今回は、ロック所属の踊り子・星崎琴音さんについて、新作「恋に舞う」を題材にH29年7月結のDX歌舞伎の公演模様を話します。
H29年7月結のDX歌舞伎公演に顔を出した。今週のDX歌舞伎の香盤は次の通り。①小室りりか(ロック)、②美咲遥(DX歌舞伎)、③六花ましろ(道劇)、④misaki(ロック)、⑤かんな(ロック)、⑥星崎琴音(ロック)〔敬称略〕。
お目当ては星崎琴音さん。前回のライブシアター栗橋公演でお会いして、そのときのレポートを纏めていたのでお渡ししたかった。すごく喜んでくれ、丁寧なお返事を頂いた。これに感激し、今回もレポートしたくなり新作をじっくり観劇した。
今回の新作は演目名「恋に舞う」。今週のDX歌舞伎で初出し。
内容は次の通り。
歌姫・城南海の曲「夜の虹」が流れる中を、天女のごとく星崎琴音さんが舞い踊る。
頭にはキラキラした黒いヘアバンドをして、黒いロングヘアが背中に流れる。衣装はまさしく天女のようなピンクのふわふわしたドレス。上下セパレートになっていて、上半身は肩を露出し胸元から袖につながっている形。胸元には華やかな花を飾り、長い袖がふわりと垂れる。下半身は白いベルト部から下にピンクのスカートが縦割りにふわりと流れる。
裸足で優雅に舞い踊る。二曲目は鬼束ちひろの曲「流星群」。聴かせる楽曲が続く。
三曲目も一曲目と同じく城南海の曲「恋」で、そこで衣装を変える。
上半身はほぼ裸。白いガラスの数珠がたくさん垂れた首輪。頭には茶褐色の花飾り。琴音さんのチャームポイントである形のいいおっぱいが見えて嬉しい♡ 下半身は花柄のスカートで、前方は脚が見えるが、後方には白い透け透けのシーツが垂れる。
大きな紫色の羽扇子を使い、裸足で舞い踊る。
そのままベッドショーへ。ベッド曲は声優でもある高垣彩陽(たかがきあやひ)の曲「それでも夢が続くなら」。
近くに来たのでアクセサリーを目で追う。純金のイヤリングがきらり。右手首にガラスのブレスレット。手の指先にレッドのマニキュア。さりげなくオシャレが光る。
OP曲が変わったね。日本のガールズバンドSILENT SIREN(サイレント・サイレン)の曲「ぐるぐるワンダーランド」。グルグルという曲の歌詞にあわせてタオルを振り回す。お客も一緒にタオルを回す。最後にかぶり席の客とハイタッチ。お客さん参加型のOPショーは客とのスキンシップが図れて効果的だね。
さて、本作を拝見して、一作目、二作目のアニメシリーズから、突然のように大人の女を意識した作品に変わり驚いた。私はこのへんの心境が聞きたかった。ポラコメで丁寧に答えてくれた。
「他の作品に比べて確かに大人?な演目かも? そうしたくて選曲もしました。何年続くか分かりませんがこれから長くやっていきたい演目なのです。ダンスは純粋に踊り子として頑張りたいところ。ベッドは恋を知って少女だった踊り子が女になる様をやりたい。」
「今回は旅の踊り子の恋がテーマです。わざとバラードでまとめて、先生には流れるようなキレイなダンスとお願いしました。ちなみに振付は仙葉先生ではないです。浅草もたまには振付する先生で男性の方に今回はお願いしました。ベッドは今回は自分です。うまく羽扇子扱えなくて苦戦してますが最初に比べたら大分マシになりました!笑」
「自分にとって色々挑戦の演目です。まだまだ改良したいので、東洋までやったら一度しまって構成を見直そうと思っています。今言えるのはそれくらいです笑」
私なりに感じたことを述べさせて頂きますね。
最初に、歌い出しの歌詞に惹きつけられた。「心の中に手を伸ばして いらないモノを探してる そんな毎日 余計なものを傷つけて 強く生きていこうと 涙をこらえた」♪
心の中をえぐるような歌詞、そして心にしっとりと響いてくる歌声にドキッとさせられた。まさしく歌心を知っている歌手だ。
私は恥ずかしながら城 南海(キズキ ミナミ)という歌手を初めて知った。興味を持ってネットで調べた。生年月日:1989年12月26日 (現在27歳) 。鹿児島県奄美大島の出身で本名も同じ。同郷の元ちとせと同様に、奄美シマ唄にルーツを持ち、独特のグインという節回しを取り入れた歌唱法と澄んだ歌声で、聴く者を魅了する実力派歌手。彼女が有名になったのは、2014年にテレビ東京系で放送の『THEカラオケ★バトル』に出演して優勝して以来で、10度の優勝を重ね、また、番組内で100点満点を3度出すなど、歌のうまさが広く知られるようになった。ネットに、そのときのカラオケ場面がたくさん掲載されており、聴き出したら止まらないほどに夢中になってしまった。
今回の演目で城南海を選曲しているのが大きなポイントになっている。
次に、踊り子としての自覚。琴音さんにとって、かなりの意欲作であるのが伝わる。踊り子になったからには、好きなアニメだけでなく、誰もが踊り子として認めてくれるようなしっかりとした内容の演目を持ちたいと思うだろう。
その中で「旅の踊り子の恋」という難しいテーマに挑戦している。羽扇子が旅をする踊り子を渡り鳥のように表現しようとしているのだろう。
私には旅をする踊り子の気持ちはよく分からないが、旅をする踊り子に憧れる客の気持ちは理解できるような気がする。
ふと「百万本のバラ」という唄を思い出した。元々ロシア民謡であるこの唄は日本では加藤登紀子さんで有名だが、ここでは久保田早紀さんの唄の歌詞を紹介する。加藤さんは女優と訳しているが久保田さんの唄は踊り子となっている。訳詞は松山善三。
信じてくれますか 一人の若者が 小さな家を売り バラを買いました
信じてくれますか 嘘だと思うでしょ 町中のバラを 貴女に贈るなんて
バラを バラを バラを下さい ありったけの バラを下さい
あなたの好きなバラの花で あなたを あなたを あなたを包みたい
バラを バラを バラを下さい 百万本のバラを下さい
僕の 僕の 僕の この生命 貴女に 貴女に 貴女に 捧げましょ
貧しい絵描きの僕に 出来るのは ひとつ 何もかも捨てて 貴女を想うこと
誰も知らない 心のささやきを 花びらにそえて 貴女に贈りたい
バラを バラを バラを下さい ありったけの バラを下さい
あなたの好きなバラの花で あなたを あなたを あなたを包みたい
出逢いは短く あなたはもう いない あなたは 踊り子 街からまた街へ
夜汽車の窓辺で あなたは思うだろう 見えない愛の灯が この世にあるのだと
くるくる くるくる くるくる廻る 真っ紅なサテンの トウシューズ
残った僕の 熱い心には 甘い思い出 涙のしずく
貴女に 捧げた バラの花は 枯れても 枯れても わがいのち
貴女の 貴女の 貴女の胸に咲く あなたの姿は 遠く消えても
僕の 僕の 僕のある限り 君への 君への 君への愛は
燃えて 燃えて 燃えて燃えるよ 燃えて 燃えて 燃えて燃えるよ
ストリップファンの私はこの唄を聴くと涙が出る。その若者の気持ちが痛いほど分かる。命がけのプロポーズをしても叶わない。踊り子というのはそういうものだ。無限大の片思いであるがゆえに人は「永遠の愛」として共感するのだと思う。
踊り子は街から街に移動する旅芸人、まさに渡り鳥である。「踊り子は渡り鳥である」というのはこうした寂寞感と、踊り子はデビューしてもいつかは引退し、それが延々と繰り返されるという輪廻転生の無常観によるのである。
「くるくる くるくる くるくる廻る」という歌詞に、OP曲の「ぐるぐる」を重ねながら、星崎琴音に恋してしまった私の気持ちが揺れている。
平成29年7月 DX歌舞伎にて