「結婚かぁ。」
二人で決めた事だし、準備もしっかり済ませてある。
だけど、いざここまで来てから実感がなんとも薄い。
切っ掛けってなんだったっけ?ちょっと思い返してみる。
二人で「結婚しよう!」って決めた時、なにかが新しい何かが始まりそうな高揚を感じた。
この世界に残された時間がもう残り少ないんだとしても、気持ちを確認し合う作業が無意味なんて事は無い。
まぁ、そうしようって決めた事に後から理由つけてもしょうがないんだけど。
残すのは因から生じた果だけで、私も花嫁様も歴史家でない。
行動を起こしたら世界が変わる何かが起こるわけじゃない。
ともかくまぁ、二人して今日という日を迎えた訳だ。
門出だとか節目だとか比喩表現はいくつか在るけど要するに「結婚」
普通と違うのは、私も花嫁様も同性で在ることだろうか。
共通点はそこだけではない。
中身は互いに男性的な性格であり、趣味も非常に近い。
それから、お互いに欠けているものが、お互いに持て余しているものだ。
それが何故か心の底にストンと、何の引っ掛かりもなく落ち着いた。
なんか最初からそこに在ったみたいだ。
時間とか経験とかぜーんぶすっ飛ばしてそこにある事実。
こんな風にまわりくどく考えてると笑われそうだなぁ。
でも合う所は合って、違う所は違って良い。
共感は出来ても、自分のコピーなんて冗談じゃない。
なんでも知ったような振りされたら腹も立つし、多分、花嫁様もそう思ってる。
諦めた様にどちらかに従うんじゃなくて、認め合うために違う部分を擦り合わせたい。
取り敢えず大事なのは一緒に居て楽しく過ごせそうな人がお互いだったってこと。
クサイ?こんな日くらい言わせてよ。
ネガティブにクサクサやってるより、多少空元気でも前向きでいたいんだ。
「周りくどいよ!『お互いに好きだから』でも充分だってば、こういうのは!」
ってそれじゃ単刀直入すぎるでしょ?そんな所も大好きだけどさ。
結果はそうなんだけど、たくさんの言葉で飾らないと不安になるんだ私。
結婚披露宴って自分達が誓い合うだけじゃなくて、誰かに対して「私達二人の関係が変わります。」って発信する儀式だよね。
もちろん二人だけで静かにやっちゃっても良いんだけど、せめて身近な人に報告と挨拶くらいはしたい。
あの人に報告したら、一体どんな反応をするのかな?
あの人は多分喜んでくれるだろうな。あの人は笑うかも知れない。あるいは驚くだろうか?
悔しがる人も泣く人も居るだろう。
花嫁様はぶっちゃけ贔屓目抜いたって可愛いからね。
私は、はしゃいでるのかな?
いやいや、その割には本当に一個一個の言葉が重くて、なかなか出てきてくれなかったんだよ。
先ずは今日の結婚式を精一杯。
そして明日のその先も、ずっと続いていく日々に誓おう。
「ずっと一緒に居ようね。」
「うん、僕の方こそ不束者だけど、よろしくね!」
「はい、これからも幾久しくよろしくお願いします。」
少し堅苦しい言い方に、目を見合わせ二人して吹き出してしまった。