない南海の離島に単身で乗り込みました。そう聞くとずいぶんかっこいいなと思いますが、実際は船酔いに耐えながら、へろへろの態(てい)でやってきました。それでも彼は人助けに情熱を燃やします。離島にコト―診療所を開業し診察を始めます。

 ところが、着任初日、診療所を訪れた患者はゼロ。看護婦は「この島の人達は、本当に具合が悪かったら、本土の病院に船で6時間かけて行くんです。誰もこんなとこで診てもらいたくないですからね」と言う。なんだか気が抜けてしまったコト―だった。

最初のうちは未熟な腕で悪戦苦闘もしましたが、次第に彼の努力は報われ、離島の人々からも信頼され始めます。彼はたくさんの人々を救い、島民から慕われました。弱い男が「銀の龍の背に乗って」逞しい男になった一例です。

 

Ⅱ-事例2

 

日本のアニメ映画で「龍が人間になったこと」を直接に表現したものがあります。ジブリの『ゲド戦記』です。

ジブリと言えば、宮崎駿監督ですね。彼は日本のアニメをまさに世界のアニメにしました。間違いなく金の龍です。

今回紹介する映画『ゲド戦記』は、宮崎駿監督の息子である宮崎吾郎が初の監督として手がけました。しかし、もともとの企画は宮崎駿監督です。この映画の原作になるのは、同名の童話「ゲド戦記」です。これはアメリカの女優作家アーシュラ・K・ル=グウィン(1929年10月21日 - 2018年1月22日 88歳没)によって1968年から2001年にかけて書かれたファンタジー長編小説です。ところが、この映画のキャラクターイメージは宮崎駿氏が執筆した絵物語『シュナの旅』にあります。監督の宮崎吾朗は『シュナの旅』の登場人物に少しずつアレンジを加えていって、宮崎吾朗監督・脚本の独自解釈によってジブリ「ゲド戦記」を完成させていきました。

この映画の登場人物の中にテルーという少女がいて、最後に彼女は龍に変身します。テルーは人間界で普通の人間として暮らしていたので、自分が人でない龍族の末裔だなんて知りませんでした。しかし絶体絶命の土壇場になって龍であることに目覚めます。

このジブリ映画のキャッチコピーは「人は昔、龍だった」「かつて人と竜は一つだった」です。原作のゲド戦記にも「龍族の一部が人間になる道を選んだ」と記されています。これまでお話した私の童話が決して荒唐無稽な話でないことが分かってもらえると思います。

 

さて、前置きが長くなりましたが、今回私がここでご紹介したいのは、そのテルーの声を演じた手嶌葵さんです。役柄もありますが、彼女も間違いなく「銀の龍」だと感じます。

彼女は歌手であり、天使の歌声をもってます。優しく、繊細で、たまらなく癒されるのです。順を追って話しますね。

まず、彼女のプロフィールを述べます。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用)

手嶌 葵(てしま あおい、1987年6月21日 - 現在32歳)は、日本の女性歌手。本名同じ。ランデブー所属。福岡県出身・在住。身長174cm。

幼い頃から両親の影響で古いミュージカル映画に親しみ、趣味は映画鑑賞である。特に好きな映画として挙げているのは、『オズの魔法使い』『秘密の花園』『小公子』『ティファニーで朝食を』等。またスタジオジブリ作品では、『紅の豚』がお気に入りであると公言している。

両親が洋楽好きだったこともあり、ルイ・アームストロングやエラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリディなどのジャズ・シンガーが好きで、特に中学時代に聴いたルイ・アームストロングの「ムーン・リバー」に衝撃を受けてジャズが好きになった。そうやって日頃から慣れ親しんできた映画音楽やジャズが彼女の音楽のルーツとなった。

自身の性格として「頑固で気が強い」と自己分析しており、映画『ゲド戦記』にて自身が声を当てたテルーにも、「頑固者なところや負けず嫌いなところなど、似ている部分はある」と答えている。また、カメラが苦手である旨を語っている。

中学生の頃、対人関係の問題から登校拒否に近い状態になった。その時に心の支えとなったのがベット・ミドラーの「The Rose」であり、アマチュア時代からライブでカバーしている。このカバーの音源がデビューのきっかけとなる。

2005年 3月、韓国で行われたイベント『日韓スローミュージックの世界』に出演。このイベントがきっかけで、後日、ヤマハの関係者からスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーにデモCDが手渡された。これに収録された「The Rose」のカバーに惚れ込んだ鈴木プロデューサーの薦めでデモを聴いた宮崎吾朗監督も彼女の歌を気に入り、当時まだ無名の新人ながらジブリ映画『ゲド戦記』のテーマソングを歌う歌手に抜擢される。また映画のテーマソングだけでなく、ヒロイン・テルー役の声優も務めることになった。

1st 2006年6月7日  テルーの唄〜ゲド戦記から〜 オリコン最高5位 作詞:宮崎吾朗/作曲:谷山浩子

4th 2011年6月1日  さよならの夏 〜コクリコ坂から〜 オリコン最高16位 作詞:万里村ゆき子/作曲:坂田晃一

彼女はたまたまジブリとの縁でもって歌手としてデビューして羽ばたきました。テルーという役柄は彼女が「銀の龍」であることをいみじくも証明していると感じさせます。

 

Ⅱ-事例3

 

 最後にもう一人、紹介したい例があります。今回の童話を書くきっかけを作ってくれた人です。

 

 ある銀の龍はストリッパーになりました。名前をアゲハッチョと言います。

 彼女も決して強い人間ではありませんでした。でも心根が優しく、女性に縁のない恵まれない男達を自分の美しい裸体で癒してあげようと考えました。ところがストリップの世界もただ裸を見せればいいという、そんな生易しいものではありません。デビュー当時は、とにかく上手く踊れなくて何度も泣きました。

アゲハッチョは空中ショーと出会い、その華麗な世界に魅了されました。必死で練習しました。努力の甲斐があり、めきめきと上達し、空中ショーのできるアゲハッチョはストリップ界の第一人者になりました。彼女の演技は、まるで龍が空中を舞い上がるようでした。当然ですね、もともと龍なのですから。

 

 龍は人間界にうまく溶け込んでいます。誰にもわかりません。本人も元々自分が龍であったことを忘れています。

 しかし、ふとした瞬間に龍の力が蘇ることがあります。アゲハッチョはそれを体現している一人なのです。

 最近では、アゲハッチョは無意識なうちに、それを演目で表現しようとしているのが分かります。時に作品「ダンボ」では空を飛ぶ象を演じましたね。本来身体の大きな象が空を飛べるはずがありません。ダンボはまさしく身体が大きくても自在に空を飛ぶ龍をイメージしたものでした。また、作品「ゴジラ」では、怪獣ゴジラを銀の龍に見立てました。ゴジラの背びれを銀色に光らせているのはその表れです。そしてつい最近では作品「銀の龍」という龍そのものの演目まで創り上げました。直接的な表現だと問題があるためか、作品「銀の龍」では着物を着ることで、うまく龍のイメージをぼかしていました。

 そうそう、ストリップ界には他にも龍の仲間がいますね。ファイアーと叫んで口から火を噴く踊り子がおります。彼女が龍であることは間違いありませんが、銀の龍かどうかは定かではありません。(笑)

 

 銀の龍は人間界で、まさしく‘いぶし銀’の働きをしているようです。

 

                                  おしまい