「今日は楽しかったよ、また―――来年な」
会は終わった。一年の中で最も盛大で静かな祭りの日が。
これから一年、また生きていくための力をもらう日が。
東野駅に着くまでの電車の中で、頭の中に一つのもやの様な思考が俺の中に存在していた。いや、存在してしまったと言った方が正しいのかもしれない。
永田駅で切符を買おうと財布を出したとき、ポケットに入れておいた緑石の指輪が転げ落ちた。慌ててそれを拾い上げて、石に傷がついていないか確かめる。幸い、石には傷がついていなかった。しかし、それを見つめているうちに
―――願っていたことで、叶わないことで、願ってはいけないことが、
いつの間にか、心を支配していた。
駅に着いた時には、歩みもおぼろげなほど弱く、階段を下りるスピードもゆっくりとしたものになっていた。
ふと、ポケットから指輪を出してみる。
見つめれば、見つめるほどに、吸い込まれそうな魅力があった。
「願いを、叶える、指輪…」
心が揺れている。
心が揺れていた。