毎年たくさんの新人さんがデビューするが、続けてくれている方は非常に少ない。なんですぐに辞めちゃうのかな。ヌードを見せる抵抗感か・・・いやAV出身の方も多くデビューしており、単にヌードを見せるということに関しては一般の素人さんに比べれば抵抗感なくストリップの世界に入ってこれたと思うが、必ずしも定着していない。プレッシャーとか、人間関係とかいろいろあるのかなぁ。
あるベテランの踊り子さんが「最後はダンスが好きかどうかかな」と話してくれた。なるほど、ヌードで稼ぐ仕事はいろいろあるけれど、あえてストリッパーになりたいと思う一番の要素は踊りが好きだからということだろう。また仕事だからいろいろ嫌なこともあると思うが、辞めたいと思う気持ちより踊りたいという気持ちが勝れば続けられるということか。すごく納得した。
2007年アメリカ映画「ヘアスプレー」が日本でも上映されて大ヒットした。この映画の原作はジョン・ウォーターズ監督『ヘアスプレー』('87)で、その後ブロードウェイで舞台ミュージカル化されて大人気となり2003年度のトニー賞で8部門を獲得した作品で、今回それを再映画化したもの。
舞台は1962年のボルチモア。起床するなりハイテンション、プニプニした肥満体にハッピー感をみなぎらせつつ歌い踊るトレイシー(ニッキー・ブロンスキー)に、たちまち心を奪われる。彼女は、音楽とダンスとおしゃれに夢中な、天真爛漫な女子高生。ひょんなきっかけで10代の子たちに大人気のTV番組「コーニー・コリンズ・ショー」のオーディションに合格し、一躍シンデレラガールに。
彼女はおデブのコンプレックスなんてブッ飛ぶほど、ポジティブで無邪気。そのエネルギーが「思わず踊り出したくなっちゃう」世界を創っている。
改めて、この映画は、踊り子はどういう心構えをもつべきかを示唆してくれているなと思えた。
ひとつは自分を受け入れることがいかに大事なことか。どんなにおデブでもそのコンプレックスを跳ね飛ばすほどポジティブに切り換えるトレーシーの逞しさ。またトレーシーは差別撤廃を訴えるデモ行動を起こすほどで差別の醜さをきっちり伝えてくれる。つまり、彼女は自分を受け入れると同時に、他人をも受け入れようとする優しさを兼ね備えている。そんな人間として魅力的なトレーシーが踊り子としてデビューしたら私は絶対にファンになるだろうな。(笑)
踊り子さんの中には容姿にコンプレックスをもっている方もいるだろうが、それを個性・持ち味に変えていく努力をしなければならない。コンプレックスを前面に出してしまうとステージが暗いものになってしまうから。コンプレックスを跳ね飛ばす元気があって、はじめてお客に元気を与えることができる。
他の踊り子さんのことを綺麗だとか踊りが上手いとか思って自信をなくすこともあろうが、他の踊り子さんの魅力をしっかり受け止めることが大事で、そして他人に憧れをもつことによって自分を磨いていったらいい。
女の子というのは生来、歌やダンスが大好き。私にも2人の娘がいるが、お遊戯会や運動会の前になると、家の中でいろいろ披露してくれるのが楽しかったものだ。小さいときからダンスを習ったりもしている。
トレーシーを見ていると本当にそうなんだなと確信する。トレーシーは人前で踊りたいという夢を持ち、それを見事に実現できた。簡単に実現できたわけではなく、母親に反対され、一度目のオーディションには失敗・挫折もし、ライバルの親子からの妨害など苦難もあった、だからこそ感動を呼ぶ。
踊り子さんというのは当然その延長線にいる。ようやくデビューできたのに何故すぐに辞めてしまうのか。気に入って、さぁ応援しようと思った新人さんがすぐに辞めてしまうとホント悲しくなってくる。・・・
ともあれ、踊り子さんにはこの映画「ヘアスプレー」を是非観てほしいな。絶対に、踊り子魂を刺激されて、やる気満々になりますよ。