H25年11月、ロックの灘ジュンさんの新作「糸」の観劇レポートです。「糸が紡ぐ運命(さだめ)」と題して語ってみたい。

 

 

  H25年11月2日(土)、大阪東洋に遠征し、初めてジュンさんの新作「糸」を拝見した。

  最初に観たときは、絢爛豪華な着物姿から花魁かと思った。スト仲間のライス君に、これは大奥をイメージしたものと教えてもらい納得。「大奥の絵島」という話をモチーフにしているようだが、私は内容をよく知らないので、逆に何も知らない状態でステージだけから自分がどう感じたかを語ってみたい。

 

  ステージ内容を簡単に紹介する。

  最初に、ひょっとこ姿で登場。小さな風車を持っている。お祭りかな、と思いきや、すぐに姿を消す。この瞬間的な場面が何を意味するのか、後で話が繋がってくる。

  そして、すぐに絢爛豪華な着物姿で登場。艶やかな着物の上に、黄金色の羽織りを纏う。以前TVでヒットしたサザン・オールスターズの大奥のテーマソングが流れる。厳かな雰囲気の中、舞台の花道を進んできて、盆前まで来てから踵を返して舞台に戻る。そして、正面を向いて跪き、丁寧にお辞儀をする。

  ふと、花火の音がする。小さな風車を取り出し懐かしむ。あのひょっとこ姿は思いを寄せた男だったのかと話がつながる。

  彼女はなんらかの事情で大奥に入らざるを得なくなり、好きな男と別れたのだろう。小さな風車は思い出の品か。

  そして、彼からの手紙を受けて愕然とする。別れの手紙か、彼の死を告げるものか。いずれにせよ、ジュンさんの表情が突然暗くなり、眉間に皺を寄せる。手紙のショックが生々しく伝わる演技力。

  ミスチルが歌う「糸」が流れる。中島みゆきの曲「糸」は知っていたが、ミスチルが歌っているのは知らなかった。ミスチルが歌うと一味違った良さが出るなぁ~♪ 演目のタイトルにもなっているので、この曲が最大の盛り上がりを演出する。

  人と人との縁を切々と訴える歌詞が心にぐっと入ってくる。「縦の糸はあなた 横の糸は私♪」どうやって糸は織り合っていくのだろうか?

  会いたくても会えない・・・こんな辛い想いをどうしたらいいのか!?

  今は自由恋愛の時代だが、昔はどんなに好きあっても許されない恋がたくさんあった。生活苦から吉原などに身を売られ花魁になる者もいれば、身分ゆえ大奥に入らざるを得ない境遇の女性など。そのため断ち切られた恋愛がどれほどあったか想像に難くない。そして禁断の恋ほど、気持ちは燃え上がるもの。

  こうした女たちの情念が今回のテーマになっている。情念とは、観ている客の魂をつかんでくる。ジュンさんの演技力も素晴らしい域に達してきた。

 

  魂に訴えかけられると、私の心はいろいろ感じ、そして語りかけてくる。・・・

  風車がやけにちっぽけに見える。風車は風を受けるがままに回る、まさに運命の象徴のようなもの。人は抗(あらが)うことのできない運命に翻弄されることがある。どうして自分だけ、こんな酷い目に遭わなければならないのかと恨めしくもなる。東日本大震災に被災した人々は皆そんな思いに駆られたことだろう。

  それに対して、どうしていいのか答えを持ち合わせているわけではないが、まずは、その事実をできる限りそのままに表し、人に伝えるべきだと思う。きっとその先に何か答えがあるのかもしれない。いや、答えがなくてもかまわないから表現したいと思うのが人間の本能なのかもしれない。

  人の運命、人の人生とは、ほかの人の魂を揺さぶる。それをどう表現するか・・・

  ジュンさんは表現者として本物になっている。稀有な美しさを持ち、沢山のファンがジュンさんの表現するステージに注目している。そういう方だからこそ、たくさんのことを表現しなければならない使命・宿命があるように感ずる。

  私も同じ気持ちである。文章による表現者の端くれとして、思うままに書き続けていきたい。なにかがそうさせているのだと感じる。それが自分に与えられた使命であり宿命なのだろう。

 

 

平成25年11月                           大阪東洋にて 

 

 

【事後談】

 ジュンさんから手紙で演目「糸」の解説を頂きました。私の解釈とジュンさんのイメージは違っていましたね(笑)。

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「糸」・・・大奥・絵島の私のイメージです :

大奥総取締の絵島と、歌舞伎役者の生島の、禁断の恋。はじめは、絵島を陥れようと近づいた生島。文を見てそれを知ってしまい、怒る絵島。誤解がとけ、次第に真の愛へと変わり、初めて結ばれた日の次の朝、大奥中に噂が流れ、生島は処刑されてしまいます。

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「大奥の絵島」事件の内容が分かり、ジュンさんがどういう想いで演じているか明確に理解できました。

 舞台の最初のシーン。あのひょっとこ姿には、絵島を陥れようとした生島の姿を重ねることができました。ひょっとこは一種のトリックスター的な存在だったのですね。

 文を見て愕然とするのは、驚きよりも怒りを表したものだったのかぁ。・・・

 いろいろと気付かされるところがありましたが、私の感想もまんざら当たらずしも遠からずという気にはなります。