今回は、ロックの踊り子MIKAさんについて、「着物による鎮魂歌」と題して観劇レポートします。
H27(2015)年3月14~15日の土日二日間、仙台に遠征した。
今週の仙台ロックの香盤は次のとおり。①阿久美々、②東条真夏、③雪見ほのか、④木村彩、⑤MIKA〔敬称略〕。全員ロック所属。お気に入りのメンバーがそろった。
お目当てのMIKAさんとは、先月2月結に広島第一劇場でお逢いしたばかり。戦後70年を象徴する広島から、この3.11で震災四周忌を迎えた仙台へ。なにか因縁めいたものを感ずる。
そんな中、MIKAさんのステージが始まる。
和物を披露。そういえば最近全く和物を観ていないな。しかも、今週初出しで、まだ演目名も決まってないという。「太郎さんに名付けてもらおうかしら」とMIKAさんに言われ、張り切る私。(笑)
さっそく新作の内容を紹介する。
雨の音が聞こえる。和傘をさして着物姿で登場。
華やかなピンクの着物を羽織る。着物の足元には鶴の絵柄が鮮やかに描かれている。髪は白いリボンで後ろにひとつ結ぶ。そして銀の簪(かんざし)がきらり。首元にはガラスと真珠のネックレス。耳には大きな銀のペンダントを付けたピアス。アクセサリーがMIKAさんのお顔を輝かせる。
和傘をもって舞い踊る。紫の和傘には白い桜の花びらが渦巻き状に描かれている。
ピンクの羽織りを脱ぐと、下には緑をベースにした赤と白の花がプリントされた着物が現れる。白い帯がおへその辺りで結ばれていてリボン状に長く垂れる。黒いブーツを履いて軽快に踊る。
一旦、盆の上に正座して一礼したかと思いきや、くノ一風の衣装に早変わり。
紫色をベースにした軽装。胸と腰周りのみ色が濃く、他は花の刺繍が入った透け透けの布が足元まで伸びる。幅広の黒いベルトを締め、正面は金色になっている。髪は結びを解き、背中まで垂らす。黒いブーツを履き軽快に踊る。
更に衣装を脱ぎ、先ほどの緑の着物を羽織ってベッドへ。しっとりと華やかに演ずる。
かぶりで見ていたので、先ほど述べたピアス、ネックレス、真珠のブレスレットなどのアクセサリーが鮮やかに映える。マニュキュアは付けていない。
最後に立ち上がって、和傘をもって舞う。今回四回目ステージで、和傘を広げるとき勢い余って少し破けてしまった。
着物姿ではあるが、ブーツを履いて踊るため、振付は斬新。曲も洋物が多い。
題名を付けるなら、最初の二つの洋楽のフレーズを採ったらいいなと思ったが英語のためよく聴き取れない。逆に、ベッド入りの邦楽の歌詞がすーっと耳に入る。お蔭でステージの物語性が分かってきた。桜があり、恋があり、涙がある。歌詞から「桜そして涙ひとひら」「桜ひとひらの夢」というフレーズが耳に残る。私的に名づけるなら「華ひらり」「恋ひとひら」「恋一葉」を候補にしたい。
私は、お正月興行で多かった着物の出し物を百花繚乱シリーズとしてレポート化しており、それを先月の広島でMIKAさんに披露した。鈴木ミントさん、小嶋実花さん、初芽里奈さん、東条真夏さんのレポート。これに対して、MIKAさんも次は私も着物にしようかしらと話していた。そうしたら、今回の仙台で和物を初出し。これには驚いた。
しかも、先ほど話したように、戦後70年の広島と震災四周忌の仙台がつながった。戦争や大地震を体験した人々の魂は未だに白い灰をかぶせた埋(うず)み火のようにくすぶり続けているのだろう。突然の死(人生の中断)、恋も青春も、家族も仕事も、日常生活までが一瞬にして奪い去られた。まさに今回の作品はそうした人々への鎮魂歌と思えた。
和傘が破れたことが象徴的で、その瞬間に悲恋のストーリーが私の頭の中を流れた。こうして「千年樹、恋一葉」という物語が出来上がった。
平成27年3月 仙台ロックにて
『千年樹、恋一葉』
~MIKAさん(ロック所属)に捧げる~
丘の上に、二人の思い出が詰まった特別な大樹があった。
春の枝には花がある。
彼は木の下で、ミカに向かって言った。
「ぼくはもうすぐ戦地に旅立つ。必ず君のもとに戻ってくるから待っていてほしい。」
飛行機乗りになるのが小さい頃からの彼の夢であることを知っていたミカは、彼の瞳がきらきら輝いているのを眩しそうに眺めていた。
お腹の中には彼の子供が宿っていた。ミカは彼にそのことを告げようかどうか迷っていた。今から戦地に赴く兵士に余計なことを言わないでおこうとそっと心にしまった。
梅雨が始まった。
彼のいない毎日はつまらなかった。ミカは丘の上に向かった。
樹の前に立つと、彼との思い出が蘇ってきた。あの日も雨が降っていた。樹の下で雨宿りをしたな・・・
私が樹に寄りかかると、彼は、私の顔をはさむ形で、両腕を樹についた。(今でいう「壁ドン」ならぬ「樹ドン」か(笑))
彼はじっと私の顔を見つめた。「とてもきれいだよ。心から愛しているよ。」と囁くと、彼の顔が近づいてきた。私は黙って彼の口づけを受けた。初めての口づけだった。
夏の枝には葉がある。
ミカは、また丘の上に向かった。樹の側に居ると彼と一緒のようで淋しさが紛れた。
強い日差しを避けるように樹の葉影に佇むと、あの日、彼が言った言葉を思い出す。
「これからは僕が君の傘になる。雨の日には濡れないように君を守り、強い日差しのときは君の白い肌を守る日傘になるからね。どんなに傘が破れようが必ず君のことを守ることを誓うよ。」
私は黙って彼に寄り添った。
秋の枝には実がなる。
彼との子供が産まれた。男の子だった。
ミカは丘の上の樹に報告に行った。
風にのって、ひとひらの楓の葉が飛んできた。まるで赤ん坊の手のひらのよう。彼が喜んでくれているのかしら。
ふと、ミカは楓の葉があまりにも真っ赤に染まっていることに胸騒ぎを覚えた。戦場の血しぶきが見えたような気がした。
冬の枝には慰(なぐさめ)がある。
天からひらひらと雪が舞い落ちてきた。それは彼が戦死したという手紙であった。
ミカは、心の葉が枯れ落ちるような気分で、丘に向かった。
樹を前にして、ミカは泣き崩れた。
樹の枝が、まるで彼の両腕のごとく、ミカを優しく抱きしめた。
ひと通り泣き終えた後に、ミカは意を決し、彼の両腕を振り払うように樹から離れた。そして改めて樹を眺めた。そこには冬木立の景色があった。花や葉や実のある頃には気付かなかったが、それらが消えた冬になって初めて見えてきた景色があった。
強く生きなければ・・・ミカは覚悟ができた。
彼が残してくれた忘れ形見を立派に育てあげようと心に誓った。
丘の上の樹は、千年樹と云われた。これまでもたくさんの人々の物語を見てきた。そして、この二人の物語も静かに見守っていくことでしょう。
おしまい