「TOKYO2022」近未来SF短編小説を作りました。
近未来SF短編小説を作りました。
2022年
2度目の東京アラート以降、
都庁は赤く染まり続け
恐怖の象徴となっていた。
「歌舞伎町にてオーバーシュート発生。スーパースプレッダーを発見。クラスターがこれ以上広がる前に、直ちに強襲し、これを排除せよ。」
「了解。」
もはや、治療などという感染リスクを追う余裕など、この国にはなかった。
とくに免疫のない無症状感染者がスプレッダーと化した場合、即座に社会から強制排除することが法律化されている。
エピセンター化した東京において、
その中心たる歌舞伎町はもはや
無政府状態の魔窟となり果てていた。
逃亡するスプレッダーを追い、排除することが、私の仕事だ。
国から独立した東京都の切り札、スプレッダー対策係。通称「トレーサー」。
元自衛官で、免疫を獲得していることが採用条件だった。
「スーパースプレッダーは、ホストクラブ武蔵に勤務するホスト、名前は甲斐一、22才。感染タイプは東京型。現在、新大久保方面に向けて逃走中。職員による抜き打ちPCR検査で陽性反応確認後、逃走。スマホの位置情報を掴んでいるので、そちらに送る。」
「了解。」
今ではPCR検査の技術発達により、その場ですぐに検査結果もわかるようになっている。
二度目の事実上のロックダウンと、三峡ダム決壊による世界恐慌によって、失業者は1000万人を超え、日本各地でスラム化が進んでいる。その最もたるのが歌舞伎町だ。国側の警官でさえ、手がつけられない状態だ。
抗体は短期間しかもたず、変異を繰り返し進化するこの厄介なウィルスSARS-CoV-2に、有効なワクチンは未だにできあがっていない。ADE(抗体依存性感染増強)の問題を克服することは困難な状況だ。
そうした中、私のような生まれつきの免疫獲得者が、優位な社会へと変容してしまった。
国は「埼玉型」を封じ込めるため、完全ロックダウンを試みようとしたが、埼玉は自治権を掲げ東京に続き独立。国は分断されつつある。
県外移動には身分証明書が必要な時代だ。
各国の航空会社は倒産し、海外への行き来は完全になくなってしまった。
国によって、物資の輸送だけが行われている。
この国の、年間の自殺者数は5万人を超えてしまったが、しかし、それでもまだ、ましなほうだろう。
米国、ブラジル、インド、イランはほとんど壊滅状態・・・
とはいえ、中国も三峡ダムの決壊による被害は甚大で、皮肉にも世界の均衡はまだ保たれていた・・・
バイクに設置したスマホに、スーパースプレッダーの位置情報が転送されてきているので、これを追いかける。写真も送られてきているので、まず見間違えることはないだろう。接敵したら、即座に射殺。
そこまでが私の仕事。事後処理は他部署がやってくれる。
免疫があるかないか、もはや生まれ持ったDNAで、人は選別される時代となってしまった。
今思えば、去年よく、東京オリンピックを成功させることができたものだ。
射殺といっても、通常の拳銃を所持しているわけではなく、サイトカインストーム(多臓器不全)を起こす薬物を注射する射出装置を使用する。薬物を注射された対象は、その場で即座にぶっ倒れて、あの世行きだ。
私は、サイトカインストームガンに、「東京型」用の薬物を装填した。
「対象を発見。これより排除する。」
パンッ!
「排除完了。事後処理を求む。」
「了解。都庁へ戻り報告を。」
「了解。」
私がやらなくとも、ニュースで手配されれば、自粛警察を名乗る一般市民ら自警団によって、始末されていただろうが・・・
人々は恐怖に支配され、お互いを不審に思い、憎み合っている。
このまま、世界は崩壊していくのだろうか・・・
もし、2019年の夏、第二波が発生し、専門家によって東京のエピセンター化が警告されたあの時に、国や都が、判断を誤っていなければ・・・
私はそんなことを考えながら、赤く染まる都庁へとバイクを走らせた。