電車通勤していた頃の朝、寝不足なんかで疲れがたまってくると無性に座席に座って眠りたいと思うもの。

 そういうときは、座席に座っている乗客の中から途中で降りる可能性が高い学生や女性を選び、その前に立って待つことにしていた。運よく座れることもあれば、当て外れのこともたびたび。

 そのうち、電車の顔ぶれがだんだん分かってくる。その中に、毎朝決まった時間の決まった電車の決まった席に座っている乗客がいた。彼はいつも始発に並んでその席を確保しているのだろう。なんと彼は私が乗る駅の次の駅で下車することが分かった。そこで私は電車に乗ったら必ず彼の前に立つことにした。彼のお陰で快適な通勤になった。

 そんなある日のこと、急に彼がいなくなった。どうしたのか、転勤かなにかあったのだろうか。ものすごくショックだった。その日から私の通勤は一気に暗転した。もう一度第二の彼を見つけなくてはならない・・・

 

 ストリップの席も、そこに座りたいと思ったら、その後ろに陣取って、その客が帰るのをずっと待つことにしている。途中から入場するときは3回目か4回目なので帰る確率は高い。しかし、これも当てが外れたら、その日は盆周りで見れなくなってしまうが。

 ストリップもどこか電車通勤に通じているなぁと思うと面白い。

 

 土日には「こだわりの席」で観劇したいので、早朝から劇場前に並ぶことにしている。

 

 劇場によって並びやすい劇場とそうでない劇場がある。

 雨の日、雪がふりそうな寒い日、逆に日差しが強い夏の日なんかは路上で並ぶのは辛いもの。また人通りの多いところも困る。

 新宿ニューアート、川崎ロック、浜劇、DX歌舞伎、渋谷道頓堀劇場、若松劇場は路上にて並ぶことになる。新宿ニューアート、川崎ロック、DX歌舞伎、若松劇場は裏通りなので人通りは少ない。その点、渋谷道頓堀劇場はホテル帰りのカップルの通り道になっており、カップル達が「もてない男どもがストリップに並んでる」と横目を流しながら通り過ぎていく。また浜劇は大通りに面しているため並ぶのも勇気がいり、開場直前にやってくる客が多い。

若松劇場は早朝9時には劇場の待合室に入れてくれるので好意的。渋谷道頓堀劇場は10時半に劇場内に入れてくれるが、雨の日や並んでいる数が多いときは早めに入れてくれることもある。長い行列になると他のお店から苦情がでるためもあるが、やはり従業員の気配りによる。その点、DX歌舞伎は10時半、新宿ニューアート、川崎ロック、浜劇のロック三劇場は11時開場を崩さない。

 なんといっても並びやすいのは、TSミュージック。ここは建物の2階にあるので、建屋の中で雨露を凌げるうえに、通りの人を気にする必要がまったくない。そのためか、TSミュージックは早朝から並ぶ客が多い。早朝7時くらいからぼちぼち並び始める。しかも、早朝9時過ぎには入場させてくれるので席を確保してから外出することができる。私にとっては並ぶにはベストの劇場といえる。今は、このTSと渋谷道劇のふたつが早朝から並ぶ客が多い。あとの劇場はそれほど早くから客は並ばない。

(この記事は古いので、今はだいぶ違うので気を付けて下さい。)

 

 

 さて、今の朝待ち模様を話したが、面白い話がある。

 昔はたくさんのストリップ仲間が朝7時半頃にTS前に集まってストリップの情報交換をしていたらしい。

 いまではインターネットがあるし携帯電話からも香盤情報が確認できるが、昔は口コミ情報が貴重であった。昔から内外タイムスの新聞広告はあったとはいえ、今でもそうだが、香盤は広告とおりとは限らない。変更はあたりまえ。

 そこで朝一にTS前の集いで確認したうえで、皆さんが好みの踊り子さんを目指してあちこちの劇場に散っていったという。なかなか風情のある話だ。

 

 朝早くから順番待ちするというのも、夏の暑い日や冬の寒い日なんかはしんどいなぁと思う。そんなとき、コンサートなどのように、席の予約ができたらいいのになぁと思ったりもする。

 しかし、早く来れば必ずいい席を確保できるというシステムも、原始的ながら誰もが納得するいいルールだ。

 しかも、インターネットなんかで、ましてやお金持ちが優先的に席獲得できるというのも人間味がない。

 そんなことをつれづれ考えると、昔ほど風情はないにしても、今の劇場前の順番待ちというのもなかなかいいものだと思える。