今回は、フリーの踊り子、浅葱アゲハさんの10周年記念に、観劇レポート「浅葱アゲハの空中ショーとストリップの進化」について語ります。
H26(2014)年6月結、TSで久しぶりに浅葱アゲハさんの空中ショーを拝見する。
浅葱アゲハさんは2004年4月21日デビュー(大阪九条OS)なので、すでに10周年を迎えていた。
今週のTSの香盤は次の通り。①きよ葉(TS)、②鏡乃有栖(TS)、③山咲みみ(TS)、④浅葱アゲハ(フリー) 、⑤木城レナ(東洋)、⑥坂上友香(東洋) 、⑦中條美華(東洋)〔敬称略〕。
他の劇場にいたところ、スト仲間から中條美華さんの引退の話を聞いて、慌てて二日目にハシゴながらTSに駆け付けた。今週は後半三人が東洋なのでミニ東洋大会の様相。木城レナさんがDX歌舞伎の美咲遥さんの演目ビーチボールを拝借中というのも面白かった。
前半TS三人と後半東洋三人の間に挟まれて浅葱アゲハさんの存在が輝いていた。11年目にして人気は不動のものとなりポラが一番売れていた。歳を重ねるごとに演技だけでなく容姿まで洗練されて綺麗になってきた。若いころより若々しい感じ。かわいい容姿に、これだけの演技をされたら人気が出ないはずがない。ギャラもお手軽なのか全国の劇場から引っ張りだこで、人気も全国区規模になっている。
浅葱さんの今週1,3回目の演目は「青い鳥」。二年前の出し物。
ステージ花道中央にリングが架かっている。
浅葱さんが水色の衣装で登場。正確に表現すると、スカート下地に水色のふわふわしたものを膝丈まで履いて、花と葉がプリントされた白い布地を上に着る。ショートにした髪の左側に水色の花リボン。黒いブーツを履き、何度もリングに絡んで舞う。
ポイントは背中の小さな羽根。白と水色が混じる。この羽根を最初から最後まで付けっ放し。「青い鳥」のタイトルに通じる。
衣装をどんどん脱いでいき、水色のレオタード姿へ。胸元の飾りがステキ。得意のリング演技が始まる。まさに鳥になった気分で舞う。この演目こそが浅葱アゲハのクラシックとも言えそう。
最後に、水色の薄い大きなベールに身を包み、ポール前でベッドショーを演ずる。
2,4回目の演目が周年作「10(じゅう)」。
青い大きなアゲハ蝶になって登場。薄い白地の衣装に身を包み、背中に、鮮やかな青地に黒い線で模様を入れた大きな羽根を付けて舞い踊る。次に、衣装をとって、軽装になり布の演技に移る。
更にビルド・アップされた肉体。腹筋が凄い。全く脂肪のない鍛えられた肉体美。
合わせて演技そのものが更にパワーアップしている。リングより布の演技の方が難しいと感じる。従前は決めポーズの美しさを誇っていたが、今回はより回転系に重きを置いている。「動中静あり」ではないが、動きが激しい分、帆掛け船などの決めポーズがより美しく際立つ。男子体操の吊り輪の演技にも通じるし、中国雑技団の紬吊(Silk Stripes)にも通じる。まさに極限のアクロバティックであり、しかも洗練された美しい芸術の域に達している。
10年という歳月はアゲハをストリップ界の最高峰に押し上げた。
交友関係が凄い。一流は一流を知る。私が知っている限りでダンス№1といえる晃生の目黒あいらさんとも仲良し。もう引退したが平成の天才的ダンサー、ロックの花村沙知さんとも仲良しだと知ったときには驚いた。花村レポートを渡した時に、そのことを教えてもらった次第。
また比類なき空中ショーは多くの踊り子に衝撃的な刺激を与えた。誰もが憧れるが簡単に真似できる代物ではない。そんな中で運動神経に自信のある踊り子さんがリングにチャレンジしている。
その一人がロックのMIKAさん。私が最も応援している方。お蔭で、私は二人の間を伝書鳩のように行き来する。今回、MIKAさんの怪我の状況をアゲハさんに話す。私自身、MIKAさんの具合が心配で心配で、誰かに話さないと耐えられない。MIKAさんのよき理解者であるアゲハさんなら私の気持ちが分かってくれるはず。「MIKAちゃん、心配でなりません。お手紙、きゅうっっとしました。わーん」「MIKAちゃんが怪我するなんて、ぼくも本当に苦しかったです。どうか身体大事にこれからもお客様を楽しませてくれますように、いつも祈ってます。」アゲハさんに心配かけちゃったけど、アゲハさんなら私と同じ気持ちになってくれる。
ここ半年の間に、渋谷道劇のベテラン川中理沙子さんがリングに挑戦。最初の頃はかなり苦戦していたが、今では腕を上げ、華麗なリング演技を魅せてくれる。運動神経の良さに感心!
ストリップには昔から花電車などの芸道があったが、なかなか継承者がいないようで淋しい限り。一方、これからはリングの方がより芸術性の高い美しいストリップとして王道のひとつになっていくだろう。くれぐれも怪我には気を付けてほしいが、ストリップファンとしてストリップの進化に期待している。
平成26年6月 TSミュージックにて
〔事後談1〕
アゲハさんが私のレポートを喜んでくれたー!良かったよん。
「うわーっ! ぼくのレポだ。うわうわありがとう。すてきなレポ、ありがとうございます。 うわー! うれし恥ずかし・・・!!! (中略)お言葉にすごい元気づけられました。」
〔事後談2〕
レポートを渡した日に、ちょっとしたハプニングがあった。
周年作では、後方の舞台に吊るしてある大きな布を掴んで、ステージ前方のポールに向かい駆け寄る場面がある。そのとき勢い余って、アゲハさんが客席に落ちた。ステージ向かって左側の一人席の、ポールから二つ目と三つ目の席へ。ちょうど私が三つ目に座っており、二つ目にはTS常連の年輩客がいた。私の肩口にドスンと来たので驚いたが、一番驚いたのは本人だろう。アゲハさんがミスることは滅多にないからね。私は怪我していないかを心配したが、逆にアゲハさんの方が客に「大丈夫ですか」と一声かけてすぐに演技に戻った。怪我がなくてホッとした。MIKAさんの例もあるからね。
ステージが終わった後すぐに、後ろの客の顔を見た。苦笑いしているかと思いきや、麦藁の帽子が潰れたと愚痴っている。すぐにアゲハさんが近寄ってきて謝った。すると後ろの客が「帽子が潰れてしまった。どうしてくれるんだ!」と言う。アゲハさんが弁償しますと答えると「15000円だよ」と客が言う。アゲハさんが後でお金をもってきますと言う。
私はその客の態度に呆れた。常連客なのに踊り子さんに弁償しろなんて言うか。笑って許すのが当たり前だろう。ぶつかられるのが嫌ならかぶりで観るな! そんな高い帽子をかぶるな! 考えれば考えるほど腹立たしくなってきた。他の常連も同じ思いで見ていたが何も言えなかった。
アゲハさんが客に15000円を手渡してから、最後のオープンショーが始まった。
最後に、リボンのカメさんがアゲハさんにチップを渡した。1万円か1万5千円かよく見えなかったが、アゲハさんがすごく恐縮していた。
この嫌な雰囲気をリボンさんの厚意が一掃した。まさに爽やかな風を感じた。これがストリップと踊り子を愛する心意気だ。私はリボンさんの行為に感動を覚えた。