「ラベルを読め」・・・です。 | 光・青・風

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関西各地の朝を収集してた過去。
備忘録。

 前回、予告いたしました通り「ラベルを読め」です。


ワインもそうですが、ウィスキーもラベルにかなりの情報が書き込まれています。

それを読み解くことが出来ると、中身の想像がつきやすくなるだけではなく、

バーなどに行って注文する時に軍資金との兼ね合いもやりやすくなるんです。


まずは、下の写真を見て下さい。
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一見、同じ物のように見えますね。

が、中身はまったく違う物です。

解説していきましょう。

入れ物から違いますね。

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左は普通の箱ですが、右はポッチ付きの重厚な箱に入ってます。

これだけで違うウィスキーかもって思えますよね。

で、問題のラベルを見ましょう。

左はメインラベルに「1972」、右は「33」と書いています。

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1972と言うのは、1972年に蒸留し、熟成開始と言う意味です。

「ビンテージ」といいます。

33というのは、33年熟成していますよ、という意味。

「エイジング」といいます。

このウィスキーに関しては、それぞれに両方の数字が入ってますが、

メインの数字がそれぞれ、「ビンテージ」と「エイジング」と言うわけです。

両方書けとか、どっちかでもいいのでとか、書かないといけないとか、

そんな決まりはないんですが、それを売りにしているので大きく書いているわけです。

1972年の方のエイジングは39年ですが、もう72年の39年ものは新たに出来ないので、

今後出てくることは無いわけです。

逆に33年ものは、その33年熟成をメインにしているので、

毎年のように出てくる可能性があるわけですね。

もちろん、どの年のビンテージかで、味に若干の違いはありますが、

エイジングで売っているので、造る方も味の均一化を図るわけです。


で、一番大きく書いてある文字、だいたいはトレードマークですが、

蒸留所の名前ですね。

「GLENDRONACH」(グレンドロナック)と読み取れます。

その下に少し違いがあるところがあります。

1972の方は「SINGLE CASK」とありますね。

これは一つの樽からって意味でして、

33年の方は、ここに何も書いてないので、味の均一化および、特徴を最大限に出すために、

何樽かを混ぜたりします。以前はこれを「ピュアモルト」とか呼んでいた時代もありましたが、

同一蒸留所のモルト同士なので、シングルモルトとして扱われます。

少し前までは、この形式が多かったのです。

ただ、33年表示の場合は、最低33年のモルトが使われないといけないと言うことで、

それ以上のエイジングのモルトも混ざっている可能性もあります。


その下は両方とも「Oloroso Sherry But」って書いてますね。

これは、熟成にオロロソシェリーの空き樽を使ったってことです。

1972年の方は、その他に樽番号、その樽から何本取れ、その何番目かも書かれています。

33年の方も、ボトルの通し番号は入っています。


あと、実はここからが「キモ」です。

一番下の両端に、容量とアルコール度数が入っています。

1972年の方は、容量700ml、度数48.6となっています。

33年の方は、容量750ml、度数40.0となっています。

ここで、1972年の方はおいといて、33年の方だけで言いますと、

40度と言うのは、割水をしているわけで、樽から出した原酒に水を加えて、

度数を調整しています。 税法上や輸出に対応したりといった事情もあります。

さて、今回はお財布の都合上ご用意出来ませんでしたが、

33年に700mlが存在しています。って言うか、そっちの方が本線です。

750mlはニセモノかというと、そうではなくて、アメリカ輸出用なんです。

このウィスキーは、日本に正規代理店が存在し、700mlを輸入しています。

750mlは並行輸入もので、アメリカ経由で、ここにやってきました。

味に違いが無い場合もありますが、若干変わってる事もあります。

ネット通販などで買う場合などに、そこらをチェックするのが大切です。

輸出用を買うなとか飲むなと言うわけでも、並行物を買うなということではなく、

UK国内向けを出来たら手に入れるか、正規代理店の物を飲むのが、

造った人の気持ちがじかに伝わってくるかと思うのです。

一昔前は、正規代理店は、温度管理したコンテナで空輸してくるが、

並行物は船便なので、2回赤道を通ってるはずで、品質管理がいまいちかも。

って話があったのですが、今はどうしているんでしょうね。

もちろん、酒屋さんやバーでの品質管理も注意する必要があります。


で、話が脱線してしまいました。


上のドロナック2本は、そうそう間違わないと思いますが、


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左が上で紹介したモルトですが、右は最近入手したモルトです。

ドロナックのカスクストレングス・シングルバレルシリーズは、

全て同じ箱に入ってます。

ボトルと同じラベルを貼っていますので、そこを見ると中身がわかります。
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バーで飲んで美味しかったから、家用に買おうとした場合、

上で解説いたしました注意点を把握してから、酒屋さんに行ってください。

この二つは、値段もまったく違いますし、味に関しては、まったく別物です。

ちなみにですけど、左はエフ万円ほどで、右はツェー万ゲー千円ほどです。

ここで、グレンドロナックを紹介したついでに。

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右の方は、箱じゃなくて筒に入ってますが、ドロナックです。

この手のドロナックは「シングルカスク・カスクストレングス」シリーズと言って、

ひとつの樽から取れた分しかないんですね。

樽の大きさにもりますが、だいたい100本~350本ぐらい取れます。

上の二本はちょっと珍しく、バーボンの空き樽で熟成させたものです。

ビンテージは一緒ですが、エイジングが違いますね。

それぞれ200本ずつぐらいしかないので、

ビンテージと樽の種類だけで個体は判別出来ないです。

どこかで飲んだので、それが欲しいと言っても、

入手出来る可能性は低い場合が多いです。
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先にご紹介しましたグレンドロナックと比べていただいたら、

色が薄いのがわかりますね。

熟成経年で、色が濃くなりますが、

熟成させる樽の種類にもよって色のつきぐあいが変わってきます。

このバーボン樽の二本ももっと熟成させてたら、

もう少し濃くはなってくると思うんですが、

シェリーカスクに比べると、そこまでは色づきはないかと思われます。

次にご紹介するのは、ちょっと難しいかも知れません。



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「キルケラン」というシングルモルトです。

実は、蒸留所の名前が「グレンガイル」という名前ですが、事情があって、

商品名として使っていません。 意外とそう言う例は希です。

さて、ラベルを見て頂けると、エイジングやビンテージが書いてませんよね。

別に書く必要とか法律はないって話しましたが、まさにその通りなラベルです。

2004年に出来たばかりの蒸留所でして、毎年一本出していくシリーズです。

で、この写真のものは、5年エイジングです。

何故わかるのかっていいますと、ラベルの色なんです。
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左のは真っ白ですね。 これが5年なんです。

で、右のは次の年に出された6年エイジングが、次のネズミ色です。

7年が黄緑、8年が黄色と、ラベルの色でエイジングを表しています。

蒸留所が稼働した年に出来たウィスキーを毎年出していっているわけです。

まぁ、これは特殊な例ですがね。

ラベルのデザインは、まったく同じなので、ややこしいですよね。

近々、この蒸留所から、シェリー樽熟成とかのモルトが出るようです。

シリーズ5本で20万円近いようですけど・・・。




さて、次の2本もよく似てますが、まったく別物です。

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エイジングに違いがありますが、同じシリーズです。

このシリーズ、毎年、30年エイジングのものを出してきましたが、

実は、ここの蒸留所は、もう存在しない蒸留所なんです。

「ブローラ」という蒸留所のモルトです。

インヴァネスから北に50マイルほどの所にあるブローラという小さな街の蒸留所です。

町はずれのクラインリッシュという集落に蒸留所があり、

蒸留所としては、歴史は長いんですが、

空前のウィスキーブーム(?)で、蒸留所が手狭になり、

元々「クラインリッシュ」蒸留所として使われていた所を「ブローラ」とし、

新しい蒸留所を「クラインリッシュ」とした訳です。

それまでのクラインリッシュを受け継いだわけですが、

売れるモルトを造るために製法が材料を変えたということです。

で、ニーズに合わせたのか、古い方を、即ちブローラを閉めてしまいました。

元々、ポットスティルが1ペア(初留1と再留1)しかなくて、生産量は少なかったんです。

新しいクラインリッシュは、増産出来るように規模も大きくなりました。

見学にどうしても行きたかったんですが、時間が取れる時にたまたま大雪になって、

レンタカーがつるつるのノーマルタイヤだったもので、途中で断念しました。

A9(国道)が、意外と断崖絶壁な箇所が多くて、怖くて怖くて諦めました。

のでので、これ以上くわしくは、どっかのサイトをググってみてください。

当時は、ボトラーもオフィシャルも出てなくて(日本では入手できなかった)、

ネットも無い時代でしたので、名前だけが伝わる謎の幻の蒸留所でした。

またまたちょっと脱線しました。

さて、左の物が、「10th Release」と言われる、1978年ビンテージの2011年瓶詰めです。

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右の物が、「1st Release」と言われる、1972年ビンテージの2002年瓶詰めです。

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初めは、樽の在庫があったので、30年シリーズとしていましたが、

段々在庫が底をつき、途中で25年エイジングとかにもなってしまい、

最後まで30年シリーズは突き通せなかったようです。

トレードマークの猫(?)狼(?)・・・も最近になってちょっと変わってきたし、

金色なんかにもなってる・・・トレードマークってコロコロ変えていいのかな?

元々は、クラインリッシュのトレードマークでしたが・・・。

1983年までしかこの蒸留所は稼働していませんので、

本当にそろそろなくなってしまいそうですね。

83年は4月か5月までのはずだから、そんなに造ってないし、

70年代に比べて、80年代のボトラー物が多いので、

80年代の手持ちは無いように感じます。

もう蒸留所のウェアハウスには数えるほどしか残ってないのでは?


って訳で、ドロナック同様、ブローラでも同シリーズでわかりやすい物を比較したんですけど、

次ぎにお見せするのは、上級者向き(笑)です。


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3本とも「ブローラ30年」です。

が、左が1st、中が3rd、右が4thリリースの物です。

入れ物のの色が1stだけ微妙に違うのですが、単独で見るとわからないです。

画像をクリックしてもわからないかも知れないですか、

ラベルの左下に度数が書いてあり、猫のトレードマークの下に、

瓶詰めの年が書いてありますので、それだけで判断します。

ブローラのこのシリーズ、1stと2nd、それ以降とでは、少し中身が変わってきます。

まったく同じ瓶、ラベルですが、製法に大きな違いがあるのです。

ブローラは1969年よりその名で蒸留開始しました。

それまでのクラインリッシュと同じ製法なんです。

ただ、1973年に製法を変えました。

麦芽の発芽を促し、また乾燥させるのにピートを焚かなくなったのです。

1973年は途中までのはずで、こりシリーズはシングルバレルじゃないので、

1972年の物は、クラインリッシュを継承するブローラ、

1974年以降は、今のクラインリッシュに近い感じ(?)かな。

1973年は、その間ってことなのかな?

実際飲んでみても、そう言う実感は湧かなくて、

ブローラはブローラでしょって感じですな。

まぁ、エイジングとかもまったく違いますしね。


ので、1stがレイティングのポイントが低い割には、

高額で取引されているようです。

海外では、ツェー十万円超えていますね。


しかし、高く取引されている、人気が高いってだけで、

美味しいとは限りませんよ。

その日の体調やアテとかにもよりますし、

値段や見た目に騙されずに、自分のお気に入りを見つけてください。

その際に、ラベルを読み解けるととても楽しいですよ。


さて、そのブローラ30年(オフィシャル)のラインナップですが、


1st 30yo 1972 2002

2nd 30yo 1973 2003

3rd 30yo 1974 2004

4th 30yo 1975 2005

5th 30yo 1976 2006

6th 30yo 1977 2007

7th 25yo 1982 2008

8th 30yo 1979 2009

9th 30yo 1980 2010

10th 32yo 1979 2011

(11th 35yo 1977 2012)


こんな感じでリリースされています。

6thまで順調でしたが、7thで何故1978の樽を使わなかったのか?

桶売りして、まったく在庫無いということもないと思いますので、

1981がまだ残っていますね。

1983はクローズになった年なので、実際にどれだけ造って在庫があるか?

11thは、29年なのかな?  31年かな?

で、12thは、30年or32年?????

で、それでこのシリーズも終わりかも知れないですね。

(後日談:11thは、結局35年でした・・・1977年のかな?)

実際、初めの方は3000本とか発売されてましたが、

10thにいたっては、1500本しか発売されていないようです。

飲むのでしたら、今のうちですです。


ま、こうやって、ラベルを読み解くことで、

時代背景や情景、色んな大人の事情まで浮かんできます。

ただ飲むのではなくて、ラベルを見て、ひと味足してみてはいかがでしょうか?


さて、カテゴリー的にここからは後日追加記事になります。

(10月28日カキコ)


少し臨時収入があったので、ウィスキーを2本買いました。

買ったらたまたまここでのレクと類似ものだったので、追加で書きますね。

まぁ、臨時収入分を超えてしまってのお買い物でした(笑)。


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ベンリアック蒸留所のシングルモルトです。

グレンドロナック蒸留所と同じ経営者なので、

モルトのリリースも同じ感じになっています。

グレンドロナックの1989年(23yo)とこの2本は、

特別リリース品として扱われています。

それぞれの蒸留所で毎年、6~10樽ぐらい、

「今年の顔」みたいなモルトを選んで発売するのですが、

この二つの蒸留所のそれ(バッチという)は、争奪になるらしいです。


もともと、中途半端なシェリーカスクと、ウッドフィニッシュものは、

嫌いなんで、10種類リリースされた中から、

この2本をチョイスしてみました。

さきのグレンドロナックも、変なチョイスと笑われています。
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この2本、ビンテージもエイジングも違いますが、

バーボン樽での熟成は同じです。

1976年の方は、ピーテッドとなっていますので、

ピートが効いているんだろうなぁ。

1976の方はすぐに開ける勇気がないですけど、

1983の方は、年末年始に開けてみようと考えています。