浅葱アゲハさんについて、H31年3月結の渋谷道頓堀劇場での公演模様を、新作(春の演目)を題材にして、「歌はドラマ、ステージもドラマ、そして春の切なさ」という題名で語りたい。
H31年3月結の渋谷道頓堀劇場に顔を出す。
今週の香盤は次の通り。①翔田真央(道劇)、②水原メノ(TS)、③青山ゆい(東洋)、④浅葱アゲハ(フリー)、⑤愛野いづみ(道劇)、⑥虹歩(札幌ニューカジノ)〔敬称略〕。今週は、虹歩さんの21周年週。
ちょうど桜が満開で、卒業式の季節。その週は虹歩さんの周年ばかり気にしていた。私は年中せっせと劇場通いしているので、踊り子さんの出し物でふと季節を思い出すことも多い。それが今回、浅葱アゲハさんの春の演目だった。「卒業式の出し物。先週つくろう!て決めて、今週の五日目に出しました。急だったから粗くてすみません・・・? でも春はすごい切なくなるよねー!! 今週と4中の東寺でだけ出します。タイトルまだ決めてねー」とのコメントを頂く。次の東寺にも行く予定だったので記念にレポートしたくなった。今週と次の東寺とで見納めになっちゃうレアな出し物だしね。
まずは、演目の内容をご紹介する。
最初に、卒業シーズンに相応しい女性の袴姿で登場。漫画「ハイカラさんが通る」のように、赤と白の花柄の入った着物の上に、りりしい黒い袴を履くというコーディネイト。頭には赤いリボンを付けている。
舞台の上のティシューの上部に桜の花が添えられているのも乙である。
音楽に合わせて、裸足で舞い踊る。
一曲目は、leccaの「TSUBOMI feat. 九州男」。春の風を感じるような印象的なメロディ。今でも想い出す、若く、真っ直ぐな恋のつぼみ。長く付き合った相手との切ない恋の行方が綴られている。この曲については後にもう少し深く触れたい。
音楽が変わって、着替える。
今度は現代風のセーラー服姿。白いブラウスに首に濃紺のリボンを結び、その上にグレイのカーディガンを羽織る。スカートは白と紺のチェック柄。黒いソックスを履く。
音楽に合わせて、キビキビのダンスを披露。これは今話題の「3年A組朝礼体操」。
日本テレビ系日曜ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」は、2019年冬ドラマの中で、最も注目度が高かった。このドラマの中で、菅田将暉演じる柊一颯が勤める魁皇高校の職員や、生徒たちが踊り話題となっている。いわゆる朝礼のイメージとは真逆のキレキレなダンスである。
ちなみにこのダンスの曲を担当しているのは、松本晃彦さん。彼は「踊る大捜査線」の音楽を担当した経歴を持つすごい方。
音楽がアンジェラ・アキの「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」に変わる。アンジェラ・アキの通算8作目のシングル。
2008年のNHK全国学校音楽コンクール中学校の部の課題曲として書き下ろされた『手紙』(編曲:鷹羽弘晃)を自身の歌唱用にアレンジした曲(編曲は自身が担当)で、調はハ長調から変イ長調と課題曲より半音4つ分(長三度)低くなっている。曲は自分自身が15歳の時に自分宛に書いた手紙が、30歳の誕生日に母親から届いたことをきっかけに作られた。歌詞では15歳の「僕」が悩みを未来の自分に宛てて、“手紙”を書くことによって今を生きていくということを表している。
舞台に吊っているティシューを、ブランコ代わりにするなんて粋な演出ですね。セーラー服のままティシューの演技に入る。
そして、セーラー服からOL風な衣装に着替える。卒業して就職するイメージかな。白いシャツと黒いスカートに、黒いカバンを抱える。眼鏡をしている。黒い靴を履く。
そのまま、ベッドショーへ。黒い靴を脱ぐ。白いパンティを右手首に巻く。ピンクのマニキュアがきらり。
ベッド曲は、FUNKY MONKEY BABYS の曲「ありがとう」。
FUNKY MONKEY BABYS(ファンキー・モンキー・ベイビーズ)は、日本の男性3人組音楽グループ。2004年結成。所属していた芸能事務所はイドエンターテインメント。所属していたレコード会社はドリーミュージック。略称は「ファンモン」。かつての公式ファンクラブは「猿學」。2013年解散。
ステージを観終わって、思わずアゲハさんに「ありがとう」と言いたくなった。
そして、すぐに観劇レポートを書きたくなって、アゲハさんに曲名を尋ねていた。
春といえば桜だが、あっという間に桜は散ってしまう。アゲハさんが言う「春は切ない」という気持ちがよく分かる。桜に象徴されるように、卒業と入学・就職の中で人との別れと出会いを経験する。淡い恋もあるだろう。短くも太く、一生懸命に過ごした青春時代を思い起こす。
アゲハさんは急に作りたくなって作った作品と言っているが、そうした想いを、いい歌を選ぶことにより上手に表現している。流石だと思わせられる。
ひとつひとつの曲がそれぞれのドラマを持ち、それらをひとつのステージにまとめる中で、春の演目としてドラマを演出している。
今回も、新たな歌、新たなミュージシャンとの出会いの場を設定してもらった。アゲハさんのステージは歌の玉手箱だ!と前に話したが、こうした新たな歌、新たなミュージシャンとの懸け橋になってくれて本当に嬉しいし幸せだ。
まず、一曲目の「TSUBOMI」を気に入ってネットで何度も聴き入りました。この歌は歌詞を理解して、始めて良さが分かる。歌っているlecca(レッカ)も九州男(くすお)もともに同い年の40歳。まさに歌手としても人間としても脂がのった大人の魅力で歌っている。
この曲は、2010年4月28日に発売され、有線チャートや着うたチャートで1位を記録しました。私は初めて聴きましたが、かなり知名度の高い曲ですね。(以下、ネットで拝見した岡あいさんの解説記事を元に述べます。)
主人公である女性が過去の思い出を回想しながら思いを巡らせる構成は、とてもリアルに心情を表現してます。そして、サビでは2人の芯のある歌声が混ざり合い、圧倒的な迫力をみせつけます。
最初に、タイトルに込められた意味を考えてみましょう。
タイトル「TSUBOMI」は文字通り花の「つぼみ」のこと。通常、恋愛では思いが結ばれる前の状態をこの「つぼみ」で比喩します。そして「開花」は恋愛が成就したという証。
また、まだ成長途中の人を「つぼみ」と表現することもあります。大人になり切れてない未熟な状態の若者。どんな花になるのか、可能性を秘めつつ模索している時期です。
この2つの点から、このタイトルには「恋愛の行方」や「若い時期の恋愛」が表現されていると推測できます。
この歌の中の男女は長い時間をともに過ごしてきたようです。「何も知らなかった僕らはやがて つぼみから大人へ」。そして2人は「つぼみ」…つまり、思春期から大人へと一緒に成長していきます。
一般に、男と女とは、最初は男が好きになった女との距離を縮めようと猛アタックし、恋が成就した後は、男はその結果に満足し、次は女から離れようとします。男は本能的に自由を求める(だから浮気しちゃうんですね)。そのとき女が男との距離を離さないように頑張ります。うまくいけば二人は結婚へのGOALとなります。しかし、うまく歯車が噛み合わないとその関係は続かず消滅してしまいます。この歌では、そうした男女関係の成り行きやその時々のお互いの機微をうまく表現していますね。まさしく、ひとつのドラマになっています。だから歌の世界に引き込まれるのだと思います。
「夜も昼も つぼみの時期をあなたといた」そんな二人にいつの間にか心の隔たりが生ずる。そして二人はその「隔たり」を認めていく。
「こぼれ落ちていった涙は花びらをつたう 2つのつぼみは大人となっていた ずっとつないできた手を今離すよ 言葉じゃ伝えれないサヨナラ」最後に二人は別れを決意する。
確かに2人が大人になるという意味での「つぼみ」は開花したようです。しかし、もう一方の恋の「つぼみ」はそのまま枯れてしまいました。そして溢れだすのは涙。
でも、二人は、大切な青春時代を共に過ごした記憶だけはいつまでも心の中で輝き続けることでしょう。
ここまで、この曲を聴き入ると「春の切なさ」は最高潮に達してしまいました。(笑)
ちなみに、私はleccaさんも九州男さんも初めて知り、この二人に興味を持ちました。ネットで調べたことを残しておきます。
lecca(レッカ、1979年2月26日 – 現在40歳)は、日本の女性レゲエ歌手、政治家。東京都議会議員(1期)。本名、斎藤 礼伊奈(さいとう れいな)、政治活動時の通称で斉藤 れいなを用いている。東京都江東区出身、多摩市在住。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。自身のラジオ番組を持つ北海道にて人気を獲得したのち、2009年に発表した『For You』(フォー・ユー)という楽曲でブレイクした。
九州男(くすお、1978年10月24日 - 現在40歳)は、日本の男性シンガーソングライター。九州の長崎県出身。血液型はB型。所属事務所はエンズエンターテイメント。19歳でレゲエと出会い感銘を受け、21歳で単身ジャマイカへ約2年間滞在している。
二人はレゲエ繋がりなんだー!!! leccaさんが政治家というのも驚く。
もうひとつ、最後の曲にもやられました。
というかネットでMVを観て感動した。そこに出演しているさんまさんの味って最高だなと思えた。彼はこのMVにギャラ無しで出たそうだ。流石さんまさんです。
また、ファンモンの他の曲も聴きたくなったところ、すべての曲に有名人がMVに出演されていて思わず見入ってしまった。ひとつの歌にこれだけドラマをのせられるFUNKY MONKEY BABYSは最高だ。せっかく素敵なグループと出会えたのに、もう解散しているグループと知り、これまた「春の切なさ」を感じた。この「ありがとう」という曲が彼らのラスト・シングルになる。
改めて、「歌はドラマ」であると思わされ、その曲を使い演じるアゲハさんのステージもまたひとつのドラマであると感じた。
渋谷でたった一二回しかステージを観ないでこうして観劇レポートを書いているわけだが、書きながら、次の東寺で見納めにするのはあまりにももったいないことだと思えてくる。季節柄か致し方ないことだが、こりゃ是が非でも東寺で観ておきたくなる。あの天井の高く広い東寺の劇場では、この作品がどんな演出になるのか今から楽しみである。
平成31年3月 渋谷道劇にて