今回は、平成のスーパースターであったロックの踊り子・灘ジュンさんについて、「ストリップの光」と題して、関西ラストステージをレポートします。

 

  私は4月8日(土)から大阪に遠征した。

  この土日はちょうど桜満開の時期。ところが夜行バスで大阪に到着したら朝から空はどんより曇っている。とても花日和とは言えない。そうこうしたら午後から雨が降ってくる。天気予報ではここ数日は雨が続くようだ。花見どころか花冷えの雨である。

  桜が咲くこの時期というのは「春に三日の晴れなし」という。この季節の空模様は移ろいやすい。花日和、花曇り、花冷え。桜にちなんだ天気の言葉が多い。列島の空を寒気と暖気が往来し、泣いていた空が笑ってはまた崩れる。

  まぁ、私にとっては、ストリップのお華見が天気に左右されずに楽しめるからいいけどね(笑)。

 

 H29年4月前半、灘ジュンさんが大阪東洋ラスト公演となる。私は万難を排してジュンさんとの最後のお別れにやってきた。

 土日は、全国からジュンさんの応援隊がたくさん遠征してきていた。顔見知りの方が多い。彼らは結束が固いね。土曜の夜はみんなで呑みに行っていた。

 仲良しのライス君もいた。前半の土日にはつよぽんも来ていたらしい。改めて、ジュンさんがストリップデビューしたお陰でストリップに足を踏み入れたスト仲間が多いことに気付く。ジュンさんのストリップ貢献度は大きい。

  さて、今週4月頭の香盤は次の通り。①上野綾(東洋)、②空まこと(ロック)、③坂上友香(東洋)、④麻宮この葉(ロック)、⑤灘ジュン(ロック)〔敬称略〕。今週の東洋は話題がいっぱい。麻宮この葉さんが初乗り、坂上友香さんが8周年(4/9(日)にイベントあり)、そして何と言っても灘ジュンさんが引退前関西ラストになる。ジュンさんのみ15日までのロング公演。

  ちなみに、今週4月中の香盤は次の通り。①渚あおい(東洋)、②翔田真央(道劇)、③榎本らん(東洋)、④鶴見つばさ(ロック)、⑤灘ジュン(ロック)〔敬称略〕。鶴見つばささんが東洋初乗り。

 

  ジュンさんはH16(2004)年7月1日、川崎ロックでデビュー。今回の東洋公演の後は、GW5/1~10の川崎ロック公演、最後が浅草ロックの6月一か月公演で6/25引退というから、ちょうど13年間のストリップ歴で引退することになる。

 その間ずっとロックの、いやストリップ界全体の看板として活躍してきた。ベテランの踊り子さんはジュンさんが居てくれたお陰で肩の荷が軽かったと口々に感謝していたし、中堅・若手の踊り子さんは皆、ジュンさんに憧れ、ジュンさんを手本・目標にして頑張ってきた。看板を背負うことがどれほど大変なことか想像に難くない。

 踊り子さんだけでなく、お客の中にも、ジュンさんがストリップ界にデビューしたから入って来たというAVファンがたくさんいる。先ほど話した私のスト仲間たちもそう。お陰で私も仲良し仲間が増えた。逆に、ジュンさんが引退するなら自分もストリップから足を洗うとこぼす人もいる。ジュンさんの追っかけ隊の中にもいるし、ここ東洋でも仲良し老人の宮さんが「もう自分は81歳なので贔屓の灘ジュンがいなくなればもう劇場に来ることはなくなるな」と淋しいことを漏らしていた。

  以上、これだけでもジュンさんがストリップ界に貢献した影響度は計り知れない。

 

  さて、今回の演目について触れたい。これがソロでのラスト作品とのこと。

  今回の演目のタイトルは『YOROKOBINOUTA』。歓びの詩と書かずに敢えてローマ字で表現している。なにか意味があるのだろうか私には分かりかねていた。また「ここでの時間はまさにYOROKOBIでした。」とのコメントを頂いたが、こことは東洋を指すのかと考えあぐねた。

 ともあれ、今作はラストステージに相応しい素晴らしい作品に仕上がっている。ジュンさんのファンの方に事前に聞いたところ、「今回はストーリーものではなくダンスもの。和物ではなく、どちらかと言うと洋物っぽい。ただ、一部着物でヒスパニック風(スペイン語文化圏)に踊る場面もあるよ。」と話していたので、最後は踊り子らしくダンスで決めてきたのかなと思って、ステージに臨んだ。

 

 独特な音楽が流れる。神秘的で荘厳な雰囲気を醸す。

 まず最初に、私の印象に残ったのが、華やかな衣装。明と暗の二つのパターンがある。

 暗の方は、紺のロングドレス。肩紐で吊るし、腰でくびれ、そこから裾広がりに足元まで覆う。白い雪の結晶の模様が上半身とスカート裾の部分にある。頭には銀の王冠をのせる。ドレスと同じ紺色の長い手袋を両手にする。手袋には銀の線が一本入っている。全体として、雪の女王のような華麗さを醸す。色白のジュンさんの美しさがキリッと映え、ただただ見惚れるばかり。

 もう一方の明るい方は、金銀のキラキラしたマント風の衣装。これを時に身体に巻き付けて着物のように着こなしたかと思い気や、時にマントのようにして羽織る。

 暗の方が月であれば、明の方はまるで太陽。

 暗が冷たいcoolであれば、明は温かいhot。この二つが合わさってcool beauty with hot heartという私の理想の女性を表現しているようにも思えてくる。

 ステージの展開に従うと、次のようになる。最初に、明るいマントを羽織って登場。マントを脱ぐと暗のドレスが現れる。このドレスのまま舞い踊る。次に場面が変わって、明るい着物姿で登場。踊りながら着物のマントをはだけると中から華やかな白いブラとパンツの姿となって軽やかに舞う。

 そして、また場面が変わって、衣装を脱いで素っ裸になり布を一枚腰に巻いて盆へ。透け透けの布は刺繍入りで豪華。ベッドショーが始まる。ジュンさんの美しいお顔が近くで見えてまぶしい。白い肌がエロティック。アクセサリーは銀のピアス、ガラスと金銀が交差したネックレス、そして手足の銀色マニキュア。時間が止まる。ジュンさんの神々しい美しさが観客を黙らせる。

 このベッドショーで終わりかと思ったら、最後の最後に、また最初の時と同じ衣装、暗のドレスに明るいマントを羽織って登場する。

 私は初めて拝見したとき、このステージ展開がよく理解できなかった。ストーリーはないのかと思った。単に独特な音楽に乗って、美しいドレスで舞い踊っているのかと思った。

  ジュンさんから「今作の『YOROKOBINOUTA』はかぐや姫をイメージしてます。」とポラコメをもらいハッとした。

  ジュンさんはストリップ界に舞い降りた自分を月からやってきたかぐや姫に重ねているのか、そして引退をまた月の世界に還っていくイメージにしているのか、と理解できた。ストリップというのは華やか世界で、非現実空間。13年間そこのトップに君臨していたというのはジュンさんにとって空蝉の世界なのだと思う。かぐや姫として、その世界を卒業していく気持ちがよく伝わってきた。

 

  この作品でもうひとつ印象的なのが、独特な音楽。気になったのでジュンさんに尋ねる。「今回の曲は ①『鼓動』(日経スペシャル・ガイアの夜明け)、②『夢の風』(〃)、③『愛におちて』(〃)、④『YOROKOBINOUTA』」とのポラコメを頂く。あぁ~TVで観たことがあるから、聴いたことがあるはず‼

 「ガイアの夜明け」は、2002年から放送されている日経新聞社がメインスポンサーのビジネス・ドキュメンタリー番組。「日経スペシャル」と銘打たれたこの経済番組では、毎回日本や海外のビジネスマンが「ガイアの夜明け」に向かって奮闘する姿が描かれている。

 とくに、オープニングテーマ曲の『鼓動 ガイアの夜明け』は、音楽プロデューサー岸 利至(きし としゆき/1969-)作曲による番組オリジナル曲。歌詞は北アフリカのスーダン語とのことで、日本人が聴いても全く意味が分からないが、逆にそれが神秘的で特異性のある異国情緒を醸し出し、そして北アフリカの広大な大地の情景を思い浮かべさせる。

 それはともあれ、今作のキーワードは「ガイア(GAIA)」であることが分かった。息づく大きな生命体、つまり地球のこと。H21年11月に川崎ロックで観たジュンさんの作品「ガイア」がすぐに思い出された。あの時、私は次のような感想を書いた。「今回の作品のテーマは『アース(地球)神』という象徴なのではないかな。地球上には、八百万(やおろず)の神々が宿る。また、地球そのものがひとつの大きな神と云える。私はそれをアース神(造語)と呼ぶ。そして、その地球をも包み込む大いなる神も存在する。それは宇宙神。その宇宙神のひとつに太陽がある。今回の作品では銀色と緑が強調されていることを鑑みれば、テーマとなる神は地球を優しく包み込む太陽神という解釈もできそうだ。」このときの作品は私の宗教観と共鳴し、スケールの大きさに驚愕させられた。

 そうか、今回の「明」に当たる衣装は、「暗」である月を包み込む、地球であり、また太陽でもあるんだ。ということは、明暗と考えるよりも陰陽と捉えた方がいい。この世は陰陽でできている。昼と夜。太陽と月。暗いところがあるからこそ明るさというものが分かる。明るい陽だけでも疲れるから、暗い陰の部分が癒しになる。陰陽はバランスしてこの世を構成している。漸くそこまで理解が行き着いた。

 もうひとつ気になっていたダンスも、とくに特定した民族舞踊と考える必要はなく、ジュンさんが感じたままのガイアを舞い踊っているのだろう。(ジュンさんにダンスのことを質問をしたら「今回のダンスは特に何系ということはなく、スタンダードジャズの先生にお願いしました。二曲目の衣装に合わせて日舞っぽく。曲に合わせてエキゾチックな振りにも感じますが。」との回答を頂いた。)

 

  以上を総括すると、今回の作品は次のとおりの解釈となる。

  月からやってきたかぐや姫は、地球でたくさんの歓びを与えられた。地球のおじいさんやおばあさんにお世話になり、また、たくさんの男性にも愛されて、月に帰っていく。

  私も、このストリップ界での13年間でたくさんの歓びの時間を与えてもらった。私のことを愛してくれたたくさんの人々に感謝の気持ちを込めてこの作品を演じます。・・となる。

 

  最後に、作品とは関係ないが、ジュンさんについて話をさせて下さい。

  今回、東洋に遠征してきた私の初日、かぶりで観ていた私の隣に70歳過ぎの老人が座った。私がジュンさんのステージをレポートしたくてせっせとメモしているのを見て話しかけてきた。

「彼女の熱心なファンの方なんですね。」と私に笑みを浮かべた。

「彼女はほんとにキレイだね。私は今までこんな美しい女性を見たことがないよ。」さらに

「これだけキレイなんだから、その気になればいくらでもスポンサーが付くことだろう。でも、この人はお金では動かないんだろうね。お金になびくような娘なら、もう当の昔にこの世界にいないはずだ。」と言うので、「おそらく沢山の男性から声をかけられたと思うけど、並みの男性では相手にされなかったんじゃないかな。だから13年間この世界をトップで走り抜けてこれたんだと思う。」と私が同調した。

「いやぁ~この人は、こんな場末のストリップ劇場ではなく、本来はもっと表舞台を歩く人だわ。我々男性に対する慈善事業みたいなものかな。いずれにせよ、ここに居てくれるというのは、彼女は生き仏みたいなもんだよ。」と老人がしみじみ話す。私は老人の言葉に頷いた。

「彼女は実に聡明な顔立ちをしている。」と老人が言うので「私はジュンさんによく手紙を書くんですがとてもしっかりした返事をくれるんですよ。彼女は本当に賢い女性ですよ。」と私が相槌ちを打つ。話が弾みだす。

 その老人が「彼女は肝が据わっているように見える。元アイドルの三原じゅん子が政治家をやっているぐらいだから彼女も政治家になればいいんだ。安倍首相も明恵夫人なんかより、こんな人を奥さんにもらったらいいのにな。」なんて段々話が脱線していった。(笑)

 

 13年前に、ジュンさんのお顔を初めて拝見したとき、「世の中に、こんなキレイな人がいるんだなぁ~」と思ったものです。単なるキレイを超えていた。神々しいオーラがあった。老人の云う「生き仏」という表現も分かる。仏様の後光を感じるのだろう。ジュンさんの美しさは今の今も‘13年間の納得’である。最後に、詩が浮かんだので贈らせて頂きます。

 ジュンさんのことが光に見えてきました。

 

「ストリップの光」

 

 あなたはストリップの光だった

 それは まぶしいくらいに明るく 美しく そして温かく癒してくれる光

 同じ道を歩む踊り子たちの目指すべき希望の光であり

 道に迷える観客の心を明るく照らす灯台の光だった

 

 あなたこそ ストリップの光だった

 美とエロスの現世神(ビーナス)

 あなたに癒しを求めて劇場に通う

  あなたに会うことを生活のリズムにしてきたファンがたくさんいた

 あなたを観れるから もう少し生きていこう もう少し頑張ろう 

  と思っていた人がどれほどたくさんいたことだろう

  あなたと同じ時間を過ごせた我々ファンは幸せだった

 

  あなたはストリップの光だった

  6月25日で引退するという

  まさにストリップ界の巨星堕つ

  あなたは「灘ジュン」という踊り子を立派に演じきった

  そして あなたは平成の伝説的な踊り子になった

  あなたとの思い出は 我々の心の記憶に鮮明に残っている

  あなたはいつまでも我々ファンの心の中で踊っている

 

 

平成29年4月                         大阪東洋ショー劇場にて

 

 

 

【おまけ】

 今回の作品に合わせて、かぐや姫の童話を創りたいと思いました。ふと、以前、ジュンさんにかぐや姫の物語をプレゼントしていたことを思い出しました。

私が仙台に単身赴任していたH21年2月結に、ジュンさんの久しぶりの仙台ロック公演を観て、次の童話を創ってプレゼントしました。覚えているかな。ジュンさんの作品「show girl」は、三つの台に乗ってボンティージファッションで決める演目でした。私はこれに「天上人と地上人」という題名でレポートしたんです。現代版「かぐや姫」みたいだと感想を付けてね。

 不思議にも、このとき作ったかぐや姫の童話が今回の作品にもピッタリなんです。

 そのまま添付させて頂きます。

 

童話『かぐや姫への想い』

 

月から発せられた青白い光がまっすぐ地球に届いた。その光は、ちょうど神社の裏の竹やぶに当たった。竹の中には月から降臨したかぐや姫が入っていた。それを見つけた神社の神主は、月から召された神の使いとして、かぐや姫を大切に育てた。

 

年頃になったかぐや姫は巫女として仕事をするようになった。

ところが、かぐや姫はこの世の人とは思われない神々しい美しさを持っていた。

たくさんの若者が一目かぐや姫の美貌を拝もうと集まった。彼らがかぐや姫に会うためには一枚1000円のおみくじをひかなければならない。彼らは毎日のように参拝してはたくさんのおみくじを買い、たくさんの贈り物をかぐや姫に差し上げ、彼女の気を引こうとした。来る日も来る日もその行列は絶えなかった。

しかし、かぐや姫は贈り物に心を動かしたりはしなかった。

 

その中、ひとりの貧しい若者が一枚のおみくじを買って、手紙を一通置いていった。また何日かして、同じように一枚のおみくじを買っては手紙を置いていった。それは定期的に続いた。

かぐや姫はその手紙を開封し読み始めた。手紙はかぐや姫の心の扉を叩き開かせた。その瞬間、彼の心を乗せた言葉たちがかぐや姫の心に入っていった。言葉は心の贈り物。かぐや姫は、その若者の自分を想う気持ちに心が動いた。そして、若者に対して返事を書いた。

返事を受け取った若者は大変恐縮した。自分のような貧しく取り柄のない者に対して、かぐや姫が返事をくれるなど夢にも思わなかった。手紙への返事が次々と若者のもとに届いた。

若者は言いました。「あなた様からお手紙をいただき仲良くして頂けるなんて奇跡としか考えられません」 

それに対して、かぐや姫は答えました。「いや、私とあなた様とは、出会ったことは奇跡と思いますが、仲良くなれたのはとても自然な流れですよ

 

若者はもともと文章を書くのが好きですらすらと楽しく書いていたが、一方のかぐや姫も若者の文章の魅力に惹かれ、手紙を書くのがどんどん大好きになっていった。会話が弾むごとく、文章が弾んだ。二人は心の会話を求め、お互い惹かれ合った。

二人は恋をしていた。しかし、どんなに仲良くなろうと、若者は決してかぐや姫に求婚しなかった。自分は神々しいかぐや姫に相応しくないと頑なに思い込んでいた。

 

実際に、彼の認識は間違っていなかった。

とうとう、かぐや姫は月に帰らなければならない日がやってきた。月が青白く光り始めていた。

 その日、かぐや姫は直接、若者に向かって話し出しました。

「わたしはこの地球に、本当に美しいものを求めてやってきました。それをこれまでずっと探していましたが、本当に美しいものは目には見えないことが分かりました。

 わたしは真実の愛をあなたとの手紙のやり取りで知りました。あなたは手紙を通じて、心を贈ってくれました。本当に美しいものはあなたの心の中にありました。

 わたしは、本当に美しいものを見つけたら月に帰らなければならない運命(さだめ)を持っています。そして、本当に美しいものを見つけた今、その時が来てしまいました。

 勝手な話でごめんなさいね。」

そして、かぐや姫はこう付け加えた。「これまで仲良くして頂いた御礼に、なにか贈り物をしたいのですが・・・」

若者は答えた。「私はなにも要りません。あなたと仲良くしていただいた思い出があるだけで十分幸せです。あなたから頂いたお手紙はいつまでも大切に保管しておきます。」

かぐや姫はにこっと笑って言いました。

「あなた様のお陰で楽しい日々を送ることができました。感謝でいっぱいです。

わたしも、あなた様からいただいたお手紙だけを携えて、月の世界に帰りたいと思います。」

二人の会話が終わった瞬間、青白い光がかぐや姫を包み月の世界に連れて行った。

 

その後も、若者は満月の夜には必ず月を仰ぎ見ました。

そのたびに、かぐや姫が微笑んでいるように見えて幸せを感じるのでした。

 

                                   おしまい