朝、目が覚めたらやたら腹が減っていた。
お昼近くに舞台美術家の加藤ちかと打ち合わせを兼ねて、
××の串カツ××でランチというか、昼飲みした。
新人制作のTと脚本家志望のIも呼んだ。
ひとしきり次回公演の美術の話をし、
佐藤の話題になった。
わたしは佐藤に前回公演(6月6日千秋楽)の反省会(6月13日)に
「なんで来ないンだ?」とラインしたが、
返信がなかったのでもうつきあいきれないと匙を投げていた。
以前にも連絡が取れず、何回かアパートに出向いたことがあり、
窓を開けて叩き起こし、稽古にこさせた経緯があり、
またズボラで、酒を飲んで寝ているだけだと思い、
「次回の公演の出演は決まってないから、付き合いきれん、
これ以上心配するのは嫌だ、勝手にしてくれ」と思っていた。
前々回はドアを叩き、窓を開け「佐藤!」と声を掛けると起きてきた。
前回はドアも閉まり、窓を叩いても出てこなかったのだが、
ちょっと隠れて見ていると、他の窓がそっと開いて顔を出した。
「佐藤!」と声を掛けると、「へへへ」とバツが悪そうに出てきて、
家庭の事情で実家に帰るので、戻ってきたら稽古に参加するという。
その言葉通り、その後は真面目に稽古に参加していたのだが、
最後までセリフはちゃんと言えなかった。
今年、三本の公演に出演した。
『母の桜が散った夜』
『女の子ものがたり』
『アオイの花』
Iが「自分が部屋まで行って連絡とります」と言うので、
虫のしらせだったのだろうか、なぜか「おれも行くよ」と佐藤の部屋に向かった。
15時くらいだったろうか。
天気が良く暑かった。
いつものようにアパートのドアに鍵がかかっていたので、窓を開けてみた。
佐藤は布団の上で目を瞑り、腕を組み、布団を掛け横になって眠っていた。
一目で亡くなっているのがわかる状態だった。
枕元に酒は置いていなかった。
まだ飲んでいない水のペットボトルが転がっていた。
動転しているIを帰し、警察を呼び、救急車がやってきたが、
手遅れなので運び出さなかった。
××警察署の刑事がやってきて現場検証をした。
今年に入って公演ごとに痩せていく佐藤を見て、
「酒やめろ」とずっと言い続けていた。
佐藤は刑事と警官の三人に部屋から運び出されて警察署に向かった。
次の日にお姉さんがやってきて、警察から事情聴取を受けた。
佐藤とお姉さんのDNA鑑定が行われて、結果が出るまで身柄は引き渡せないという。
それまで葬式は行えない。
わたしと最後に連絡をとったのが今月11日だった。
監察医は推定12日で死亡診断書を出した。
まだまだ書きたいことはたくさんある。
映画の好きな奴だった。
女にモテる奴だった。
お酒の好きな奴だった。
心根の優しい奴だった。
生きてる人間は亡くなった人の分まで幸福にならなければいけない。
どんなことがあっても。
そして、忘れちゃいけない。
「あいつは面白い奴だったなぁ」
まだ信じられないが、舞台で歌っていた『L-O-V-E』が忘れられない。
二人でうどん屋に入り、酒を飲んだ時、
佐藤仁と仲良しだった人たちの追悼文↓