根津甚八さん逝去 | 森岡利行オフィシャルブログ「監督日誌」powered by Ameba

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脚本家
舞台演出家
映画監督
プロデューサー
文教大学情報学部メディア表現学科非常勤講師

根津甚八さんが亡くなられた。

 

私が東京へ出てきて状況劇場という

アングラ劇団に入団したのも

元をたどれば根津さんだった。

根津さんがテレビで活躍されているのをみて、

単純にここに入れば、テレビに出られると思ったからだ。

 

入ってみてそんな甘い考えはふっとんだ。

座長の唐十郎さんに

「君はタレントになりたいの?

いい俳優になればいいタレントになれるけど、

いいタレントになっても、いい俳優にはなれないよ」

と言われたのが印象的だった。

 

私が入った時は根津さんは退団されていたが、

劇団には根津さんの痕跡がたくさんあった。

根津さんが自分で作った腹話術の人形。

唐さんの新聞のチラシの裏に書かれた台本を

ガリ版に清書し印刷された製本台本。

ラーメンの丼の柄を彫刻したギター。

いろんな舞台で着られた衣装。

 

根津さんの退団の日の話も先輩から聞いた。

根津さんが出演されている芝居のテープを聞き、

長台詞を真似た。

 

その後、私も退団し、小劇場を転々としたが、

根津さんの出演映画やドラマは欠かさず観ていた。

『さらば愛しき大地』

『その後の仁義なき戦い』

『影武者』

『駅』

『冬の運動会』などなど。

 

とにかくかっこいい人だった。

劇団時代は新宿ジェームス・ディーンと言われていた。

 

私が脚本家になり、お会いすることが出来た。

日本テレビの連続ドラマ『犯罪捜査心理ファイル ボーダー』という

作品だった。

 

“STRAYDOG”の芝居も中野のポケットに観に来ていただき、

居酒屋で飲んだ。

劇団時代の世間には話せないような目茶苦茶な話が聞けた(笑)。

 

本当にいい俳優だった。

監督になって、根津さんと一緒にやることはかなわなく

なってしまったが……

 

根津さん、多大なる影響をありがとうございました。

ごゆっくりお休み下さい。

 

合掌。