転職を考えた理由④ | 元官僚戦略コンサルタントのブログ

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某省でキャリア官僚として5年間程度勤務し、その後戦略コンサルタントに転じた著者が、官僚からコンサルへの転職活動を具体的に紹介するとともに、日々の仕事や生活の中で日本経済について思うこと、また読んだ本の書評などを書いていきます。

転職を考えた理由の4つ目は、国会業務の存在です。

誰しも国会中継をご覧になられたことはあると思います。

国会議員が質問し、それに対して国務大臣(場合によっては副大臣、政務官、局長など)が答弁をするという質疑が延々と繰り返される。これが国会です。

そして、ご存じの方も多いと思いますが、国務大臣等が読み上げる答弁書を作成しているのは官僚です。国会業務とはこの答弁書を作成する業務のことです。

国会業務は、国会の会期中常に発生しています。1年の半分以上は国会が開会されているため(現在も通常国会が開会中です)、臨時業務というよりは定常業務に近いです。そして、この国会業務が極めて非効率であり、官僚の長時間労働の温床になっています。

では、国会業務は、具体的にどう非効率なのか。
大きく2つ挙げられます。

①国会議員からの質問が往々にして前日の夜まで出てこない
②割り振りの調整に時間を要する

以下、それぞれについて簡単に説明しましょう。

まず①について。

国会議員の質問事項は、あらかじめ「通告」という形で政府側に送付されます。この質問事項が送付されないと、政府側は答弁を作成することができません。なぜなら、質問がなければ、答えるべきことも決まらないからです。官僚の答弁作成業務は質問事項を受理した時点からスタートします


ところが、この質問事項をなかなか出してくれない国会議員の方がいらっしゃいます。ひどいときは、夜の8時、9時になっても出してくれません。そうなると、どの官庁も「自分の省庁の所管事項に関する質問が出るかもしれない。念のため待たないと。」ということで、質問事項が出てくるまでひたすら待機をすることになります。翌日の国会の質問者が10人いたとして、そのうちの9人までが夕方までに質問事項を出してきたとしても、残りの1人が出してこなければ、ひたすら待機をするハメになるのです。


その間、別の仕事をして時間をつぶす場合もありますが、特に仕事がない場合は、ぼーっと待つしかありません。ただ待つためだけに血税が残業代として浪費されることになります。



次に②について。
無事議員から質問事項が出てきても、ただちに答弁作成に着手するわけではありません。答弁作成の前に「割り振り」というプロセスがあります。これは、質問事項1つ1つについて、「どの省庁が答弁を作成するか」あるいは「(ある省庁の中の)どの部局が答弁を作成するか」を整理するプロセスです。そして往々にして、答弁の作成を省庁間、部局間で押し付け合う結果、割り振りの調整が難航します。そこでまた時間を浪費するわけです。


こうした非効率な面があるため、国会業務はしばしば深夜に及ぶことになるわけです。

官僚なら誰しも国会業務が非効率であることは身をもって理解しています。しかしながら、特に①については国会議員に起因するものでもあり、自分たちの力だけで効率化を図ることはできません。なので、非効率だとわかりつつも、半ばあきらめの中で従来通りのやり方で対応しているというのが現状です。今後も、政治家が国会業務の在り方を抜本的に変えない限りは、現状は変わらないでしょう。



さて、国会業務の説明が長くなりましたが。。


この国会業務がなぜ転職の理由の1つなのか。


誰しもそうだと思いますが、非効率に仕事をすることほど苦痛なことはありません。
効率的に仕事をこなした上で、浮いた時間でプライベートを充実させるのが健全な姿です。大量の仕事をこなすために残業するのは仕方ありません。しかし、ただ待つためだけに残業をするのは、耐えがたいものがあります(少なくとも私にとっては)。


私自身、効率的に仕事をしたいという思いは人一倍強く、国会業務をはじめとする官僚の非効率な仕事の仕方にはほとほと嫌気がさしていました。そうした非効率な仕組みが自分の力で変えられないのなら、より効率的に仕事ができる業種、職種に転職するしかないと考えたのです。



※国会業務の非効率さについては、こちらのブログでも詳述されています。国会議員の質問提出が遅れることによってどれくらいの税金が無駄に使われているかについて、具体的な試算も行われています。関心のある方はご覧ください。

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