96歳の母方の祖母・多和光代のお見舞い。
先日まで老人ホームに入っていたが、
いよいよ具合が悪くなり、病院へ入院。
生きているうちに会えた方がいいと、
『帝王』の撮影が終了した次の日、
四国へ向かった。
母が育った家の前から見える大三島の風景。
大三島は2002年に木村佳乃さんが主演した
映画『船を降りたら彼女の島』のロケ地だ。
ついたその日の新聞に『女の子ものがたり』以来、
不況でロケを誘致出来ていないという記事。
大阪万博に来たとき57歳だった。
男二人、女四人を育てた(うちの母は三女)。
長男は肝硬変で38歳の若さで亡くなった。
あとは生きていて、一番下の次男が面倒を見ていた。
次男(末っ子)の名前を多和不二満という。
そう、私の映画『クラヤミノレクイエム』に登場する
サラリーマンの名前だ。
光代さんもビデオ『夾竹桃の夏』で正次歌江さんの役名で
使わせてもらった。
最初、息子と勘違いしていたが、
東京から来たことを告げると、孫で三女の息子だと理解し、
満面に笑みを浮かべてくれた。
顔を近づけると、
「こんなに生きて……最高よ」と祖母は言った。
私は祖母の手を握った。
祖母の手は、少し冷たかったが、
幼い女の子のように柔らかく、
優しかった。