災害時の日本語について | ボラとも先生のブログ

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このブログは日本語ボランティアを始めた人、やっている人が疑問に感じたこと(特に文法など)について説明するために作りました。

ボラQ138: 熊本地震があって、私たちのグループで災害時のためのパンフレットを作ろうという話になりましたが、どのようなものを作ればいいか教えてください。


ボラとも先生A138:ネットで以下のサイトを調べてみてください。弘前大学の佐藤宏之教授の研究会で作られたこのサイトに具体的なパンフレットの作り方が丁寧に説明されています。


①減災のための「やさしい日本語」

http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/EJ1a.htm



このサイトの内容は英語、中国語、韓国語の3か国語での説明もあるので、日本語があまり分からない人とも一緒に読むことができると思います。


このサイトで一番いいのは、具体的なパンフレットをダウンロード(PDF)できるので、それを印刷して3つ折りにすればすぐ活用できることです。


また、同じ研究会から以下のサイトで、今回の熊本地震に関する掲示物なども参考にできます。


②熊本県熊本地方から大分県中部にかけて発生した地震に対する「やさしい日本語」クイックレファレンス(更新日:2016426日)

http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/EJ-kumamoto_2016_0415.html



ラジオ放送での案内や情報提供、役場や避難場所などの公共の施設で掲示物の案文がいろいろな状況に合わせて作成されています。


それらの案文の中から自分たちのグループの必要に応じて「やさしい日本語」を使った情報提供ができますので、パンフレット作成のときに参考にできます。


上記のサイト②には『<増補版>「やさしい日本語」作成のためのガイドライン』がPDFにまとめられてダウンロードできるようになっているので、そちらも参考にしてください。


平常時にはあまり気が付きませんが、災害発生時からの経過時間によって必要な情報というものが変わってきます。


このガイドラインには、そうした情報も経過時間ごとに「生活情報」、「交通情報」、「支援情報」、「自然情報」、「注意喚起情報」、「外国人関連情報」の6種類にわけて整理されて表にまとめられているので、とても分かりやすいと思います。


さらに、このガイドラインには「やさしい日本語」の作成ルールとして次の8つが挙げられています。詳しい内容に関してはガイドラインの本文を読んでください。助詞の使い方や語彙の選び方など、具体的な作り方が書いてあります。


(1)難しいことばを避け、簡単な語彙を使ってください

(2)1文を短くして、文の構造を簡単にしてください

(3)外来語を使用するときは気をつけてください

(4)擬態語は、日本語話者以外には伝わりにくいので使用を避けてください

(5)動詞を名詞化したものはわかりにくいので、できるだけ動詞文にしてください

(6)あいまいな表現は、避けてください

(7)二重否定の表現は避けてください

(8)文末表現はなるべく統一するようにしてください


ひとつ気になったのは、こうした「やさしい日本語」を作成するときの前提として、日本人だけで作成しようとしていることです。


たとえば、(1)の「簡単な語彙」というのは、日本語能力試験3、4級程度で、友人と待ち合わせ(時間や場所を決める)ができたり、自分のほしいものを説明して買い物ができたりする程度の能力のことだと説明されていて、語彙レベルは、「日本語読解システムリーディングチュウ太」というサイトのホームページで調べることができると書いてあります。


しかし、日本語ボランティアグループでは目の前に日本語に慣れていない人たちがいるのですから、どのような表現がわかりにくいのか、またはわかりやすいのか、普段の活動の中でいっしょになって作っていけばいいのではないかと思いました。


それ以外は非常に役に立つガイドラインだと思います。興味があれば、上記の2つのサイトを隅から隅まで探索してみてください。思わぬ発見があるかもしれません。


今回の記事は、災害時に情報弱者になりやすい、日本語に慣れていない(不自由な)人たちのための情報提供について、ネットでわかる範囲でお知らせすることにしましたが、皆さんがお住いの地域の自治体や役所にもそうした情報があると思います。


一度お尋ねになって相談してみると、自分たちが知らなかった地域防災の情報も知ることができるかもしれません。