今回は、H31年2月頭の大阪晃生ショー劇場における、中谷ののかさん(TS所属)の公演模様を、前作「Faded」と新作「Money Bitch」を題材に、「中谷ののかオリジナル」という題名で語りたい。

 

 

 H31年2月頭の大阪晃生に、2/3~6まで四日間滞在した。

  その週の香盤は次の通り。①楠かほ(道劇)、②はな (フリー)、③金魚 (道劇)、④さつき楓(晃生)、⑤中谷ののか(晃生) 〔敬称略〕。すごくいい香盤で楽しかったので三日間の予定を四日間に延長した。

 

  中谷ののかさんの今週の出し物は、前作Faded」と新作Money Bitch」の二個出し。二つともH30年12月結とH31年1月頭の二週連続の大和で拝見済み。新作「Money Bitch」はBD作品としてその時に発表したが、前作「Faded」は大和の前の11月結のシアター上野で発表したようだ。

  前回お渡ししたレポートで、この一年を振り返ったところで、「ののかさんの作品は少しマンネリ化しているのではないか。本当のののか作品とは何かをもう一度考えるべき時期に来ていると感ずる。」とぶしつけながら指摘させてもらった。そうしたら、その時に作品「Faded」とBD作「Money Bitch」の二本を立て続けに拝見し驚嘆した。私の指摘を見越したように、素晴らしい作品で腰を抜かさんばかりに感激した。

 作品「Faded」は、これぞ中谷作品だと言わしめるものだった。私は個人的に、中谷作品の中で一番気に入っているのは「渡り鳥」。今回の作品はその作風に近く、中谷作品の中で最も上位に位置付けたい作品の出来だった。ステージを観ていて涙が出るほど感動した。

 次の新作Money Bitch」もいい。この作品は初めて道劇の水鳥藍さんに振付けてもらったもの。やはり、いつもの振付に比べて斬新さがある。

 私が感心したのは、ここ最近の作品がダンス・ダンス・ダンスと迫ってきたのに対して、二作品ともストーリー性を持っていること。最初に、どちらの作品も映画をモチーフにしているのかなと思った。特に「Money Bitch」は同じ映画のタイトルがある。ところが、どちらも中谷オリジナルの作品であることに感心した。「Money Bitchは映画から取ったんじゃなくてオリジナルで、強盗したのは警察でした、っていう悪者の演目だよ。振付だけ水鳥先生で後は自分だよ。また、Fadedはオール自分プロデュースです。」

 さて、ひとつずつ、内容を見ていこう。

 

 1,3回目ステージは演目「Faded」。

「演目名のFadedは三曲目の曲名から採りました。アラン・ウォーカーのFaded。この曲が使いたくてこの演目つくったよ。」ちなみに、"Faded"は消える、色褪せるという意味。この曲の歌詞では♪「どこにいるの?」「あなたは今どこにいるの?」「明るいけれど薄れていく光の中」が繰り返される。ののかさんが「踊り子は自らの身を削って輝いているのですよ・・っていう演目です。」と解説してくれた。

 なるほど、この三曲目の「Faded」はめちゃくちゃメロディアスな楽曲。ネットで調べたら、この『Faded』は現在、YouTubeではなんと2億7千万回近く再生されているモンスター・ナンバー。驚くべきは、実はこの曲を作ったアーティストAlan Walker(アラン・ウォーカー)、まだ18歳の新人プロデューサーなのだ。すごい若手が出てきたものだ。 元々は“Fade”というタイトルだったが、それを2015年4月に“Faded”として再リリースする際、ヴォーカルを募集し、ノルウェー出身の女性シンガー、Iselin Solheimによるヴォーカルが加わった。彼女の歌声あっての名曲だね。

 私は他の曲名も教えてもらおうと思ったら「Fadedの曲は三曲目しかわからなくてどうしよう・・笑。」「携帯変えてしまって曲がなくなったのであんまりわからない・・・」との返答。なお、「Fadedの二曲目はバレエのくるみ割り人形の金平糖の精の曲だよ」。

 

 演目「Faded」は幻想的な作品である。

 最初に、ピンクのドレスの上に黒いマントを羽織って登場。ドレスにはピンクの花の蔓が身体に巻き付いている。頭にもピンクの花飾り。また、黒いマントには黒いバラが付いている。すごく細かいところまで丁寧に演出されているね。

  荘厳でドラマチックなインスト曲に合わせ、舞い踊る。ガラスケースに収納された一輪のバラの花がライトアップされる。おもわず映画「美女と野獣」の名場面を彷彿させる。

 二曲目はバレエ曲「くるみ割り人形の金平糖の精の曲」。黒いマントを取って、裸足で舞い踊る。久しぶりのバレエを披露。とても素晴らしい。

 ピンクのドレスは肩出し。肩紐で吊るしているワンピース。よく見たら、花柄の刺繍が施されている。その上に、バラの蔓が巻き付いている。

 盆前に来て、ピンクのバラの花を一輪取り出して、その花びらを客席にばら撒く。

 ここで一旦、暗転。

 そして、音楽が名曲「Faded」になり、衣装も変わる。ここからメルヘンの世界が花開く。

 ピンクのバラを首輪にした白いドレス姿。光るバラの蔓を持って裸足で舞い踊る。これが美しくも幻想的。まさしく本作品のハイライト場面。

 最高の中谷ののかを味わった!!!!

 

  次に、2,4回目ステージは新作「Money Bitch」。

 ちなみに、『bitch』=(雌犬)で、下品な表現。曲名は同じく不明「BD作は(曲名は分からないけどアーティストは)リアーナとかカーディBとかフローライダー!!」。

 最初に、赤いドレスの上に、黒い毛皮のコートを羽織り、黒い帽子、黒いサングラス、黒いカバンを持って登場。カバンから札束を取り出し、それを盆の上でばら撒く。客席にも散る。

  すると突然、黒いコート、黒い帽子、黒いサングラス、そして黒いバックを次々と盆前の客席に投げる。お客は思わず驚く。

 この女性はバブリーに見えたが、実は強盗犯。衣装を脱ぎ捨て逃走。

 次に、婦人警官の恰好で登場。「強盗したのは警察でした」

 上着は黒い半袖制服で、胸ポケットが二つ。右肩と背中の部分に白いPOLICEの文字が見える。腰にはガンベルト。ミニスカート、黒い網タイツに、黒いブーツを履く。赤いペンライトを左右二本持って、男性ボーカルの音楽に合わせて踊る。

 そして、ベッドショーへ。

 手錠を出す。ピストルで客席に向かって撃つ。ガンベルトを客席に放る。上着を脱ぐ。ブラとパンティストッキング、ガータ、ブーツ。黒ずくめ。

 ブラを取り、客席の前でぶらぶらし、客に放る。

 最後に、黒い毛皮のコートを羽織る。パトカーの音が聞こえる。

 

 

 今回の晃生は、中谷作品をレポートしたくて長く滞在した。これまで、多産型の作品群をレポートし続けてきて、ここにきて三作が未レポート状態だった。今回、激しく感動した二作品をレポートできて嬉しい限り。

 残りの演目「BLAKPINK」もレポート化したい。韓国の女性グループをモチーフにした作品だよね。是非、曲名を教えてほしい。よろしくです。(あらっ!? こちらも携帯を代えた影響があるかな?)

 

 

平成31年2月                          大阪晃生ショーにて

 

 

 

童話『薔薇姫』 

                                        ~中谷ののかさん(TS所属)の作品「Faded」を記念して~

 

 

 西洋の、あるお城にかわいらしいお姫様がいました。

 瞳がくりくりと輝き、いつも微笑みを浮かべていました。誰からも愛される存在。

 背がとても高く、とても足の長い娘でした。顔にはまだあどけなさが残っていますが、もう立派に大人の女性に成長していました。そして彼女はもう結婚適齢期を迎えていました。

 そろそろお婿さんを選ばなければならないと、広く花婿候補を応募することになりました。国中の若者が大騒ぎです。お姫様のお相手ということは、その国の王子様になるわけですからね。

 

 お姫様がちやほやされているのを面白くなく思う魔女がいました。魔女はお姫様に呪いをかけました。

 すると、お姫様は突然の熱病にかかりました。このままでは命が危ない。

 

 ある若者が立ち上がりました。彼は身分が低いのですが、お姫様に憧れて花婿に立候補していました。お姫様を想う気持ちは誰にも負けません。

 若者は魔女に掛け合いました。

 魔女は言いました。「お姫様はこのままではすぐに死ぬだろう。彼女を助けるためには、街外れにある山の頂上に生えている白い花を薬草として煎じて飲ませるしかない。ただし、その山は聖なる山なので裸足で登らないといけない。今日中に採ってこれますか!?」

 お姫様を助けるためなら言う通りにする!と約束しました。

 

 若者はすぐに山に向かいました。

 山はすぐ見えるところにありました。さほど高い山ではありません。距離的には日帰りは容易でした。

 ところが、その山には棘の生えた草がさくさんありました。裸足で登るのは危険でした。

 若者はお姫様を助けたい一心で山を駆け上がりました。案の定、若者の足は血だらけになりました。しかし若者には痛みを感じている余裕がありません。

 山の頂上に到着すると、たくさんの白い花が生えていました。若者は夢中で白い花を摘んで束ねました。背負って山を下り始めました。

 下山の途中で眩暈がして倒れました。出血多量の状態。彼の足から噴き出た血は白い花にかかり、赤く染めていました。

 すぐに若者は立ち上がりました。「お姫様を助けないといけない」と走り出しました。

 夕方、お城に到着するときには瀕死の状態でした。

 城の家来たちが、若者が持ってきた花を急いで煎じてお姫差に飲ませました。

 すると、お姫様の熱が下がり、意識が戻りました。

 お姫様の美しい瞳が開くのを見届けて、安心したのか、若者は息を引き取りました。

 お姫様は命がけで自分を助けてくれた若者を抱きしめました。涙が頬を伝わりました。

 

 お姫様は若者が運んできた花を庭に植えて供養をしました。

 もともと白い花なのですが、不思議なことに、その花は真っ赤な色になりました。若者の血の色です。しかも、茎には棘がありました。その新種の花を薔薇と名付けました。

 毎年春になると、城の庭は薔薇でいっぱいになります。お姫様は薔薇を見る度に、自分を救ってくれた若者の愛の大きさを感じ幸せな気持ちになりました。

 いつしか、お姫様は薔薇姫と呼ばれるようになりました。

 

                                           おしまい