今回は、私のストリップ日記から、渋谷道劇の踊り子・一宮紗頼さんの一周年記念レポート「反骨の踊り子」です。
紗頼さんは昨年のお盆興行週H24(2012)年8月11日に、ここ渋谷道劇でデビュー。
私は8月17日と18日に2日続けて会いに来ている。
第一印象としては、きれいな娘だなぁ~ヌードもたまらなくエロチック! と思ったのと、舞台度胸が備わっていることに感心した。それもそのはず、ストリップ以外の舞台で活動していると教えてくれた。私は、TSの鏡野有栖さんが役者と踊り子の二足のわらじを履いていることを思い出し、彼女のことや役者について話題にした。お蔭で、紗頼さんはすぐに心を開いてくれコミュニケーションが弾んだ。また私の手紙にすごく関心を持ち反応してくる。
私は、紗頼さんに強く惹かれ、翌9月の渋谷道劇、その翌10月のシアター上野と、まめに応援に行き、仲良くしてもらえるようになった。
そうこうするうちに、私が心無い客の悪戯で、誹謗中傷のサイトに書き込まれ、会社への通報を受け、一時ストリップ通いができなくなる。急に応援できなくなったので、そのことを正直に紗頼さんに告げたらすごく心配してくれた。「そういう心ない行動する人もいるというのも事実です。悲しい事ですが。怖い業界ですからね。せっかくの人の生きがいや、一生懸命仕事している人を何だと思っているのでしょう。」
あのときの紗頼さんの励ましは本当に嬉しかった。長い手紙も頂いた。
それ以前にも感じていたが、紗頼さんは不思議なくらい強い自分を持っている。これは‘信念’というレベルのものだ。紗頼さんから頂いたコメントの中で、新しい事実に驚き、へぇ~と感心させられ、また深く考えさせられたりすることが多い。
紗頼さんの言葉には強い説得力がある。また私の考え方にも近い。だからこそ、私自身が落ち込んでいたときに凄く励まされた。
ときに「私はストリップを性福祉に役立てられないかと考え中です」なんていう突拍子もないコメントがあるので、紗頼さんはホント何者かな?なんて考えてしまう(笑)。まだまだ奥深い魅力を持っていそうだ。
ふと、「伝説の踊り子」一条さゆりさんと紗頼さんのイメージがかぶる。
一条さゆりさんの話をさせて頂く。さゆりさんは本名を池田和子といい、1937年生まれ、埼玉県育ち。50年代後半にデビュー。作家・駒田信二の小説「一条さゆりの性」で人気に火がつき、「ストリップの女王」と称賛された。72年、大阪・吉野ミュージックでの引退興行中に公然わいせつ容疑で現行犯逮捕。
ストリップが娯楽か犯罪かをめぐって最高裁まで争った。ちょうど大学闘争の嵐が吹き荒れた頃で、一条さゆりは全共闘世代やウーマンリブの活動家から、「反権力の象徴」として祭り上げられる。
最高裁で、懲役刑が確定。出所後、生活保護を受けながら大阪・釜ヶ崎解放会館の三畳一間で暮らす。彼女が釜ヶ崎に落ち着いたのは「過去を捨てて生きていけそうな街」と思ったからだろう。88年、大阪・釜ヶ崎の酒場で働いていたとき、交際中の男性にガソリンをかけられ大やけどを負う。
97年8月3日、肝硬変のため60歳で死去。
舞台役者の一色涼太さんが、ちょうど彼女の引退興行を観ていて次のように語っている。
オープンのときに、彼女がステージの上でご開帳の移動をするたびに、そこに人の頭の山ができた。そうした客に向かって「よう見える? こんなんでよかったらなんぼでも見てえ」と話しかける言葉に、彼女の究極の優しさが詰まっていたと話す。
だからこそ、出棺時、労働者たちから「さゆりちゃん、おおきに」「天国行っても俺ら楽しましてや」と声がかかったという話にはじーんと来る。
一条さゆりさんの想いは、紗頼さんの想いに通じる。紗頼さんはまさに一条さゆりの意志を引き継いだ「反骨の踊り子」だと私は感じている。
私もストリップを愛してやまないファンとして、想いは同じである。退廃著しいストリップ業界ではあるが、いつかこの魅力を多くの人々に再認識してもらい、ストリップ人気を復興させたいと願っている。同じ想いの同士として、これからも紗頼さんを応援させてもらいます。
平成25年8月 渋谷道劇にて
H25.8
童話『道 -彼女の大きな鞄(かばん)に入っていたものは- 』
~一宮紗頼さん(渋谷道劇所属)の一周年作「道」を記念して~
一人の少女が都会に出てきました。
大きな大きな鞄を持っています。黒くて四角い頑丈そうな鞄です。
その鞄をコロコロと転がしながら歩いています。
鞄の中には何が入っているのでしょうか?
そこには「少女の夢」が入っていました。彼女はダンサーになってみんなを楽しませることを夢みていました。そして有名になりたいと思いました。
コロコロ コロコロ 歩く 歩く 歩く
しばらくすると、うつろな眼差しでスマホをやりながら歩いている男の子とぶつかりそうになりました。回りをよく見たら、そんな若い男の子がたくさんいます。彼女はこの子たちをバーチャルな世界から連れ出して明るくさせたいと思いました。
「ねぇ! 私と一緒に踊らない!?」
「それとも、私の踊りを観てみない!?」
少女は、周りの男の子の手をつかみ、近くの公園へ連れて行きました。
少女は鞄の中から白いドレスを取り出しました。鞄の中で小さくたたまれていたドレスはふわっと大きく広がりました。そして綺麗な王冠を頭に載せました。まるでお姫様のようです。
少女は広場で踊り出しました。
男の子たちは最初のうち静かに彼女の踊りを見ていました。
すると、ベンチに座っていた老人たちが立ち上がり、元気に腰を振り始めました。また、ちょうどお昼休みに公園でお弁当を食べていた労働者たちが歓声をあげて彼女の踊りを囃し立てました。彼女は最高に気持ちよく踊りました。男の子たちも自然に手拍子をして、楽しそうに身体を左右に揺らしました。男の子たちは皆「この込み上げる気持ちは何だろう?」と思いました。
少女は、鞄の中からたくさんの「愛」を取り出したのでした。
少女はまた歩き出しました。
コロコロ コロコロ 歩く 歩く 歩く
いくつかの劇団を渡り歩きました。ある時は役者をやり、ある時はどさ周りの芸人になり、ある時はショー・ガールを演じたり・・・多くの経験が彼女を鍛え、一回り成長させました。
コロコロ コロコロ 歩く 歩く 歩く
いつしかストリップに出逢いました。
裸になることに全く抵抗はなく、ヌードも込みで踊りを楽しんでもらえればいいと思いました。彼女は惜しみなく観客に愛を降り注ぎました。
彼女の噂を聞きつけて、あの公園にいた人々が応援にかけつけました。
スマホに夢中になっていた男の子たちがいました。「あなたたち、しっかり見ておきなさいよ。彼女ができたときに慌てないようにしないとね。」と彼女は片目をつぶりました。
たくさんの労働者が駆けつけました。「お父さんたち、私の、こんなんでよかったら、たくさん見て、元気になってね。仕事でお金を稼いだら、また遊びに来てね。」
老人も遊びに来ました。「おじいちゃんに喜んでもらうと、わたし、すごく嬉しいよ。いっぱい見て元気に長生きしてね。」
オープンのとき、彼女は一人一人に語りかけました。誰もが皆「この込み上げる気持ちは何だろう?」と思いました。それが彼女の優しさなのです。全ての客が笑顔で、惜しみない拍手を贈りました。彼女は踊り子こそが自分の天職だと悟りました。
美貌と愛嬌に恵まれた彼女は一躍トップ・ストリッパーに駆け上がりました。
人気者になった彼女は全国の劇場から引っ張りだこになりました。連投につぐ連投で全国を回りました。いつも大きな鞄を携えて。
コロコロ コロコロ 歩く 歩く 歩く
鞄の中には大きな「踊り子としての信念」が入っていました。
どこの劇場に行っても沢山のファンの拍手と歓声に囲まれました。
しかし、いつしか疲労とストレスがたまっていったのでしょう。ある日突然、彼女は舞台で倒れました。運悪く脳梗塞でそのまま帰らぬ人になりました。
彼女の葬儀は所属の劇場が取り仕切りました。
多くのファンが全国から集まりました。
出棺時、ファンたちが泣きながら「これまで、たくさん元気を与えてくれて、本当にありがとうね。」「天国行ってもぼくらを楽しましてね。」と声がかかりました。
あの大きな黒い鞄はどうしたのか?
一人暮らしの彼女の部屋の押し入れの奥にありました。その中には、たくさんの「思い出」が詰まっていました。たくさんの日記類、たくさんの手紙、たくさんの原稿類が入っていました。
彼女には熱烈なファンが多くいましたが、その中に毎回たくさんの手紙を渡す一人の青年がいました。彼女も手紙を書くのが大好きだったので、二人の書簡はすごい文量になっていました。しかも心が触れ合う内容でした。彼は文才に恵まれていたので、彼女のステージを詳細にレポートしていただけでなく、彼女のステージから感じられたイメージを童話や詩にしていました。それがとても心に響くものでした。彼女が喜んで書簡を交わした理由がよく分かりました。二人はプラトニックな恋愛関係だったようです。
その書簡は、あるルポライターの目に留まりました。彼はそれを編集して出版しました。そのため彼女は「伝説のストリッパー」として有名になりました。少女の夢はとうとう叶えられました。
その話題が評判を呼び、マスコミにも取り上げられ、人々にストリップの魅力が再認識され始めました。一時劇場数がどんどん減ってしまいましたが、廃れていたストリップ劇場に客足が戻りました。
彼女が願っていたストリップ人気の復活が漸く叶えられました。彼女の死後ではありましたが。でも彼女はストリップの中興の祖として、ストリップ・ファンの心の中でいつも華やかに踊っています。
彼女が通ってきた道は決して真っ直ぐで平坦なものではなかったけれど、後に続く人たちにとって、とても意味のある道であったことは断言できます。