BLUE SKY COMPLEX -6ページ目

BLUE SKY COMPLEX

オンラインゲーム「kingdom of chaos」の住人、STRARFの個人ブログです。何の事かわからない方はお手数をおかけしますがブラウザバックかタブを閉じる事をお奨めします。

「クククッ・・・この私をこうまで追い詰めるとはな・・・だが、ここまでだ・・・貴様は今日、此処で堕ちる事になる。ククククッ・・・」

眩しい日差しを降らせる太陽に向かってブツブツと厨二病染みた呪詛で呪りながら、私は体育の授業に真面目に参加していた。
大体なんでこのクッソ暑い中マラソンなの・・・?
馬鹿なの?地球滅ぶの・・・?

普通はサービス的な意味合いでプールとかでしょ・・・!?
「故障の可能性がある為、本日プールメンテナンス」って何ソレ!

私はね、唯でさえ参加するのもダルい体育の出席日数を稼ぐ+この雲一つ無い快晴から少しでも涼しく快適に過ごすために今日の体育に出たんだよ。
もうね、ぶっちゃけて言ってしまえば制服の下にはスクール水着を着込んで登校して来たんだよ!
有り体に言えば私の前で生JKが水着姿を恥じらいながらキャッキャウフフを繰り広げるのを楽しみにしてたんだよ!

返せ!私のワクワクを返せよ!

その時、追い越すために隣をすれ違った同級生が私の方を見てビクッと肩を震わせた。
しまった、口に出してボヤいちゃってたか・・・

あぁ、申し訳ないことをしてしまったなぁ、って思いながら振り返って彼女の表情を伺う。
ま、真っ青な顔してる・・・あーホント私ってさぁ!
自分の失敗に後悔しながら心の中で頭を抱えて居ると、つい口を突いて舌打ちが出た。
うん、もちろん彼女の方を振り返って、しっかり見詰めたままままま・・・てへへ、ぺろっ☆

うわぁぁぁぁぁん!!!
このまま風に溶けて消え去ってしまえればいいのに!!!!!!!

猛加速してその場を離れる。
怯えた表情を浮かべ青ざめる同級生に「本当にごめんよぉぉぉぉぉっ!」と心の中で何度も謝りながら。

ゴール地点に辿り着く頃には、吹き出した汗で涙はかき消されていた。
残り時間は自由に休憩してても良いんだ。結果オーライなんだ。

何とかポジティブシンキングをして涙を引っ込めると、校舎の裏庭にある木陰に腰掛ける。

あー・・・ジャージが汗で濡れて気持ち悪いよぅ・・・。
ジャージがこれって事は下着は言うまでも無い。一応替え持って来てるし良いけどね!
大体何でこの暑いのにプールの代わりがマラソンなんだよ。全然何処のポイント見ても代われてないよ。いい加減にしろ。

まぁ、頑張って終わらせたから良いけどね! 気付いたらトップでゴールだよ。
内申点0であろう私は成績だけはトップをたもっておかないと後々困る事になりそうだ。

早く終鈴鳴らないかな。
このあと昼食の時間だから、さっさと着替えて購買にダッシュしないといけない。
よりによってこんな日に寝坊してお弁当作り損ねるなんてなぁ・・・。

うちのガッコの学食は、かなり美味しいと評判では在るのだけれど、余り利用しない。
まぁ、これに関してはいつもの対人ネガティブな事ばっかりじゃなくて、人がたくさん居る中のざわつく不協和音が単純に苦手なのもある。
無駄に耳が良いからね。

その時、ようやく凪いでいた風が自らの有り様を思い出した様に吹き始めた。
このガッコの裏庭はちょっとした林になっていて、日中でも日光が余り差さないから、風が吹くとすごく涼しい。
ようやく少し生き返れたなぁ。

うん、でも次の体育はちゃんとプールが良いかな!

よし、あと終鈴までは頭を空にして風が葉を揺らす音を聴いていよう。
瞼を伏せて、さらさら、風の流れる音。
そこに在るメロディー。

没入。

終鈴。

覚醒。

疾走!!!!!

早く着替えて購買に行かなきゃコッペパンしか残って無ければ、学園から出て1km程先にあるパン屋さんまでマラソンする事になる。
今日の私はお腹が空いているし唯でさえ消耗してる。出来ればそんな状況だけは御免被りたい。
更衣室に飛び込むと、まだ同級生が誰も戻る前に下着までバッチリ着替えて、誰も戻る前に出て行く。

あぁ、案の定購買はもう人の山だ。
そんな事を考えていると人垣の中から見知った顔が出てくる。

「ぁ、センセ! センセも今日は購買のパン?」

「お?あぁ、お前か。
おう、今日は学食の日替わり定食がA・B両方好みじゃなくてな。」

今購買部で買ったのであろうパンを見せながら言う。

「センセ、かなり食べるよねぇ。どれか一個ちょーだい☆」

「だ~め☆
ま、購買戦争に参加すんのも学生のうちの醍醐味さ。さっさと行ってこい。良いの無くなっちまうぞ。」

言いながら私のお尻をポンッと叩く。
相手がセンセじゃなかったら教育委員会に通報してたレベルだよ!

そして人垣の後ろに立つと、気合を入れるために胸の前で両手を握る。
意を決して飛び込もうとすると、私に気付いた後方の人から私を中心にして物凄い勢いで捌けていく。
そんなにか?そんなになのか?

・・・案外ショックだなぁ。なんて今更だけど。

本当はこのまま屋上まで走って逃げようかとも思ったけど、センセも見てるしそれでは余りにも情けない。
購買のおばちゃんの前まで行くと衆人環視に恥ずかしくなりながら特に競争率も高くはないであろう「ぁ、あんパン、を、ください・・・」と呟く。
だけどその声を遮る様に元気の良い、それでいて鈴を鳴らしたような可憐な声が後ろから響く。

「君、すっごいね!モーゼか何かの生まれ変わりかな?おかげで今日は購買戦争しなくてもいいや!ありがとね!」

振り返ると、うん、余裕で「アイドルか?もしくはよく出来たお人形か?」と言ってしまえるレベルの美少女が立っていた。
美少女は私の事を怖がらず、特に気にした様子も見せず隣に並ぶと「おばちゃん!今日はコレね!あと、コレとー・・・」と楽しそうにパンを選んでいる。
そして購入できたラインナップに満足そうなホクホク顔を浮かべると、周りの目も気にしない様に人垣から離れていく。

おばちゃんから差し出されたあんパンを受け取り、百円玉を渡すとセンセの所に足早に戻る。

「ね、ね、センセ!今のすっっっごい美少女、誰だろう!?芸能活動してる人かなにか?!」

「おー、アイツな。レリーチェっつって、確かお前の姉ちゃんの友達だよ。
あの通りの性格でな、男女垣根なくどんな奴とでも気さくに接してっからちょっとした有名人だ。
まぁ、姉ちゃんと同じ『学園のアイドル』ってやつだな。」

「へぇ・・・」と相槌を打ちながら、流れる綺麗な髪を揺らして楽しそうに駆けていく美少女の背中を見送る。

「アウトロー生活が長くて入学してからこっちJK達とまともに喋った事が無いから知らなかったよ・・・。
すっごい美少女だったよセンセ。髪の毛サラサラだし手足細長いし睫毛ちょー長かったし目もくりくりってしてて顔もびっくりするくらいちっさかったし。アレは絶対可愛いパンツ履いてるとおm」

全部言い終わる前に、センセから思いっ切り後頭部を叩かれた。

「アホな事言って無いで自販機行くぞ自販機。まだ飲み物買ってないんだろ?」

突っ込み厳しいよセンセ・・・。
涙目でジンジンと痛む後頭部をさすりながら、先を歩くセンセの後を追う。

校舎と講堂の渡り廊下に設置された自販機で飲み物を買うと、いつも通り屋上へ向かう。
センセと「牛乳とあんパンはやっぱり親和性が高いよね」などとくだらない事を喋りながら立入禁止のプレートが吊り下げられた屋上の扉をゆっくり開くと、そこには姉とさっきの美少女が居た。

「んっ・・・?!」

幻かと目を擦ってもう一度見るのだが、やはりそこには最愛の姉と先ほどの美少女がレジャーシートを広げて仲睦まじくランチをしていた。

センセに後ろから「とっとと入れよ」とせっつかれながら、勝手知ったる屋上に足を踏み入れる。

す、すごい・・・美少女が二人、「ウフフ」「アハハ」と笑いながら会話をしているだけなのに、まるでいつもの屋上と雰囲気が違う・・・!
先ずいつもは美少女でも無い残念系女子と、煙草臭いヤサグレ教師がたむろしてるだけだからなぁ・・・。
自分で言ってて泣けてきた・・・良かったね、屋上。これが本物のJKの放つ空気だぞ。

二人がこちらに気が付く。
姉がこちらに向かってにこやかに手を振っている。

「ありゃ、さっきのモーゼちゃんだ。君もここでお昼?」

「あぁスフィランシャ、こっちですわy・・・モーゼちゃん?」

「うん、さっきちょっと購買部でね!まぁ、それはいいや!この子が例の妹ちゃん?」

「ええ。スフィランシャ、昼食はご一緒致しましょう?」

ボケっと現状認識に手間取って突っ立っていると、後ろからセンセが「ホラ、誘われてんだからちゃんと行け。」と背中を押した。

「あ、は、はい!光栄です!」
と自分でも訳が分からないことを口走ると、二人共笑った。

姉と美少女さん、それから私とセンセ。
最初からそのつもりで用意されて居たのであろう広めのレジャーシートに腰を掛けると、先ずは自己紹介を、と促される。

「あ、え、っと。一年のSクラスで合唱部のピアノ特待生、Spheransya・Thanatos・Rila・Alice・Rahu・Freja(スフィランシャ・タナトス・ライラ・アリス・ラーフ・フレイア)です。
長いので身近な人には頭文字からSTRARF(ストラーフ)って呼ばれてます。でも、好きなように呼んでもらえるのが一番嬉しい、です・・・」

そこまで言うと美少女さんはおもむろに立ち上がって私を指差しながら「あーーーーーっ!」と言った。
姉に落ち着く様に窘められ、また腰をおろすと楽しそうに話しかけてくる。

「もしかしてもしかして!いつも放課後に音楽室でピアノ弾いてるの、君?」

「あ、はい・・・特待生で、音楽室の鍵を任されているので、多分そうです・・・」

「やっぱりそっか!音楽室と美術室って近くでしょ?絵を描いてる時によく聴こえてて『良いなぁ』って思ってたんだよ!」

そう言って私の手を両手で取ると、勢い良くブンブンと握手した。

恐縮な気持ちになってきて「ぁ、お耳汚しや部活動の邪魔になっていなければ良いのですが・・・」と言うと「アハハ、そんな事ないよ!自信持って大丈夫!」と親指を立てて言った。

「僕は二年でホントは美術部・・・なんだけど掛け持ちで華道部のお手伝いもしてるんだ。名前はレリーチェだよ!呼び方はまぁ、君の好きなように!」

「『れり☆りん』ですわね。」
「『れりりん』だな。」

美少女さんが言い終えると、姉とセンセは当然の様に同時に言う。
「それでも良いけどさ」ってぼやく美少女の様子がなんだか可笑しくて「あははっ」て吹き出してしまった。

「では、私もれりりんと呼ばせてもらいますね?」

と言うと、「うん、よろしくね!らーふちゃん!」と元気の良い笑顔が返って来た。
ま、眩しい!なんという美少女オーラ。これは確かに姉とは別ベクトルでアイドルだ。

「さ、あんま長々と時間だけ食ってたって腹は膨れねぇし、昼飯食うぞ。」

センセの言葉を三人で頷き返して、私も購買で買ったあんパンの袋を開ける。
センセは本当に男の人らしいチョイスだ。
コロッケパン、カレーパン、焼きそばパン、ホットドッグ。それとおやつなのかな?クリームパンが一個ある。
やっぱり男の人はお昼からたくさん食べるんだなぁ。
なんて思いながられりりんの方を見ると思わずかじっていたあんパンを落としそうになった。
菓子パンオールスターズ。パイにタルト、生クリーム、ジャムやカスタード、キャラメル。

「蟻」に愛されそうだなぁ。いやいや、私のこの考え方こそ同じ女の子として「アリ」なのか?

可愛い美少女のオーラはきっとこうやって形成されていくに違いない。きっとそうに違いない。

そして姉は私と競るレベルの少食で、サラダを上品にちまちまと摘んでいる。
くっ、我が姉ながらなんて可愛らしさだ。もしかしたら私とは違う愛玩系小動物なのかもしれない。

食べている間も仲睦まじい姉とれりりんの様子を見て、非っ常に癒されました。美少女ってマジヤバイ。

みんなで「ごちそうさまでした」をしてから、時計を見る。
お昼休みはまだ時間がありそうだ。

「ここからだとホントに遠くまで見晴らせるんだね!」

れりりんがそう言って屋上に設置された落下防止用の柵へ近付くと、センセが止める。

「待った待った。そっち側の柵は近付くと向こう側の校舎から丸見えでバレるんだ。職員室がちょうど正面だしな。
こっちの裏庭側なら角度的に問題ないぞ。」

「なるほど!」と相槌を打つと裏庭側の柵へ近付いて行った。
姉もれりりんの後を追って柵を掴んで遠くの街や空を見ている。

私も買っていた紙パックの牛乳を啜ると、倣う様に空を見上げる。
あー。お昼前まで一つもなかった雲が、低空を速く流れていく。
さっきよりは流れるようになった風と、いつもと違う屋上の空気が心の中で何かを掻き立てる。

私は高置水槽の裏に隠しておいたアコースティックギターを入れたハードケースを取り出すと、レジャーシートに腰掛けて弦の調子を見る。
うん、特に錆びたりはしてないな。それから耳だけを頼りに一音一音確かめながら調弦する。

足を組んでギターの位置を調整して。
あんまり声を張ると下の階の人に気付かれるから、いつも通り声は抑える。
久々だけど指動くかな、なんて心配しながら咳払い。

インプロヴィゼーション。
ピアニッシモで響かせるフィンガーピックの柔らかいアルペジオ。
前奏から思いつく侭に適当に。

私はそのまま瞼を伏せ・・・音へ没入。

思い付いた詞を歌い始める頃には完全に外の世界を断った。

心の中を巡ったメロディーが私を通り過ぎていく。
余韻をじっくり堪能した後、瞳をゆっくりと光に慣らすように瞼を開いていく。
と、目の前驚く程間近な距離でれりりんが、まんまるな瞳で私を見ている。
さっきまで姉と二人で柵の傍に居たのに・・・。

唇すら触れそうな距離に思わず「うわぁっ!」って声を上げながら後ろに倒れそうになると、センセがさっと背中を支える。
パチパチと控え目に送られる拍手に、視線を向けるとれりりんの後ろに立っている姉が微笑みを浮かべている。

れりりんは少し下がった私にじりっともう一度近づくと、「ねぇっねぇっ!今の、何って曲!?」と興奮気味に言った。

その質問に、小さい頃から私のああいう部分を見てよく知っている姉と、私の専属講師をしているセンセは笑った。

「ハハッ、その質問な、誰も答えられないと思うぞ。多分、本人もよくわかってないんだ。」

「え?どういう意味?」

「スフィランシャのアレは、心の中に何処かから流れてくるメロディーをカタチにしているものなのだそうですわ。」

「そ。もしかしたら深層心理の声なのかも知れないし、アストラルとかエーテル的なモノの表出なのかも知れない。
が、まぁ、本人にも分からないんだ。また弾けっつってもその時限りのモノだから、楽譜に起こしてない限り無理だしな。」

と、そこまでセンセが言うと、れりりんは残念そうな顔で「そっかぁ~」と呟いた。

姉はなにやらケータイを確認する。

「まぁ、今回は抜かりありませんわよ」

そう言ってウィンクしながらケータイの画面に表示された録音ツールを見せる。
れりりんは「ぱぁっ」と効果音が聞こえてきそうな程に表情を輝かせると、姉の手を握る。

「それ、僕のケータイにも送って!」

「ええ、勿論ですわ」

「ありがとー!良かったー!」

なんか分かんないけど、良かった、のかな?
何にせよ喜んでもらえたなら私もそれが一番だ。

れりりんはイヤホンを装着するとケータイでさっきのメロディーを再生しているんだろうと思う。
何回も「うん、うん!」と言っている。

「先生も、楽譜に起こすのならお送り致しますわ」

「ん、アレンジすると良い具合になりそうだし、もらうわ。」

私自身はこのパターンの時、楽譜に起こせなくても「一期一会」と思う事にしている。
なにせ私自身いつ来るのかどんな時に来るのか、良く分かっていない。
けど、なんだか喜んでくれる人が居るって嬉しいなぁ。

遠くの空を見ると、入道雲が頭を伸ばしている。
喉が渇いたなぁ。よし、近くの自販機で買ってこよう。

アコースティックギターをハードケースに入れて、雨避けのシートを被せる。
カバンをあさってカエルの顔をかたどった小銭入れを取り出すと自販機を目指して屋上を出た。

ついでにお手洗いで用を足して、最寄りの自販機で飲み物を買って屋上に戻る。
すると姉もれりりんももう居なくて、センセが一人で紫煙を燻らせている。

「二人は?」

「ん、なんか午後の授業すぐ移動教室なんだと、どっちも。
んで、準備やらするために早めに教室に戻ってった。」

「そっかそっか」

私の反応に何か感じたのか、センセは髪をグシャグシャ撫でる。
「煙草くさーい」ってジト目でにらんだら「ごめんな」って悪びれないで言った。

「良かったよ。」

「うん?何が?」

「お前が離れた時に『淋しい』って思える相手が出来た事が。」

おぉ、私は淋しいのか今。

「今度は学校の中で見かけたら、お前から声掛けられるようにならないとな。」

「うっ?! が、頑張る・・・」

「おう、頑張れ!」

センセはもう一回私の頭をグシャグシャ撫でた。


翌日。

前日の夜、ガッコ内で友人が出来た興奮になかなか寝付けなかった私は、今日も寝坊した。

「私、学習能力無いのかな・・・!」

カバンを揺らしながら通学路を走っていると、前方に見知った綺麗な髪が揺れている。

「遅刻だ遅刻だー!僕の前でぼさっと突っ立ってるとハネちゃうよぉー!」

物騒なことを言っているのに、周りの人達は笑いながら声をかけている。
び、美少女オーラは凄いなぁ。アレが人徳ってやつなのか。

後ろから走って追い抜きざまに「れりりん、おはようございます」と小声で呟く。
すると、何倍も元気な声で「おっはよー!らーふちゃん!」と返って来る。

校門が見えてくる。
ケータイで時間を確認すると、少し余裕がある程度で間に合った。

ほっと一息ついて、また校門に目を向けるとそこで待っていた姉から私とれりりんへ。

「『おはようございます』と言いたい所ですが、二人共ちょっと遅いですわよ?」

と満面の笑顔で挨拶と戒めの言葉が掛けられる。

私もれりりんも直立不動で、

「「ごめんなさい」」

と謝る声がダブってしまう。

それが何だか可笑しくて、三人同時に吹き出した。

「さぁ、教室に参りましょう。」

「はぁー・・・今日もこれから1日ガッコなんですねぇ・・・」

「うんうん。授業、面倒だよねぇ。僕も屋上でお昼寝してようかなぁ。あそこいいトコロだよね!」

れりりんが楽しそうに言うと、姉が「レリーチェ・・・?」と言っている。
れりりんの方を向いていた私は姉の方を振り返れない。

だって背中から突き刺すようなプレッシャーを感じるもん・・・

「じょ、冗談だよかななん先輩・・・」って言ってる時のれりりんの表情は完全に怯えていた。


下駄箱でそれぞれの教室に向かう前に「またお昼にね」って約束しあう。
これから、出来るだけこんな風に楽しく過ごせると良いな。とか、なんとなく思った。