「リング物語」・・・思い出深いものになりました。少し事後談を記録したくなりました。

MIKAさんや浅葱アゲハさんとのやり取りをメモリアルさせて頂きます。

 

 最初に、この物語を思いつき書き出したら、私自身がすごく楽しい気分になりました。MIKAさんが読んでくれたらどんなに喜ぶだろうかと私も期待に胸が膨らむ。

 広島公演の翌週のDX歌舞伎、初日に早速広島レポートと「リング物語」を持参した。

 MIKAさんの反応は私の想像を超えるほどの喜びだった。こんな嬉しい感想はなかった。そのまま記載させて頂く。

「初日から太郎さんに会えて、そして念願の童話とレポートを読ませてもらえて夢の中にいるみたいでした。」

「私の童話とレポートを本当にありがとうございます。広島から楽しみにしていたので、興奮&嬉しさMAX~っ♡ 読み終わって、素晴らしいの一言です☆」

「初日から歌舞伎に足を運んで下さって本当にありがとうございます。そしてプレゼントをありがとうっ☆ すっごく楽しみにしていたから私の中でかなりハードルが上がっていたんですけど、想像をはるかにはるかにグーンと超えて素晴らしかったです!!! なんと!お話の中で、夏月姐さんとアゲハ姐さんと私が共演している♡ しかもリングが神器として使われてたなんてアイディア、素敵すぎますねっ! 太郎さんの作品、今までいっぱい読ませて頂きましたが「リング物語」が一番好きです↑  太郎さんってやっぱり天才だわ~☆改めてそう感じました!  」

「書いて頂いたストーリーを読んでいて、太郎さんはアイディアを宇宙から受け取る能力がずば抜けてるんだろうな、と感じました。引退されたひめ姐さんもそうでしたよね。お二人とも本当に好きなことをしているからこそ、これができるんだと思います。でも感受性の豊かさや敏感さ、センスというのは自分で育てていかなければいけないものだから、太郎さんは今までの人生で、きっと努力してこられたんですね。本当に素晴らしいことです!!!」

 これだけ褒められたことはありません。作者冥利に尽きます。私の方こそ、書いた甲斐がありました。MIKAさんに感謝&感激です☆

 

 ちょうどこの週、シアター上野に浅葱アゲハさんが出演していたので私は二度ほど伝書鳩になった。

「これ、是非アゲハ姐さんにも読ませてあげて下さいっ♪ きっとすごく気に入って下さるはず☆」とのMIKAさんの言葉通り、アゲハさんも大喜び。

「リング物語がツボすぎてやばいです・・!! 天羽族!!! 強そう!!」「素敵なリングの物語、宝物にします!」

 アゲハさんの中でも天羽さんの存在は大きいんだね、きっと。実際、身体付きを比べると大人と子供のように、本当に天羽さんは大きいし(笑)。でも天羽さんって時に乙女ちっくな恥じらいを見せたりしてカワイイところもあるんですよ。先日の復帰記念の西川口シアトルミュージックでもセーラー服ものを恥ずかしそうに踊っていたもの。それにしても、アゲハさんこそ細マッチョで凄いと思うよ。二人が競ってこそ、空中ショーは見応えのあるものになっていくと信ずる。

 さて、このシアター上野でアゲハさんのステージを観ていて私は新たな感動を覚えた。

 アゲハさんのステージはいつも進化している。前とどこか違うものが必ず入っている。私は頻繁にアゲハさんを追いかけているわけではないのですが、たまに観るからこそ彼女のステージと取組み姿勢に新鮮な感動を覚えます。

 最近はずっと布の演技ばかり観ていた。「最近布ばかりやってしまってますが、リングももっといっぱいやりたいー!!」 だからこそ、今回のリングは感激しました。

 やはりアゲハさんはリングの神様、いや布も含めて空中ショーの神様だよー!!!

  観ていて、神の領域の技を観ている気分になる。完全なるアートです。ものすごく余裕をもって、しっとり美しく演じている。アゲハさんのリング・ステージに込められた心が伝わってきました。その心を私なりに解釈して『リング物語』に書き込みたくなった。

‘リングの心’という副題を付けて、新『リング物語』を書き上げた。

 童話の中のサワテというのはもちろん私です。私がミカ姫と結婚する願望を織り込みました(笑)。なんてったってMIKAさんはストリップ界の嫁さんにしたい踊り子№1ですからね。

 

書き上げてすぐにMIKAさんに渡した。次のポラタイムで開口一番「10倍良くなってますー♪」と嬉しそうに言ってくれる。私はこれだけで十分幸せでした。「『リング物語~リングの心~』読ませて頂きました! 初版も素晴らしかったけど、さらに深みが増して心に強く響いてくる作品になりましたね!! しかもサワテ(太郎さん)と結ばれるっていうストーリーになってて、そこがツボ。 本当に素晴らしいですっ!!! アゲハ姐さん(物語ではアゲハ)からの教えが本当に深いし、的を射ていて、さらに真理をついていたので感心してしまいました! これはリングだけに言えない・・・すべてに共通する真理なんじゃないかなぁ・・・」 

 また上野の浅葱アゲハさんに会いに行き、改訂版を届ける。

「物語、めっちゃ嬉しかったです! 」「新リング物語、すてきなラブ♡ストーリーにずっきゅんです! サワテが羨ましいにょーん!」「太郎さんの物語は優しさに溢れていますね。」

 

 改めて、この童話『リング物語』を私にプレゼントしてくれたのはMIKAさんです。もちろんアゲハさんや天羽さんの存在はありますが、童話に仕上げられたのは紛れもなくMIKAさんのお蔭です。

 広島という孤立した時空の中で、私はMIKAさんのことを集中的に想いました。(東京だといろいろと浮気心が悪戯してしまい申し訳ありません、笑。) そのお蔭で、その週だけで二つも童話が飛び出しました。これは私にとっても初体験です。それだけMIKAさんが素晴らしい存在なのだと改めて実感しました。

 

平成25年10月5日                        DX歌舞伎にて

 

 

『リング物語』リングの心    

~MIKAさん(ロック所属)の三周年作品「rain」を記念して~

 

 

 

 祈祷師たちが政(まつりごと)を行っていた古代日本。

 ある村に立派な神社があり、そこに大きな鉄製のリングが神器として祀られていた。年に一度の村のお祭りに運び出され、そのリングを使った演技が催された。

 今年は特別な年で、神社に住んでいた祈祷師の娘・ミカ姫が年頃になり、花婿候補を選ぶことになっていた。リング演武の勝者が花嫁候補の権利を与えられる。ミカ姫は貴賓に溢れ、それはそれは美しい娘で、男なら誰もが一目で虜になりました。だから、若者たちはそのリングの競技に参加すべく躍起になりました。

 

 一人の若者が、前のお祭りの時にミカ姫を一目見て、その美しさに驚愕し、ずっと恋心を抱いていました。若者の名前をサワテといいました。

 彼はとても精悍で端正な顔つきをしていました。サワテは山奥に住んでいて、小さい頃から猿が遊び相手だったので、木々の間を自由に移動できるほどの身のこなしができました。

 彼は山から村に出てきて、リング集団の浅葱族に入りました。そして、憧れのミカ姫のためにリングの練習に励みました。仲良しの猿モンチがやってきて、リングを使ってくるくるとアクロバテックな動きをします。彼もモンチの動きを真似るように動きました。浅葱族の主アゲハはサワテの資質に目を付けていました。

 浅葱族というのは、その村に伝わるリング演武を伝統的に継承している集団でした。リングを平和の象徴として崇め、あくまで美しい演技を追求していました。アゲハはリング演武の第一人者で、まるで無重力のごとく空中でアクロバテックな美しい動きができました。まさに名前のごとくアゲハ蝶の舞。浅葱族の誰もがアゲハを尊敬していました。

 

 アゲハは若い頃から浅葱族の中で頭角を現しました。ところが、もう一人の若者がアゲハのライバルとして存在しました。彼は天羽と云いました。二人は同じ師匠のもと、技を磨き、競い合いました。

天羽は筋骨隆々の身体つきをしていて、彼のリング演技はパワーとスピードがモットー。いつしか、重いリングを殺戮の武器として使用することを考えました。実際、天羽は村々の戦争に参加して英雄視され出しました。

師匠はリングを殺戮の道具に使用したことを激怒し、天羽を破門しました。

天羽は浅葱族を去り、新たに天羽族を立ち上げました。そして、筋骨隆々の若者を集め、リングの一大組織を作り上げました。天羽は天羽族の主として君臨。

今回の花婿候補を選ぶ祭りに、天羽族からも若者が参加することになっていました。

 

今回のリング競技は、浅葱族と天羽族の因縁の対決となりました。

アゲハは浅葱族の代表としてサワテを選びました。そして個人指導を始めました。

サワテはアクロバテックな動きが得意で、リングの周りを縦横無尽に動き回りました。アゲハは彼の資質を認めるも、リングにおける心技体を徹底的に教え込みました。まず「動中静あり」を指導しました。激しい動きは、ひとつの静かな決めのポーズを導くためにある。動の中にある静こそが大切。次に「静中美あり」。その静かな決めポーズには美が要求される。美しくなければリングではない!とアゲハは断言しました。この「動中静、静中美」の精神をサワテの身体に沁み込ませました。

ある日、天羽族のスパイが浅葱族の練習を覗き見していました。そのスパイを浅葱族の若者たちが見つけアゲハの前に連れ出しました。ところがアゲハはスパイを開放し、しかも練習を見て、見たままを天羽に伝えるように話しました。

そしてサワテの方を向いて、こう語り始めました。「いいか、サワテ、よく聞け! リングというのは神器であり平和の象徴なのだ。リングのこの輪は、人の輪=和である。だから決して殺戮に使用してはならないのだ。」

「我々浅葱族は、リングの精神を継承していかなければならない。美こそが人の心を癒し感動させる。だから我々は美を追求していく!」

 サワテは頷きながら、リングの上で数々のポーズを決めていきました。サワテは神のみがなしうるレベル、リングの神技を身に付けました。

 

 祭りの日がやってきました。

 リングの演技に近隣からたくさんの若者が参加しましたが、最後は天羽族と浅葱族の一騎打ちになりました。

 最初に演技した天羽族の若者は、黒い衣装で登場。筋肉質な身体で表現する力強いパワーと目にもとまらぬ高速回転のスピードが他を圧倒しました。振り乱した髪から汗が飛び散り、その汗が光に反射してキラキラ輝きました。息もつかせぬ演技が終わり、観客は感嘆の溜息をもらしました。

 一方の浅葱族の若者サワテは、白い衣装で登場。端正な顔に白い鉢巻をしていました。地元の勇者の登場に観客の興奮は最高潮。彼は優雅に舞い始めました。俊敏な動きと美しい演技に観客はうっとり。そして神技のポーズを次々と決めました。そのたびに、応援に来ていた猿たちがキーキーと騒ぎ立てました。

 どちらにもたくさんの拍手が送られました。どちらも素晴らしい演技だったので、正直、甲乙つけがたい感じ。

 二人の演技を黙ってみていたミカ姫は、立ち上がって二人の若者に近づきました。そして、サワテの頬にキスをしました。ミカ姫はリングの美に惹かれたのでした。その瞬間に大きな拍手が巻き起こりました。

 サワテはめでたくミカ姫を娶(めと)ることができました。二人のお蔭で村には平和が続きました。

                                    おしまい