Anne Fontaineの新作
壮絶な実話をベースにしたフランスとポーランドの合作です。
ポスターがあまりにも印象的で観に行きたかったのだけど、機会を逸してしまっていた作品でした。
たまたまリヴァイヴァルしていたので、時間を無理にでも作って鑑賞しました。
無理して行ってよかった
Les Innocentes
残念ながら日本では未公開です。
どうやら2017年8月に日本でも公開が決まったようです。
邦題は『夜明けの祈り』
ふーむ、随分と原題から離れてしまったなぁ。
映画監督であり、脚本家であり、そしてかつては女優もしていた研ぎ澄まされたセンスがあるアンヌ・フォンテーヌ。
ジェンダーを持ち込む気は無いけれど、彼女は女性ならではの眼差しでシーンを切り取り、言葉を交わさせ、時に激しく、時に冷静に物語を紡いでいきます。
彼女の代表作は数多くありますが、いくつか挙げると
NETTOYAGE A SEC (邦題:ドライ・クリーニング)
衝撃的だったわぁ。毒気を抜かれたもの。
NATHALIE (邦題:恍惚)
大好きなファニー・アルダンとエマヌュエル・べアールの官能合戦でした。
ハリウッドでもリメイクされております
ADORE / ADORATION (邦題:美しい絵の崩壊)
注:別の邦画題になったとの噂あり
彼女の作品では一番好きかもしれません。
オーストラリアの美しい海辺で繰り広げられる濃すぎる愛の物語。
ご関心のある方は、以前、ブログで記事にしました。
さて、話しが逸れました。
本作の紹介をしますね
第二次世界大戦も終わったばかりのポーランドの田舎町。
戦争の傷跡は大きく、人々は貧しく、街には親を失った子供たちが路上で生活している。
ナチスが去り、ようやく心の安寧が得られると思ったら、大間違い。
今度はソ連兵が街を支配するようになっていた。
フランス赤十字の一員として、ポーランドに派遣されたフランス医学生のマチルド。
ある日、彼女の働く赤十字施設に一人の尼僧がやってきて、助けてほしい、一緒に来てほしいと懇願する。
彼女がポーランド人であることからポーランドの医療施設に行くように勧めるけれど、尼僧は追い出されても雪深い施設外に跪き、神への祈りを続ける。
気になったので、尼僧が住んでいる修道院に行くと、なんとお腹を大きくした別の尼僧が産気づいていた
修道院側は決して歓迎ムードではなかったが、急遽、彼女は出産の手伝いをし、赤ちゃんが無事に生まれる。
そして、驚愕の事実が明るみに出ます。
神に身を捧げ、女性だけの修道院に、ソ連兵が日に何度と押しかけ、その度に尼僧たちを次々に手籠めにしていた
そのため、年老いた尼僧長をはじめ、ほぼほとんどの尼僧が身ごもっていたのです。
あんな形で母になる尼僧たちのトラウマは同じ。
でも、出産した後の身の振り方、心の持ちようが異なるのを丁寧に描いたのは監督の上手い演出です。
マチルドは最初は赤十字に報告して、然るべき医療を受け、そしてそのおぞましい事実を公表すべきと主張するも、修道女たちはただ首を横に振るだけ。
次第に心を通わせるマチルドとフランス語が話せる修道女マリア。
この醜聞を隠すため、生まれて来た子供たちは里子に出されたと聞いていたマリアたちだったが、実は修道長は子供たちを寒い雪山に捨てていたのです。
動揺する尼僧たち。
それと同じく、マチルドのポーランド・ミッションが終わることになります。
何もしてあげられず悩むマチルドは、最後に大博打を打ち、事の打開をはかろうとする。
混沌とした修道女たちに心の安寧は訪れるのか??
憎むべきは人ではなく、行為ではあるけれど、戦争という名の、異常なほどの不条理の世界の中で、傷つき、犠牲になるのは弱者だと思い知らされます。
フランス語のみですが、当該作品のオフィシャル・トレーラーはこちらです。
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