(有)ソルブ 代表 林原安徳
立地そのもの
駅近立地の特徴は、「駅–店–後背地域」という順に考えていくことができることです。駅はTG(ティージー:交通発生源)で、人々が集中する場所です。後背地域にいる人々とは、店前を通って駅に向かうことができる人々です。
この考え方を、ピカールの立地に当てはめるならば、表参道駅–ピカール–後背地域になります(図1)が、問題があります。
後背地域の大半が青山学院大学のキャンパスになってしまう点です。その上、人々がいる地点から駅までのルートをシミュレーション(※)すると、地域の大部分が店の前を通らず、その手前で横道に入ってしまうのです(図1の破線)。つまり、厳密には、「駅–店–後背地域」という構造すらできていないとも言えます。
この点、ピカールの立地は「並」もしくは「並以下」と考えられます。
商圏
500m圏の人口は5,364人、昼間人口は44507人で、昼夜間人口比は8・3にも達します。すなわち、店舗周辺は、典型的なオフィス立地であることが伺われます。しかし、平日・休日に周辺を実査するとそれだけではないことが分かります。いわゆる「南青山」という地名に魅かれて、近年ファッション性の高い店舗、グレードの高い店舗が多数出現しています。そのため、平日はもちろん、休日においても多くの若者・家族が流入してきており、さしずめ「大人の原宿」的様相を示しています(図2)。
この流入した人々は店周辺をあちこち散策しているのでその一部がピカールの前を通ることが考えられます。原宿や表参道周辺の住宅街ほどではないにしろ影響は大きいでしょう。
また、周辺に住む人々は、世帯年収1500万円以上の比率が4・9%と東京の平均3・7%を大きく上回っており、極めて異例です。
ピカール業態との相性
ピカールの扱う冷凍商品、フランス料理や高価格帯という側面は、この南青山においては特に問題にならないと思われます。近くにある斬新なデザインのビル、KINOKUNIYAのスーパーマーケット部門で売られる商品の価格帯は通常SMの1.3倍~3倍であり、また、近隣にある数々のカフェメニューの単価と比較してもまったく遜色ないからです。1号店目から成功を狙おうとする意欲にたいへんマッチした商圏であろうと考えられます。
狙いは何か?
流通業全体が、厳しい低価格競争に恒常的に晒され続けているなか、デフレの影響を受けにくい高所得層に高価格・高付加価値の商品/サービスをアピールし、定着させていこうとすることは正しい選択です。
とりわけ、都内は、この骨董通りとよく似た高所得層が多く集まる地域がたくさんある。こうした地域に間違いなく出店してブランドを定着させる戦略が功を奏すことを願っている。
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※ ゼンリン社製「電子地図帳Z18」を使って経路探索(自転車)を行った。
はやしはら やすのり
売上予測コンサルタント。有限会社ソルブ代表。日本マクドナルドで出店調査を担当。独自に深めた立地理論をもとに200社以上のチェーン企業の経営者、多くの起業家をコンサルティングしている。著書に『実践 売上予測と立地判定』(商業界)、『最新版 これが「繁盛立地」だ!』(同文館出版)など。東京大学卒。http://www.sorb.co.jp
電話番号:048-711-7195
住所 〒338-0002
埼玉県さいたま市中央区下落合四丁目17番18号
引用元:ピカール1号店(青山骨董通り店)の立地 月刊食品商業 201・・・