H25年5月結の仙台ロックでの、灘ジュンさんの新作「J’z」の観劇レポートを「灘ジュン ステージにおける大人の演出」と題して語ります。

 

  H25年5月25(土),26(日)の二日間を仙台ロックに遠征し、初めてジュンさんの新作「J’z」を拝見した。そのときのジュンさんとのステージ感想のやりとりに感激し、今回の公演そのものを最高の思い出に彩ってくれた。

  初めて拝見した新作を紹介しよう。私が一日目に2回ステージを拝見して、ジュンさんへの手紙にしたためた内容をそのまま載せます。****

 

  ポラタイムでのジュンさんと客との会話で、演目名は耳に入ってきた。「タイトルは『J'z』。Jazzっぽさ、そしてJunという名前からなんとなくこのタイトルにしました。」

 とても大人っぽい作品で、私的には「大人のキャバレー」という題名にしたいなというのが第一印象。キャバレーでの、サックス演奏者とダンサーとの恋物語というストーリーで。

 

 なんと言っても、今回の作品のメルクマールは、最初のサックス演奏。すごいインパクトのある出だしなので、これが上手くできたらこの作品は大方成功と言えます。ふつうの人はサックスの演奏なんて出来ないから、驚きと尊敬の眼差しで、ジュンさんの指先の動きと音に耳を傾けます。見るからに素人肌なので、ちゃんと吹くことができるかなと私までドキドキしちゃいます。うまく吹けてホッとするやら、感心するやら。以前少し手習いしていたんですね。そうでなければ吹くことはできないと思います。吹奏楽部にでも入っていたんですか。「サックスは中学生の頃、吹奏楽部でテナーサックスを吹いていました♪」

こうした新しい発見がジュンさんの教養の高さや上品さを際立たせ我々ファンをますます魅了します。ジュンさんは単にストリップというセックス・シンボル的存在を超越して、吉永小百合に憧れるサユリストの如く、憧れの女性像に昇華しているのです。だから、前回作「さくら」の手話や今回のサックスに我々ファンは感動するのです。求めるものが大きくてジュンさんも大変ですが、それを励みにしてステージを極めてほしいと心から願っています。そして、それを楽しく演れるのがジュンさんです。

 

 サックス演奏者のダンス・ステップ、軽快でとても様になっています。これも相当練習した跡が見られますね。サックス演奏を含めた最初の部分で観客の心をしっかり掴んでいます。

 次に女性ダンサーが登場。金髪で、どこか気だるい雰囲気を感じ、それがセクシーさを増している。

 ミュージシャンとダンサーが恋に落ちる。ステージの端から、黒猫が横目で二人の模様を眺めている。この設定がなかなかいいね。

 最後は二人の情事。金髪のカツラをとって、シャギーな髪になおした女性が登場。薄い生地のロングドレスは背中を出して首の後ろで結んでおり、かつ黒い帯で腰を締めている。乳首や黒いパンティが透けて見え、黒いハイヒールで、とてもセクシーな着こなし。光り物の首飾りがキラキラ輝く。そしてベッド入りする。

 

 今回の作品はジュンさんの初の男装。

 男装と言えば、私は引退した成瀬美穂さんの男装が忘れられない。あまりにもよく似合っていて、かっこいい。男の私が惚れ惚れとするほどの男前を演じていた。ところが、男装があまりに似合いすぎてイメージ化され、逆に女装が物足りなさを感じてしまった。まさに男装のパラドックスに落ちてしまった。そんなこともあって、ジュンさんの男装には興味を引かれた。ジュンさんなら、どんなにかっこよく男装を決めても、女装も絶対に美しさで引けをとらないと思っていた。

 ところが、実際の演出では、男装をあまりカッコよく決めていない。女装も美人とは言えない。ジュンさんなら完璧な美男・美女を演ずることができるはずなのにどうしたのか。あっ!なるほど! わざと美男・美女ではないように演じているんだな!とピンと来た。ミュージシャンとダンサーというしがない男女の情事なので、色男・色女すぎず、適当感があった方がいい。完璧すぎないところが、そうしたアンニュイな雰囲気を醸し、大人のキャバレーには似合っている。また改めて、最初のサックスの物悲しい音色が、しがない男女の情事にマッチしている。

 

 以上の感想を翌朝書いて、ジュンさんに渡した。それに対して、「感想読んで、あまりの正確さにぽわ~んとしていまいました。」というコメントがあり、次の回に丁寧なお手紙を頂いた。「新作の感想が凄すぎて驚いています。自分の思い描いたイメージがこんなにも正確に伝わったのは初めてです。特に今回は、はっきりとストーリー仕立てにしてないので尚更驚きました。」

 そして、私が感じた‘完璧すぎない演出の妙’が語られていた。「1曲目の衣装を正装っぽくしなかったこと、2曲目はラフに踊っていること、ベッドはリアルでナチュラルなエロスを表現したかったこと、猫を置いたことなど、こだわりポイントがいくつかあったわけですが、太郎さんのお蔭でより自信が持てます!」 このお返事は私を心底喜ばせた。

 

 いつも新しいことに挑戦するジュンさんの心意気、また10年近いキャリアの中で「大人の演出」まで辿りついたジュンさんの演技力に脱帽です。

 また、いつも思うのですが、ジュンさんの演ずるステージと私の観察眼は相性がいいというか、ジュンさんのステージに込めた想いが波長ぴったりに私の心に届きます。そうした踊り子とファンとしての以心伝心に今更ながら感動させられます。

 

平成25年5月                         仙台ロックにて