今回は、ロックの香山蘭さんの魅力を、観劇レポート「クロウの魅力」という題名で語ります。えっ!? クロウって何? と思うでしょうが、まぁ読んでみて下さい。

 

 

 6月に入る頃には真夏のような暑い日が続く。もう半そで姿が目立つ。今年の夏はエルニーニョ現象で冷夏と言われているのになぁと思っていたら、今度は6月の5日目あたりから突然の大雨が続く。どうやら梅雨に入ったようだ。心変わりの激しい空模様だね。

 さて、H26年6月頭のDX歌舞伎は久しぶりにロック大会。

 今週の香盤は次の通り。①吉野サリー、②大友輝、③香山蘭、④音無舞華、⑤小嶋実花、⑥真白希実〔敬称略〕。もちろん全員がロック。ちなみに2,4回目は小嶋実花さん&真白希実さんのチームJEWEL。

 

  初日の日曜日に行き、香山蘭さんのステージを拝見しながら、改めていいステージだなぁ~と感じ「そろそろ蘭さんのレポートを書かせてもらうよ」と本人に話す。今週はそのつもりで観劇に臨む。あとは有言実行あるのみ。

 まずは1回目ステージの内容を紹介したい。

 演目は「スプリング」。二年ほど前の作品をリメイクしたもの。

 最初の衣装と踊りが最高にかっこいい。おへそが見えるセパレートの黒い衣装。上は、黒いブラ風のシャツで、胸を覆う布を首の後ろで結ぶ。下は、膝にポケットが付いた黒いズボン。銀の鎖の帯が付いている黒い帽子を小粋にかぶる。黒いブーツを履き、ノリのいい洋楽に合わせて踊る。全て黒ずくめで一見軍曹ルックのように厳かに見えるが、振り付けは軽快で、赤いステッキを持って華麗に舞う。この一曲目に、蘭さんのもつ独特な雰囲気とダンスセンスの良さが凝縮されている。今回のレポートを書こう!と決意させた一瞬である。

 次は、女性らしい華やかな衣装で登場。一見、ハワイアンぽい。肩を露出したピンクのドレス。 スカート部は膝辺りまでピンクで、その下の方は白いふわふわしたショール。髪に付けている赤・白・ピンクの花のリボンがかわいい。アクセサリーとして、白い玉のネックレスと、左手首にある銀のブレスレットがステキ。

 最初が男性で、次が女性ということか。演目名「スプリング」を春と訳せば、男女二人がキャバレーかなんかで出会い、恋に落ちるラブストーリーがイメージされる。

 最後に、ベッドショーへ。ピンクのベールに身を包み、下には白いパンティ、白いガーターとストッキング。しっとりとした大人の色香を放つ。パイパンが眩しい。おやっ、蘭さんのトレードマークである下腹部のTATOOが消えて、うっすらと痕になっている。

 

 私は彼女のステージを表現するキーワードを模索していた。ふと「クロウ」という言葉が思い浮かぶ。

 

●クロウは玄人(くろうと)に通じる。ステージも含め、蘭さんは玄人受けするタイプ。

 香山蘭ワールドの特徴は玄人受けする「渋さ」にある。若い娘がかわいさを前面に出して踊るのとは違い、大人の女性の味をしっとり魅せていく。「渋さ」は時にかっこよく、時に妖しさを醸す。ストリップの「わびさび」と呼びたくなるような美意識を魅せてくれる。

 

●クロウは苦労に通じる。玄人が苦労人であるのは察せられる。私は蘭さんの過去を全く知らないので、うかつなことは言えないが、きっと蘭さんはいろんな苦労をしてこの舞台に立っているのだろう。どこか憂いと翳りを感じさせる表情、大人の色香を匂わせる流し目は、それなりの人生体験なしには表せない。

 

●クロウは黒に通じる。

 蘭さんの衣装は黒が多いし、実際に黒がよく似合う。蘭さんの肌はかなり白いので黒がビリっと映える。

 また、黒は玄人で、白は素人。つまり、蘭さんのステージは単にかわいらしさを売り物にした素人さんとは違い、玄人肌のステージということ。

 

●クロウはクローンcloneに通じる。クローン人間がSFでよく登場するが、そもそも人間にはいろんな面があり、見方により色んな人間に見えるもの。

 では、本物の蘭さんとは何か?

 蘭さんはH23(2011)年11月11日にデビューしたが、私が初めて欄さんにお会いしたのはデビューから半年経ったH24年4月。今から二年ほど前の京都DX東寺だった。

 ステージを拝見していて、独特の雰囲気をもった踊り子だなと感じた。下腹部の花(桜?)のTATOOが印象的。単なるかわいいタイプではなく、玄人受けするタイプだなと感ずるも、そのときは彼女のことを適切に表現する言葉が見つからなかった。

 今週、レポートを書くにあたり、昔のポラを眺めてみた。正直、蘭さんがTATOOを消してしまったのが気になった。痕が残っているのでつい目が行ってしまう。一度決心して彫ったTATOOを消す行為というのは、いまだに迷いがあって自分探しをしているのかなぁ。やはり、私にとってはTATOOがあっての蘭さん。

 そんなことを考えていたら、六日目(私としては今週三回目)に顔を出したら、なんと下腹部のTATOOが戻っていた。驚いてポラ時に訊いたら、今週はパイパン大会なのでTATOOはまずいかなと思って、白くペイントしたとのこと。なぁんだ、TATOOを消したわけじゃないんだ。でも、蘭さん、TATOOを気にしているのかな。いろいろ言う人がいるかもしれないけど、気にしないで。これが私よ!と、どんと構えていてほしいな。


●クロウは表現者createに通じる。

 今週はもう一作「人魚姫」を披露していた。12作目の新作らしい。蘭さんの熱烈なファンの方に聞いて驚いたのが、殆どの作品を自作していること。自分自身で香山蘭ワールドを創り上げているのか。これは凄いことだ。今更だが、蘭さんは踊り子になるべくしてなった「ストリップの申し子」と言える。

 蘭さん自身、この二年半の間にストリップの仕事を辞めたいと思ったこともあるようだが、最終的には「この仕事に出会えて本当に幸せ」と言っている。本当の蘭さんがここにいる!

 

●最後に、クロウは英語のCROW、即ちカラスを意味する。

 初めて欄さんに会ったとき、たまたま衣装が黒かったのと、京都の東寺という場所柄か、童話ちっくに「黒いカラス」のイメージが浮かんだのを思い出す。黒いカラスに譬えるなんて失礼かな。でも、私はカラスに偏見はなく、全て生きとし生きるものには必ず生きている意味があると考えている。カラスには生きる強さを感じる。

 実は、今このレポートを京都DX東寺で書いている。不思議な縁だね。明日、蘭さんにこのレポートを渡すつもりで書き上げる予定。

 このレポートを書きながら、童話のインスピレーションが湧いたので、童話を付録としてプレゼントするね。題名は「黒いカラスのままで」。変なタイトルでごめん(笑)。

 カラスにダンスをさせちゃう。しかもマイケルのムーンウォークまで。黒いカラスは白いハトにはなれないし「黒いカラスのままで」いることに意味がある。亡くなったマイケルに話してあげたかったね(笑)。

 

 さて、外見の話を続けてきたが、最後に蘭さんの内面の魅力について書いておきたい。

 初めて手紙を渡して返ってきたコメントに「はじめまして。お手紙と素敵なお話ありがとうございました☆今の私にはズバッとくる物語でした。」とあり、この人とは気が合うと直感。それ以来、機会がある度にポラで手紙を渡しているが、蘭さんの人柄の良さがよく分かり、どんどん惹かれていく。

 今回も「私はポラが売れないときとか、需要がないのかなって凹んだり、ステージ面白くないかなーって悩んだときもあったけど、少しでも楽しんでもらえるように頑張って、太郎さんみたいに感想を教えてくれると嬉しいし、続けてきて良かったなって思います。」と心のうちを語ってくれる。私も素直に嬉しい。蘭さんは一見強そうに見えるけど(失礼!)、内心はとても繊細で優しさに満ちた女性だなぁといつも感ずる。

 

 香山蘭さんはこれからの活躍が楽しみな踊り子の一人である。

 

平成26年6月                            DX歌舞伎にて

 

 

 

 

 

童話『黒いカラスのままで』

                         ~香山蘭さんに捧げる~

 

 

 ここは京都の東寺。

 古寺の周りの木々に、たくさんのカラスが群れていた。

 寺の広い庭には白いハトがたくさんいて、観光客からエサを与えられていた。

 コっコっ♪コっコっ♪ 喉を鳴らして喜んでいる。

 それを見ていた黒いカラスが木から降りてきた。

 カっ・カっ・カっ♪ 愛想を振りまく。

 ところが、黒いカラスが近づくと、観光客はしっ!しっ!と追い払いました。そのため、いつも黒いカラスたちは周りの木々に群れ、観光客が帰った後で、落ちているエサを拾いに行きました。

 

 一羽の風変りのカラスがいた。彼は身体中に白い粉を付けていた。

「ぼくは黒い身体が嫌いだ! あの庭にいる白いハトのようになりたいんだ。」

 そう言っては、白い粉を羽根に塗り付けていた。その恰好で観光客に近づくも、やはりしっ!しっ!と追い払われました。

 他のカラスたちは、彼を見ては笑っていた。カっ・カっ・カっ・・・

 

 白いカラスは、踊りが上手だった。身軽に舞い上がり空中旋回も素晴らしかったが、驚くべきは木の枝の上をムーンウォークのように軽やかにステップを踏む。カラスの世界にオリンピックがあったら、きっと彼はダンス部門の金メダルだね。

 

 彼の華麗な踊りを見ていた一羽の雌のカラスが近づいてきて、彼に話した。

「とても素敵な踊りだわ。あなたは、選ばれたカラスよ。黒いカラスのままでも十分に輝いているわよ。白い粉をまぶして目立つ必要なんて全くないわ。」

 彼は一目でその雌のカラスを気に入った。

 彼は白い粉を拭き取り、黒いカラスに戻ってから、丁寧に雌のカラスに求愛した。

 

 二羽は古寺の周りを楽しく舞い踊りました。

 夕陽が二羽に優しく微笑みました。

 

                                    おしまい