「カオリ、君のおっぱいは世界一だ」「なっ! 何を言っているのよ! それに今はそんなこと言ってる場合じゃ……」
そう言いながらも顔を赤くしてモジモジしている。可愛い奴め。
「冗談だよ」
「もう……ばか」
俺が笑いながら言うと彼女はプイっとそっぽを向いてしまった。
だが彼女のその仕草すら愛おしいと感じてしまうあたり俺は重症なんだろうな。
「それよりも早く行こうぜ。あいつら待ってるかもしれないしな」
「うん!」
俺は彼女に手を差し出すと、彼女は笑顔で握り返してくれた。そして俺たちは手を繋いで走り出した。
◆ 俺とカオリは、王都から少し離れた場所にある小さな村にやってきた。この村は王国直轄の管理地で、この村の周辺のみ魔物や盗賊の被害がないのだそうだ。
なぜこんな辺境の地が平和なのかというと、それは勇者である俺たちの存在が大きいらしい。
というのも、魔王軍との戦いにおいてこの国では勇者を召喚する儀式が頻繁に行われているらしく、それに伴って王国の兵士も頻繁に派遣されているそうなのだが、いくら兵士を派遣したところで魔王軍の侵攻を抑えることは難しく、戦況はあまり芳しくないのだという。そこで苦肉の策として、王国直轄の管理地に限って兵士たちを派遣しなくてもいいようにしたんだとか。
要はここは俺たち専用の前線基地みたいなものなんだな。
ちなみにそのおかげで村人たちに被害はなく、また俺たちにも危害を加える者がいないように手配されていた。
俺たちはその管理地の入口までやってきた。そこには見張りの兵士と思われる人物が2人立っていた。
「止まれ! 何者だ?」
1人の兵士が剣を抜いて俺たちの前に立ち塞がった。
「私たちは旅の冒険者で、王都の依頼を受けてここに来ました」
カオリが依頼書を取り出して兵士に見せた。
「ふむ……確かにギルド発行のものだな。よし、通って良いぞ」
兵士はカオリの持つ書類を確認するとあっさり通してもらえた。どうやら事前に話は通っているようだな。
「ありがとうございます」
カオリが頭を下げて礼を言うと、兵士は照れたのかマスをかいていた。おい、勤務中だろお前。
まあ気持ちはわかるけどさ……。
俺は呆れつつも心の中で合掌しておいた。
◆ 俺たちは村の中へ入った。すると村人たちが集まってきて口々に声をかけてきた。
「ようこそいらっしゃいました勇者様!」
「勇者さまー! 今日はうちで泊まっていってくださいね!」
「ゆうしゃさまーあそぼー!!」
子供たちは無邪気に俺の手を引いてくる。子供好きの俺としては嬉しい限りだ。
「はいはい、みんな元気にしてたか? ほら、お菓子持ってきたから食べような~」
俺が笑顔で言うと、子供たちも嬉しそうにはしゃぎ始めた。
その様子を見ていたカオリも優しい表情を浮かべている。
しばらく遊んでやったあと、俺はあることに気付いた。
「ん? あれは……」
俺の目線の先には教会があった。しかしその教会の屋根からは十字架ではなく、なぜか旗のようなものが垂れ下がっていた。
その旗には『聖女』と書かれた文字とともに、どこか見覚えのある顔が描かれている。
俺は首を傾げつつ、その教会へと足を向けた。
「あのう、すみません」
扉を開けるとそこには1人の女性がいた。年齢は20代後半といったところだろうか。修道服を着ていていかにもシスターといった風貌の女性だった。
「あら、こんにちわ。何か御用ですか?」
女性は優しげな笑みを浮かべながら尋ねてくる。俺は早速用件を伝えることにした。「実は冒険者として依頼を受けてきまして、こちらの教会にいるシスターさんの護衛をすることになっているんですが……」
そこまで言って気付いた。俺の視界に入ったのは女性の背後の壁に掲げられた一枚の絵だった。
そこに描かれていたのは紛れもなく先ほど見た女性の顔と同じものだった。しかも服装も全く同じものである。
「ああ、それでしたら私ですね。改めまして、私はこの教会でシスターをしております、マリルと申します」
やはり間違いなかったか。しかしどうして彼女がこんなところにいるんだろう。それに護衛なんて必要ないんじゃないかと思うんだけど。
「もしかしてご存知ありませんか? 私の能力のことを」
そういえば以前聞いたことがあったっけ。確か彼女は他人の能力を見ることが出来るんだよな。
ということはつまり、俺の能力も把握しているということなんだろう。
「えっと、はい。一応知っています」
「ふふ、それなら話が早いです。私がここにいるのは、あなた方のような優秀な冒険者の方に守っていただければ安心だからですよ」
彼女は満面の笑みを浮かべて言った。
なるほど、そういうことだったのか。
確かに彼女の言う通り、この村の周辺は平和そのものだし、俺たちがいれば大抵の魔物は撃退できる。それに勇者である俺がいる以上、彼女に危害を加える者など皆無に等しいはずだ。
だがそうなると、この任務の本当の意味とは一体なんなのかという疑問が残るわけだけど……。
「それともうひとつ理由がありまして……実は私、神託を受けたのです」
「神託?」
突然何を言い出すんだと思った。
「はい、神の声を聴くことが出来るのです。そしてそのお告げによると、勇者様はこの村に訪れるとのことだったのです。なのでこうして待っていた次第です。まさか本当に来てくださるなんて夢にも思いませんでしたけどね」
そう言って彼女は微笑んだ。
なにそれ、そんな話聞いてないよ。
「カオリ、どうしよう?」
俺は小声でカオリに話しかけた。
「どうするって言われても……」
カオリも困った様子だ。まあ無理もないよね。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、なんでもないです。それより、俺たちが来たってことはその神託通りに事が進んでるんですよね?」
俺は話を逸らすために質問をした。
「ええ、それは間違いないかと思います」
「じゃあそろそろ出発しましょう。いつまでもここにいても仕方ないし」
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