気が付いたら、僕は外にいた。夜の冷たい風が濡れている頬を容赦なく打つ。
いつの間に外に出たのだろう。思い返してみても、まったく覚えていない。僕は履物を履いておらず、服も部屋着姿のままだ。どう考えても自分の意思で外に出たとは思えない。
そうだ、僕が自分から外に出ようなどと思うはずがなかった。学校も部活も未来さえも、僕にはどうでもいいように思えたから。彼女のいなくなった、こんな世界に・・・。
どうやらここは公園のようだ。目に見えるのは、満開をむかえた枝垂桜。月明かりのみが、その美しい木を仄かに照らす。
「綺麗だ」
二つの美が創りだした光景に、僕はただ一言だけ呟いた。
「フフフ。嬉しいわ。そういってもらえると」
声が、僕の耳に響いた。僕が大好きな、今はもう聞くことができなくなった声が。
「!?誰?」
だから信じられなかった。その声は・・・
「忘れちゃったの?私の声」
忘れるわけがない。いや、忘れられるはずがない。僕はこの声が、彼女が大好きだったのだから。
「春音?」
「そ、当たりよ公人」
一瞬、桜の木の枝が、風もないのに揺らいだ。そして、その幹の向こうから、一人の女の子が姿を現した。
後半に続く・・・