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BLUE SKY COMPLEX

オンラインゲーム「kingdom of chaos」の住人、STRARFの個人ブログです。何の事かわからない方はお手数をおかけしますがブラウザバックかタブを閉じる事をお奨めします。

「はぁー・・・かったるーい・・・。」

時刻は、此処に来てすぐに少し寝てしまったために正確に把握出来ないが、下の階がざわついていない様子から予想するとまだお昼休み前だろう。
ケータイを開いて待受画面の時刻表示を見ると、大方予想通りだった。

まだ何処のクラスも授業中で、とても静かだ。
犬みたいに這って行って校庭を覗いて見たけれど、この時間は体育の授業、何処のクラスでもやってないみたい。

「静かな方が良いや。」

さっき寝ていた位置に戻ると、もう一度仰向けに寝転がる。
来てすぐに食べようかと袋の口を開いていたポテチに何気なく顔を向けると、蟻の餌と化していた。

「おおっ、良いよ。あげるあげる。全部持ってっちゃって。」

どうせお腹も空いていない。
寝転がったまま、左腕を額に乗せて、良く晴れた空を見上げる。

低い位置の雲が、多分すごい速さで風に流されていく。
高い位置の雲はいつまでも視界に残っている所を見るに、やっぱり地表に近い方が空力が聞くのかな。
ま、実際はどうだって良いんだけど、と頭の中で自嘲しながら瞼を伏せる。

ガッコ、やっぱツマンナイな。

「はぁー・・・今日はこのまま帰っちゃおっかなぁ・・・?」

思わず考えていた事が、口を突いて飛び出す。
授業中の、しかも立ち入り禁止の屋上だ。
私の他に人なんて居るはずも無いのに、何となく恥ずかしくなった。

私は小さな頃からそうだ。
自分の小さな失敗が一々何もかも気にかかる。
多分、普通の人なら気にも留めないようなそんな事でもだ。

こういうの、完璧主義っていうんだろうな。

この不器用も極まる肉体と脳を持って『完璧であれ』なんて、皮肉其の物だ。
そんな事を考えるとまた自嘲気味な笑いが零れた。

その時、仰向けに寝転がっていた私のちょうど頭上から、声が掛かる。

「アーホゥ。放課後は俺とのピアノレッスンがあんだろが。」

何となく、本当に何となくなんだけど。
そろそろこの人が私を探しに来ると思っていた。

額に乗せていた左腕を下ろしながら、顎を上げて目を向ける。

其処には、私のクラスの担任、そしてピアノの推薦でこのガッコに来た私の専属講師。
そして何より今の私の片想いの君()が立っていた。

「センセ、授業は?」

「この時間は何処のクラスも無し。お、そのポテチ・・・ッて喰われてんのかよっ!」

「あははは」

思わず声を出して笑ってしまう。
この人の気さくさ気安さは、どうしてだか初めて出逢った時から私を不快にしない。

「大丈夫だよセンセ。確かまだ何か買ってたと思う。」

頭の下、枕がわりにしていたガッコカバンを取ってファスナーを開くと、中からまだ未開封のポテチ取り出す。
其れをセンセに向かって寝転がった態勢のまま投げる。

「サンキュー」と言いながら受け取ると、『わさび納豆マヨネーズ味』とデカデカプリントされたパッケージを見る。
そして「相っ変わらず変わったの選ぶね、お前」と、もう一度笑うと躊躇う様子も無く袋の口を開いて食べ始めた。

「お、なんだ意外とイケんじゃん。」

と、新たな発見に何故か嬉しそうなセンセを見ると、私も嬉しくなった。
起き上がってセンセの隣に行くと、唇を指さして「私もちょーだい♪」と言ってみた。

センセは「んっ」と、持っていたポテチを私の口に突っ込む。

・・・美味しくないじゃん・・・!

「嘘つき!」って云いながら非難するようにジト目で見ると、「言う程不味いか?」と心底不思議そうに首傾げた。

その様子にまた思わず吹き出してしまいながら、実感する。
あぁ、やっぱり私はこの人が大好きだ。

屋上からガッコの裏庭を見下ろす場所。
センセは屋上に来るといつもここで裏庭とその向こうに在る街を見ていた。

そしてジャケットの内ポケットから煙草とライターを取り出すと、煙草を一本、口に咥えて火を点ける。
深呼吸の様に煙を吸い込むと、溜息の様に長く長くゆっくりとそれを吐いた。

私は本来、煙草は大嫌いだ。
吸ってる人間に近寄られたら、本気で慰謝料を請求しようかと思うレベルで。

だけど、センセだけは特別。
紫煙に包まれ気怠げな表情を浮かべ、遠くを見るセンセは一枚の絵になっている、と思う。

分かんない。私のセンセに対する片想い乙女フィルターが全開なのかも?

良いんだ。私の目は私の目、私の視界は私の世界。
誰かの為に宛行われるモノじゃない。
そう見えてるなら、それは私の真実だ。

あれ?それによくよく考えたらガッコの女の子皆が私みたいな視線でセンセを見てたら・・・?
だ、ダメダメじゃん!?取り合いじゃん!?

ブルブルとアタマを横に振る私を、センセは苦笑いしながら見ている。

そして煙草を咥えたまま空を見上げながら言った。

「お前さ、結構こうやって授業抜けてるみたいだけど、大丈夫なのか?」

投げかけられたその質問に、血が昇り続けてたアタマがフッと冷めた。

「大丈夫だよ。出席日数みて授業フケてるし。
とりあえず今学期はもう出なくても良い。」

あからさまに態度を悪くした私の様子をみて、センセは機嫌を取る様に私の髪をグシャグシャと撫でながら。

「ま、自分でちゃんと把握してんなら良いさ。ただ、お前の姉ちゃん、心配してたぞ。」

撫でられてるのにまた気分が落ちる。

私は姉と同じガッコに通っている。
姉は私とはまるで真逆な人で、自然と周りに人惹きつける魅力が在る。
優しく温厚、柔和で心配性のロマンティスト。
更には先輩後輩男女も問わず、お淑やかな敬語。
極めつけには万人が愛さずにはいられない天然属性まで持ち合わせている。

劣等感? 無いと言える理由が無い。
自分の身近に在る一番眩しい星を見て、どうしてそれに焦れない人が居るって言うんだ。

そこまで考えると思わず「あぁー・・・・・」と呻き声をあげながら自己嫌悪で気分が落ちる。

そう、私はそんな姉が大好きなのだ。
嫌いになんて成れる筈がない。
私なんかのために本気で泣いてしまう優しい人を。

姉は、ガッコで浮いている私を、過保護にし過ぎるでも無く、かと言って遠ざけたり放置や放任は決してしない。
所謂『不良』と名付けられたカテゴリーに入る私を、いつも心配している。
それをちゃんと理解していながら、また心配をさせてしまうような事を繰り返す。
私は私が嫌いだ。

転落防止用の柵の上に両肘を置いて、そこに顎を乗せる。
横目でちらりとセンセを見ると、吸い終わった煙草をケータイ灰皿に突っ込んでいた。

それから、少し煙草の匂いが染み付いた手でもう一度私を撫でた。

「姉ちゃんは姉ちゃん、お前はお前。 だろ?」

私はこくり、と、小さく頷く。

「お前にしか無い良さはちゃんと在る。ただそれは目には見えないモノだから気付かないだけだよ。周りの連中も、お前自身もな。」

泣きそうな顔でセンセを見ると、ニッコリ笑って私の髪をグシャグシャにしながら「な?」と言った。

むぅ・・・なんか多分、センセは何処か姉に似ているんだ。
口調も性格もまるで違うのに、纏っている雰囲気が似ているんだ。

それに気付くとなんだか恥ずかしくなって「あぅ~~~!」と言いながら顔を伏せたままその場で足をバタバタ動かした。

「なにやってんだ、お前」と、センセが苦笑混じり言う。

「わっかんない!けど、身体を動かさないと耐えらんないの!」

顔を伏せたままそう言ってまだジタバタする私を、センセは笑った。


ようやく落ち着いて、「はぁー・・・」と溜息。

センセはケータイでメールを打っている。
多分、姉に私を発見した報を入れてるんだろうな。

私の中で少しヤキモチが鎌首をもたげて来る。

「ねぇ、センセ。センセは私と姉様、どっちが好き?
『どっちも好き』とかお茶は濁さないでね。
男女の関係で、お付き合いするとして、だよ?」

私が投げかけると、ケータイを弄るのを止め、「んー」っと唸った後

「男女の関係でお付き合いって意味なら、保険医のあの先生だな。俺は落ち着いてて出るトコ出てる女が好みなんだよ!」

そう云うとまたケータイをポチポチ弄り始める。

むぅ・・・自分の胸を両手で触りながら、「これほぼ下着の感触じゃん?」みたいな感触に泣きそうになった。
今日からお風呂で念入りにバストアップ体操だ。

むんっと両手を胸の前で握り締め一人決意をしていると、センセが「はははっ」と笑った。

「あ、そうだセンセ、今日は合唱部はお休みなんだけど、放課後すぐ音楽室行って良いの?」

「おう、そんじゃあ俺も6限終わったらなるだけ急いでくから、音楽室の鍵、開けといてくれ。」

「あーい。」

ピアノ推薦で専攻しているため、私はガッコから音楽室のスペアキーを渡されている。

「はぁー・・・早く放課後になんないかなぁ。
クラスの娘達は流行とか誰がカッコイイとかばっか言ってて話合わないし。
授業、知ってることばっかだから面白くないし、早く鍵盤に触りたいな・・・。」

センセはもう一本煙草を取り出すと、また火を点けた。

口に煙草を咥えたまま、器用に煙を吐き出すと、空を見ながら私に言う。

「お前はさ、多分、賢すぎるんだ色々と。
周りを見下さないで、もうちっと歳相応の馬鹿になれ。」

心がチクってした。
ホントは自分でも分かっていたんだけど、不器用でその『馬鹿になる』って言うのが難しい。
努力して話を合わせていても、そういう態度は透けて見えるモノ。
そのうちゆっくりと、私の周りから人は離れた。

「お前今、『馬鹿になる為にはどうしたら良いんだろう?』なんて考えてるんだろ?
それがもうダメなんだよお前。何も考えないで良いんだ。
例えば友達と美味いモノ食った時、回りくどい言い回しや気の利いた事なんか言えなくて良い。
ただ『美味いね』って友達に言っときゃいいんだ。
お前がピアノを弾く時、お前自身の感情を余計な音で飾るか?
そんな事しないだろ?それで良いんだよ。飾ったお前じゃなくて良い。」

なるほど。
目から鱗が落ちた気分だ。あ、違う、これ泣いてるんだ私。

「俺の前で話してるお前は、少なくとも歳相応の馬鹿だぞ。
ま、その所為で透けて見えてるモノも在るが・・・あいや、それは今は良いんだよ。」

センセは最後ブツブツとなにか言いながら頭を振った。

私は後から溢れる訳の分からない涙と格闘しながら、同じ様に止め処なく溢れる感情を言葉にして零す。

「ねぇ・・・センセ。私、センセの事が好きなの・・・こんな気持ち初めてで、もうどうしたら良いのか分からない・・・」

「ぁ、こいつ・・・俺が伏せてやったのに、淀みなく言い切りやがった・・・」

センセは何だか顔を赤くしながら困ったように頭を掻く。

それから泣き続ける私の頭に手を乗せながら言った。

「先生のタイプはさっきも言ったが大人の女性だ。ちゃんと自律して自立した人だ。
ま、お前は大丈夫・・・だとは思うが・・・うん。」

センセは私の顔を自分の方へ向けると、真っ直ぐ告げる。

「お前がもしな、ちゃんとこの学校三年通い切って、卒業した時な。
その時もまだ、今と同じ様に俺の事を想っててくれたなら、俺も考える。」

「ホント? センセー・・・」

「おう、男に二言はあっちゃダメだろ。」

力強い言葉を聞いて、また涙が込み上がって来る。

「うぇぇぇ・・・・」

今の私の顔は、涙で嘸かし酷いことになっているのだろう。
センセはポケットからハンドタオルを取り出すと、「今日はまだ使ってない、キレイなタオルだからな?」と私の溢れる涙を綺麗に拭いてくれた。


授業、サボらないで。
お友達もたくさん作って。
姉に余計な心配も掛けないで。

自律して自立した、センセに相応しい人になる!

あと胸も・・・!


心の中で固く固く決意しながら、これからの日々を思った。





















以下、背後寄り。

そんな訳で皆大好き学園ネタでした。
実は皆がブログで書いてる学園ネタを見て羨ましかったとか内緒、てへぺろ。
にわか知識で書くのもアレなので現代設定。
一発書きの添削無し、誤字脱字あったらごめんね!

こんな青春とかちょっと送ってみたいなぁ、とか。夢は夢でw