今回は、MIKAさん(ロック所属)について、H30年7月結のDX歌舞伎での模様を、8周年作「Jupiter」を題材に、「‘LOVE’と‘DREAM’の調和」という題名で語りたい。

 

 

H30年7月結のDX歌舞伎に初日から顔を出す。

今週の香盤は次の通り。①美咲遥(DX歌舞伎)、②時咲さくら(TS)、③沢村れいか(ロック)、④香坂ゆかり(ロック)、⑤MIKA(ロック)、⑥鈴木ミント(ロック)〔敬称略〕。なんと7年目の時咲さくらさんがDXK初乗り。仲良しの美咲遥さんに誘われたらしい。

 

今年の夏は気が狂うほどの暑さだ。日本国中が報道上「命にかかわる」という枕詞がつくほどの猛暑に見舞われている。今週7月23日(月)に埼玉県熊谷市で日本国内最高気温41.1度Cを記録したばかり。

初日から物凄い暑さ。しかも初日が土曜日ときて、いい香盤なため客入りがよく超混雑。一回目ステージ終了がなんと16時過ぎ。二回目、三回目はトリプル進行となる。ポラの行列も混雑し、場内に居るのも気が滅入るが、一歩ラウンジに出ると蒸し風呂のような暑さが襲ってくる。身の置き所がない空気に耐えられず二回目ステージ終了とともに退場した。

正直、劇場に辿り着くだけで死に物狂いの感がある。お客が皆、汗だくだく、息ふーふーの青色吐息状態。なんか軽い熱中症症状みたく身体がだるく頭がぼーっとするほど。最初のうちはステージを観ていても集中できない。途中から次第に身体が慣れてきた。いい香盤で、いいステージを観ているわけだから、自分でも段々元気になっていくのが分かる。

それにしても、我々観客が劇場に来るだけでこれだけ大変なのに、踊り子は更に踊るわけだからホント気の毒になる。

踊り子さんは本当に元気にステージを務めてくれている。その姿を見ているだけで暑さから解放され元気が湧き出てくる。心から有難いと思う。以前から私は「ストリップは最高の避暑だ」と豪語していたが、今年の夏はストリップのお陰で「命を救われる」気分になっている。ストリップがあるお陰で生きていられるよー。ホント♪

こんな暑い中、踊り子さんはよく元気でいられるよな、と感心しきり。そしたら、鈴木ミントさんのポラコメに「三回目ステージが終わってからニンニク注射を打ってきましたっ 踊り子は体力勝負!!」とあり驚く。そうだよなー踊り子さんだってへたるよなー。MIKAさんはリングまでやって体力消耗するわけだからホント身体のことが心配になる。ただ、穴を空けずにやり切ることが「The Greatest Show」への条件だと思って頑張ってほしい。

 

さて、今週のMKAさんは三個出し。1回目ステージは演目「花になれ」。H26年10月頭の大阪東洋ショー公演で拝見したのを思い出した。3回目は演目「蕾」。何度も観ている作品だが、どうしてもH26年2月結の栗橋で初めて拝見したときにMIKAさんが倒れたのが記憶に残っていて頭から離れない(変なこと言ってゴメンね)。そして、今回楽しみにしていた新作が2,4回目ステージに演じられる。

清本玲奈ファンのスト仲間から、MIKAさんも清本さんと同じく映画「The Greatest Showman」を演じていること、しかも初めてリングに挑戦した清本さんに比べてMIKAさんの空中ショーは段違いに見応えがあること等の情報をもらっていた。私は4月結の大阪東洋ショーで清本さんの演目「The Greatest Showman」を拝見し、観劇レポートを書くにあたり、迷わずに映画を観た。そして、この映画に嵌り、清本さんへの観劇レポートとは別に詳細な感想文を書き出した。来たる7月結のDX歌舞伎でMIKAさんに渡そうと思って。

だから、新作を拝見する前に事前に予習は済んでいた。どんな形の作品であろうが、受け入れ準備はできていた。そのつもりでいた・・・

さて、8周年作が始まる。聴きなれた音楽に合わせ作品が流れる。私は大好きな映画の音楽に身も心もウキウキと踊り出す。音楽とともに映画の場面が次々と脳裏に浮かぶ。だからMIKAさんの演技が手に取るように心に伝わってくる。そう思った・・・

ところが、作品の一番のクライマックスで、映画にない音楽が流れだす。聞き覚えのある平原綾香の名曲「Jupiter」である。その瞬間、私は映画の中で浮遊していた意識がはじけ飛んだ。「えっ!? どうして映画以外の曲を入れたの?」という疑問が頭の中を渦巻いた。ステージは「Jupiter」の曲が終わると、すぐに映画の曲に戻り、得意の空中ショーを入れながら映画「The Greatest Showman」の世界を演じ切った。

映画に心酔し切っているが故に、私には映画以外のものが違和感に感じられてしょうがなかった。初めて8周年作品のステージを観終わった瞬間に、私はポラの長い行列を横目に、手紙(事前に書いていた映画の感想文)の余白に一口感想を記した。

「素敵な作品ですね。映画のイメージに、MIKAさんのエアリアル演技がぴったり嵌ります。ひとつ気になったのですが、どうして映画の曲以外の“Jupiter”を入れたのですか?」

 私のその手紙と入れ違いに、MIKAさんからポラコメには「2回目のは8周年作“Jupiter”です♪ようやく太郎さんに観てもらえた~♪♪♪ “Greatest Showman”をテーマに作りました!」とあった。やっと私に8周年作を観せれたという弾む気持ちが伝わる。と同時に私は、この作品の演目名が“Jupiter”であることを初めて知って愕然とした。“Greatest Showman”ではないのか。ということは、映画はモチーフとして利用しているがMIKAさんの本音には“Jupiter”があるわけだ。私は完全に思い込みすぎたし、大変失礼な質問をしてしまったことになる。

 翌朝すぐに質問の非礼を詫びた。MIKAさんの返事には「Jupiterの件は気にしないでー! 確かに一つだけ‘Greatest Showman’以外の曲が入ってたら気になるよねー!!」そして「“Jupiter”の歌詞が“The Greatest Showman”を表しているように感じたから入れました。『誰も一人じゃない』『そのままでいい』などなど・・・日本人にはやはり日本語で聞いてもらった方がすとんと響くかなと思って・・・」と解説があった。

 “Jupiter”という曲のことを掘り下げる前に、まずは今回のMIKAさんの演目内容を紹介してみたい。

 

 最初に、盆の上からスタートする。照明が点くと、黒と白の入り混じったガウン状のドレス姿で登場。

 音楽は全て映画サントラから。最初の「A Millon Dreams」は、映画の最初に登場する心温まる曲で、主人公のバーナムが夫婦で夢を追おうとする場面だ。いきなり「さあ、これから始まるわよ」感に漲る。

 すぐに、音楽は華やかで激しいビートの「The Greates Show」に変わる。ガウンをさっと脱いで、ステージ衣装に着替える。黒いハットをかぶり、胸元が銀色にキラキラした黒いショーガールのコスチューム姿(黒いバニーガール風)。黒いロングブーツを履き、金のステッキを持って踊る。

 そして、吊るされた白いリングに乗り、得意のリング演技を始める。次々とポーズを決め、最後は高速回転。そのまま幕が閉まる。

次にサントラ曲「100pages to Fame」が流れる。幕が開き、暗闇の中を、たくさんの豆電球の付いた羽根マントを羽織り舞い踊る。電球の色が様々に変わる。幻想的な場面だ。

一旦、袖に戻る。音楽が歌姫ジェニーリンドの唄う「Never Enough (Reprise)」。映画の場面を思い出し、うっとり聴き入ってしまう。

すると、途中から映画サントラ以外の音楽が聴こえる。平原綾香の名曲「Jupiter」である。そこで、長袖の白いドレスを着て、先ほどの豆電球の付いた羽根マントを羽織り登場。

裸足で舞い踊る。電球の色が白から青へ、更に赤から黄色へと変わる。暗い中なので幻想的でもあり優雅でもある。

羽根マントを付けたまま盆に移動し、そのままベッドショーへ。

ずっと暗い中で演技していたので、改めて近くで衣装やアクセサリーを目で追う。左側頭部に銀の髪飾り。アクセサリーとしては、縦長のイヤリング、右足首に純金のブレスレット。マニキュアはしていない。

立上り曲は映画の主題歌である「This Is Me」が流れる。

すると、一旦、舞台の方に戻り幕が閉まる。

幕が上がると、光るエアリアルキューブが現れる。エアリアルキューブは前回4月中のここDX歌舞伎で拝見済みだがあの時は光っていなかった。「エアリアルキューブに初挑戦してます♪ 知り合いのエアリアルダンサーさんから譲り受けたものなの。」とコメントしてもらっていた。

MIKAさんが全裸で現れ、エアリアルキューブの演技を始める。最高の音楽「This Is Me」に合わせての演技に酔いしれる。素晴らしいの一言。

照明が落ち、ステージが終わる。

 

 本演目を一緒に観ていたスト仲間がつくづくと「MIKAさん、カッコいいね!」と感嘆していた。そうか、エアリアル演技を含めてMIKAさんのステージは誰もがそう思うんだな!?と改めて思った。一方、私はというと、デビューから一貫してMIKAさんは常に「美しさ」の対象なのだ。同じ憧れでも「カッコいい」憧れと「美しい」憧れは違う。だから、いつ見ても心がときめく。だから、万一MIKAさんが傷つくようなことがあれば私はリングにだって逆恨みする。MIKAさんは私にとって永遠なる美の象徴なんだと改めて感じた。

 

 そんな想いを踏まえて、以下に、エアリアル演技について私の勝手な解釈を話してみたい。

 ストリップというのは本来、女性のエロスを表現するもの。いろんな表現の仕方があると思う。以前のストリップは本番生板ショーなどエログロに走ろうとした時期もあったが、今ではアイドル路線というか、極めて健全な「美しさ」を追求しようとしている。

 女性には元々「美しさ」という魅力が存在する。この女性の美しさに対する男性側の魅力は何かと言うと、「カッコよさ」という表現になろう。「カッコよさ」には力強さ、スピード感が想起され、スポーツの魅力に相通じている。女性のダンスに対して、男性のスポーツ。それが女性の美しさと男性のカッコよさを象徴するものではないだろうか。

 エアリアルというのは極めてスポーティなもの。本来そこにはストリップが求めるエロスの概念はない。実際に、エアリアルを演じ、力強さ、スピード感、アクロパテックな動きを表現している時には、じっくり性器を眺めてエロスを楽しむ余裕すら無い。

 ところが、エアリアルがストリップの世界に浸透してきた。元々あったストリップの空中ショーというのは宙吊り自縛ショーなどSMちっくなエログロ路線のひとつであった。それが、海外からのポールダンスの導入と、リングやティシューなどの新技が登場することで、これまで二次元のステージだったストリップが三次元へと革命的な展開を見せる。まるでサーカスのようなアクロパテックな演技に踊り子も観客も魅了された。それをストリップ内で飛躍的に推進できたのは浅葱アゲハさんという天才の存在が大きい。

 こうして、エアリアルの導入により、女性の美しさに加えて男性的なカッコよさの要素をステージに組み込むようになっていく。ところがリング等のエアリアルは両刃の剣であり、演技力を上げるために筋肉を付け過ぎると女性らしい身体の丸みが無くなったり、また怪我をしやすくなる等のデメリットがある。

 いかにステージで「美しさ」と「カッコよさ」を融合させ調和させるか、これがストリップにおけるエアリアル演技者の課題になる。これをうまくやらないと、下手なエアリアル演技でステージそのものをダメにしてしまう惧れもある。要は、ステージにおいてエアリアルを入れる意味が問われる。どんどんとエアリアルの難度を上げて観客を満足させるには限界があるからだ。一時の流行りとしてエアリアルを取り入れて観客を驚かせるレベルはもう終わっている。観客の目の慣れというのは怖いものだ。

 

 話が一旦それるが、私が以前から感じている概念を話したい。

 この世にはLOVE志向とDREAM志向というのがあって、その二つが絡み合いながら世の中が発展してきた、と私は考えている。主に、LOVE志向を担うのが女性であり、DREAM志向を担うのが男性。そして男女が一緒になることでLOVEとDREAMがスパイラルに効果を発揮する。

 女性というのは本能的に、愛、平和を好み、子孫を育て、家庭や現状を守ろうとする。それがLOVE志向。一方の男性は本能的に、夢、冒険を好み、現状を打破しようとする。それがDREAM志向。この世の最も原点的な組織である家族を考えた場合、この二つがうまく回れば、二人で家庭を築き、旦那は出世し稼ぎ、マイホームの夢が叶い、子孫を立派に育てる、という理想的な形になる。ところが、男というのは現状に満足せず常に夢を追い続ける。それで成功するかもしれないが当然ながら失敗もする。映画「The Greatest Showman」は、まさに男女のLOVE志向とDREAM志向の葛藤物語なのである。

 このLOVE志向とDREAM志向というのは、家庭内の男女にとどまらず、世の中のあらゆる構造に存する。例えば、会社というのは大きくなると給料や福利厚生が良くなり居心地のいいLOVE志向になる。ところがこれで満足してしていると大企業病になり発展しなくなる。そこでDREAM志向で夢を追う。すると新たな仕事が増え、残業が増え、投資が失敗すると給料や福利厚生が悪くなる危険がある。つまりLOVE志向が縮小する。うまくいけば、LOVEもDREAMも拡大し社員が満足するわけだから、経営者の手腕は大きい。全ての組織がこのLOVE志向とDREAM志向のバランスの上に成り立っている。

 ストリップも同じように考えることができる。現状のダンスを基とするLOVE志向でいくか、エアリアルを取り入れたDREAM志向でいくか。まさに「美しさ」と「カッコよさ」の葛藤であり調和である。

 そのためにも、ひとつひとつのステージでエアリアルを取り入れる意味を考えてみることが必要になってくるのかもしれない。

 今回のMIKAさんの8周年作では大成功している。なぜなら、Jupiterというのは惑星(木星)であり、空中に通じる。また、映画「The Greatest Showman」はサーカス興行であり空中ブランコなどに相通じる。天体ショー、イコール“The Greatest Show”であると解釈もできそう。いずれにせよ、今回のステージで取り入れたリング演技とエアリアルキューブ演技は作品を最高にイメージアップしている。

 この作品“Jupiter”は、映画「The Greatest Showman」のもつ素晴らしい音楽と、最高のミュージカル的なThe Greatest Showの要素をモチーフとして演技構成することで、「美しさ」と「カッコよさ」を見事に調和させた作品である、と評価したい。

 

 最後に、演目名(⇒真のテーマ)であるJupiterについて触れたい。

 私は今回の観劇レポートを書く上で、何度も平原綾香の曲「Jupiter」を聴き直した。まさしく名曲中の名曲である。説明するまでもなく、「Jupiter」(ジュピター)は、2003年12月17日に発売された日本の歌手・平原綾香の最初のシングルであり、デビュー曲名である。発売元はドリーミュージック。元々はグスターヴ・ホルストの「木星」(管弦楽組曲『惑星』の第4曲)の主題の1つをモチーフにして吉元由美が詞を付けたものである。ちなみに、グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst / Gustavus Theodore von Holst, 1874年9月21日 - 1934年5月25日)は、イギリスの作曲家。最も知られた作品は管弦楽のための組曲『惑星』であるが、全般的に合唱のための曲を多く遺している。またイングランド各地の民謡や東洋的な題材を用いた作品、吹奏楽曲でも知られる。また、作詞した吉元由美(よしもと ゆみ)は、日本の作詞家、小説家、エッセイスト。作詞家として、これまでに杏里、山本達彦、中山美穂、河合奈保子ら数多くのアーティストに詞を提供した。が何と言っても 2003年に発売された平原綾香のデビュー曲『Jupiter』を作詞したことで知名度を上げた。

曲の調べもいいが、歌詞が素晴らしい。ネット上でいろいろ調べてみたら、CDデビューにあたって、ホルストの原曲に日本語の歌詞をのせて歌うことを提案したのは平原自身である。また、歌詞の一部には、平原綾香自らが書いた言葉“私の両手で何ができるの?”“ありのままで ずっと愛されている”“いつまでも歌うわ あなたのために”などが織り込まれている。

まさしくMIKAさんの思いと重なっている。MIKAさんの言う『誰も一人じゃない』『そのままでいい』という思いは、映画「The Greatest Showman」のモチーフとも一致している。主題歌「Thir Is Me」はまさしくそう。

そして、何度もステージを拝見する度に、『誰も一人じゃない』『そのままでいい』というMIKAさんの言葉は私への応援歌に思えてきた。私に向けて作品を作り、私のためにステージで演じてくれている。勝手ながら、そう思ったら、MIKAさんの優しさと深い愛が胸を突き刺してきて、涙が溢れて止まらなくなる。ステージ感想を書きながら感極まった。

 

 

平成30年7月                            DX歌舞伎にて

 

 

【平原綾香 「Jupiter」の歌詞】

Every day I listen to my heart

ひとりじゃない

深い胸の奥で つながってる

果てしない時を 越えて輝く星が

出会えた奇跡 教えてくれる

 

Every day I listen to my heart

ひとりじゃない

この宇宙(そら)の御胸(みむね)に抱かれて

 

私のこの両手で 何ができるの?

痛みに触れさせて そっと目を閉じて

夢を失うよりも 悲しいことは

自分を信じて あげられないこと

 

愛を学ぶために 孤独があるなら

意味のないことなど 起こりはしない

 

心の静寂(しじま)に 耳を澄まして

 

私を呼んだなら どこへでも行くわ

あなたのその涙 私のものに

 

今は自分を 抱きしめて

命のぬくもり 感じて

 

私たちは誰も ひとりじゃない

ありのままでずっと 愛されてる

望むように生きて 輝く未来を

いつまでも歌うわ あなたのために