いまさらバレエの解説をする必要はないだろう。バレエに興味のある方は、私の創作童話『新ちから姫』第21話「バレエ劇団との交流」を観てほしい。

 ここでは、私のストリップ日記から、印象深いバレエダンサーであった踊り子さんとの思い出を記してみたい。

 

 

 最初は花村沙知さん(ロック所属)のレポートを披露します。彼女こそ、まさに平成の伝説のストリッパーの一人と評したい。

 

花村 沙知 様

 

 いま、花村沙知さんの引退を前にして残念無念な想いが込み上げる。

 来週のDX歌舞伎公演で引退されるのを前に、私のホームシアター若松劇場に出演されたので八日間通わせてもらった。こんな素晴らしいダンサーはこれまで見たことがない。まさに天才ダンサーである。まだ二周年も経っていないのに引退してしまうのはあまりにも惜しい。しかも熱烈なストリップファンの私としては殆ど彼女のステージを拝見できないまま引退されてしまうことに忸怩たる想いが駆け抜ける。

 今回の八日間を私のストリップ・メモリアルに記憶しておきたくなってペンをとらせて頂きます。

 

 花村沙知さんは2009年8月16日に浅草デビュー。

  私は二週目の浅草11月結に初めてステージを拝見して、一目で魅了させられた。

 いずれ浅草以外の劇場にのったら追っかけようと思っていたが、最初が12月に仙台ロックになり、仙台の単身赴任から11月に帰ってきたばかりの私と入れ違いになってしまった。仙台にいたら喜び勇んで毎日通っただろうなと思ったが仕方ない。仙台では一日200枚という記録的なポラ売上げをあげ仙台ロック社長を狂喜させたという噂が聞こえてきた。あのポラが売れない仙台ロックで200枚と聞いて私も驚いた。その後、関東の劇場に名前がのって会えるのを楽しみにしていたら突然のキャンセル。なかなか会えずにいたら、今度は私がロック館出禁になってしまい完全にアウト。その後、沙知さんが復帰したのは知っていたが会える術がなかった。

 私が浅草以外で初めて、沙知さんのステージを拝見したのは、昨年H22年11月結のDX歌舞伎。素晴らしいステージに衝撃を受けて、五日間通った。

 そして、今回のH23年7月頭の若松劇場まで間隔が空いた。

 

 久しぶりお会いした沙知さんは、ポラの時、私の顔を覚えてくれていた。感激!

 11月のDX歌舞伎の時にも毎回手紙を渡したお蔭か。手紙は好きと言っていたが、なにせポラが売れて忙しい方なので、返事はほとんど無かった。でも読んでくれているのはポラ時の片言の会話で分かった。

 

 そんなことはさておき、彼女のステージの素晴らしさについて語ってみよう。

 バレエを習っていたのは一目で分かる。身体の線の美しさときびきびした動きはバレエで鍛えられている。ただ今やバレエの領域を飛び越えて、最近のガールズ系のダンスをかなり踊り込んでいる感じを受ける。

 彼女は本物のダンサーだ! ダンスだけでも客を十分に魅了できる。

 私は、踊りの上手な方のステージが大好きだし、当然ながら高く評価している。ただ、最近少し気になっているのだが、踊りを上手くなりたいがため、身体を鍛え上げ過ぎて筋骨隆々の体つきになってくることがある。これだとストリップファンにはセクシーさを感じさせない。

 その点、沙知さんはあれだけ踊りが上手いにも係わらず、ストリッパーとしての女体美がとても魅力的。ダンスをするために無駄なお肉を一切削ぎ落としてスマートになっている一方、余分な筋肉を付けていないために女性らしい円やかさをキープしている。アスリートの域ではなく、あくまでダンサーの身体なんだと感じる。とにかく、見ていて、きれいだなぁ~とうっとりさせられるヌードだ。

 では、なぜ筋肉質になる方とそうでない方がいるのか? おそらく、それは身体の柔軟性による。バレエをやっている方は非常に体が柔らかい。あるとき、沙知さんがアメリカン・バックのポーズをとろうとして身体が一回転したことがあり、沙知さんが笑って「私、身体が柔らかすぎるのよ」と言っていた。女性がダンスに取り組む上では身体の柔軟性は大切なポイントかもしれない。

 

 沙知さんは本物のダンサーでありながら、均整のとれた美しい裸体を持ち、しかも容姿がたまらなくかわいい。三拍子兼ね備えた、まさに完璧なストリッパー!!!

 彼女のステージを見て、誰しも夢中になるだろう。追いかけようと思わない者は本物のストリップ・ファンとは言えない。仙台ロックが記録的な盛況になったのもよく頷ける。

 

 ただ、DX歌舞伎と若松劇場の二公演を見た限り、特定のファン層を確保しているものの、熱狂的なファンが取り囲んではいない。

 沙知さんと接していると、なんか壁を感じる。自分のような男が相手をしてもらえるレベルではないという気分になる。それは、女にもてない男の僻み根性からくるものでもあり、かつ沙知さんが持つ美女の防衛本能かもしれない。あまり客を夢中にさせてストーカーされてはたまらない(笑)。いやマジに! 私はダンスを見せたいのだから、ステージだけ真剣に観てもらえれば十分。それ以上ファンと仲良くする気はない。そんな雰囲気を接していて感じさせられる。

 今回、若松で一緒に出演した矢島愛美さんや葵うさぎさんと全く対照的。私は二人に夢中になって応援しているが、それは私に対して心を開いてコミュニケーションしてくれるから。

 いまや伝説のストリッパーとなった若松の夕貴美保さんやロックのさいとう真央さんは、いつも熱狂的なファンが追いかけまわしていて、彼女の周りには愛イオンをいっぱい感じたもの。

 そういう意味で、沙知さんはCool Beautyのタイプかなと感じる。私がストリッパーとして理想とするCool Beauty with hot Heart とは違うのかな。もっとたくさん沙知さんと接していたらどうだったのかなとふと思う。もっと仲良くなれたのかな。ステージだけでも、もっともっと拝見したかった。こんなに早く引退されるとは本当に惜しい。

 

 二年足らずの短い期間ではあったが、沙知さんが我々ストリップ・ファンに与えた衝撃は小さくない。沙知さんも伝説のストリッパーと言われる逸材であることを誰しも疑わない。現役期間は短かったが、沙知さんは我々ファンの心の中に長く記録されることだろう。

 引退される理由は分からないが、引退を決意されたからには、踊り子を続けるよりも幸せなことがあるからだと思いたい。

 沙知さんの今後の人生に幸あれと祈る。

 

平成23年7月                           

 

 

【事後談】

 若松の翌週のDX歌舞伎が沙知さんの引退興行。若松の楽日ラストポラタイム、「次のDX歌舞伎も来てくれるわよね」と沙知さんから言われ、私は「沙知さんのレポートを持参するね」と話してポラを預けた。

 若松劇場が終わり、この花村沙知レポートを書き上げて、届けに行った。

「沙知さんのレポート書いてきたよ。満足できるかどうか分からないけど読んでみて」と渡したら、すごく嬉しそうな表情をしてくれた。それだけで私は満足した。

 次の回、沙知さんから丁寧なお返事を頂いた。沙知さんからの初めての手紙だった。これには感激した。

「積極的に辞めたい引退ではありませんが、これからの環境において踊り子を続けることが無理なので・・・。」 なにか事情があるのだろうな。個人のブラベートなので、これ以上立ち入るわけにはいかない。

私がおっと思ったのは次のフレーズだった。「人見知りというか、警戒心がかなり強いので、お客さんたちの「好き」という言葉もなかなか頷けませんでした。」 私が彼女に感じていた距離感は間違いなかった。私の文章に正直に反応してくれて何故か無性に嬉しいものがあった。

引退前に何度もステージを拝見した私に対して「今回の引退にあたり、ようやく、花村さんのステージ、いいな~と思っていてくれた方々がいたんだなと実感できて幸せなラストです。」と言ってもらえて私自身も感動が走った。

劇場を後にしたとき、真夏の夜に吹き抜ける涼風のように、私を幸せな気分にさせてくれた。沙知さんから頂いたこの手紙は、私の中で、伝説のストリッパー花村沙知像を確固たるものにしてくれた。

 

 数日後、ストリップ仲間から沙知さんの引退楽日ラストステージの様子を聞いて、その内容に衝撃を受けた。

 沙知さんは、集まってくれたファンに対して、ステージの上から、「実は、私は結婚していて、自分の旦那さんに自分のステージを観てもらったのだけれど、これ以上踊り子を続けてほしくないと言われて引退を決心した」という事情を正直に話してくれたようだ。これには驚いたが、私が感じた壁という真意がよく理解できた。また沢山のファンを前にして、最後に正直に話してくれた沙知さんに心から拍手を送りたい。これだけでもステキな方だったと評価したい。

 今後も振付の仕事を通じて、ストリップに関わっていきたいとのこと。そうなんだ。でも、彼女のような振りは常人には真似できないだろうなとふと私の頭を過ってしまった。。。