今回は、ストリップを観たことがない人には理解できない「リボンさん」について話してみます。リボンさんはストリップのステージを観ないで、ただひたすらお目当ての踊り子さんにリボンを投げているのである。

 

 

 朝早くから劇場前に並ぶ常連さんにも二つのタイプがいる。

 ひとつのタイプは、いわずと知れた「盆回り族」。彼らは、かぶり席に座る。

 もうひとつのタイプが「リボン族」。場所的には壁ぎわにいる。というよりも、彼らは専属の踊り子さんにリボンを投げる時以外はほとんどの時間をラウンジかステージ後方で黙々とリボンを巻いている。

 この二つのタイプは全く異なる。朝並んでいても自然と二つのグループに分かれて話をしている。やはり趣味思考が違っているのかな。

「リボン族」の中には、遠くから重い荷物を引きずってやってきている方も多い。だいたい特定の踊り子さんを目当てで来ているので、その劇場に一日中定着している。それに対して、「盆回り族」の中にはいろんな踊り子さんを観たくてハシゴして回っている方もいる。

 

「盆回り族」から言わせると、ストリップというのは観てなんぼのもん、リボンを巻いたり投げたりしてどこが面白いのか・・と。

 ところが、「リボン族」はそれを嬉々として楽しんでいる。   

            

 初めて観に来た観客なんかは「彼らは劇場からいくらチップをもらっているのか」と思っているようだ。「リボン族」はもちろん無償の奉仕。ひたすら好きな踊り子のために尽くすことで自らの存在価値を見出している。彼らは、一人の踊り子さんにリボンを投げるために、他の踊り子さんは観ずにせっせとリボンを巻いている。おそらく家にいるときだって、かなりのプライベート時間をそれに費やしているのでしょう。Give & Giveの典型。非常にけなげな方々である。

 踊り子さんの中には、ステージ終了時に必ずリボンさんにお礼の挨拶をされている。彼女はリボンさんのそういう気持ちが分かっているんだろうな。見ていてとてもさわやかだ。

 

 さて、私はご存知のとおり「盆回り族」。しかし、長くストリップファンを続けていると、リボンさんの中にも親しく会話を交わせる人が増えてきた。なんだかんだ言っても最後は皆さん同じ穴のムジナですから(^0^)

 

 あるリボンさんと話す機会があり、いろいろ教えてもらった。

 リボンを投げる際に特に注意することは、踊り子さんを見てはいけないこと。つまり、リボンは見た方向に飛ぶため、ステージの踊り子さんを見てリボンを投げると踊り子さんにぶつけてしまう。したがって、リボンを投げるときはステージの踊りはほとんど見ないと言っていた。

 リボンさんはステージ以外ではひたすらラウンジなんかでリボン巻きしているわけだから、ストリップ劇場に来ても殆んど、いや全く踊り子さんのステージを見れないことになる。私は、ステージを観ることが楽しみなので、とてもリボンさんにはなれないなぁと思ってしまった。

 

 リボン投げも奥が深い。

 見ていて、上手・下手がよく分かる。

 下手な人は、踊り子さんにぶつけたり、お客の頭に触れて不興を買う。

 中には、本人は勢いよく切れよく投げているつもりだが、踊り子さんの肌に傷を付けるような投げ方の人もいる。踊り子さんの肌はナイーブなので気をつけなければならない。だから、ピッと切れのよいストレートではなく、どよんとしたカーブがいい。きれいな放物線を描く投げ方が理想的。

 一人前になるにはそれなりに年季がいるようだ。

 各劇場によって、広さ・天井の高さなど違うので、それぞれで投げるリボンの長さ、投げ方も違うという。そこまでこだわらないリボンさんも多いが。一般には広い劇場でリボンの長いほうが難しいという。

 そのリボンさんに云わせると、リボン投げの上手・下手は年季よりも最後はセンスの問題と言っていた。

 

 話は変わるが、リボン族には独特の連帯感があるように感じる。

 どの踊り子さんのときに誰がリボンを投げるかは暗黙のうちに決まっているようだ。そんなことで喧嘩にはならない。聞いた話では、踊り子さんごとに1番客、2番客、・・・とリボンさんの序列が暗黙のうちに決まっているようだ。ご挨拶がとても大切というから、そこには微妙な人間関係が存在している。そんな中で、仲間内から一目置かれている方もたくさんいる。

 

 リボンが天井の機器にひっかかることが多いが、お互い助け合っている。花吹雪でもみんなで後片付けをやる。

 観ていて気持ちがいいのは、一人の踊り子さんのステージに、何人かが共同で前後左右からリボンを投げ合う競演だ。一気にステージが盛り上がる。

 

 いまや、リボンはステージを盛り上げるために無くてはならない存在になってきている。リボンには踊り子と観客を完全に一体にする効果がある。

 楽日のラストステージに舞う桜吹雪は、まさに芸術の域に達している。